キスキン:集団で生み出すデザイン

2008年12月5日 カテゴリー: イベント/展示会, 国内

キスキン:集団で生み出すデザイン

「SomeRightsReserved」の屋台を切り盛りするキスキン。 © KithKin

イギリスのデザイナー集団、キスキンは、他者にインスピレーションを与えるだけでなく、グループ展「キスキン・プレゼンツ」や、その出版部門「SomeRightsReserved」によるたくさんの展示やインスタレーションを通じて、コンセプチュアル・デザインと創造性の深さを模索することを自身に課している。本日のPingMagでは、キスキンのイアン・アトキンスさん、エド・ヴィンスさん、そしてジョス・ディベーさんに、このグループの活動やそのプロジェクトについてお話をうかがった。

作:ヤリフ・ルヴァ
訳:山根夏実

東京デザイナーズ・ウィークで自分たちのコンテナの準備を進めるキスキンの面々。 © KithKin

キスキン(KithKin)というお名前の由来は?

イアン:当初、僕、ホリー・ベンウェルとフィル・リーヴズが、それぞれ後にキスキンとなるものの名前を考えていて、たくさんの珍しい言葉や意味をリストアップしていた時に、辞書で「Kith and Kin」という言葉を見つけたんです。それで間の「and」を抜いて、KithKinにしました。これは英語の古語で、「友人や家族」を意味する言葉なんです。

皆さんと他のデザイナー集団との違いはどういった点なのでしょうか?

イアン:キスキンは余所よりもずっとフットワークが軽くてダイナミックだと思います。僕たちは限られた上限関係と、自然な感覚のフラットな構造を心がけているので、それぞれが来たい時に来て、去りたい時に去っていきます。キスキンでは個人とグループの両方に重点を置いていて、それぞれがつぎ込んだだけのものを得るようになっているんです。現在は9時から5時のような決まった勤務時間もなく、メンバーは他の仕事や企画の合間に活動していて、プロジェクトの大部分は自主的なもので占められています。ですから僕たちの仕事は、自分たちの興味や情熱の対象を題材にしていて、そうでないものをやろうとは思いませんね。

インスタレーション「Feed My Inspiration」の結果。 © KithKin

エド:キスキンは共同作業集団として始まりましたが、僕たちがコラボレーションや様々な業界で展示をして、いろいろな人と会うにつれて、むしろ互助集団のほうが適切な言葉だと気付きました。こちらのほうが私たちの運営方法や人との関わり方に合っていると思うんです。キスキンはメンバー全員の集合的な努力のおかげで成り立っていて、全員が平等に機会を得られるフラットなシステムなので、ヒエラルキーも存在しないんです。

現在皆さんは、ロンドンのセルフリッジのウィンドウやコヴェント・ガーデンでのデザイナーズ・ブロック・ショーなどのプロジェクトを抱えていらっしゃいますよね。皆さんの最近の仕事で、特に面白かったものについて聞かせてください。

イアン:僕たちは、昨年9月に初めてデザイナーズ・ブロック・ショーをやって以来、イベントや展覧会を開催するようになったんです。今年の夏は、「キスキン・プレゼンツ」という形で、新卒業生が初めてのショーという素晴らしい体験ができるように、同じようなことをもっと洗練させようと考えたところ、本当に良い結果になりました。この一年の経験を経て、「キスキン・プレゼンツ」は新しい作品を売り込むちょっとした舞台になりつつあります。コヴェント・ガーデンのデザイナーズ・ブロックでは素晴らしいスペースを持って、様々な新卒業生や専門学校、大学から20以上ものプロジェクトを集めました。

ロンドンで開催された「キスキン・プレゼンツ」。 © KithKin

僕たちは、コヴェント・ガーデンでは主役を張ったSomeRightsReservedの出版部門とダウンロード・ショップの品揃えも拡大し続けています。あの時は、ダウンロード・ショップは頼りになる屋台も出しましたし、屋台を組み立てる間に現地で商品を作ったりもしました。印刷はサービスを提供してくれる所を何か所か使って、レーザー切断はコヴェント・ガーデンから徒歩10分の場所でやってもらいました。CDに焼いたダウンロードを装備して出発して、帰ってくる時にはプロダクトを持ってきたんです。このショップでは、キスキンのクリス・ハンドフューチャー・ラボラトリーとの新しいコラボレーションから生まれた、トレンド・ジェネレーターなどの、いくつかの新しいダウンロードも扱っていました。

セルフリッジのウィンドウは、夏の予定に追加された予期せぬ嬉しいエキストラで、何をするか決めるのも一苦労でした。最終的に、僕たちはウィンドウを6つのセクションに分けて、それぞれのセクションを覆い隠して、毎週一か所ずつ公開していくことによって、インスタレーションの最後にウィンドウの全貌が明らかになるという作品にしました。この作品は、昨年一緒に仕事をした人たちの大半を巻き込んだ、少し不思議な回顧展のようにもなりました。

東京デザイナーズ・ウィークのコンテナ展で行われた、日本での「キスキン・プレゼンツ」。 © KithKin

キスキンはデザイナー集団で、ウェブサイトには42名の方々が紹介されていますが、一人一人が同等の役目を果たしているのですか?それとも集団の中で、他よりも活躍している人もいるのでしょうか?

イアン:キスキンには5、6人のアクティブなメンバーに加えて、100人以上もの貢献者がいます。プロジェクトの準備やブリーフィングなどで、メインで活躍している人々が、他のメンバーに作業を委任していきますが、ほとんどの人は特定のプロジェクトだけに貢献しています。新しい人たちと仕事をする時は、イベントに向けて単に作業をこなすだけでなく、ブラブラしておしゃべりを楽しめる人たちが目に留まりますね。また何か面白いことをやろうと思った時は、そういう人たちを優先して声をかけるようにしています。要するに、熱心であればあるほど、貢献度が大きくなるんです。

ジョス:特にロンドンのショーでは、僕たちが出展した作品の作者も大勢やってきていて、そのうちの何人かはより緊密な「家族」になりそうな感じでした。

今年の初めにミラノ・サローネに出店した「SomeRights Reserved」の屋台。 © KithKin

キスキンの作品は、現代のコンセプチュアル・デザインが中心ですが、皆さんのコンセプチュアル・デザインの見解や、皆さんがデザインをする際に、抽象的と機能的のどちらの意義に重点を置いているのかを教えてください。

イアン:僕たちのほとんどのメンバーはデザインを勉強した、どちらかといえばそういった輪の中にいる人間なのですが、それ自体は僕たちの関心の的ではありません。僕たちは何に対しても関心を持っていて、それは何もデザインに限られたことではありません。僕個人としては、レーベルというものに対して、理解に苦しみます。これはまるで音楽のジャンルを分類するようなものですが、人間や物事はレーベルほど明確なものにはなりえない、もっと複雑なものですから、あまり意味がないように感じられます。それぞれのメンバーが自分の関心や意見、グループの方向性を持ち寄るキスキンにも同じことが言えると思います。

「キスキン・プレゼンツ」の作品はコンセプチュアル・デザインとして始まりましたが、常にそれ以外の分野も展示する方向に成長してきました。キスキンが展示、もしくは制作した作品の大半に共通する目的は、興味を持たせること、またはリアクションを誘うことです。見る人を考えさせること。コンセプチュアルか否かに関わらず、これが私たちの作品の共通の土台ですね。時と場合によって、それを機能性もしくは親近感で表現する作品もあれば、より抽象的なコンセプトもあるかもしれません。僕としては、その物体が従来の意味で機能しなかったとしても、概して抽象、リアクション、それに関心を引くことが要だと考えています。

ジョス:僕たちはいつも、ただ展示で見せてみたい作品を選んでいるだけで、特に抽象的、機能的という括りでは選んでいません。僕個人としては、その背景とプロダクトにまつわる物語が一番大切なことですね。そういったことを考慮しないと、作品はすぐに複雑でややこしくなりすぎてしまうんです。

キスキンのコンセプチュアルな魔法が紡がれるスタジオの内部。 © KithKin

キスキンのウェブサイトのタイトルには、「現代コンセプチュアル・デザインの感動的なコレクション」とありますよね。皆さんの作品は、確かに見る人にインスピレーションを与えますが、皆さん自身はどうやってインスピレーションを得ているのでしょうか?何かコツや方法があるなら、ここで分かち合ってくださいませんか?

エド:インスピレーションは至る所にありますよ。お約束的な言葉に聞こえるかもしれませんが、これは本当にそうなんです。誰もが自分の金魚鉢を持っていて、その中で生活しているのですが、キスキンのメンバーの鉢は単に他の人のそれよりも大きくて、何に対しても思案やアイディアを探し出せるというだけなんです。僕たちは、日常的な街中の風景や公共空間、社会的な相互作用、匂いや音に対しても胸が躍ります。カメラ付き携帯もいつでも取り出せるようになっています。インターネットも、僕たちがそれぞれのやり方で活用して、その後全員がそれをキスキンのブログで分かち合える巨大なリソースです。実際にデザインと関係のあるものはそのごく一部なんですが、すべてがインスピレーションであることに違いはありません。特別な方法やコツなんかなくて、ただ意識を外に向けて興味を持つことだけですね。

ジョス:僕のインスピレーションは主にインターネットですが、僕たちは全員、携帯やカメラで常に日常のもの、素人の目には大したものとは映らないであろう些細なもの、不思議なコンテクストのもの、無意識の人間の行動、それに町中のおかしなものの写真を撮っています。

キスキンのJoss Debaeさん(右)とイアン・アトキンスさん(左)。 © KithKin

イアン:僕たちは、そのことについてトレンド調査会社のWGSNにプレゼンをしたこともあるんです。その時に、僕たちはただ200枚ほどの写真をプレゼンに持って行って、話し始めたのですが、丸一日だって続けられたと思います。ただ自分の身の回りのことを少しよく見るだけで、興味の対象はすぐに見つかるはずです。それと同時に、一歩退いて、より広い視野で見てみるのも良いと思います。ちょっと足を止めて、どうしてそうなのか、もしくはどうしてそうじゃないのか、疑問に思いさえすれば、僕たちのまわりには面白いものがたくさんあふれているのがわかると思います。ただ想像力をはばたかせてから、それを引き戻せばいいのです。

それでは今後のお話になりますが、プロダクト・デザインや展示会のキュレーションという観点では、これからどういう方向性を目指していかれるのでしょうか?今後の他のご予定は?

エド:僕たちのアイディアやインスピレーショナルな考え方を、できるだけ多くの人々と分かち合うことと、もっと国際的な仕事を増やすこと。僕たちはこれまでの旅の経験で、デザインと創造性は、興奮とチャレンジの力でもって、人種や言葉の壁すら超越するということを学びました。

キスキンのエド・ヴィンスさん。 © KithKin

イアン:5年計画どころか1年計画すらないですよ。目標を一つだけ設定すると、それに囚われたり、頑なになってしまうかもしれないと思うので。これまでの展示はどれも素晴らしくて、多くの人々に会って、たくさんの面白いことをする機会をくれましたが、それが僕たちの関心の終着点にはなりえません。僕たちはこれからも成長を続けて、今後の活動でもっと大きな役割を果たすであろう新人もいますから、彼らの声や意見が新しい方向性や焦点を与えてくれるかもしれないと思っています。僕たちの仕事の大部分は、従来のやり方に伴う問題やそれに対する否定から生まれたものでした。この点はこれからも変わらないと思いますが、その問題がどんなもので、僕たちがどんなものに意欲をかきたてられるかは、まったく予測できません。

ジョス:キスキンはいろいろなことをやりたい様々な人間の巨大なるつぼです。僕たちはそれぞれの日常や仕事をこなしながら、違う国に住んでいる人もいれば、一緒に暮らしている人もいて、だけど自分に向いているプロジェクトがある時には、全員が力を合わせます。これからどうなるかはまだわかりませんが、良いアイディアを持っている方、僕たちとコラボしたい方は、連絡をお待ちしています。

皆さん、どうもありがとうございました!キスキンの皆さんが今後どんなことをされるのか、楽しみにさせていただきます!

1 コメント

  1. [...] キスキン:集団で生み出すデザイン [...]

    Posted by: bookmark::081215 « Kuu2’s Blog @ 12月15日2008年

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