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ピクセルガーテンは、コミック風の美学に触発されて空間的なグラフィック・デザインを模索するドイツの若手デザインスタジオ。その作風は美しい作品集「タクタイル:ハイ・タッチ・ビジュアルズ」の表紙や、原宿ラフォーレのグランドバザー2008のキャンペーンのビジュアルでも見ることができる。PingMagでは、キャンペーン用のインスタレーションの設置のために東京に1週間滞在していたカトリン・アルテンブラントさんとエイドリアン・ニースラーさんにお話をうかがった。
作:ビアンカ・ボイテル
訳:山根夏実
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お二人はドイツの出身ですが、日本でラフォーレの最新のキャンペーンを手がけていらっしゃいますよね。その経緯について教えてください。
エイドリアン:まず初めに、この仕事は私たちだけの力ではなく、東京のTBWA/Hakuhodo の浅井雅也さんと新沢崇幸さんという、二人の美術監督と一緒に制作したものです。お二人はゲシュタルテン出版の書籍「タクタイル:ハイ・タッチ・ビジュアルズ」で私たちの作品の一つを見て、プロジェクトの話を持ちかけてくれたんです。
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「タクタイル」は、「空間を使ったグラフィック・デザイン」についての本だそうですが、これはまさにお二人の作風を表した言葉ですよね!この本では、お二人の作品が複数紹介されていて、カバーのデザインもピクセルガーテンが手がけられたそうですが、TBWA/Hakuhodoの興味を特に引き付けたのはどの作品だったのでしょうか?
エイドリアン:ラフォーレのインスタレーションは、「Um was es nicht geht(それについてではないこと)」シリーズのイメージの一つの、木枠を使ったコミックのコマにアイディアを得たものがベースになっています。最初、私たちはメールで意見を交換するところから始めて、例えば美術監督の一人の浅井雅也さんからは、日本の漫画は斜めにコマを割ることが多いので、フレームを日本風にしたらどうだろうという提案をいただきました。その後、クライアントの承認をもらってからは全てが猛スピードで進んで、2週間後には私たち自身で本物のセットを組むために東京入りしていました!
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「Um was es nicht geht(それについてではないこと) 」シリーズより、コミック的な吹き出しと本物の木枠…
…そしてダンボールで作ったアップルのデスクトップ・アイコン。「Um was es nicht geht(それについてではないこと) 」より。
ラフォーレのキャンペーンに使用されたインスタレーションが日本でのお二人の初めての仕事になりましたが、日本関連の仕事はこれが初めてではないそうですね?
カトリン:そうですね。2004年に、ニッポン・コネクションというフランクフルトの日本映画祭のポスターを制作しています。実はこれが私たちが初めて一緒にやった仕事だったんです。私たちは当時、二人ともオッフェンバッハ応用アート大学の学生で、それ以来たくさんのプロジェクトを一緒に手がけるようになりました。当初、「ピクセルガーテン」は私たちのホームページの名前だったのですが、2007年に卒業して自分たちのデザイン事務所を作ってからもその名前を引き継いでいます。
こ、これは…!「Um was es nicht geht(それについてではないこと)」より。
同じく、物理的に体現されたコミック風の水しぶき。
なるほど!それ以降のお二人の作品はどれも楽しそうで、ユーモラスかつ遊び心にあふれたディテールが満載ですよね。「Um was es nicht geht(それについてではないこと)」シリーズには、頭を糸でぐるぐる巻きにしたカトリンさんのポートレートもありますが、あれはさぞかし変な感じだったのでは?
カトリン:怖かったですよ!平衡感覚もなくしてしまいましたし。何も見えなくて、ろくに耳も聞こえなくて、喋ることもできず、ただ呼吸することしかできませんでした。しかもエイドリアンが私をからかって「じゃあ僕はそろそろ行くよ!」とか言うんです。ドアがバタンと閉まる音を聞いた時には、思わず「ダメ、ダメ、ダメ」と叫んでしまいました…。
紙でできたエイドリアンの「ポートレート」、「Um was es nicht geht(それについてではないこと)」より。
こちらは糸を使ったカトリンの「ポートレート」、「Um was es nicht geht(それについてではないこと)」より。
同じく「Um was es nicht geht(それについてではないこと)」より、フードを使ったこれまた素晴らしいインスタレーション。
でもエイドリアンさんもお返しを食らったのですよね?エイドリアンさんのポートレートでは、顔中に小さな紙の短冊を貼り付けていらっしゃいましたよね…。
エイドリアン:…あれはチクチクして、しかも紙を顔に貼り付けるのに両面テープを使ったので、剥がす時は本当に痛かったです。写真を撮り終わった時は、本当に嬉しかったですよ!
なるほど…体を張った作品なのですね!ところで、「Um was es nicht geht」は「それについてではないこと」というような意味になりますが、これについて教えてください。
エイドリアン:それはそのままの意味です…「それについてではないこと」(笑)。いえ、すでに前の写真で木枠についてのお話をしましたが、これはコミックのコマのようなものでありながら、ストーリーが抜け落ちた作品なんです…。
…それは見る者の想像力を喚起するために?
エイドリアン:この作品は、エフェクトだけを描写しています。たとえば、爆発と「KAWOOM(ドカン!)」という音とか。ですが見る人間は、それがどういう流れで起きたことなのかとか、その爆発の原因を知ることはできません。ストーリー自体は明確にされないままなんです。それに加えて、「Um was es nicht geht(それについてではないこと)」では私たちもスタジオにある材料だけを使って、一日に一枚の絵を完成させることを自分たちに課していました。一日が終わる頃には、何らかの結果が出されていなくてはならない。非常に興味深い過程でした。
写真そのものはもちろんのこと、絵の配置やその絵に欠かせないものも重要な要素でした。この作品は、ドイツ国内の数都市を巡回している「グーテ・オウシスティン(良い景色):ヤング・ジャーマン・フォトグラフィ2007/2008」というグループ展の一部として制作されたものなんですが、私たちは各展示スペースにあわせて、このインスタレーションを毎回違った配置で組み立てているんです…。
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こういうインスタレーションでは、物体とそれが表すものを混同しがちですが、私たちもお二人がご自身をどう捉えているのか、例えば、写真家なのか、アーティストかデザイナーか、正直よく分かりません。お二人にとって、それはそもそも問題ではないのでしょうか?
エイドリアン:私たちも自分自身が何なのかはわかりませんよ!それに、それは私たちにとってはどうでもいいことです。とは言えこの質問には頻繁に遭遇するので、それに対する良い答えをもういい加減に準備しているべきなのでしょうが、残念ながらまだ準備できていません!あなた方がこうと思った呼び名が、まさに私たちのなりたいものです。
メディアの境界を越えることは、かなり面白いです。例えば、つい先日オランダでヨーロピアン・チャンピオンシップ・オブ・グラフィック・デザインという、ケッセルスクライマーのエリック・ケッセルスがキュレーションを手がけ、PingMagでも紹介されたブレダのグラフィック・デザイン博物館で開催された展覧会に参加したのですが、この展示ではなんと古典的なグラフィック・デザイン以外のあらゆるものを見ることができたんです!
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境界といえば、お二人のこちらの方面での最初の作品はどんなものだったのでしょうか?
カトリン:この類の最初の作品は、ほぼ4年前に作った本の仕事だったのですが、残念ながらそれが出版されることはありませんでした。内容自体は、オッフェンバッハ応用アート大学で開催されたインターネットやオープンソースと、それに関連したトピックの連続講義についての本で、私たちのデザインは「バーチャルな空間」という主題を物質的な空間に転換させることを意図したものだったので、立体的な部屋(上の写真参照)でレイアウトを始めて、それぞれの講師にあわせて、象徴的な要素を部屋に配置していったんです。例えば、インターネットの発明についてというある講義では、その概念の創造的瞬間をカフェのナプキンに書かれた走り書きで表現しました…。このインスタレーションの全体像を本のカバーにして、それぞれの講義を象徴した部分のクローズアップ写真を各章のビジュアルにする予定でした。
しかし物質的空間における私たちの作品は、デジタルのサポートなくして実現することはできなかったんです。この本のタイトルは、内容に相応しいように、壁に走らせた電線で描き出す予定だったんですが、電線が本当に固かったので、最初にこの素材にあわせた書体をコンピュータを使って作るところから始めなくてはなりませんでした!
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出版されなかったのが残念ですが、でもその企画がお二人の作風の根幹をなしているようですね!お二人はポートフォリオでも独特なアプローチを発揮していらして、ページ上に文字通り作品を見せるとうかがったのですが…。
カトリン:その方が完成した作品の印象がよく伝わりますから。艶の有無などの紙の品質、大きさ、折り曲げられていたかなどは、本当に重要な要素でありながら、デジタルのポートフォリオではそこまで伝えるのが難しいんです。ドイツのフォルム・マガジンの創刊50周年記念特集号のために描いた私たちのイラストレーションが良い例でしょう。ここではホットスタンプフォイルやスクラッチフォイル、それにフロッキングなどの印刷技術で実験することができたので、本当に面白かったです。またそうすることで、更なる「タクタイル(触知的)」な要素が追加されるという…。
ドイツのフォルム・マガジンの創刊50周年記念特集号#214のカバーデザイン。
ドイツのフォルム・マガジンの創刊50周年記念特集号#214のカバーデザイン。
フォルム・マガジンの50周年記念特集号の3Dイラストレーション。
こちらも同じく50周年記念特集号の立体的なペーパークラフト。
最後に、今後日本でお仕事をするご予定は?
エイドリアン:はっきりと決まっているものはありません。でも日本にはまた来たいですね!
ピクセルガーテンのカトリンさんとエイドリアンさん、これからも頑張ってください!またお二人のファンキーで空間的な作品を日本で見られる日を楽しみにしてます!
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