
ブラジルの風光明媚な浜辺の町、パラチーには、コンタドレス・デ・エストリアス(=語り部)という大人のための人形劇団がある。レイチェルとマルコス・カエターノ・リバスによるこの劇団は、あやつり人形のジェスチャーだけですべての感情を伝える人形劇を引っさげて、もう30年以上も世界中で公演しているのだという。さらには、この夫妻はすべての人形を自分たちで手作りして、毎年人形劇のワークショップも開催しているのだそうだ。本日のPingMagでは、マルコスさんにお二人のマリオネット・アートについてお話をうかがった。
作:アロルド・カルドーゾ・Jr.
訳:山根夏実
始めに、劇団を結成されたのはいつだったのでしょうか?
1971年に、レイチェルと私がニューヨークで学生だった時です。彼女はイラストレーションを、私は演劇とダンスの勉強をしていました。お互いの経験を融合させて一緒に仕事をしようということになって、それで人形劇というアイディアが生まれたのです。

新しい人形のアイディアはどうやって考えていらっしゃるのですか?
人形はいつも劇団のイラストレーターであるレイチェルが、自分か私のアイディアのどちらかに従って作っています。でもいずれにしろ、完成までにたくさんの話し合いを経て作られます。
お二人が作るキャラクターは、ビジネスマン、インド人の二人組、老夫婦など、本当に個性豊かな面々ですが、その全員に共通した点はどんなところにあるのでしょうか?
私たちはそれなりに長いこと生きていますから、自分たちの作品が人が分かち合いたいと感じる感情を映し出した日常生活の断片であると考えています。ですからキャラクターもそれにあわせて選ばれているのです。ですが共通点もたくさんありますよ。よく見ると、キャラクターはどれもとてもブラジル的なタイプで、優雅で柔らかい動作を持っていることに気付かれると思います。
そういったキャラクターを使って、あなた方は未だに人形劇とはあまり馴染みのない大人のテーマを扱っていらっしゃいますよね…。
私たちは、あやつり人形というものが、人というか特に大人を集めるのに驚くほど適しているということを発見して、人形に私たちが作ろうとしている世界を掘り下げさせているのです。事実私たちが上演した小作品のいくつかは、生きた人間が演じてもきちんと伝わらないのではないかと私は思っています。例えば先ほど例に挙げられた老夫婦ですが、彼らの登場する作品は、基本的に彼らが観客の耳には聞こえない何かをお互いの耳元でささやきあっては思わせぶりに笑うという内容です。さて、この劇を老人に扮した生身の俳優に演じさせても、老いることについて私たちが伝えたい気持ちやメッセージが伝わるとはまったく思えないのです。ほとんどの場合において、大人は人形が感動を与えるとは思っていません。ですが彼らが人形によって感動してそれを自覚した時には、もうその感情は芽生えてしまっていて、後戻りはできなくなっている。このミニチュアの世界は、気付かないうちに人々を捕らえるトラップなのです。

ではシーンを作る時はどこから着手されているのですか?
決まったやり方はありません。あるアイディアから始める時もあれば、先に人形ありきの場合もありますし、私たちが見た何かがきっかけとなることもありますから、実際に何でもありですね。
あるシーンの構想が浮かんだ時というのは、どういった順序で衣装、照明、音楽といったものを作っていくのですか?
私たちがシーンの構成を考える時は、大抵はどうやってそれを演出するのかも一緒に考えます。人形を使うのかダンサーか、それとも両方にするのかとか。大抵はその直後に音楽が来て、照明はもっと終わり近くですね。でもそれにしたってルールのようなものは一切ありません。

制作の最中は、ストーリーや遠近図法、人形などのシーンの要素をやり直したりもするのですか?それとも明確なステップを踏んで作業されていらっしゃるのでしょうか?
順を追って、ほぼ確立された制作手順で進めようとしてはいますが、大抵はその時にやっている作業や一緒にやっている他の方々の仕事、もしくは私たち自身の問題の都合で変更を余儀なくされます。

またお二人は人形、ダンス、パフォーマンスと「俳優による」演劇を組み合わせたハイブリッド的なプロジェクトもやっていらっしゃいますよね。人形劇と他の分野のアートのバランスを取るのはやはり難しかったですか?
ええ、かなりの挑戦でした。私たちはそれまでにも人形劇にダンスのコンセプトを取り入れていましたが、それを実際のダンサーと一緒に使うということは、私たちもずっとやりたいと思っていたことでした。結局のところ、ダンスは私が勉強したパフォーマンスアートの一環でしたから、それを活用したかったのです。でもそれも決して簡単なことではありませんでした。二つのアートを組み合わせる場合は特に。私たちはすぐに人形は人形であり、実際のダンサーは本物の人間なのだということ、どちらにもそれぞれの限界があるということを理解せざるを得ませんでした。あとどちらにも独自の非常に限定された技術や可能性があるのだということも。その作品はオーギュスト・ロダンの絵と彫刻をベースとしたもので、作品も「ロダン、ロダン」という題名なんですが、最終的にはダンスと人形劇と、どちらにも合った表現の言語を見つけることができたと思います。
人形劇を見せる時、お客さんとは他のパフォーマンスとはまた異なる関係を築いているとは思われますか?
いえ、そういうことはありません。媒体は違えど、その表現言語の裏にあるコンセプトはほとんど同じものですし、意外にもお客さんもほぼ同じ反応を返してくれます。私たちの劇の特質の一つに、観客の感情に大きく作用するということがあるのですが、それは他の媒体となんら変わりませんし、同等のインパクトがあると思います。試行錯誤の末に「ロダン、ロダン」の表現を調整した時に、まさにその通りになりました。
ここ数年間に、人形劇に流行のようなものはあったと思われますか?
人形劇は、この数年にブラジルでかなり成長したと思います。今は私たちが始めた頃よりも遥かに多くのグループが人形劇をやっていますし、ブラジルの三つか四つの州で毎年開催されるセシ・ボネコスという大きなフェスティバルもあります。

コンタドレス・デ・エストリアスは、他にも中南米の人形劇集団のネットワークのようなプロジェクトもやっていらっしゃるそうですね。そちらについてもお話を聞かせてください。
そのプロジェクトは中南米とカリブのあらゆるコンテンポラリー・アートの表現者たちのネットワークで、私たちが1991年にロックフェラー財団の支援を受けて始め、その後10年間続けたものです。あれは30カ国にもわたる巨大なプロジェクトで、私たちの手には大きくなりすぎたので、結局は去ることにしました。ですがプロジェクト自体は今も続いていて、私たちもいまだに名誉会員という形で名を連ねています。

人形劇以外に、これまで他にどんなことをされていらっしゃったのでしょうか?
私たちは過去にいくつものプロジェクトに携わってきましたが、もっとも最近のものは、パラチーの金の道を復興するというものでした。金の道とは18世紀にパラチーと内陸部とを繋いだルートで、ブラジルの初期の歴史で非常に重要な役割を果たしています。これは元々、この道を題材とした劇を作ろうと思ったことがきっかけでした。その劇「Descaminhos」は私たちの30周年記念に2001年に上演したのですが、その劇のためのリサーチが金の道の歴史の詳細な研究に繋がって、それについての本も二冊書いています。実際の道でも、私たちは考古学的な調査や他にもたくさんのことをほぼ10年間にわたって企画・指揮してきました。でも現在では、私たちはこのプロジェクトから身を引いて、もっと劇の仕事に専念しようとしているところです。
最後に、今後のご予定は?
国内にいる時は、パラチーにある自分たちの劇場で年間を通して水曜日と土曜日に定期的に上演しています。今は先日アメリカから戻ったばかりで、チリとスペインに公演に行く予定がありますが、日本に行く予定は残念ながら今のところありません。でも行ってみたいと思っています!どなたか今度招待してくださいませんか?

ぜひお願いしたいですね!コンタドレス・デ・エストリアスのマルコス・カエターノ・リバスさん、お話をありがとうございました!
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Posted by: Marnie @ 7月25日2011年
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Posted by: uwtbdjlbrw @ 7月25日2011年