
クラフトワーク、ジム・オルーク、バトルズ、それにアトム・ハート。この豪華な面々が誇らしげに掲げるのが、ヤマハのTENORI-ON(テノリオン)。LEDディスプレイで音を視覚化する、注目の最新音楽ガジェットだ。このサンプラー兼MIDIコントローラーは、メディア・アーティストの岩井俊雄氏とヤマハの開発者、西堀佑氏のコラボで生み出された努力の結晶。PingMagは、TENORI-ONの発売を前にファッションの殿堂とも言える原宿ラフォーレの裏手にあるヤマハの事務所に西堀さんを訪ねることに…!今日はこの光と音が融合したインターフェースの洗練された使い方について、開発者の西堀さんにお話を伺った。
作:ベレーナ&ビセンテ・グティエレス
訳:山根夏実
まず、このTENORI-ONのアイディアがどこから生まれたのかから教えて頂けますか?
2001年に、私は当時ヤマハのために作っていたネットワーク音楽プロジェクトについての岩井さんのアドバイスをもらうために彼とお会いしたのですが、その話し合いの中で、岩井さんの過去の作品の数々を見せいただきました。岩井さんはすでにTENORI-ONというソフトウェアを作っていたので、このアイディアはその協議中に出てきたものだったのですが、その時点ではまだ単なるミュージック・シーケンサーでした。その後、日中は通常の業務をして、夕方6時以降にTENORI-ONの開発に専念することができました。

お二人の共同の作業はどのような感じだったのでしょうか?例えば、誰がどの部分を担当したというようなことはあるのでしょうか?
ソフトウェアのプロトタイプとデザインは岩井さんが手がけました。ヤマハ側の分担はハードウェア開発と製造です。私も一次プロトタイプ開発時は、ソフトウェアを担当していて、その時に生まれたアイディアも製品に組み込まれています。その後、私はプロジェクトの責任者として全体をディレクションしていました。主に、メカ、エレクトロニクス、ソフトウェア、コンテンツ、音源そのもの、コストの計算、プロモーションや営業、それと海外でのマーケティング戦略もですね。

それはかなり大変そうですね!最終的には発売までに6年かかったそうですが、それだけの時間を要した理由は何だったのでしょうか?
開発に3年、商品化の為のマーケティングに3年かかりました。最初は、TENORI-ONがあまりにも斬新すぎて、会社側はなかなか受け入れてくれませんでした。
さて、TENORI-ONは実際にはどういう仕組みで動いているのでしょうか?
サンプリング機能も付いていますが、あらかじめ内蔵された音源も持っていますし、MIDIコントローラーとしても使えます。ですから、ボタンを押すと音が出て、もっと長く押すと拍子を付けることもでき、それをテンポとして設定することもできます。音程と周波数は、時間軸のようなもので調整します。一番下のラインが低い音で、上のほうのラインはもっと高い周波数です。(詳しいスペックはこちらを参照。)

音程のガイドのような、例えば「ドの音」を出したいならここ、みたいなものもあるのでしょうか?
ありますよ。ですが音階は固定されていないので調を変えることもできます。例えば、これが「スコア・モード」です(ボタンを操作すると魔法のようにLEDが点灯する)。ボタンを押すと、音がループするたびにLEDが発光します。ですから音がするたびに光が付いたり消えたりするんです。

では、演奏する時は作曲した曲をどうやって引き出すのでしょうか?
SDメモリーカードで自分がサンプルした音源を読み込ませることもできますし、自分の楽曲を録音したり、別のTENORI-ONに転送したり、複数のTENORI-ONを同調させることもできます。ですからSDカードに自分の曲を保存して、PCに落とせばいいのです。

本当に簡単なんですね!音を視覚化するという点において、液晶やカオスパッドのようなタッチセンサーではなく、なぜ両面LEDの16×16の合計256個のスイッチにされたのですか?
タッチパネルにすると、iPhoneやPSPみたいな感じになってしまうので、違う感じにしたかったのです。液晶は裏側のバックライトで発光させていますが、LEDの場合は、それぞれが独自に発光します。TENORI-ONそのものが発光体であり、それぞれのライトが個別に音を出しているというイメージにしたかったのです。それぞれのLEDは、押されると独自の光と音を同時に発します。
サイズに関しては、このサイズと重さにこだわった理由がいくつかあります。まず、これは平均的な大人の手のサイズに合わせてあるので、指で掴みながら親指が中央で触れあえる幅になっています。

そして、操作も本当に直感的な感じですね!こんなにすぐ理解できるインターフェースをどうやって開発したのですか?最新技術のガジェットの多くは、すぐには使いこなせないものが多いですが…。
正直なところ、岩井さんと私はより手軽に作曲できるものを作ろうと思っていたわけではなくて、それは偶然の産物でした。TENORI-ONを開発していた時期、私は変わった音楽を色々と聴いていたのですが、こういった音楽の大半はコンピュータで編集されたものです。それで、その音楽がライブでリアルタイムに演奏されるとしたらどうなるかを考えてみました。すると私の頭の中で、小さな三角形、大きな三角形、そして正方形の図のイメージが湧いてきたのです。しかしそれは複雑すぎかもしれないということになりました。
それに加えて、岩井さんと私のどちらもが、ミュージシャンでも演奏家でもないということも操作が簡単になった理由の一つだと思います。ジム・オルークやアトム・ハートが演奏している動画を見ればわかりますが、彼らはプロの音楽家ですから、ちょっと説明しただけですぐにコツを掴みました。そして演奏すればするほど、奥が深くなるのです…。


では、彼らのようなアーティストを念頭に置いて開発されていたのですか?
ええ、主にはオーディオ・ビジュアル的な要素の強い作品を作るプロのミュージシャンや、電子音楽やフリー・ジャズの分野で活動するアーティストですね。また音楽を聴くことが好きな音楽ファンを大きな対象にしています。
…ですが研究以外にも、西堀さんはNishiレーベルでご自分の音楽も作っていらっしゃいますよね!あと、Last.fmのアーティスト・プロフィールも拝見したのですが…。

新しい玩具に夢中な様子のジム・オルーク!© YAMAHA
私はどちらかといえば、ハードコアなリスナーですよ…(笑)。実際のところ、それはコンピュータ・サイエンスと音楽をやっていた大学時代のものです。音楽関係のアプリケーションのプログラムを書いて、そのソフトを使って作曲しなければならなかったのです。ですから学生時代の生活がそのままヤマハに繋がりました。
ああ、なるほど!ではTENORI-ONの範囲に関してですが、ヤマハのホームページに掲載されている、アーティストが演奏している動画を見ると、電子音楽やロック系の方が多いように感じますが、TENORI-ONを使ってクラシックやジャズ系の作曲を試みた方はいないのでしょうか?
クラシックですか…。ベルリンを拠点とするトゥ・ロココ・ロットのロバート・リポックがイタリア人ピアニストのルドヴィコ・エイナウディと一緒に仕事をしているので、ロバートが、バイオリンなどが揃ったエイナウディのオーケストラに合わせてTENORI-ONを演奏したことはあります。ジャズに関しては、キエラン・ヘブデンがドラマーのスティーブ・リードとフリー・ジャズのプロジェクトをやっているのですが、キエランはそこで、いつもTENORI-ONを使用しています。
そういったアーティストたちからは、これまでにどういったフィードバックがあったのでしょうか?
マウス・オン・マーズのヤン・ヴェルナーからは、ライブ・パフォーマンス中にサンプラーとして使いたいから、音を録音できるようにマイクをつけてほしいと言われました。その他に、アトム・ハートからも数々の素晴らしいアイディアをもらっています。彼は、どのボタンがどの音を出しているかがわかるように、アタッチメントのようなものが欲しいと言っていました。それから他には…全員がスウィング・シーケンスも付けてほしいと言っていますね。
それはすごいですね!西堀さんは、次世代の若者がどうやって音楽を作曲するようになると思われますか?
まず音楽をたくさん聴いてほしいですね。良い耳を持っていて、少し練習しさえすれば、TENORI-ONで簡単に作曲ができますから、これがより想像力豊かな音楽を作るきっかけになってくれれば良いと思っています。TENORI-ONはギターのような演奏用のツールではありませんが、様々なシーケンスを持っているのが特徴です。ですから、TENORI-ONを使ったパフォーマンスのポイントは、よく耳を澄まして聴くことと、どのボタンを押すかということです。音と選んだボタンの関連性を覚えて、どれを押すかの判断をしなければならないのです。

話は変わりますが、TENORI-ONはイギリスでだけ去年の9月に発売されましたが、これはどうしてだったのでしょうか…?
3年前、私はニューヨーク、ロンドン、東京、ハンブルグで市場調査を実施して、ソナー、アルス・エレクトロニカ、そしてマンチェスターのフューチャーソニック・フェスティバルでTENORI-ONのデモ・パフォーマンスを行いました。その時のイギリスのフィードバックが本当に良いものだったので、他の地域でより良い対応ができるようにイギリスをテスト市場とすることにしたのです。会社としては、TENORI-ONがあまりにも斬新だったので、そこでまず様子を見たかったのでしょう。

なるほど。ヤマハは今後、ますます電子ガジェットの分野に進出していかれるのでしょうか?
今、プロトタイプを開発し始めたところで、それの興味深い点を探すのに躍起になっている最中です。こちらはどちらかと言えばコントローラーのようなものですが、シンセサイザーでもあるという…。名前もちゃんとあるのですが、これはまだお教えできません…。

あまりの可愛さにどうしてもお見せしたかった、社員のものと思われるヤマハのオフィス前のミニバイク。本当にキュート!
うわぁ、ますます知りたくなりますね!西堀佑さん、今日はお話をありがとうございました!来週、東京での発売記念コンサートで、実際に演奏されているTENORI-ONを見るのを楽しみにさせていただきます!
皆さんもぜひ、TENORI-ONの素晴らしさを体感しにイベントへ足を運んでみて下さいね!
【ライブ・インフォメーション】
PRE-VIEW: To Rococo Rot Night
日時:2008年4月24日(木)19:00〜
会場:EATS and MEETS Cay(青山スパイラル B1F)
ゲスト:トゥ・ロココ・ロット/Mapstation/ロバート・リポック
入場料:前売り4500円、当日5000円
TENORI-ON Launch Event(参加希望者の応募は終了)
日時:2008年4月25日(金)17:00〜22:00
会場:スパイラルホール
ゲスト:岩井俊雄/ジム・オルーク/アトム・ハート/ポール・デ・ヨング/トゥ・ロココ・ロット
AFTER-VIEW: Audio&Visual Night
日時:2008年4月27日(日)18:00〜
会場:EATS and MEETS Cay(青山スパイラル B1F)
ゲスト:アトム・ハート/ポール・デ・ヨング/黒川良一/De De Mouse
入場料:前売り4500円、当日5000円
4 コメント
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25日参加しました。
とても魅力的な楽器。
あくまでも楽器として愛され続けて欲しいという強い岩井俊雄さんの思いを聞いてとても感銘を受けました。
Posted by: cococoaki @ 5月6日2008年
[...] | DESIGN | ヤマハ株式会社 [Link] TENORI-ON開発日誌 [Link] PingMag TENORI-ON:音の光 [Link] 岩井俊雄 – Wikipedia [Link] いわいさんちweb [Link] [...]
Posted by: 物語を届けるしごと | yousakana blog - TENORI-ON | DESIGN – 岩井敏雄 × ヤマハ株式会社 @ 3月8日2011年
わくわくするアイデアですね
パーツを組みかえて、オリジナルデザインがつくれたらもっとワクワクできるな~
Posted by: 山本 @ 3月22日2011年
TENORI-ON:音の光 good post1321
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年