
現実の世界にデジタルの世界を融合させることで知られているオランダのメディアマティックセンターは半月ほど前にも、形のある玩具にデジタル、もしくはネットワーク要素を組み込んだハイブリッド玩具のワークショップを開催している。わかりやすく言えば、RFIDやGPSなどの発信装置をいじくりまわして、それをお気に入りのテディベアの中に詰め込むようなものだろうか。だがそれをどうやって作るのか、そしてそういった玩具で遊ぶことによって私たちが得るものとは一体何なのか。インタラクション・デザイナーのダナ・ゴードンさんとジャン=バティスト・ラブリューネさんに、Wiiリモコン(!)、RFIDタグ数個、そしてコンピュータのパーツである「アルドゥイーノ基板」を使って、どういったことができるのかを教えていただいた…。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

最初に「ハイブリッド玩具」とは何なのか教えてください。また、このワークショップではどのようなことをされるのでしょうか?
まず、私たちはハイブリッド玩具についていくつかの問題を提起することでこのワークショップを始めました。そのテクノロジーは本当に必要なのか?玩具とガジェットの違いは?本当の意味で新しい種類の「遊び」を作り出せるのか、それとも既存の体験の延長線上に留まるだけなのか?そして新しいテクノロジーによって得ようとしているものの付加価値とは一体何なのか。
その後、参加者はそれぞれのおもちゃの価値とコンセプトを定義すべく、グループに分かれて行動したのですが、その結果には本当に驚かされました。様々な経歴の人々の組み合わせと、そこから生まれたテクノロジーの新しい可能性の数々がコンセプトの複雑化に繋がったのです。加えて、技術的な予備知識や経験を持っていない参加者も多かったので、既存の技術では試作できないような、非常に興味深いアイディアも生まれました。私たちのその後の目標は、そういった案を論理的なアイディアに簡略化することでした。
その時に作られたというRFID内蔵のビロードの亀の玩具を拝見しましたが、こちらの制作過程についても教えていただけますか?
エフゲニヤ・パシュキナ、ジェニー・テェ・ホーストとスービー・トゥーリー・ユンテラの3人が「Kiitos(キイトズ)」と命名したプロジェクトですね。このグループは、友人と共有して特定の情報を交換することによって変化する、動的な玩具に興味を示していました。それぞれの小さな生き物(こどもキイト)は、友人の感情の状態を暗号化した秘密のメッセージを持っています。ビロード張りの大きな生物(お母さんキイト)にはRFIDリーダとアルドゥイーノ基板、実験用回路板にLEDを付けたライトによるコミュニケーション用の小さな回路が内蔵されており、子供のキイトズにはそれぞれにRFIDタグが設置されています。



なるほど、それでその全体的な機能は?
友人のキイトをお母さんキイトの近くに置くと、その友人の気分がライトの色の変化で表現されます。このプロジェクトは、こうして従来のビロードの玩具とより大きな社会体系とを結び付けました。友人同士は、こうして暗号化されたライトのメッセージを使って隠している気持ちを伝え合うことができます。そしてこの体験は、現実世界の社交的な集いに依存しているのです。お母さんキイトに設置されたRFIDリーダによって、こどもキイトとその現在の気分を読み取れるようになるのです。


なるほど、ライトを通じて気分を表すのですね。では先程のビロード製の鉢植えは?(一番上の写真参照)音を出すものでしょうか…?
ミュージカル・フラワーポットプロジェクトは、アイヤン・シャペニセ、アルン・オーウェン、ニナ・セレブレニックとノーム・ノラーの作品です。彼らは音を作るという遊びの体験を実現すべく、興味深いインタラクティブ・システムに挑みました。音で遊ぶことによってインタラクションの目に見える要素に焦点を絞った、すばらしい音作りのツールです。
この作品のプロトタイプには、RFIDリーダ(植木鉢に設置)とRFIDタグ(花の中に設置)、ハッキングしたWiiリモコン、そしてサウンド・サンプルの操作にESSというサウンド・ライブラリを使用したプロセシングソフトウェアを使用しています。
Wiiリモコン?この可愛いお花がWiiリモコンで何をするのでしょうか?
それぞれの花がその色によって違う音程を持っていて、植木鉢は一つずつ違う種類の音を出し、一際大きな花がその揺れ方によってテンポをコントロールしています。そしてこの2つの植木鉢に花を足すことによって、様々な音を追加することができるようになっています。そうしたら、今度は大きな花をどう動かすかによって、全体の音の構成が操作できます。花を植木鉢から取り出すことによって特定の音を取り除けますから、音程やビートを常に変化させることができます。しかも、音の操作はすべて花をいじることでできるのです。
これはすごい!この他にもどのような部品や技術がハイブリッド玩具やウェアラブル(身に着けられるもの全般)に活用できるのでしょうか。例えばGPSとか…?
GPSやMP3プレーヤー、Bluetooth機器などの身近な装置は簡単に玩具やウェアラブルなアイテムと融合させることができます。私たちのプロジェクトの一つであるソーシャル・バイブレーションは、無線通信を使ってウェブ2.0型コミュニティを現実の世界に実現しようというものです。これは同じコミュニティのメンバー同士でシグナルを送ることによって、シャツが振動して近くにメンバーがいることを知らせるものです。振動はごく微細なもので、着用者は社交的なゲームにあえて乗ってみることもできれば、プライバシーを守って無視することもできるのです。

ウェアラブル機器のほうが制限は厳しくて、特に電源の問題と、様々な環境においてモバイル且つアクティブでなければならないという点が挙げられます。ですから太陽や運動エネルギー、そしてジグビーのような消費電力の少ない通信規格が、これからのウェアラブルにとって有用だと考えられています。加えて、ツェルツやフレック・トロンのような導電性織物、もしくは導電性布も玩具やウェアラブルにとって有望な技術の一つと見なされています。こちらは通常は導電糸という銀や銅でコーティングしたワイヤーの状態で販売されています。

無限の可能性…。しかし、それをどのようにして日常生活で活かせるのでしょうか…。オープンソースのアルドゥイーノ基板の中でも、例えば「リリィーパッド・アルドゥイーノ」を使うと、どういったことができるのかを説明していただけますか?
アルドゥイーノは色々な試作基板から構築されているシステムで、電子的なアイディアを高速で書き出したり、各種の機能デバイスを作ることができます。コンピュータから独立したスタンドアロンのプロトタイプを作れるのはこれのおかげです。アルドゥイーノ基板にプログラムしたあるコードがセンサーのデータを読み取って、コンピュータに頼ることなくモーターやLEDなどの作動装置を制御します。
リア・ブィッフィリーが開発したリリィパッド・アルドゥイーノは、金属とプラスチック部分を布やレーザー切断された導電糸などのやわらかい素材で代用した布版のアルドゥイーノです。これを使えば基板を手軽に衣服に縫い付けて、柔軟性や、場合によっては洗うなどの布製品の性質を活かすことができます。またリリィパッド・アルドゥイーノは2.7ボルトの低電力で動くので、3ボルト電池1個で動力を供給するウェアラブル・アプリケーションには最適です。

ジャン=バティストさんに質問ですが、あなたは「子供とクリエイティブ技術:派生的現象について」と題された卒論で、子供の遊びとその創造プロセスについて研究されたと伺いました。この研究を通して、ジャン=バティストさんは接触性の子供用のビデオカメラ「タンジカム」や10歳から14歳の子供と開発した、送信機によって仲間と繋がることができる指輪やアクセサリー型の「テレビーズ」、それにカメラのタッチスクリーンを使って、スケッチすることによって写真を撮ることができる「スケッチカム」など、いくつもの技術的な玩具を開発していらっしゃいますよね。これについてもう少し詳しく教えてください。
子供というのは、色々なものやその目的に関連性を持たせるのが本当に上手なんです。楽しく遊ぶことによって、子供はこういった新しい関連性の集合体を実現し、それを遊び友達と分かち合いながら、形のあるイメージを作り出します。テクノロジーという意味において言えば、私は子供たちの視点からこの現象を観察すべく、まず彼らの体験に注目しました。そして子供たちを若き民族誌学者にするためには、彼らと一緒に新しい観察道具を開発しなければならなかったのです。

それで私は子供たちがいかに独創的に、接触型インターフェースや拡張現実テクノロジーといったインタラクティブ技術に手を加えるのかを研究して、いかに子供たちが常にデジタル製品をハックしたり、物理的なものを変形させるかに驚かされました。子供にあることをするための物体を渡すと、彼らはそれに別のことをさせようとするか、違う目的に使おうとするか、その物体が元々目的としていた用途の限界を模索しようとします。子供の遊びというのは、分解もしくは目的を再設定して自分なりの適切な機能を新しく見つけることによって、対象の見方を変化させることなのです。私はこのプロセスをある生物学的機能の副産物として進化した別の機能を表す進化心理学の用語を借りて、イグザプテーション(派生化、副産物化)と呼んでいます。

もう一度そんなふうに遊べたらと思ってしまいますね!私たちの創作過程に関しては、そこからどういったことが学べるのでしょうか?
昨年の夏に、ダナがインタラクション・デザインにおける複数の経路について説明した、創作過程の本質に関する論文をワシントンのクリエイティブ・アンド・コグ二ション・カンファレンスで発表していますが、創作過程とは、いくつもの複雑な層を持つ多次元的なものです。初期段階においては、インタラクション・デザイナーは周囲の環境に存在する既存のものをいじったりハックしたりしますが、この非常に重要な物理的なフェーズがコンセプトと現実を、欲望と抑制を対立させます。しかしながらこういった抑制は同時に、即興や予期せぬ(行き当たりばったりな)好機に繋がるインスピレーションともなりえるかもしれないのです…。

ダナさん、ジャン=バティストさん、今日はありがとうございました!興味のある方は、お二人のワークショップや先日開催されたハイブリッド・ウェアラブルのワークショップについてのレポートもご覧いただけます。
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Posted by: ソフトサーキット系 « じゃらしMASTER @ 5月7日2010年
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Posted by: ソフトサーキット系 « じゃらしMASTER @ 5月7日2010年
ハイブリッド玩具の作り方 good post1306
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年