
ベルリンを拠点とするP van b(ピー・ヴァン・ビー)が誇るのは、ドイツ人のアンドレア・ポースニッカーとエリック・ヴァン・ブーレンがハンドプリントした風雅な壁紙。間近で見ると、その複雑なパターンは時に予想よりも遥かに多くのものを語りかけていることが分かる。本日のPingMagでは、P van bのデザインの背景にあるものや、どうやって量産を開始した今でもその手作りの風合いを残しているのかについて、エリック・ヴァン・ブーレンさんに語っていただいた。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

「ポンプ」シリーズより、「ダッチ・ポンプ」のクローズアップ…。© Andrea Pößnicker

…洒落者の生活を描写したというバロック調のパターン…。© Andrea Pößnicker
まずはお二人のポンプ(壮麗)シリーズの素晴らしいバロック模様とエレガントなビーズ装飾についておうかがいしますが、このシリーズを作られたきっかけは何だったのでしょうか?
ポンプシリーズは、壁に貼るエロティシズムがコンセプトでした。そもそもの始まりはアンドレアが最初にこの会社を設立したドイツのハンブルグでのことで、90年代の当時、歓楽街であるザンクトパウリ地区の多くの娼館が廃業して、ワシントンバー、ガンクラブ、テンペルホーフなどのクラブに改装されていました。そういった建物の個室にはどれもすばらしく大仰な、暗い感じの壁紙が貼られていて、アンドレアは自身のコレクションでそういった雰囲気を復活させようとしていたのです。このシリーズの3つのバリエーションにはそれぞれのストーリーがあって、ダッチ・ポンプは快楽主義的な生活を送り、何人もの女性と関係する洒落者をテーマにしています。それからビーズ細工のような模様のレディ・ライトは、滅多に手に入れることのできない最高の女性、そしてプリティ・リッチは近寄りがたい気品と物腰をイメージしていて、喩えるなら3種類の淑やかな触手を融合させたような模様が特徴です。

シルクスクリーン印刷はすべてご自分で手がけていらっしゃるのでしょうか?
作品はベルリンにあるアトリエで、私たちが手ずからプリントして作っているものです。そのために、私たちはクライアントの需要により速やかに応えられる、独自のシルクスクリーン印刷の技法も開発しました。ですがポンプの作業をしていた時は、一時印刷の仕事が追いつかなくなってしまって、ベルギーの有名な壁紙メーカーのアルテに頼りました。アンドレアが昔からアルテと共同で仕事をしていたこともあって、このシリーズを量産してはもらえないだろうかとお願いしたのです。アルテなら、量産してもハンドプリントの風合いを残すことができたので。このシリーズの3つの基本的なパターンには、ハンドプリントの特徴ともいえる密度の高い、メタリックな顔料が多く含まれていて、それによって最高に美しく、ダークな壁紙が生まれるのですが、これが印刷機の限界に迫るものでした。そのために私たちは商品のライセンス契約を結び、それ以来世界中に流通できるようになりました。

「ダッチ・ポンプ」柄のTシャツ。(写真:Stephan Goettlicher)© Andrea Pößnicker

同じ柄があちこちに散乱するP van bのベルリンのスタジオ。© Andrea Pößnicker
本当に独特の味がありますね、それなのに量産とは。ハンドプリントは、きっとかなりの手間がかかるのでしょうね…。
例を挙げると、トラッシュ・ユア・ハウスシリーズでは、それぞれの壁紙に毎回異なる配置の3色3種類3層のシルクスクリーン印刷が施されています。

「トラッシュ・ユア・ハウス」。戯れ的に装飾として解体されるタイポグラフィには…© Andrea Pößnicker

…なんと意図的にミスを含む色校正が使われている。バリエーション、「トゥルー・グレース」。© Andrea Pößnicker
ああ、それがこの立体的な感じを出しているのですね!私たちも2年くらい前にこのシリーズを見て、特にタイポグラフィを華麗な装飾にしているところに心を奪われました。ちょっとサイケデリックな感じすらありますね!このモチーフはどうやって作られたのでしょうか?
こちらはすべてグラフィック・パターンをベースに作られています。このアイディアは私たちが開業した頃のもので、実はその当時はまだ色校正にいっぱいミスが残っていることが多くて、そのことで本当にたくさんの苦情があったんです。それでアンドレアは開き直って更にミスを増やそうと言って、古いシリーズのマスターパターンを選び、以前よりも更にひどい質のプリントを作って、トラッシュ・ユア・ハウス(家をメチャクチャにする)と改名したのがこのパターンです。信じられないことに、これがかなり受けました!4年か5年以上もの間、かなり人気のシリーズでした。

P van bの芸術的壁紙が店内を彩るレストラン。© Andrea Pößnicker
お二人のパノラマ・ピンアップシリーズにはどういったメッセージがあるのでしょうか?見たところ、フラットスクリーン反対、豊穣、そして繁栄の増進といったフレーズが記されていますが…。
これは人々があまりにも多くの時間をフラットスクリーンやテレビの前で気を取られていて、外に出て、創造し、子供を設けるといった本来の人生のあり方に向き合っていないという問題を提議するものです。モチーフとなっているのはピンアップで、アンドレアは80年代の雑誌「プレイボーイ」に掲載されているプレイメイトからインスピレーションを得ていました。当時のメディアの女性の描写は、現代の性別を感じさせない、ガリガリで母性や子供の欠如したモデルと比べて、もっとずっと肉感的で女性的でした。パノラマ・ピンアップは青々とした木々と肥沃な大地を、人がどこから生まれたのかを思い出させる象徴として描き出しています。これは沈思を求める呼びかけ、自由であるために自分の食物は自分で育むようにという呼びかけなのです。だからフラットスクリーン反対なんですよ。人はメディアに唆されるものですから…。


まさに緑豊かなリビングのためのモチーフですね!お二人は他にもホテルやレストランの内装も多く手がけていらっしゃると聞きましたが…。
そうですね、ドイツのある織物業者と共同で手がけたホテルの内装のプロジェクトや、南ドイツの大手デパートチェーンであるブロイニンガーの階層の装飾も私たちの仕事です。ですがベルリンのクラブ・ソーラー、ベルリンを拠点に展開しているランジェリー・ブランド、ブラッシュ、ベルリンの靴デザイナー、リカルド・カスティリオーネなんかも私たちの仕事です。国際的な方面では、オーストラリアのKookai、そしてアメリカのドルチェヴィータの内装なども私たちが手がけています。

マーク・リースの個展に使われる壁紙のモチーフと…© Andrea Pößnicker

…それに覆われたレプリカの貯蔵庫。(写真:Stephan Goettlicher)
ちなみに、お二人のシェッド・ライトという壁紙のプロジェクト、あれはどういったものなのでしょうか?私が見たのは、どこかの山の中に佇む、緑の葉っぱのような模様で覆われた貯蔵庫だったのですが…。
あれは2005年にカーディフで個展を開いたウェールズ人アーティスト、マーク・リースのための一時的なプロジェクトでした。個展の主題は「人前での同性愛」で、そのためにベルリン在住の建築家、ベネディクト・アンダーソンが、リースが初めて性的な体験を持った貯蔵庫を模したもの作りました。ですが、カーディフではそういった公共空間は当局によって比較的速やかに閉鎖されて、建物がすぐに生い茂る蔦の葉に覆われてしまうことから、私たちはこの貯蔵庫用に同性愛的なモチーフの蔦柄を作ることを思いついたんです。この模様をよく見ると、同性愛的なシーンが所々に見えるでしょう…。

それは興味深いアイディアですね!私は見つけるのに結構時間がかかってしまいました…。最後に、今後私たちを魅了するであろう新しいモチーフについて聞かせてください。
実は先日ソウル・デザイン・フェスティバルで新作の泡壁紙ブリックスを展示したばかりで、これは泡を剥がしたり、絵を描いたりして自分でカスタマイズできるので結構な人気でした。来場した人たちは、大はしゃぎで自分たちの名前をそこら中に落書きをしていて、しかもそれを写真に撮らずにはいられないようでしたよ!あと、ピンク色がかなり受けていました!

それは素敵ですね!私たちのオフィスにも是非こんな壁紙が欲しいものです!P van bのエリックさん、ありがとうございました!
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kire——-!
Posted by: cococoaki @ 4月10日2008年