
以前PingMagでも紹介した「オーディオビジュアル」は、音と映像をシンクロさせることで、一体感を得ることができるまだ歴史の浅いアートフォーム。97年に発売されたコールドカットのアルバム「Let Us Play」に収録されていたヘクスタティックとの共作「Timber」などは、このジャンルの最も分かりやすい作品例だと言えるだろう。今月末、パイオニアより発売される「SVM-1000」は、これまで複数の人間が必要だったオーディオビジュアル・パフォーマンスがたった一人でも行えるという音と映像のシンクロミキサー。この待望の新機材発売により、オーディオビジュアル・シーンがより幅広い層に広がることは間違いない。PingMagは、オーディオビジュアルの未来を探るため、発売よりひと足先に、コーネリアスのミュージックビデオ等でお馴染みの映像作家・辻川幸一郎さんと共に、この新機材で様々な実験を行ってみた。
作:チエミ
まず、「オーディオビジュアル」をもう一度簡単に説明しよう。
ひと昔前まで、クラブなどではDJが音楽のみをかけていた。しかし、90年代半ば頃から、イギリス・アメリカを中心に、DJがかける音に合わせた映像表現をするアーティスト達が多数現れはじめ、彼らは「VJ(Video Jockey)」と呼ばれるようになった。DJがいかにスムーズに、ダイナミックに音楽をミックスさせるかに腕を磨く間、VJ達は彼らとリズムを合わせ、音と一体化した映像表現をすることに力を注いできた。そして、DJやVJという枠を超え、音と映像の重要性が同等になった表現を「オーディオビジュアル」と呼ぶようになったのは、ここ数年のことだ。

しかし、そこで生まれた問題は、生のパフォーマンスの際、いかに音と映像を上手くシンクロさせるか。音の担当者の気分に、映像担当者があうんの呼吸でイメージを合わせる?もしくは、事前に何をどんなタイミングでかけるのかを打ち合わせる?…だったら最初から、音楽モノのDVDをミックスすればいいじゃないか、というアイディアで作られたのが、2004年に発売された「DVJ」という機材。2枚のDVDをレコードのようにミックスさせれば、選べる素材の種類は少なくとも、完璧に音と映像をシンクロさせることが出来るようになった。しかし、肝心の映像用ミキサーは2チャンネルが主流なため、ミキサー1台だけで3チャンネル以上の映像ミックスは困難で、そもそも音は音用、映像は映像用のミキサーが必要となり、どうしてもパフォーマンスには最低2人の人間が欠かせなかった。
今回、私達が発売前の「SVM-1000」を拝見しに同行をお願いしたのは、映像作家の辻川幸一郎さん。クラブには全く行かないという辻川さんだが、ミュージックビデオを多く手がけるためか、オーディオビジュアルというジャンルには少なからず興味をお持ちの様子。早速、パイオニアの「SVM-1000」の企画担当の方に簡単な説明を受け、その後辻川さんの作品を使いながら実際に機材に触れて頂くことにした。

映像作家の辻川幸一郎さん。

辻川さんの代表作のひとつ、コーネリアス「EYES」(監督:辻川幸一郎)
まず、SVM-1000で注目したい特徴のひとつは、4チャンネルの音楽と映像のシンクロミックス。文字通り、4チャンネル同時にミキシングが可能となり、例えば、音用に2チャンネル、映像用に2チャンネルを使い、それを一人でミックスすることが可能になった。そう、つまり、この機材の登場によって、DJにとってもVJにとっても、新しいパフォーマンスを実現する可能性が広がったのだ…!

そして、もうひとつ注目したい点は、3種類、合計30パターンにも及ぶAVエフェクト。曲のビートを検出し、音と映像の両方に「FILTER」「PHASER」など12パターンのエフェクトを搭載した「ビートエフェクト」。11インチのLCDパネルに映し出された映像を直接触りながらエフェクトをかけることができる、12パターンの「タッチエフェクト」。そして、作成したテキストメッセージをビートとシンクロして表示できる6パターンの「テキストエフェクト」。これらのエフェクト機能により、ひとつの映像素材でも変幻自在に操ることが可能になった。




この他にも、映像素材を持っていない人のための60種類(!)の「ビジュアライザーエフェクト」や、SDカードやUSBメモリーなどの外部メモリーに保存したJPGファイルを映し出すことができる「JPEG VIEWER」など、数えきれないほど様々な機能が搭載されている。
さすがにいきなり4チャンネルを使いこなすのは難しいので、30パターンにも及ぶAVエフェクトでどのようにひとつの映像を変えられるか試してみることに。元々の素材に少しでもエフェクトがかかっている映像を使うと、何がどう変わっているか分かりにくい、という辻川さんの意見から、あえてミュージックビデオではなく、辻川さんが監督したショートフィルム「きまぐれロボット」をお借りして実験を始めてみた。ちなみに、こちらはSF作家・星新一の同名の小説を映像化した作品。なんでもできる便利なロボットが、次第におかしくなり、人間と同じようなきまぐれさを見せ始める…という内容だ。

では、このような美しい実写のモノクロ映像に、エフェクトをかけるとどのようになるのだろう?辻川さんにお話を伺いながら、早速実験…。
「きまぐれロボット」の映像素材にエフェクトをかけると、普通のVJ素材と違っていて斬新ですね。
辻川:そうですね。このようなカオスパッドみたいなものは、家でテレビに繋ぎ合わせて使えたら、映像用のオモチャとしてもすごく面白いですね。
実際、機材に触れてみてどうですか?
映像って音に比べて抽象的じゃないからエフェクトがかけづらいし、混ざりづらいんですが、低音のエフェクトにはこの色の部分にエフェクトがかかる、というようになっているのは、映像の素材をバラしてる感はありますね。
パフォーマンス用の映像作品を作ってみたいと思われますか?
僕の勝手なイメージなんですけど、クラブイベントとかでは、映像素材を売ったりする訳ではないので、昔の映像とかをどんどんサンプリングできるじゃないですか。なので「作る」と堅苦しく考え過ぎなくても、例えば、ビデオ屋から借りてきた素材や、録画素材とかを音のイメージにリンクさせて混ぜていきながら構築させていく方が面白いのかなって思いますね。おとなしく使うと退屈になってしまうというか、暴力的に使うとアンダーグラウンドな面白さが増すのかなって思います。Youtubeでもマッシュアップ系の映像ってすごい面白いじゃないですか。あれは、色々な映像をどんどん混ぜていくサンプリングの面白さだと思うから、これはそういう化学反応を起こせる機材ですよね。

タッチスクリーンの映像と…

実際に映し出された映像。
国内ではまだ少ないのですが、国外ではオーディオビジュアル・パフォーマンスと映像制作の両方をこなすアーティストも多数存在します。辻川さんは普段の映像制作と比べてみてどう感じられましたか?
オーディオビジュアルってライブ感ですよね。僕達は普段コンテを書いたり、決まった期間に撮影したりしてスケジュールを組んで作業を進めていくのですが、現場でどんどん流れていく映像を触って周りが盛り上がるライブ感みたいなものはすごく面白いだろうなと思いました。自分の作品だけでなく、他人の作品、テレビ番組でも何でもこの中に収めて混ぜることで、また別の作品になってしまう感覚がすごく刺激的ですよね。

ズラリと並んだ機材…。
オーディビジュアル・パフォーマンスに挑戦してみたい人が沢山いると思うのですが、辻川さんから何か映像サイドのご意見を頂けますか?
例えば、映像と音のスクラッチのスピード感って結構違って、耳で聞く音はすごく早いんですが、映像の方はスクラッチしてもわりとトロく見えちゃうんですよね。それが映像と音が元々持っている本質的な違いなので、そこをどういう風に考えるかっていう部分はあるかもしれないですね。映像ってシンプルではなく、その中で行われているアクションがカオティックなので、ミックスする場合もエフェクトをかける場合もすごく難しい。それを理解した上で、パフォーマンスを調整していくと面白くなるだろうなと、今日体験してみて思いました。
なるほど!辻川さん、パイオニアの皆さん、有難うございました!辻川幸一郎さんの作品が満載のコーネリアスのDVD「SENSURROUND」は3月19日発売、音と映像のシンクロミキサー「SVM-1000」は、2月下旬発売予定です。
13 コメント
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これすごい!!
ライブで使うにはかなり良さそう。
Posted by: moyomosoi @ 2月9日2008年
お、いいすねこれ!
最近、趣味のVJはじめたので、ほすぃー!
Posted by: しずか @ 2月9日2008年
ほほぉ…
そうなるとDVDをスクラッチングできる機材が欲しくなるなぁ。
と思ったら、パイオニアさんもぅ作ってるぢゃないですかw
http://www.pioneerprodj.com/gear_dvj1000.html
Posted by: 結果を出せない奴 @ 2月9日2008年
まだ発売前で、なかなかイメージが掴めない機材でしたがこうしてレポをしてもらえるととても助かります!
Posted by: motordrive @ 2月9日2008年
hoshi-kamo.
Posted by: cococoaki @ 2月11日2008年
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