福井利佐:自分自身を写し出す鏡

2008年4月2日 カテゴリー: イベント/展示会, グラフィック, 国内, 民芸・工芸

福井利佐:自分自身を写し出す鏡

切り絵アーティスト・福井利佐さんの画集「KI RI GA」の表紙を飾る同名の作品「KI RI GA」。©2007 risa fukui/phil

紙に描かれた細かな線を、ひとつずつ丁寧に切り抜いてゆく「切り絵」。日本だけでなく、中国でも昔から親しまれているこの技法に、モダンなテイストを混ぜ合わせ、人々を魅了するアーティストがいる。今日は、切り絵アーティスト・福井利佐さんに会いに、現在個展が開催されている浅草のギャラリーエフへと足を運んだ。

作:チエミ

福井さんは中学生の時に切り絵クラブに所属されていて、大学ではグラフィック科を専攻されたそうですが、なぜまた切り絵を始められることになったのですか?

中学生の時は将来切り絵をやろうとは思っていなかったんです。ただ、絵が好きだったので美大のグラフィック科に進んだのですが、在学中、自分なりの表現を見つけなければない時に悩んだことがありました。その時、トーナルカラー(色紙)を使った構成や、顔を分割するという授業があり、また切り絵を始めるようになったんです。

グラフィック的な要素も強い今の作風は、その時の影響でしょうか?

そうですね。伝統工芸というよりは、グラフィック的な要素として切り絵を認識していましたし、グラフィックを原点にしていたからこそ、色々なことにチャレンジしながら進んで来られたのかもしれないですね。

「ユメ十夜 第4話」©2007 risa fukui/phil

「ブラックジャック」©2007 risa fukui/phil

「かみをきる ー シェットランド・シープドッグ」©2006 risa fukui/phil

動物や人の顔をモチーフにした作品が多いですが、それはなぜでしょう?

切り絵は下絵が良くなければ成り立たないんですが、静物や無機質なものより、生命力を感じる人や動物などの方が描く意欲を駆り立ててくれるんです。下絵を作る時、立体表現のために沢山の線を描くんですが、有機的なものはその線の書き方や組み合わせ方次第で個性が出て来るんですよ。

個人的識別「眼鏡」。顔を埋め尽くす、細かな線の数々。©1999 risa fukui/phil

中学生で金剛力士像の作品を作られたと伺いましたが、そういう感覚は昔からお持ちだったみたいですね。

その時は筋肉とかが有機的でカッコイイと思ったんですよね。立っている力士像にメラメラと炎を背負わせたりもしていました(笑)。

才能を感じさせる中学生時代ですね(笑)。

基本的に変わっていないのかもしれません(笑)。中学2年の時にとうもろこしの切り絵を作って文集の表紙になったことがあったんですが、その時も毛のフサフサした部分を切るのがすごく楽しかったのを覚えています。細かい作業が大好きで、終わりがあればずっと切っていられました。

「月触姫のキス」©2006 risa fukui/phil

1枚の作品に、どれだけの手間や時間がかかりますか?

大きさや絵柄によって異なりますが、作業的には1、2週間です。切り始めると直せないので下地の構成に時間がかかりますし、色付けではステンドグラスのように色紙を貼ってゆくので大変ですね。

切り抜く作業で失敗されることは?

集中するので失敗することはほとんどないです。

「バハマチドリ」©2007 risa fukui/phil

今回の個展では、スタジオ4℃との共作の映像作品「たらちね」も上映されていますね。どのようなストーリーなのでしょう?

最初に与えられたテーマが「女の切腹」だったんです。不思議な力がある母親と、盲目だけれど五感が優れた子供が主人公で、子供は途中で目が見えるようになるんですが、代わりにまた別のものを失ってしまう。それが、自分の母親なんです。でも、母親は神からのメッセージを伝える役目を担うために切腹をするので、それは決して悲しい別れではない、というお話です。女性にとってのお腹という場所は命の継承をする部位として「切腹」を考えていきました。

制作には170枚の切り絵を使われたそうですが、色々と苦労されたのではないでしょうか?

切り絵を使った映像は昔からありますが、今ならCGを使って面白く出来るかなと簡単に考えていました。しかし実際に試作品を作った時、切り絵の良さが失われて本当のアニメみたいになってしまったんです。そこで、白黒の原画の色や線の美しさを見せるようにしたり、色付けに工夫してみたりと、スタッフの方達と試行錯誤して制作していきました。


スタジオ4℃で「たらちね」用の作品を切る福井さん。

こちらが切られた紙。細かい!拡大写真はこちらから。

映像作品「たらちね」で使用された切り絵。

同じく「たらちね」で使用された切り絵。

完成品を見てどうですか?

映像制作には長い時間が必要なので、完成できるか心配でしたが、今は我が子のように「生み出した!」という感じです(笑)。

今回の展示はその映像以外に、作品集「KI RI GA」の原画も展示されていますね。

前回の4年前の個展以降に作った作品で、まだ展示できていなかったものです。今回はいつもの平面的な見せ方より、両側から見えたり、影の美しさも見せる立体的な展示を意識しながら、土蔵という力強い空間を活かす展示に挑戦しました。

展示作品の一部。立体的に見せることで、影の美しさも楽しむことができる。

ギャラリー・エフでの展示の様子。

では最後に、切り絵の魅力を教えて頂けますか?

私を魅了し続けるもの。私にとって切り絵は私自身なんです。

今日は福井さんの美しい作品に本当に心を打たれました。ありがとうございました!


福井利佐さん。©phil

【お知らせ】現在、都内で開催中の福井利佐さんの個展「KI RI GA」の札幌巡回が決定!北海道の皆さんもお見逃しなく!

福井利佐展「KI RI GA」
会期:〜2008年4月13日(日)
会場:ギャラリー・エフ(浅草)

会期:5月11日(日)〜24日(土)月曜定休
会場:HOKUSEN GALLERY
ivory」(札幌)

7 コメント

  1. 煮詰まってPingに久しぶりに遊びに来ました。そしたらいきなりメガ級の衝撃!
    なんて美しい作品を美しい方がつくってるのでしょう。。。いや、初めて出会う”美”でした。

    いいなぁ、いいなぁ。うん、うん。
    englishのコメント方で”Organic”という表現がありましたが、なるほど!と感じました。
    ぜひ実物を見に行きますね

    Posted by: YO-C0 @ 4月2日2008年

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