トランスマテリアル2:環境問題を考える

2008年5月23日 カテゴリー: テクノロジー, 建築, 環境・福祉デザイン

トランスマテリアル2:環境問題を考える

イリノイ大学が開発した自己修復ポリマーは、生物系から得たアイディアで自己を変形させる素材。この素材には、「修復物質」を含んだ極小の赤いカプセルが埋め込まれ、素材がひび割れるとカプセル内の修復物質が放出され、修復が行われる。プリンストン・アーキテクチュラル・プレスから出版されている書籍「トランスマテリアル2」より。(写真:エリック・ブラウン、イリノイ大学)

皆さんは発光セメントや蛍光砂利、もしくは環境発電・配光カーテンなどというものをご存知だろうか?建築家であり持続可能な素材の研究者でもあるブレイン・ブラウネルは、環境を配慮した“エコ建築”のための新しい技術で現存資源を賢く利用するための素晴らしい素材を紹介するニュースレター「トランスマテリアル」で、毎週私たちに新鮮な驚きを提供してくれる。このニュースレターは、その後同名の書籍として出版された。そして2年後の今、ブラウネル氏が届けてくれるのは、その第2弾となる「トランスマテリアル2:身体的な環境を再定義する資源のカタログ」。代替品として機能する再利用の素材から強度と効果を増幅するために複数の素材を融合させた組み換え素材まで、ブラウネルは私たちの未来の環境を形作る可能性を持つ様々なプロダクツを紹介している。本日のPingMagでは、ミシガン大学で教鞭もとり、現在、東京理科大学と連携した研究旅行で東京に滞在中のブラウネル氏に私たちの事務所を訪ねて頂き、お茶を飲みながらお話をうかがった。

作:ヤリフ・ルヴァ
訳:山根夏実


東京で銀座のネオンを背景にたたずむブレイン・ブラウネル氏。(写真:スティーブ・ウェスト)

まず初めに、メイン州のカムデンで開催された前回のポップ!テクカンファレンスでは、私たちもブレインさんの素晴らしいプレゼンテーションを拝見しましたが、ブレインさんが持続可能な素材の研究者に、そして環境に優しい建築物のアドバイザーになったきっかけを教えてくださいますか?

私は建築を学んで、実際に10年以上その分野で仕事をしていたのですが、この時期に爆大な数の革新的な建材に出会った経験が非常に大きかったと思っています。仕事を始めてまもない頃、私はある大きなプロジェクトのために素材の研究をする機会に恵まれて、この課題のやりがいとその分野でのチャンスに強い感銘を受けました。プロジェクトというものは、完了と同時に記録が保存されて終わるものですが、私は即座にこの知識をより多くの建築家、デザイナー、建築業者らと分かち合う必要性を感じました。それで電子ジャーナルとデータベースを始めたのですが、それが増えつつある素材マニアの間で人気となり、多くのフィードバックをもらうようにもなりました。その結果、私は時間が経つと共に素材開発の重要な軌跡を理解できるようになったのです。

冒頭のイメージと同じ、イリノイ大学が生物系にヒントを得て作った自己修復ポリマー。書籍「トランスマテリアル2」より(写真:マグナス・アンダーソン)

現在の持続可能な素材とエコな建築手法は、それほど新しい動きではありませんよね。1950年代には、建築家のピエール・コーニッグがすでにエネルギー効率の良い建物を作るために、受動的な冷却システムと太陽熱利用技術を利用した、鉄骨構造のガラスの家を作っています。エコ建築の分野が広まるのにここまで時間がかかった理由はどこにあると思われますか?


光触媒セメントを含む超吸収素材は、防音壁に使用することで騒音公害に終止符を打つだけでなく、空気汚染を削減することができる。これは優れもの!書籍「トランスマテリアル2」より。

ヨーロッパと日本はかなり先行しているものの、アメリカはエコ建築に関心が集まるきっかけとなった1970年代の石油危機が緩和した当初から、持続可能な建築の発展という分野では苦戦しています。私が思うに、持続可能なデザインの最大の難関は、それが主に即時的な経済効果を持たない、長期的かつ知的な取り組みだと考えられていることで、比較的に安い石油のコストのせいで、業界にその他の選択肢も考えてくれるよう説得することはほぼ不可能な状態でした。

まさにその通りですね!アレックス・ステフェンは著書の「ワールドチェンジング:21世紀へのユーザー・ガイド」で、私達は究極の破綻を国営の老人ホームで体感するのではない。砂漠化、飢饉、異常気象に満ちた世界で体感することになるのだ、と語っています。持続可能な素材や省エネ技術は、このような厳しい現実から私たちを救うことができるのでしょうか?

アレックスの予測は、ある意味においては正しいと思います。世界では、すでに拡大する砂漠化や飢饉、不可思議な気候の変動が観測されていますよね。ハリウッド映画に出てくるような、地球規模が一夜にして変化するような事態が今すぐに起こるとは思いませんが、私たちは加速的な自然環境の悪化という目を逸らしたくなるような真実と向き合い、それを阻止すべく早急に行動しなければなりません。エネルギー利用と排出問題のおよそ半分は建物が原因なので、飛躍的に改良された素材や建築技法、エネルギー利用方法は大きく貢献するはずです。

ペンキになる海草?長崎県のSUZURANコーポレーションが開発した「レーベン」は、粉末化された和紙と海草糊、ホタテ貝の粉末、酸化チタン、そして天然塗料から作られた100%天然素材の塗り壁材で、環境汚染とは完全に無縁!YDNYから入手できる。書籍「トランスマテリアル2」より。(写真:SUZURANコーポレーション)

建築家がエコ素材や省エネ技術を駆使して、未来的で持続可能な名建築を作った例があれば教えてください。

今おっしゃった要素を同時に満たすことは非常に稀なので、その質問にすぐにお答えできないのが残念ですね。エコ素材や省エネ技術を駆使してというくだりは特に難しい目標で、ある意味動く標的のようなものでもあります。しかしながら、坂茂紙管を用いた建築構造やサミュエル・モクビーのルーラルスタジオ建築などのプロジェクトが思い浮かびますね。

xGnPは黒鉛から作られた新種のナノ粒子。プラスチック、ナイロン、ゴムなどにこれを加えると、その基本的な性質が変化して導電性や熱伝導性を持ち、金属に近い反応を示すようになる。書籍「トランスマテリアル2」より。(高解像度写真:S. ビズワス、ミシガン州立大学)

先ほどエコ建築の話でヨーロッパと日本について言及されていましたので、日本で研究することの多いブレインさんにおうかがいしますが、日本の建築家もこの流れを汲んでいると思われますか?

先進国の中では、ヨーロッパがほぼ間違いなく最も洗練されて、広い範囲で実施されているエコ建築技術を持っています。しかし限られた資源を最大限活用する点や、持続性に対する文化的に異なる考え方という点においては、日本は非常に興味深い国です。日本人建築家の多くは、必ずしも持続可能なデザインという名目を掲げることなく、創意工夫に富んだ手法で限られた空間と資源を最大限に活用しています。持続的発展では中国がトップを取ろうと試みていますが、その過程で多くの困難に直面していますね…。

日本のNECが開発したこのバイオプラスチックは、「リサイクルが可能な形状記憶性バイオポリマー」。要するに、成形後に熱と外力によってポリマーが変形しても、再加熱することによって元の形状に戻るのだ。書籍「トランスマテリアル2」より。(写真:NECコーポレーション)

それでも製品をエコにするには、リサイクル効率から輸送距離の削減まで、何通りものやり方がありますよね。どのエコ手法が見落とされがちだと思われますか?

商品が生産から廃棄までに使う総エネルギー量、使用水量、そして製造に関連した二酸化炭素排出量が見落とされがちです。また多くのエコ素材が、エネルギー生成と環境修復のように複数の持続可能な特徴を組み合わせられる場合でも、そのうちの一つにしか焦点を当てていないことがありますね。

さて、次はブレインさんの書籍「トランスマテリアル」について聞かせてください!まずはこのタイトルの意味を教えてくれませんか?


「バイオプラスチック」で作られた腕巻き携帯。書籍「トランスマテリアル2」より。(写真:NECコーポレーション)

タイトルは、変形物質という意味の「トランスフォーメーショナル・マテリアリティー」を融合させた造語で、今回出版されたのはデザイン革命を通じて物理的環境を形作るポテンシャルを持つ素材を紹介した本の第2弾です。

この本の中でエコ素材が分類されているカテゴリーの概要を説明していただけませんか?

「ウルトラパフォーミング」は、現行の性能の限界を押し上げようとする素材です。資源を最大限活用するために構造的な奥行きをより追及したのが「多次元素材」、「再利用素材」は現行の希少な資源の代替品となるもの。「組み替え素材」は、複数の要素を掛け合わせた結果が個別のままの要素よりも優れた特性を示すハイブリッド素材で、「知的素材」は、より良い環境のために創造的な構造的および形式的な発想を採用したもの。「変形素材」は環境刺激に基づいて変化を生じさせる素材、そして「インターフェイシャル素材」はデジタルプロセスやデジタル製造を研究した素材です。

かなりの数がありますね。この本には本当に沢山の素晴らしい新素材や技法が紹介されていましたが、中でも飛躍的な進歩と思われるものはどれなのでしょうか?

それはむしろディスラプティブ技術(破裂性技術)という、追加開発とは対照的に革新的な脱却を指す言葉で呼ばれることが多いですね。強い関心が寄せられるものの一つに、曲がるコンクリートや透明セラミック、そして膨張黒鉛ナノプレートレットのように、従来の我々の理解とは異なる作用を見せる素材があります。自己修復ポリマー、強化されたエコ合板、衝撃で瞬時に硬化するアクティブ・プロテクション・システムなどの生体模倣の要素を組み込んだ素材も焦点です。他にもイタルセメンティや超吸収素材、そしてレーベンのような環境修復素材にも関心が寄せられています。更にはオンブライ・システム、インタリオ合成、エルヴィン・ハウアー・コンティニュアなどのデジタル製造革新も焦点となっています。

グリーンミームの「皮膚の内側の生命」は特定の植物と生育状態にカスタマイズされたモジュール式の垂直庭園で、デジタル制御のウォータージェットやレーザー切断技術を使って、より効率的な雨水の収集を実現する。書籍「トランスマテリアル2」より。

ブレインさんは、ユニークな現象論的効果を持つ素材や製品についてもお話しされていましたが、これはどういったものなのでしょうか?

それはつまり、相互作用をした時に型にはまらない反応を示す素材のことです。例を挙げるなら、センシタイルの光を曲げる特性や、リビング・サーフェイスの色や模様を変えることができる性質ですね。

こういった新しい素材について知るのは本当に楽しいですね!実地的なことをおうかがいしますが、デザイナーや建築家がこういった発明品を初めて使う際に、躊躇したりためらうことはないのでしょうか?例えば、透明なセメントで実験をしようと思った人は、どうやってそれの正しい敷き方を知るのでしょうか?


プリンストン・アーキテクチュラル・プレスから出版されている「トランスマテリアル2」の表紙。

ためらいは確実にあると思います、特に訴訟好きなアメリカの建設業界では。新しい素材の活用法を模索するためには、あなたが今言ったようなデザイナーや建築家は、一人では行動しません。クライアントや自治体の関係者までもが含まれたデザインおよび建設チームで、新しい素材の研究をするべきかの決断しなければならないのです。そしてその研究には希望の結果を保証するためのモックアップや性能テストなどの過程が盛り込まれているのです。

最後に、ブレインさんご自身のサイト以外で、他に役に立つお薦めのサイトを教えてください。

コア77インハビタット、それからワールドチェンジングでしょうか。

私たちも大好きなサイトです!ブレイン・ブラウネルさん、新しい著書「トランスマテリアル2」のお話をありがとうございました!

3 コメント

  1. Gooood!!

    Posted by: cococoaki @ 5月25日2008年

  2. [...] PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive … [...]

    Posted by: コンクリート構造物のマテリアルデザイン | ってどうよブログ @ 8月2日2009年

  3. nanaskanı papulya

    Posted by: goruntulu sohbet @ 7月22日2011年

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