
世界で最も著名な建築家の一人、ル・コルビュジエの生まれたスイスのラ・ショードフォンは愛犬家の多い小さな街。2,000匹もの犬が飼われているこの街では、1日になんと600キロもの犬のフンが輩出されると考えられている…。そこで、街に散らばる犬のフンを少しでも無くそうと、今年はじめから行政とアートスクールによる「街中の犬のフン撲滅プロジェクト」が始まった。アイディアを提供したのは、市内のグラフィック科の生徒達。今日は、アートワークとも言えるこのプロジェクトについて、見事アイディアが採用されたEAA-CIFOMの学生、ローラン・アレマンさん本人と講師のクリスチャン・ゴッツさん、行政広報のレミー・ゴニャさんの3人にお話を伺ってきた。
作:関根葉月
まず、どのような理由でこのプロジェクトが始まったのでしょう?
レミー:ラ・ショードフォンの人口は約37,000人であるのに対し、2,000匹もの犬が飼われています。つまり、中型犬が出す1日のフンが300gだと言われていることから、街全体で計算すると一日600kgものフンが出ることになります。そこで行政側がアートスクールに何か良いアイデアがないかと持ちかけ、学校側は生徒に対しコンクールという方法でアイデアを募集したのがこのプロジェクトの始まりでした。

コンクールではどのような条件が提示されたのですか?
クリスチャン:まず、「フライヤーやブック等の印刷物での提出であること」「ゴミ箱、ゴミ袋のデザインも含まれていること」「犬の侵入可能ゾーン、リードにつないでいれば侵入可能ゾーン、進入禁止ゾーンの3つのゾーンを飼い主にわかりやすく伝えること」という3つの条件が提示され、グラフィックデザイン科の生徒10名からの応募がありました。中には、標識のようなパネルのデザインや、グラフィティのように道路上にサインを残すというアイデアもありましたよ。
では、その中からなぜこのオブジェの案が選ばれたのでしょうか?
クリスチャン:学校関係者や教師、行政という幅広い専門の人々が審査に関わったのですが、オリジナリティがあり、グラフィック的にシンプルだったこと、また「犬のフン」という難しいテーマに連想しにくいピンクを使ったことは大きなポイントになりました。それに犬のオブジェという立体的なサインがユニークで、他のアイデアと大きく異なったことだと思います。

美しいスイスの街の景観を損なうことなく佇む犬のオブジェ。

ピンクが目印!お散歩中の犬のフンは、こちらの専用ゴミ箱へ。

ではローランさん、アイディアを考えつくまでに何か苦労されたことはありましたか?
ローラン:「犬のフン」というテーマをどのように表現するか、また、若者からお年寄りまで幅広い年齢層に理解してもらうようなグラフィックにしなければならないという点が難しかったですね。そこでシンプルなロゴとポップな色使いでメッセージを伝えようというアイディアを思いついたんです。結果的には、エンターテイメント性が高いプロジェクトになったと思っています。
レミー:当初、緑(犬の侵入可能、但し要フンの処理ゾーン)赤(進入禁止ゾーン)オレンジ(リードをつけていれば侵入可能、但し要フンの処理ゾーン)という3つのサインを考えてもらったんですが、実際オブジェを設置していくうち、緑と赤のゾーン以外はオレンジになるので、設置しないことになりました。このように少しずつ内容を改善しながら、今もプロジェクトは進んでいます。


周りの反応や実際の効果はいかがですか?
レミー:このようなプロジェクトはすぐに効果がでるものではありませんし、一度に沢山のオブジェを設置することは困難なので、今は可能な場所から少しずつ設置しています。今年から犬のフンの放置に対して最大500スイスフラン(5万円相当)の罰金を課すことになりました。ですが、このプロジェクトを通して飼い主にもっと責任感を持ってもらえたら、罰金を払う人はいなくなると思うんです。現在、飼い主に対してプロジェクトのパンフレットを郵送しています。
今後は、どのようになることを期待しますか?
レミー:やはり少しでも街がきれいになることですね。ビジュアル的にも街の雰囲気が良くなることを考えてこのプロジェクトをアートスクールに依頼したので、生徒達の制作意欲につながれば、行政としては非常に嬉しいことです。また、スイスの他の街にも利用できないか今後検討していくつもりです。

アートスクール講師のクリスチャン・ゴッツさん(左)と生徒のローラン・アレマンさん(右)。

行政広報のレミー・ゴニャさん。
近い将来、犬のフンが全くない美しいラ・ショードフォンになることを期待しています。今日は皆さん、ありがとうございました!私達も責任感のある飼い主になるよう努力します!
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