
北京オリンピックが近づき、イギリスで中国美術展が開催されている昨今、ほんの10年か20年前まで政治広報以外のグラフィック・デザインやイラストレーションが実質的に存在しなかった国で、今何が起こっているのかを疑問に思ったことはないだろうか。そしてさらに重要なのが、20代から30代の注目の若手による作品を目にするにはどうすればいいのかということ。これまで、若手はどこかのギャラリーの目に留まることを期待して、ひっそりとネット上のブログに掲載することがほとんどだった。しかし昨年お伝えした素晴らしい写真集、「ニュー・フォトグラフィー・イン・チャイナ」に続いて、3030プレスがまたまた届けてくれた新しい愛の賜物が、この「ニュー・グラフィック・デザイン・イン・チャイナ」。香港を拠点とするミルクシェイクの編集者ジャビン・モが、皆さんのタイポグラフィ的な楽しみを満たすために、30歳前後の中国人グラフィック・デザイナー30人を集めたデザイン集だ。PingMagではそんなジャビンさんにお話をうかがった。
作:ベレーナ
訳:山根夏美

昨今の中国では、Flickrやソーシャル・ネットワーキング・サイトを使って自分の作品の写真を公開する若い人がますます増加しているようですが、中国の人々はどうやって有望なグラフィック・デザイナーの情報を得ているのでしょうか?つまり、ジャビンさんはどうやってこの本で紹介されているような素晴らしいデザイナーたちを見つけて来られたのですか?
まず北京には人気のあるアート&デザイン・マガジンがありますし、広州の「デザイン360º」という雑誌もあります。アート&デザインの編集者の一人に知り合いがいるのですが、若手の何人かは彼女が推薦してくれました。 例えば、この本で紹介した、バウルミュージックというレコード・レーベルをやっている広州出身のアーティスト、バイ・ガンガンは20代半ばの音楽プロデューサーで、中国のアンダーグラウンドな音楽シーンで精力的に活動している若手の一人です。

シンプルでいてエレガントなCDパッケージは…

…デザイナー兼プロデューサー、バイ・ガンガンがバウルミュージックのために制作したもの。バイ・ガンガンのホームページより。

…そちらについてももっと詳しく知りたいですね!グラフィックやイラストレーションという面における中国の主要都市はどこなのでしょうか?
香港でのグラフィック・デザインの歴史は1970年代に始まったばかりです。中国本土では、それも長くて10年から15年というところですが、ここ7年ほどはこういった20代の人々による興味深いプロジェクトをネット上でたくさん見かけるようになりました。上海や北京のような都市では、現代美術はかなりクレイジーなことになっているので、それなりの自由がありますね。この二つの都市のアートシーンは、グラフィック・デザインにも本当に素晴らしい空気を提供してくれていると思います。ここの若者は、自分たちのイラストレーションを載せる雑誌や、特にアートや文科系のプロダクト・デザインで共同制作に当たれるような、頭の柔らかいクライアントを見つけることもできているようです。ですが香港はかなり商業的なので、話はまったく別ですね。こちらのアート界は、現時点では中国のものほど大きくはないので、多くのデザイナーがアートや文化的なことだけをやって食べていくわけにはいかないのが現状です…。

…それは香港の経済史にも関係しているのですよね。ちなみにウェンディ・シュウィ・ウォンの論文、「分離と統一:中国におけるグラフィック・デザイン」(全文を読むにはこちら)によると、1960年代の香港には独自のグラフィック・デザイン運動があったそうですね。その後、アメリカの企業が多く入ってきてデザイナーに影響を与えた結果、異文化的なデザインの土壌が生まれたようですが、香港はきっと今でも本土とは大分違うのでしょうね…。
デザインの歴史はすでに拡張していますから、香港の「グラフィック・デザインの黄金時代」は80年代か90年代の始めだったと言えるでしょう。当時、多くの若い人が自分の会社を設立して国際的なレベルにまで拡大していましたが、1997年の不況以降、業界全体が痛手を被りました。その結果、大勢の人が目的を商業デザインに切り替えていったのです。
なるほど。現在の香港には、アーティストが自分のグラフィック作品を展示できる、非営利的な空間も存在しているのでしょうか?
どちらかというと、むしろオークション会場のようなギャラリーがたくさんあります。ですが、中には私が今携わっている「マイクロウェーブ」という新しいメディア・アート・フェスティバルのように、興味深い動きもありますよ。これは若い人たちが集まって主催しているもので、今は地元のアーティストとイギリスのUVAのコラボレーションによる「アート・ローカル」という展示会が開催されています。

ユナイテッド・ビジュアル・アーティスツですか!ところで、「ニュー・グラフィック・デザイン・イン・チャイナ」をざっと見るかぎり、中国らしさと言えるような特徴的なスタイルは見あたらないのですが、グラフィック学校による傾向のようなものはないのでしょうか?
まず、中国では好景気以降のデザイン科の学生について、非常に興味深い統計があります。デザインを勉強する学生の数はなんと20から30倍で、その数は今でも増加しています。ですがその全員が雇用されることを考えると、それ自体はあまり健全なことではないでしょうね。私としては、例えば北京の中央美術学院なんかは、他の学校とはかなり違ったグラフィック・デザインのスタイルがあると思います。

リュ・ヨンの「サン・へ/イラストレーション」。(画像提供:LY_Dデザイン・スタジオ&3030プレス)

同じくリュ・ヨンの「ア・ハンドレッド・フラワーズ・ブロッサミング、ア・ハンドレッド・ビューポインツ・コンテンディング」のポスター。(画像提供:LY_Dデザイン・スタジオ&3030プレス)
それは他とどう違うのでしょうか?
中央美術学院は美術が有名で、グラフィック・デザインの学位は7年前に始まったばかりです。それ以降、ここではプロダクト・デザインやウェブ、ニュー・メディアといった様々なクラスが開設されています。私もここの卒業展示のカタログを2、3回見ましたが、概念的思考という意味においては、ここの学生は他の学校と比べてよくやっていると思いました。

新しい外観を与えられた、中国の伝統的な製本。メーウェ・デザイン・アライアンスの書籍「N12 NO.4」。(写真提供:MEWE&3030プレス)
では、今もっとも注目されている若手の卒業生についても教えてください!
例えばメーウェ・デザイン・アライアンスですが、彼らは私とほぼ同じ歳の、大変に仲の良い3人組です。ブック・デザイン、出版、それに編集のコンセプトに特化していて、選ぶ素材や紙、印刷効果などで、中国の人間だとすぐにわかるような仕事をしています…。
それはどういう意味なのでしょうか…。
「ヘーロンギラン・ボックス - キュウ・ジャオフェイ」を例に挙げると、この箱は中国や香港では本当に昔ながらのもので、北京の古い書店などに行くと、お客さんに請求書や領収書を書いて渡すためのこういった請求書箱や領収書箱を売っているんです。こういう中国の領収書用の製本は基本的に規格化されていて、冊子は中国人が野菜や魚を包むようなポスター紙でできています。メーウェが興味を持っているのはこういう伝統で、彼らはそういったものに現代的な感性を加えているんです。

その他に、中国のどのような伝統が現代のイラストレーションやデザインに影響を及ぼしていると思われますか?
色々なものが入り混じっていると思いますよ。例えば私たちのブックカバーは、私が去年出会ったリー・ジンルというグラフィックとモーション・デザイナーの作品です。実は、彼女は自作のアニメーションに出てくる「ライトニング・ベイブス」と同じ髪型をしているんですよ!彼女の格好自体が、本当にシンプルな線と明るい色を使った昔ながらのイラストレーションみたいです。また、大勢の若手が西洋と特に日本に影響を受けていると思います。

文字をアートにしたかっこいいデザイン。ジャン・ホワの「ラーン・トゥー・デザイン」のポスター。(写真提供:Jiang Hua&3030プレス)
影響に関しては、上海が当時非常に国際的な都市だったこともあって、1920年代と1930年代にはグラフィック・デザインの中心地だったと聞きました。その後、50年代と60年代、そして文化大革命中は、ご存知のように政治広報以外の商業的なグラフィック・デザインは存在しませんでした。アマゾンで検索してみると、中国のグラフィック・デザインに関する本は1990年に発行された1冊しかなくてびっくりしたのですが、70年代と80年代に、人々はどうやって最初からやり直していったのでしょうか…。
繰り返しになりますが、本当に10年くらいの歴史しかないんです!1970年代後半から1980年代に生まれた若い世代は、私も含めて、西洋の影響を強く受けています。ですが以前は輸入もののデザイン本も一切ありませんでした。深セン市のデザイナーの一人は、あちらにもグラフィック・デザイナーの強力なコミュニティがあるけれど、みんな英語が読めないので、海外の雑誌を入手するたびに翻訳会社に中国語に翻訳してもらって、それを知り合いのデザイナーに配布していると言っていました。

雑誌というと、日本の「アイデア」とか?
いえ、中国版も発行されているイタリアの「ドゥオモ」とか、オランダのインテリア雑誌「フレーム」にも中国語版があると聞きました。
中国のデザイン関連のブログでおすすめのものを教えてください。

リー・ジンルが手がけた表紙。(写真提供:Li Xinlu&3030プレス)
南部の深セン市のもので、工業デザインも含めデザイン系の大きな出来事に焦点を当てた「ad110.com」というサイトは、ロゴデザインの批評や様々なデザイン関連のニュースを採り上げています。北部なら「chinavisual.com」ですね。ブログはたくさんありますが、この2つが一番大きなもので、デザイン学校でも結構評判が良いようです。それから、もちろん「ゲット・イット・ラウダー」も忘れてはいけませんね。香港には大きなコミュニティのウェブサイトがないのが残念です…。
どれも面白そうですね!ミルクシェイクのジャビン・モさん、今日は素晴らしいデザイン集「ニュー・グラフィック・デザイン・イン・チャイナ」についてのお話をありがとうございました!
17 コメント
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つまんね
Posted by: 匿名 @ 4月16日2008年
おもしろい!
ただし、毎度の事ながらベレーナの切り口が甘い
!(彼女はいつもレポートを陳腐化させている)
経済だけでなくアートの世界でも発展著しい中国アートについて、もっと特集を組んで欲しい
Posted by: Yako @ 4月28日2008年
right usa minor key go tree head green go trust
Posted by: redenglandse @ 10月15日2008年
vacant see car day juicy look boy
Posted by: allgermankey @ 10月15日2008年
非常に良い写真
拝啓。
Posted by: { j.R imagen gráfica } @ 12月29日2009年
Building a new set of programs that may be of value to you.
Posted by: Modivational Intervention @ 6月11日2011年
~ If we could see the miracle of a single flower clearly, our whole life would change. ~
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