
皆さんは、ゲームセンターで過ごした懐かしい時間を覚えているだろうか?アーケードゲームの人気は今だ衰えることはなく、本日はそのゲーセンへの不滅の愛に浸っていただきたい。先日、講談社インターナショナルから刊行された「アーケード・マニア」は、大阪在住の著者ブライアン・アッシュクラフトが、PingMagの大切な友人の一人である東京在住のカナダ人、ジャン・スノーの協力を得て、東京に古くからあるゲームセンターを巡って生み出した英語版の書籍。この本で、彼らはゲームデザイナーの話を聞いただけでなく、女子高生が放課後にプリクラに通ったり、主婦がUFOキャッチャーに群がる、日本のレトロゲームの世界を垣間見せる素晴らしい洞察を伝えてくれている。本日のPingMagでは、ブライアン・アッシュクラフトさんに刺激的なお話をうかがった。
作:ベレーナ
訳:山根夏実
まず始めに、ブライアンさんはご自分が初めてゲームセンターで遊んだ時のことを覚えていらっしゃいますか?
僕がアメリカのゲーセンで遊んだ一番古い記憶は、Xウィング・ファイターを操る、画像が線だけで構成されたベクター・グラフィックのスター・ウォーズのゲームでした。そういう記憶は強く印象に残りますよね。僕は70年代生まれで、アメリカやヨーロッパ、日本で育った多くの同世代の人々がそうであるように、13歳か14歳になるまでずっと、子供時代の多くの時間をゲームセンターでストリートファイターIIなんかをやりながら過ごしました。僕みたいな人の多くは任天堂のファミコンが初めて持つゲーム機で、おそらくアーケードでパックマンやマリオブラザーズで遊んだのを覚えているんじゃないかと思います。この世代ならまずこの体験でしょうね!
それから後はどんな感じで…?
面白いことに、僕が日本に来て妻と出会った当時、彼女の仕事が終わるのを待っている間、僕は彼女のオフィスがある大阪の梅田のビルのゲームセンターで1時間ほど潰していたんです。後に僕の妻となる彼女と会う前にこのゲームセンターに行って遊んだ記憶には、時間を無駄に浪費したという感じはまったくなく、素敵な思い出がいっぱい詰まっています。日本では、ゲームセンターがあらゆる場所に存在していて、どこでも遊べるのがすごいですね。
でも僕がアメリカで子供だった頃は、ゲームセンターに行くには車を出すか、近所のコンビニかピザ屋にある1台か2台のゲームで遊ぶしかありませんでした。車が運転できなければゲームセンターに行けないという点が、日本との本当に大きな違いで、アメリカでゲーセンがあまり流行らなかった理由だと思います。

むしろインフラの問題だったと…。本題の「アーケード・マニア」に話を移して、この本の大部分は、ゲームの裏側にいる人々についてだそうですね。例えばあのプリクラモデルの女王、桜井莉菜さんなんかはどうやって選ばれたのでしょうか?
実のところ、ビデオゲームについて語るのも十分面白いのですが、人とゲームとのインタラクションや何故こういったゲームが生まれたのかの話はもっと面白いんです!ですからアーケードゲームの仕組みについて知りたい人のために、そういった情報もありますが、ポップカルチャー的な視点や、社会においてそれがどんな役割を果たしているのかに関心を持っている人もいると思ったんです。ですからこの本にはそういった内容も含まれていて、この二つの異なる視点のバランスを上手く取ることが問題でした。
僕は雑誌「Wired」のフリーのライターもやっているので、そのための最善の方法は、そういった話を聞かせてくれる人を探すことだと思いました。それで各章ごとに、そのジャンルを良い意味で象徴する人間を探そうと思ったんです。プリクラを例に挙げれば、プリクラについて一番知っているのは誰か?と考えた時に、プリクラマシーンの広告で活躍していて、プリクラマシーンの設計に協力したこともある桜井莉菜さんを選びました。そして彼女から他の人々に手を広げていけばいいと…。

それは素晴らしいコンセプトですね!
メインキャラクターに彼女を据えて、彼女にこのジャンルを紹介してもらうことで、単にプリクラについて語るよりもずっとリアリティーのある、生き生きとした内容になったと思います。そしてこういった話はこれまでほとんど英語になっていませんから、かなりのリサーチをしています。ですからそれぞれのジャンルを見て、誰がその世界での知名度が高いかを見極めるのが重要でした。たとえばUFOキャッチャー名人の女性は、日本のテレビで見かけたクレーンゲームの天才でした。それで彼女とは絶対に話さなければいけないということになって!本当に助かったのは、仮に僕が東京にインタビューに行けなくても、ジャンが代理でインタビューの一部をやってくれたことですね。彼女がそうやって作業負荷を肩代わりしてくれたおかげですごく助かりました。

なるほど!ではブライアンさんにとって、アーケード業界で一番印象的だったのは誰だったのでしょうか?
シューティングゲームについての章では、素晴らしいゲームプログラマーである長健太さんについてよく触れています。その他にも、この章ではアーケードゲームの名人のプレイを録画して、スーパープレイのDVDを制作しているInsanity Naked Hunterのイケダミノルさんにもインタビューしています。彼は僕が会った中で、最高に親切で、信じられないくらい協力的な方で、わざわざ他のインタビューの手はずを整えるのにも手を貸してくれたんです。
僕も彼がどうしてこんなに親切にしてくれるのか不思議に思ったのですが、私たちを手伝ってくれようとした彼の心遣いには、何か本当に純粋なものがあって、完全に心からの善意でやってくれたことだったようです。彼はトーナメントで賞金をもらう一部の人たちを除けば、プレイヤーたちはこういったことでお金を得ることはないから、彼らの名前をもっと光の当たる場所に出してやりたいのだと言っていました。そういう人々は、一つのことにのめり込んでしまったがために、そのゲームで本当に上手くなって、誰でも叩きのめすことができるようになるために、時には何十万円ものお金を費やしていたりするんだそうです。

そうなんですか!
もう一人、特に印象的だったのが、セガの鈴木裕氏でした。彼は本当に長い間ゲーム業界にいて、その大部分を作った人でもあるのですが、今でもアーケードゲームを発展させる方法、例えばゲーセンで携帯電話をコントローラーとして使うなどのアイディアを考えているそうです。もしくは、彼は仮説的な意味で、チップのインプラントなどについても話していましたね。彼のすごいところは、彼の頭が今でも十分に柔らかいことで、あの情熱と熱意にはこちらまで感動させられます。多くのデザイナーは、ある時点、もしくは一定の年齢に達すると、ほとんどが消えていってしまいますからね。作るゲームも鋭さに欠いていくように思えます。
そこで次の話に繋がっていくのですが、良いアーケードゲームとはどういったものなのでしょうか?
多くのアーケードゲームの本当に良いところは、100円玉一つでそのゲームが好きか嫌いかを判断できるということです。100円玉を投入すると同時に、面白さが感じられなければならない。目新しくもなく、楽しくもなければ、2枚目の硬貨を入れることはないから、そのゲームは廃れて終わってしまいます。これはビジネスモデルとしてはとても面白いし、プレイヤーがどれだけの時間を投資したいかを選べる自由があるというのは、本当に興味深いエンゲージメントのあり方です。例えば映画などを見る時に、最初の20分だけを見て、残りにも時間とお金を払うか決めるということはないでしょう。アーケードゲームは、ある意味そういった選択肢を与えてくれるんです。
確かに!
またそのせいで、アーケードゲームの第一印象はあまりにも重要で、きちんとデザインされてなければなりません。家庭用ゲームでは、未完成の製品をリリースして、追ってそれをカバーするパッチを出すということもできますが、業務用ではそうはいきません。もし何か問題があれば、単に客が離れていくだけです。日本のゲームデザインはそれによって完成度を上げてきたと言えるでしょう。ですからバグのあるゲームを出すということ、これは欧米のデザイナーにありがちなことだと思います。彼らは追加ソフトで遡って問題を修正できる、PCゲームのデザインの流れを汲んでいますからね。その一方で、日本では昔から力強いアーケードゲーム文化があり、ナムコ、セガやタイトーなどの企業は、業務用ゲームに依然としてしっかりと根を下ろしています。完成した製品を発売することは、彼らの企業DNAに組み込まれているんです。

それを除けば、日本の盛んなゲーム文化の全体的な特質の一つに、ゲームがメインストリームの中に完全に溶け込んでいて、社会がほぼ無条件で容認しているという点が挙げられると思うのですが、それについてはどう思われますか?
日本には本当に長いゲーム開発の歴史、いわば伝統とも言えるものがありますから。でもそれも国内産業なんです。例えばテレビを見ていても、他の国よりもずっとゲーム関連のCMが多くて、ゲームに対する偏見があまりないように見えます。そしてゲーセンに行ってみても、年配のビジネスマン、学生や子供といった社会の様々な階層が、同じ空間できれいに入り混じっている光景を見ることができます。
とても平等主義的な感覚ですね…。
ゲーセンは、地域の銭湯のようなもので、誰もがそこに行って交流することができます。それに対して、パチンコ・パーラーは未成年がふらっと立ち寄ることができないものもあって、ゲーセンよりももっと閉鎖的な環境になっています。あと、パチンコではお金が返ってきませんしね。

ゲーセン自体の話といえば、渋谷にあるレトロなゲームセンター、「渋谷会館モナコ」とそこのスタッフのお話も本当に面白かったです!特にそこら中を飛び回って修理して歩いているというスタッフの方々は、本当にゲームに献身的なようですね。それで何かが壊れると、テープを使って筐体を修理するとか!
レトロアーケードの本当に素晴らしいところは保存状態で、それは時として感動的です。あそこでは15年、時には20年前のゲームすらあって、それが今でもちゃんと動くんです。キャビネットも通常は良い状態ですし、ボタンが張り付いて動かなくなっていることもなく、ジョイスティックもちゃんと動きます。そういったことが本当に大事なんですよ!モナコのような場所では、プレイの合間にスタッフがキャビネットにハタキをかけたり、ボタンやジョイスティックを清潔にしておくために、ウェットティッシュで拭いているところを見ることができます。ですから、場所自体は人間の体臭と缶コーヒーの臭いが入り混じった灰皿のような空気になっていても、筐体の保存には膨大な愛情と思いやりがこもっているんです。僕は、それが人々が誇りを持って仕事をする、日本の文化を象徴するものだと思っています。
確かにそうですね…。
秋葉原のような場所で電車を降りて、タイトーヘイのようなゲーセンに入り、1000円札を両替機に入れてコインの小山を取り出し、シューティングゲームをするには、この地球上で最高の場所の一つに座る…これは格別だと思います。もしくは金曜日にクラブ・セガに行って、ゲーマーがバーチャファイターでお互いを叩きのめす様を見ることも。これはさながら映画をDVDで見るのと、ロサンゼルスにある歴史的なグウローマンズ・チャイニーズ・シアターで見ることの違いに似ています。

本当にそうですね!ちなみにブライアンさんのお気に入りのアーケードゲームは?
それは簡単です!僕の好きなゲームは、まだ稼動前ですが、ザ・キング・オブ・ファイターズ XIIです!なぜならこのゲームはアーケード用の格闘ゲームが本当に有名な、大阪のSNKという会社が作っているもので、これが彼らのゲーセンへの尽きることのないラブレターのようなものだからです。このゲームで、SNKはなんとゲーム内のすべてのキャラクターアニメーションをアーティストによってドット絵に落とし込んでいるんです。ですから、彼らは単にプログラムやミドルウェアを使ってゲームを作るのではなく、SNKの大阪事務所の誰かがゲーム内のすべてのシーンを、それもオープニングのクレジットや会社のロゴまで、全部ドットに落とし込んでいるんです。これはすごいですよ!これぞまさに筋金入りの、正統派のゲーム作り…。ですが今日においては、これは費用対効果は悪いし、正気じゃないとしか思えません!それでも「これが昔からのやり方であり、このやり方では自分たちが他の誰よりも優れていて、史上最高の業務用格闘ゲームを作りたいから!」というのが彼らの言い分なんです。この熱意と、芸術としてのゲームデザインへの凝縮された献身の度合いを見ると、胸に熱いものがこみ上げてくるんです!
僕が感動したもう一つの会社は、東京のCAVEです。「自分たちは世界最高のアーケード・シューティングゲームを作りたい、そしてそれだけを作るんだ!」というのがこの会社のモットーです。このジャンルの発展はあまり望めないのですが、それでも彼らは「このジャンルはニッチだけど、それでも遊びたい人がいて、高い品質の製品を期待してくれている人がいる。それを届けるのが自分たち」だと言っているんです。それが彼らのアイデンティティーであり、もし彼らがシューティングゲームを作るのを突然やめてしまったら、日本のゲームファンはかなり驚くだろうと思います。
本当にそうですね!ゲーセン文化が永遠に続くことを願います!ブライアンさん、今日はありがとうございました。そして読者の皆さん、書籍「アーケード・マニア」(英語)は、日本ではすでに販売中で、12月頃にアメリカでも発売される予定です。
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Posted by: 山本 @ 3月28日2011年
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