若野桂:音を感じるイラストレーション

2008年12月1日 カテゴリー: イラストレーション, グラフィック, 国内, 映像, 音楽

若野桂:音を感じるイラストレーション

イラストレーター、若野桂氏による竹村延和のCD「Nobukazu Takemura-Sign」用アートワーク(2001年)© katsura moshino / PHIL

多くの人が80年代から90年代の日本のクラブシーンを思い返した時、ビジュアルとして浮かんで来るのはひょっとしてこの人のイラストではないだろうか?若野桂(もしの・かつら)は、DJクラッシュモンド・グロッソマンデイ満ちるなど、その時代のクラブミュージックを代表する数々の日本人ミュージシャンに作品を提供しただけでなく、彼らと共に時代を築き上げたイラストレーター。そんな若野氏が、先々週より、およそ20年間分の作品を集めて、東京でなんと8年振りになるという個展を開催中!PingMagは早速、若野氏にお話を伺った。

作:チエミ

イラストレーターとして知られる若野さんですが、実は色々な活動をされているんですよね。

映像制作は1990年頃から、アニメーションを中心にしたPVやショート・ムービー、CMなどをほぼ一人で作っています。最近では英テクノ・グループのジ・オーブの「ヴジャ・デ」のPVを作りました。他にはグラフィック、野外フェスティバルのアート・ディレクションなどが大きい比重をしめます。ハイエンドなイラストレーション・ワークの延長として、ソニーのAIBOをはじめとする工業デザインや、設計監修を行う事もあります。今年の11月からは名古屋工業大学で準教授として、広義のデザインを研究しています。理系の国立大学は美術の世界とかなり違いますが、面白い世界ですね。

ジ・オーブ「ヴジャ・デ」のPVより。動画はコチラから。© katsura moshino / PHIL

拠点は名古屋でしたよね。なぜ名古屋に?

今は岐阜の仕事場にいることが多いんですが、名古屋圏であることは変わらないですね。クリエイティブな面で言えば、名古屋というのは都会でも田舎でもない中間的な都市で、新幹線に乗れば一時間半で東京に移動できますから、いろいろな意味で「普通」ですし、中心部から取り残されるようなこともなく、広いスペースが手に入れやすいのも良いですね。また、名古屋圏のクラブ系ミュージシャンには友達が沢山いますので、そういう環境を変えたくないということもあります。

今、音楽の話が出ましたが、若野ワールドの原点となったものは、やはり音楽でしょうか?

そうですね。80年代のクラブカルチャーと、その音楽の影響が最も大きいのかもしれません。高校生の時にパンク系バンドをやったり、パンクからヒップホップという流れに乗ってDJの友達に囲まれて育って来たので、日本の80年代の創世記のクラブカルチャーにどっぷりと浸かっていました。名古屋は良いミュージシャンが育つ地域で、周囲にはそんな連中が大勢居ましたので、クリエイティブな発想を持っていることが普通という雰囲気がありました。また、そういった友達は絵のモデルとしての素質も大きかったと思いますから、彼らやクラブカルチャーの空気感を描いている事が「若野ワールド」と言われる理由なのかもしれません。

「World Famous Final」(1999年)マッド・プロフェッサーに捧げたキャラクターを使った、イベント「World Famous」用ポスタービジュアル。© katsura moshino / PHIL

音楽ありきの作品を作られるのも、お好きなんでしょうね。

良い楽曲を持ったアーティストから相談されると、つい力が入ってしまうことは多いです。これまで作品を提供したミュージシャンは大勢いますが、大多数が予算のないインディー時代からの付き合いで、彼らの成長に関われることが嬉しくてつい引き受けていました。ただ、私の音楽の趣味は非常に偏っている部分があるので、楽曲によっては音に合った絵が出てこないこともあります。そういう場合は、曲を送って頂いた時にギブアップしてしまいます。

DJクラッシュによるリミックス作品集「DJ KRUSH-Reload」用のアートワーク。(2001年)© katsura moshino / PHIL

作品の制作過程についてはいかがでしょう?

依頼は、何かのキャンペーン用のイラストを含んだ全体的なアートディレクション、ということが多いのですが、大きなクライアントの場合は、正式な依頼の前に必ずクライアント側の目的や条件に対しての相談があります。ここがお互いにとって非常に重要で、その時にクライアントのアイデンティティーなどをしっかりと聞きます。実はこの段階で完成イメージ候補が頭の中で出来上がります。

ずいぶん早い段階でイメージが浮かぶんですね。

長く仕事をしているうちに、この時点でストーリーが鮮明に浮かぶようになりました。ですから、色を含めた全てが最初から頭にあることが多いんです。必要であれば下書きもしますが、PCでいきなり描くことも多いですね。アイデアは沢山出てきますが、その中で最も「グッと来る」部分をいい状態で制作します。

欧米、アジア、日本で展開されたNIKEのバスケットボール・キャンペーンで使用されたキャラクター作品。 © katsura moshino / PHIL

作品をボツにされることはありますか?

ありますよ。制作中に雲行きが怪しくなると、「道端でこの絵を誰かに貰って、自分は嬉しいだろうか?」等と考えて「NO」だと別の出し方を考えます。単純にクライアント的趣向に合わない場合は、後でブラッシュ・アップして自分の作品として使うこともあります。自分の展示作品を創る時でも捨てるものはありますから、ボツは良い結果を出すまでの過程だと思っています。

これまでの作品で、ちょっと素敵なエピソードがあるそうですね。

2年間の歳月をかけて製作したSONYのAIBOの最初のプロトタイプに電源を入れた時に、AIBOが竹村延和氏の制作した現代音楽の音声で私に「コンニチワ」と挨拶してくれたんです!これにはかなりグッときて、子供を生んだような錯覚に陥りました…。工業デザインが、10数個のモーターや人工知能と完全に調和した瞬間でした。

若野さんの子供と言っても過言ではない、SONYのAIBO ERS-300シリーズ © katsura moshino / PHIL

本当に素敵なお話ですね!では、今回の約8年振りとなる東京での個展の内容を教えてください。

1988年頃から現在までの平面作品、つまり私の作品の変遷が並んでいるような展示です。日本のクラブカルチャーにおける男っぽい活動から、VIVA YOUなどのアパレルで展開したガーリーな作品までが同居しているので、芸風の広がりを見せられたのではないでしょうか。


若野さん(左)とDJクラッシュ(右)。

では最後に、今後の予定を。

個展の最終日12月3日に、展示会場と中目黒Solfaで公開パフォーマンスを行います。SolfaではHIFANAのジャケットワークでお馴染みのMAHARO氏も参加します。興味のある方は是非観に来て下さい。

若野さん、今日はありがとうございました!

【お知らせ】若野さんの個展は今週水曜までの開催です。お見逃しなく!
若野桂 「Black Market」
会期:開催中〜2008年12月3日(水)11:00〜20:00
会場:代官山スピークフォー
住所:東京都渋谷区猿楽町28-2 SPEAK FOR B2F
入場料:無料

2 コメント

  1. nobodyknows+のジャケットを描かれてた方ですね。好きなイラストレータさんです。

    Posted by: moo @ 12月2日2008年

  2. もしのいいよー
    なんだか本物なんだ

    Posted by: saitoh @ 12月5日2008年

  • Share and Enjoy:
  • del.icio.us
  • digg
  • Fark
  • NewsVine
  • RawSugar
  • Reddit
  • YahooMyWeb
以前の記事