伝統を切り開いた文志流江戸文字

2008年5月1日 カテゴリー: タイポグラフィー, 国内, 民芸・工芸

伝統を切り開いた文志流江戸文字

高座に上がり、自ら手掛けた江戸文字の説明をする立川文志さん。

勘亭流や寄席文字など、江戸の町人文化のなかで発達した書体は、全て一括りに「江戸文字」と呼ばれている。筆勢の力強さで描かれたその文字は、今でも多くの人々を惹き付けてやまない。今日は、そんな江戸文字に魅了され、独自の「文志流・江戸文字」を編み出した文字職人の立川文志(たてかわ・ぶんし)さんを皆さんにご紹介したい。

作:リョウコ

文志さんが江戸文字と出会ったのは、グラフィックデザイナーとして活動していた頃。落語家の友人を訪ねた際、寄席文字で落語家の名前が書かれた「めくり」や「千社札」を目にしたことが全ての始まりだった。

「文字の迫力に衝撃を受けたんです。こんなに力強い書体は、他にありません。寄席文字は右上がりに書かれているのが特徴で、昨日より今日、今日より明日が良くなるようにという意味があるそうなんです。そういうのって素敵ですよね。」

全て手書きの千社札。

江戸文字の書体を見ているうちに、すっかりその文字の虜になり、遂には15年間続けていたデザイナーの職を捨て、江戸文字を生業とすることに。大抵の場合、江戸文字職人はひとつの流派に属し、そこで師匠に文字を教わる。しかし文志さんが目指したのは、何処にも属さず、自分の書体を持つということだった。

下書きをしてから墨が塗られる。

めくりを製作中。

「歌舞伎では勘亭流、相撲では相撲文字など、職域によって使われている書体も様々で、例えば寄席文字では、よく知られている橘流などの流派が存在します。そこでは、伝統を重んじる故にその世界だけで決められている文字を守らなければなりません。しかし私は、江戸文字の可能性を試してみたくて、あえて独学の道を選んだのです。」


お店の看板を製作中。

細い筆で墨が塗られる。

それからは、あらゆる江戸文字の文献を読みあさっては、文字を学ぶ日々が続いた。文字への感心はどんどん深まり、なかでも全て四角に描く「角字」の芸術性の凄さには感銘を受けたのだとか。そして、江戸文字と向かい合っていくうちに、ある疑問を抱いた。その疑問こそが、文志流・江戸文字誕生のきっかけとなったのだ。

全て四角に描かれる角字。

月も四角くなる。

こちらは西。

「江戸文字と呼ばれる書体には、必ず読み難い字、読めない字というのが存在するんです。例えば、相撲の番付などに使われる相撲文字の“脇”は、一般の人には難しい。そもそも文字というのは伝達手段であり、時代に合わせて進化してきたものだと私は思っています。そこで、“伝統を踏まえながら現代にも通じる文字”を書きたいと思ったのです。」

相撲の番付。中央に書かれている「関脇」の「脇」は、確かに読みにくい。

こちらが文志流・江戸文字。伝統のスタイルを活かし、なおかつ読みやすい。(ここに入れる画像を下さい。)

今では、自ら創り上げた文志流・江戸文字を通じて、幅い広い分野で活躍する文志さん。寄席のめくりや看板はもちろん、関取の化粧回しやお祭りの法被、最近ではペット用の豆札(!)など、様々な製品を手掛けている。


自ら手掛けた化粧回しをして、お相撲さんと並ぶ文志さん。

お祭りの法被。

鮮やかなグリーンに文字がよく映える。

提灯に施された手書きの文字。

扇子に書き入れられた文字。

寄席文字をベースに、勘亭流や相撲文字など様々な書体の要素が取り入れられた文志流・江戸文字だが、文字製作において文志さんが特にこだわっていることがある。それは、文字全体のバランスだ。

「同じ文字でも、縦書き横書き、前後に来る文字、他にも背景の色などによって、文字のサイズを変えなければなりません。全体のバランスが良くなければ、せっかくの文字も台無しですからね。」

横書きの千社札。

福を招く縁起物の彫看板。

文志さんのオリジナル手ぬぐい。

現在は文字を書く傍らで、色物芸人としての顔をも持つ。そして高座では、自らの江戸文字を使ったユニークな語りが繰り広げられている。


江戸文字職人であり、落語家でもある立川文志さん。なんと師匠は、お馴染みの立川談志さん!

「今では、商品開発から文字を題材にした高座まで行っています。江戸文字をどう書くかと同時に、何を書くか、も私にとって、とても重要なんです。言葉の持つ意味やその可能性を、落語を通してもっと追求していきたいんですよね。」

最後に、江戸文字を愛して止まない文志さんから、皆さんへのメッセージを頂いた。

「日本は、中国から伝わった漢字から、読み方やその意味を考え、平仮名とカタカナを作りました。日本語の文字は、生きる力そのものです。この素晴らしい日本の文化を、少しでも多くの人に知って頂けると嬉しいです。」

文志さん、今日は興味深いお話を聞かせて頂きありがとうございました。これからも素敵な文字を書き続けて下さいね!

5 コメント

  1. やっぱり思い出すのは橘右橘さんだな。
    江戸のどこで千社札を作ってくれるのかな。
    浅草あたりか。
    天上に貼り付ける器具もどこに売ってあるんだろ。
    梵字も気になる。

    Posted by: 山本 @ 5月2日2008年

  2. いつも面白い記事を読ませてくれてありがとうございます。
    相撲や落語の席でみかけることはあっても、どうゆう流派があって、読みやすいとか読みにくいとか考えたこともなかったです。
    そういうものなんだ。と片付けていたので、文字について考えてみるきっかけになり面白かったです。

    Posted by: .ロク @ 5月2日2008年

  3. [...] Read the original Japanese version at PingMag» « “Beer Café Gambrinus Bar” Review “Yujin: Capsule Toy Magic!” Translation » [...]

    Posted by: Kevin Mcgue | “The Bunshi School of Edomoji” Translation @ 4月17日2010年

  4. süper site bana bak

    Posted by: goruntulu sohbet @ 7月22日2011年

  5. 伝統を切り開いた文志流江戸文字 good post1328

    Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年

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