
スイス文化と日本文化、そこにどんな共通点があるだろう?…それはもちろん、素晴らしいグラフィックデザインだろう!東京をベースとするアレックス・ソンダレッガーとスザンナ・ベアーのスイス人デュオ「so+ba」は、彼らの鋭いスイスの概念的アプローチとタイポグラフィーに関する明確な観点の元、本や雑誌など次々と美しいものを生み出し続けている。多摩美術大学で教鞭もとっている彼らが愛してやまないその仕事場は、小田急線沿線の世田谷区経堂にある以前は蕎麦屋だった建物であるということもまた興味深い…。
作:べレーナ
訳:ジュンコ

雑誌、「cue+」の11号の表紙。穴を通して見てみて!
まず始めに、so+baがどのようにスタートしたのか教えて下さい。
スザンナ:私の夫が、以前ラース・ミューラーによって出版された書籍「ベンジン」のために、アレックスのポートレイトを撮りに新潟に行った時、撮影後に1杯やりに行って凄く良い時間を過ごしたみたいなの。それで、アレックスが東京に来た時、私達の家に立ち寄って…
アレックス:そうそう、それが出会いだった。東京に移った後、僕は小さなデザイン会社に就職したんだけど、そこでの作品の質に全く満足出来なかったんだ。それで、2001年にスザンナと僕はso+baを設立して、クオリティにこだわった概念的なグラフィックデザインを求めていくことに決めたんだよ。
ちょっと気になっているんですけど…どうして、ソバ屋だった建物の2階にスタジオのスペースを…?
スザンナ:それは全くの偶然なの。以前は、かなり長い間我が家で仕事していたのよ。
アレックス:僕がスザンナのところから自宅に帰る途中、この店を見つけて一目惚れしたんだ!かなり古びた建物だったんだけどね。所有者は年配の女性で、彼女はもうこの建物を誰にも貸さないって決めてたから、説得するにはかなりの時間がかかったよ。最終的に、僕らのやりたいようにリフォームしていいっていう契約を取り付けた時は嬉しかったよ。古い畳や壁や押入れを取り除いて、自分達で新しい壁とフローリングを貼った。オーナーのただ一つの条件は、建物の基本構造を変えないことだったからね。
「so+ba」という名前を思いついたのも、そこからですか?
アレックス:実は、名前はこの場所を見つける前から決めてたんだ。単純に、僕らの苗字、ソンダレッガーとベアーの頭文字をとって「ソ+バ」。でも勿論、「ソバ」や「側」なんていう、この言葉の持つ他の意味も好きだからっていうのもあるよ。

このおソバ屋環境は、一種のスパイシーな雰囲気をあなたのオフィスワークに与えますか?
スザンナ:スペースが2つのフロアに分かれてるっていうところが気に入ってるの。2階が仕事場、そして1階は空にしておいて、時々ミーティングに使ったり、ギャラリーやイベントスペースとして利用したり。東京の基準で考えれば、かなり大きなスペースだから!それから、作品の草稿を壁に掛けたり床に並べたりすることができるから、作品に関して話がしやすいのよ。常にコンピュータの前に座っているよりずっといいわ…。

デュオとして活動されてるわけですが、どのように仕事を分担されてるんですか?
アレックス:僕らの仕事は、卓球の試合をしているか、二人のコックが一つの美味しいビジュアル料理を作っているようなもんだよ。たくさん議論や言い合いもするけど、大抵の場合は、プロジェクトが動き始めるとすぐに、二人とも簡単に意見が一致するんだ。ただ、クライアントとのコミュニケーションに関しては二人とも異なった好みがあるけど…。僕は電話で話すのが好きで、スザンナは書く方が好きなんだ。それから、彼女は朝型だけど僕は夜の方が調子いい。


ビクショナリーによる「アマターオブデザイン:イッツ・ア・マター・オブ・イラストレーション PB」の為の刺激的なイラストレーション。
ナイス・チームワーク!so+baのスタイルについて、ご自身で表現するとしたら?
アレックス:まず、とにかく僕らは二人ともスイス・デザインの教育が根底にあるってこと。ミューラー=ブロックマンやハンス・ルドルフ・ルッツなどは、あらゆる点において深く僕らの作品に影響を及ぼしているよ。僕らのデザインは、系統的なタイポグラフィーと平面に関する鋭い魅力を表してるんだけど、更に、自分たち自身のルールを破るべく、これを説明的な部分とミックスするんだ。日本の俳人、松尾芭蕉の言葉に、僕らのオフィス哲学を凄くよく表しているものがあるんだけど、彼はこう言ってる…「私は古人の足跡を辿ろうとは思わない。私は、彼らが求めたものを求めるのだ。」ってね!
それから、新しいプロジェクトを始めた時は、製品や会社を調べ、ビジュアルを探し集め、そして様々な戦略を開発する。さらなるステップでは、それらを編集、蒸留して一つのビジュアル言語を作り上げていくんだ。結論としてよく言えるのが、形式は機能の後についてくるということ。実を言えば、僕らは特定のスタイルを持っていると自任していないんだ。だって、グラフィックデザイナーは、まず第一に職人であり、その時々で発展していく沢山の違ったスタイルで仕事が出来なければならないと思っているからね。だから、僕らの過去の作品を参照して、同じスタイルで作品を作って欲しいと要求してくるクライアントは好きではないんだよ。それぞれのプロジェクトは、その目的や製品を反映したり支えたりするものであるべきで、だからこそ、常に確立したスタイルを持つべきではないと思ってる。そこに理由が存在しなければ、スタイルはただのデコレーションとして終わるんだよ。


オーストリア・パビリオンのインスタレーションで使われたトイレットペーパーは、so+baによるデザイン。現在、日本の多くの美術館でこのトイレットペーパーが350円で販売されている。

「スモール+ビューティフル」の本の表紙。型抜かれた十字に注目!!
とても概念的ですね!それを実際どんな風に作品に反映していくのか教えて欲しいと思います。例えば、「スモール+ビューティフル」という書籍の表紙では、非常に巧みな型抜きを披露しました。それは、紙の表面で遊ぶというあなた方の専門分野の1つであるように思えます…。他にどんな作品で、同じように芸術的な手法で紙を使用しましたか?
スザンナ:私達は材料で遊ぶのが好きなの。大抵の場合、予算は大きく取れないから、少ない色で面白い印刷技術とか形、材料で何か出来ないかって考える。例えば、文章が全部浮彫りされているフライターグバッグの新製品発売記念パーティーのための招待状みたいにね。それから、エドウィナ・ホールのためのファッション冊子では、以前撮影のために買っていた草のカーペットをリサイクルして、それぞれの冊子に小さく切ったものを付けてみたのよ。とにかく私達は、印刷や包装や折りたたむって事において、常に新しくて面白い方法を探し求めているの!

雑誌「cue+」11号の、浮彫りされた多色の層の使い方には惚れ惚れしてしまいます!コンセプトについて、もっと教えてもらえますか?
アレックス:まず、この雑誌のプロデューサーであるヤマギワは、デザインに焦点を強く置いているから、僕らは作品作りにおいて多くの自由を得られるんだ。この雑誌の開発はとても面白いよ。編集とデザインのチーム全体が、最終的に決断を下す編集長であるミヤケリイチ氏同席のブレインストーミングミーティングとして、およそ3回集まる。2回目か3回目のミーティングが終わる頃には、テーマか方向性が決まって、そこから我々のビジュアル的な仕事が始まるってわけ。
スザンナ:11号のテーマは「カダーヴル・エクスキ」。つまり、「優美な死体」。この「カダーヴル・エクスキ」っていうのは、構成に対してそれぞれのコラボレーターが次々に加えていく言葉やイメージの集まりをまとめて組み立てるメソッド。このテクニックは、1925年にフランス人の超現実主義者によって発明されたものなんだけど、プレーヤーが順番に1枚の紙に書き加えて最後に一つの作品が出来上がるっていう「コンセクエンス」と呼ばれる古いゲームと似ているのよ。つまり、この雑誌は、一定の流れの変化が終わりまでずっと続くっていうものなの。



アレックス:同じ雑誌の12号は「階段」がテーマだった。だから僕らは階段形をした遊び心あるオープニングを作ったんだ。階段のテーマに沿って集めた事実や神話や引用文を紹介してね。表紙は、天国と地獄、上下や高低など、沢山の異なった局面を使って、階段のシンボルを象徴して黒と銀に印刷されたもの。
それから、ファッションの仕事もされてますよね。エドウィナ・ホールの季節ごとのラインに、それぞれ違ったアプローチをされてるのを見ましたが…。
アレックス:エドウィナ・ホールは、ただ季節ごとのコレクションを作成する典型的なファッションデザイナーでなくて、彼女はまずテーマを開発して服をデザインする人。「東京ブロンド」は行き過ぎた田舎ファッションがコンセプトだし、「クロネコ」は、全て黒で作られたコレクションだった。この「クロネコ」に関しては、僕らは、本当に全て黒にしたかったので、黒い背景の前で黒い衣服を撮影することを提案したよ。それと、彼女がコレクションの中でボタンとして使ってたガラスの猫目を、モデルの目の部分に使うことも提案した。モデルの本物の目は決して見ることができないんだよ。それから、日本中で知られている、ヤマト運輸のクロネコのロゴで遊んでみた(一番上の写真)。他のコレクションだと、「ナニコレ」というのがあって、今、僕らは彼女の最新の「海賊」プロジェクトに関わって仕事をしているところだよ。

エドウィナ・ホールのファッションライン、「ナニコレ」のための…

インフォメーションはなんとニセモノ葉巻の中に!
結婚式の招待状として作られたてぬぐいを拝見しましたが、凄く素敵なアイデアですよね!


少しシワが寄るとこんな感じ。
スザンナ:私達の日本人の友人がスイスのグラウビュンデンにある、ピーター・ズンドーが建築した有名なチャペルで結婚した時、ゲストの引き出物として手ぬぐいをデザインするように頼まれたの。海外での結婚式だったし、ゲストの多くがスイス人だったから、私達は伝統的な日本の柄をデザインすることを決めたのよ。濃紺(藍)と水色の2色だけの格子柄で、遠くから見ると「結婚式」の文字が見えるようになっているの。
数年間日本に暮らしてみて、日本とスイスのデザインに関して何か異なった点を見つけましたか?
アレックス:スイスでは、日本と比べてほとんど全てのものがきれいにデザインされていると思う。東京は悪いデザインでいっぱいで、良いものを見つけるのは難しい…。でも、いったん探知されると、それは本当に際立つんだよね。もしそこにクレイジーなアイデアがあった場合…例えばお喋りしたり匂いがするポスター、インタラクティブやデジタル、3Dポスター…何でも注意を引くため試される。それから、東京の法律はヨーロッパの都市よりも制限が緩いよね。

日本のグラフィックデザインをどのように見ていますか?
アレックス:日本人のデザイナーは、より遊び好きだと感じるし、彼らの作品の多くは論理的な概念に焦点を合わせていないって感じる。つまり、彼らのアプローチは視覚的であって、概念よりもむしろ、感情から来ていると思うんだ。場合によってはこれはとても良い方法だと思う。一般的なムードにヒットして、何も説明無くして効果を得られるから。でも、一方では、それは内容ではなく「単に」スタイルであるがゆえに、空っぽな感じを受けることもあると思う。ある一定の時間が経つと、…そうだな5年~10年とか経った後には、スタイル以上の何かを持つデザインが生き残るんだと思ってる。シンプルな美や材料に対する素晴らしい伝統的感覚を持つ国の人たちが、彼らのデザインの遺産を利用していないことに僕らは驚かされることが多いけど、それは多分、日本のデザイン教育、もしくはコミュニケーションのデジタル化が、デザイン界を現在の状況に向かわせたんだろうな。

現在、多摩美術大学でタイポグラフィーを教えてらっしゃるわけですが、タイポグラフィーに関して言えば、日本語の特別なところってどんなことでしょう?どんなところが大変ですか?勿論3つの異なった文字(ひらがな・カタカナ・漢字)っていうのもあるでしょうが…
アレックス:まず最初に、僕らは日本のタイポグラフィーに感動した。それらは全て新しかったし、一つ一つの文字の中に、沢山の美を発見したよ!僕らは今でも、漢字がビジュアル的には何よりも良いと思っているけど、ひらがなとカタカナとのミックスによって、バランスの良いテキストをデザインするのはかなり難しくなるんだ。あと、オリジナルデザインって点で、日本のタイポグラフィーが特に好きだな。縦書きでは、上から下、右から左へと進む…。縦書きの場合、テキストはバランスのとれているように見えるんだ。それぞれの行には垂直のセンターがあるように見えるからね。…この縦書き様式が古式であると考えられてるのはとても残念だよ。それから、五十音の中のデフォルトの英語の活字は、大抵ひどいデザインで、日本語の文字に対して小さすぎる。だから、僕らは英語と日本語のフォントとが合っている組み合わせでフォントセットをデザインしているよ。

お二人が日本のタイポグラフィーをとても大切に思ってくださっていると感じました! so+baのお二人、ありがとうございました!
12 コメント
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