マンブリーズ:張り子の動物の王国で

2008年7月14日 カテゴリー: グラフィック, 国内, 民芸・工芸

マンブリーズ:張り子の動物の王国で

1月にオレゴン州ポートランドで開催されたマンブルボーイとE*Rockの展覧会「ペーパー・マチェーテ・スクワッド」に出展された、奇妙だけれど印象的な張り子の人形。(画像提供:Mumbreeze)

このロボットやありとあらゆる動物の住む不思議な張り子の王国を作ったのは誰か。それはもちろん、マンブリーズ!オレゴン州ポートランドと日本を拠点とするマンブリーズは、マンブルボーイの通称で知られる花田欣也(はなだ・きんや)さんとそのオールマイティな妻・佳緒(かお)さんによる夫婦アートユニット。現在はビザの事情により、欣也さんはポートランド、佳緒さんは日本でそれぞれ生活しているそうだが、それにも関わらず、二人の活動は多忙を極めている。佳緒さんは月末までラフォーレ原宿にあるアッシュ・ぺー・フランスとハンナのショップ、ウォールで個展「グリーン・グリーン」を開催中だし、渋谷で人気のベジタリアン料理店と展示スペース、なぎ食堂で現在行われている個展の準備には、二人とも死に物狂いで働いたという。PingMagも、欣也さんと佳緒さんと美味しい食事を楽しんできた。

作:イアン・ライナムセリーナ・ホイ
訳:山根夏実


ニューヨークのミルキー・エレファントのところにお世話になった際に…

…欣也さんと佳緒さんがお礼に作った特別な象のシリーズ。(画像提供:Mumbreeze)

この質問には飽き飽きされているかもしれませんが、お二人はどういうきっかけで出会われたのでしょうか?

欣也:佳緒と出会ったのは、ネットのソーシャル・ネットワーキング・サイトで知り合った友人を介してです。それまでは、オンラインで公開している作品を通してのみ私を知っている人がほとんどだったのですが、SNSが主流になり始めた途端に、山のように友達ができました。そのうちの何人かとは本当の友達になって、佳緒はそんな友人の友人だったんです。

欣也さんが日本滞在中に撮った写真だけを使ってネオジャポニズムのために制作したコラージュ。(画像提供:Mumbreeze)

では夫婦アートユニットとしての始まりはどんな感じだったのでしょうか?

欣也:マンブリーズとしての歴史はまだそう古くはないのですが、付き合うようになってから、徐々に一緒に仕事をするようになりました。佳緒は、最初は私が作品を作る手伝いをしてくれていたのですが、今では彼女も自分の作品を作っています。


マンブリーの名でも知られる欣也さんのコラージュシリーズの…

…すべてフォトショップで作られたという作品。(画像提供:Mumbreeze)

ユニットの名前の「マンブリーズ」とはどういう意味なのでしょう?

欣也:一部の友人達が私のことをマンブル(ぶつぶつ言う、の意)とかマンブリーと呼ぶんですが、私たちが一緒に仕事を始めた時に名前が必要だということになって、真っ先に思いついたのがそのマンブリーズでした。でもそれだと直球すぎだと思ったので、スペリングをMumbreezeに変えたんです。日本人にとってはそっくり同じ発音ですし。佳緒も「ブリーズ=そよ風」が付くのを気に入ってくれたようです。

ラフォーレ原宿内にあるウォールで現在展示されている佳緒さんのインスタレーション、「グリーン・グリーン」。(画像提供:Mumbreeze)

確かに爽やかな響きですよね!欣也さんはどのような素材がお気に入りですか?

張り子、布、紙、水彩絵具なんかが好きですが、将来的にはもっと他のものも使っていく予定です。


同じく、佳緒さんの「グリーン・グリーン」インスタレーション。

お二人の最近の展覧会について教えてください。

欣也:ニューヨークで開催した「スーパー・ヒーローズ・リターン」が、マンブリーズが最後に行った個展です。これは私とE*rock(レコードレーベル、オーディオ・ドレッグスの創設者)が東京で行った展覧会「スーパー・ヒーローズ」と同じような感じのものだったのですが、当時佳緒はまだ私の制作を何かと手伝ってくれてはいたものの、正式には参加していませんでした。ニューヨークのショーでは、彼女ももっと色々とやっていて、自分の作品も出展しています。個展の名前の「リターン」は、私たちがポートランドに拠点を移して以来初めてのニューヨークへの帰還だということも指しています。

マンブルボーイとしては、ハンナ・フシハラ・アーロンがキュレーションを担当した、ニューヨークのアッシュ・ペー・フランス・グループ・NYギャラリーで5月に開催されたグループ展にも参加していました。

1月にオレゴン州ポートランドで開催されたマンブルボーイとE*Rockの「ペーパー・マチェーテ・スクワッド」展より。(画像提供:Mumbreeze)

欣也さんの作品は、ニューヨークの有名なランドマークでもあるグランド・セントラル駅にも展示されていましたが、そちらはどういった内容のプロジェクトだったのでしょうか?

あれは「ホリデイ・ライト・ショウ・アット・グランド・セントラル」という企画で、特別なプロジェクターを使ってグランド・セントラルのホールの壁や天井にビデオやアニメーションを映し出す、公共の場を使ったアート・プロジェクトでした。プロジェクターは、アニメーションにあわせて動くようにプログラムすることもできたので、私はキャラクターが天井を飛び回るものを作りました。あれは本当にすごいプロジェクトでした。


同じくポートランドでの展覧会から。

こちらもマンブリーズの奇抜な張り子の作品。

欣也さんも参加された巨大なバルーンを使ったパレードはどんな趣旨のものだったのでしょうか?

欣也:あれはフレンズ・ウィズ・ユーが主催した「スカイウォーカーズ」というプロジェクトで、宇宙中の様々な存在が、地球が宇宙社会の一員となったお祝いに訪れるという設定で、私たち、ペーパーラッド河井美咲アラ・ピーターソンらに巨大なバルーンでできたキャラクターのデザインを依頼して、アートバーゼル2006の期間中にマイアミ・ビーチでパレードを行ったんです。自分がデザインしたキャラクターがあそこまで巨大化して海岸の上空に浮かんでいる光景は、かなりシュールでしたよ。(実際に浮かんでいる動画はこちら。)

イベント「スカイウォーカーズ」の一環として、マイアミ・アートバーゼル2006の期間中のマイアミ・ビーチの空を浮遊したマンブルボーイのバルーンキャラクター。(画像提供:マンブリーズ)

佳緒さんは漫画を描くところから始めたとうかがいましたが、それについて教えていただけますか?

昔、母親が経営していた喫茶店に漫画雑誌がたくさんあり、随分小さな頃から若者向けや大人向けの漫画を姉と一緒になって読んでいました。また、両親とも趣味で油絵をしていたので、私が絵を描くと喜んだり褒めてくれるので絵を描くのは好きでした。姉が私の17才の誕生日プレゼントに「ガロ)」というアンダーグラウンドな漫画雑誌をまとめて買ってくれたのを読んだのが、自分でも漫画を描かなくては!と思ったきっかけです。表紙は湯村輝彦、掲載作家は花輪和一、丸尾末広、根元敬一、蛭子能収などかなり衝撃的でした。

そして昨年には、マンブルボーイとE*Rockは渋谷の アッシュ・ペー・フランス・グループ・ギャラリー東京でも合同展覧会「スーパー・ヒーローズ」を開いている。(画像提供:Mumbreeze)

現在はどんな作品を作っていらっしゃるのでしょうか?

欣也:現時点ではマンブリーズとしての大きいプロジェクトはないのですが、でも張り子の人形は作っています!今年の後半にブエノスアイレスで個展を開きたいと思っているので、それに向けてプラニングや制作を行っているところです。

こちらも2007年の「スーパー・ヒーローズ」展より、色とりどりの張り子の人形たち。(画像提供:Mumbreeze)

現在渋谷のなぎ食堂で開催されている展示はどんな感じですか?

欣也:あちらは動物の像を題材としているんですが、実際の動物というよりはその霊のような感じだと思います。

面白いですね!欣也さんの作品は、ここ5年ほどの間に、彫刻的かつコラージュを主体とした新しい方向性を帯びてきた印象を受けますが、ご自分の作品がどのように、そしてどんな理由で変化したとお考えですか?

私も昔はコンピュータを使った仕事や絵画、コラージュなどをしていたので、単にルーツに立ち返っているだけかもしれません。90年代にはコンピュータを使って、コマーシャルデザイン的な作品を作ることが斬新に思えたのですが、それも今では至る所に溢れかえっていますから、単にその時々で私の興味を引くことをやっているだけなのかもしれません。


新しい人形が…

…今まさに作られているところ。

お二人の好きなアーティストをそれぞれ5組教えてください。

欣也大竹伸朗、ジャン=ミシェル・バスキア、河井美咲山塚アイ、それに ショボショボ。でも私は他のアーティストの影響を考えて、あまり他人の作品を見るほうではなので、今挙げた名前もやや限定的に感じるかもしれません。

佳緒:好きなアーチストは沢山いすぎて5組選ぶのは難しい。 最近は素朴な職人的技に惹かれてしまいます。エゾアムプリン製造所のアムちゃんとかとか。

お二人がお互い以外にコラボレートする方はいますか?

欣也:私はかなり長いことE*rockとコラボしていますし、アーティスト集団ミルキー・エレファントのカール・アッカーマンとも一緒に仕事をしたことがあります。

ニューヨークのアッシュ・ペー・フランス・グループ・ギャラリーで開催されたグループ展「スティッキー・メッシー・アンド・スウィート」に出展された霊的な動物たち。(画像提供:マンブリーズ)

最後に、マンブリーズの今後の活動予定は?

欣也:今は色々なアーティストに真っ白な張り子の人形を送って仕上げてもらうというプロジェクトを始めていて、それぞれのアーティストがどういうアプローチをしてくるかを本当に楽しみにしています。それをオンラインのギャラリーで公開して、どこかで展示もしたいですね。またフェアトレード商品やリサイクルグッズを扱うオンラインショップも運営しています。


この超絶にカワイイ…

…マンブルドールの魅力に屈しない人がいるだろうか…?

マンブリーズ・ショップの可愛らしい猫のおもちゃ。

それは楽しみですね!私たちも早速見に行ってみます!マンブリーズ欣也さんと佳緒さん、今日はありがとうございました!読者の皆さんも、ベジタリアン料理のなぎ食堂に食事がてら行ってみてください。またマンブルボーイのFlickrサイトでも見事な張り子の作品を見ることができます。

ちょっとシャイな夫婦アートユニット「マンブリーズ」の花田欣也さんと佳緒さん。(画像提供:Mumbreeze)

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