
日本人建築家・安藤忠雄が、イタリアのトレヴィゾ近くにある広大な施設を修復・拡張に携わったことでも話題になった「ファブリカ」は、1994年にベネトンの創始者ルチアーノ・ベネトンと当時のアート・ディレクターであった写真家のオリヴィエロ・トスカーニが開設したコミュニケーション・リサーチ・センター。この場所では、世界中から選び抜かれたおよそ40人の若いアーティスト達が、1年間の間、様々なサポートを受けながら、クリエイティブな研究に専念することができる。1月18日から東京Shiodome Italiaで開催されているファブリカの「将来を見据えた目」展は、パリのポンピドゥー・センターで企画され、ミラノ、上海と続いてきた巡回展。今日は、この展覧会の為に来日したファブリカのジェネラル・マネージャー、アルフィオ・ポッツォーニ氏にファブリカの活動についてお話を伺った。
作:チエミ
まず、ポッツォーニさんはどのような経緯でファブリカのジェネラル・マネージャーに就任されたのか教えて頂けますか?
私は以前、クライアントとしてファブリカからプロジェクトの依頼を受けたことがありました。その時に若い人達と仕事を共にし、その中でファブリカの活動に共感することが多くあったのです。その後、ファブリカのディレクターからの申し入れを受け、スペシャル・プロジェクトのコンサルタントになり、2007年からジェネラル・マネジャーに就任しました。今回のファブリカ展では、チーム・リーダーを務めています。


ファブリカでは具体的にどのようなことをされているのですか?
ジェネラル・マネージャーは、ファブリカで行われる全てのプロジェクトをプロデュースします。つまり、インタラクティブ、グラフィック、デザイン、ミュージックなどの専門家達を集めたり、国連や国境なき記者団などの組織と打ち合わせをし、新しいプロジェクトのアイディアを考え、それがキャンペーンや教育プロジェクトとして利用価値があるかを判断するのです。これらのプロジェクトの中には、前年度から続く長期に渡るものもあれば、企業の為の商業的なプロジェクトもあります。



ファブリカの活動と言えば、今回特別プロジェクトが展示されている「COLORS」誌の発行がよく知られているかと思いますが、それ以外の部分は少しミステリアスなイメージがあります…。実際に行われているプロジェクトの具体例をひとつ挙げて頂けますか?
今回1階に展示されているグラフィック作品は、「WFP(国連世界食糧計画)」という国連のプロジェクトです。アフリカでは子供達はなかなか学校に通うことが出来ません。しかし、学校で給食を配ることにより、子供達をもう一度学校に呼び寄せるというもので、この広告キャンペーンの制作をファブリカで行いました。



ところで、ファブリカには現在どれだけのアーティスト達が在籍し、どのくらいの応募者があるのでしょうか?
ファブリカにやって来るアーティスト達は通常1年在籍するのですが、現在は約40人の奨学生がいて、2008年度は約50人になる予定です。応募は毎週約100人と言ったところでしょうか。膨大な数のポートフォリオを見ますので、選考にはかなりの時間がかかってしまっています。
ウェブサイトの応募要項を拝見しましたが、私達日本人には言葉の問題の点で、少しハードルが高いような印象を受けました。日本からの応募はあるのでしょうか?
多少はありますが、その数は決して多いとは言えません。しかし、ファブリカでは英語の不得意な人をサポートする態勢があります。応募は中国やアフリカなど世界中からありますから、言葉は日本人だけの問題ではないのです。はじめの二、三ヶ月は大変ですが、皆そのうち慣れてしまいますよ。

WHOの為のコミュニケーション・キャンペーン「VIOLENCE」(2003)は、様々な暴力に対してのメッセージ。ポスターには「お年寄りの20人に1人が、家庭でなんらかの虐待を受けている。」と書かれている。© Gabriele Riva / Fabrica

同じく、コミュニケーション・キャンペーン「VIOLENCE」より。「1日に800人以上が何らかの暴力で命を落としている。それは毎時間30人以上の死に値する。」© Gabriele Riva / Fabrica
ファブリカでは言葉以外にどのようなサポートを受けられるのですか?
選ばれたアーティスト達は、この場所で研究を進めるために、住宅や必要経費、そしていくらかの給料のような経済的支援を受けます。そして、グラフィック、写真、シネマなど、色々な分野でプロと並んで研究をし、主にビジュアル・コミュニケーションに関わった仕事に携わるようになります。ファブリカには沢山の出会いがあり、そして若いアーティスト達の夢が実現する場所だと言えるでしょう。
研究を終えたアーティスト達が、どのような活動をされているかをご存知ですか?
ファブリカに在籍していた全員の行方を把握している訳ではないのですが、その多くはその道の専門家になっています。また、半数は音楽やデザインなどの分野で、今も私達とコラボレーションしています。私は南米に行く機会が多いのですが、アルゼンチンなどではファブリカに在籍していたアーティスト達の活動を耳にすることが多いんですよ。

「Road safety」は、歩行者やサイクリストが目立つ服装をすることで、交通事故から自分の身を守ることが出来るというメッセージを訴えたポスター。© Marian Grabmayer, Reed Young / Fabrica

「IF」は、ジョン・レノンやマリリン・モンローなど「伝説(ledgend)」と呼ばれる若くして他界したスーパースター達が もし、今も健在だったら…をビジュアル化したプロジェクト。© Erik Ravelo / Fabrica
では、今回の展示のオリジナル・タイトルである「LES YEUX OUVERTS」は、正確には「目を見開いて今を見つめる」という意味だと伺っていますが、そこにはどのようなメッセージがあるのでしょう?
今回の展示は、環境や社会的なものを取り込み、それを自分達なりに映し出すというのが大きなコンセプトです。周りを見渡し、世の中にはどれだけ様々な人がいるのか、どれだけ違う生活をしている人がいるのかを見つめ、彼らに対して敬意の念を表して欲しいという意味があります。今回日本で展示されている作品は、私とパリのポンピドゥ・センターが、今ファブリカで何が起こっているかという精神を日本の人達に伝えるために特別に選んだものです。また、テクノロジーを駆使した作品に関しては、日本の人に理解して頂きやすいだろうと、インタラクティブな作品を選びました。

今回、多くの日本の若いアーティストの方達が展示を見に来られるかと思いますが、彼らにメッセージをお願いします。
ファブリカには本当に沢山の優れた才能が集まっています。皆さんも、ぜひその一部になって下さい。私達のドアは常に皆さんの為に開けてあります。
ポッツォーニさん、今日は本当に有難うございました!皆さんからの展示の感想もお待ちしています!

「FABRICA:LES YEUX OUVERTS」のポスター。今回が日本初のファブリカの展示となる。

ファブリカのジェネラル・マネージャー、アルフィオ・ポッツォーニ氏。
「将来を見据えた目」展
会期:2008年1月18日(金)~ 3月2日(日)
会場:Shiodomeitaliaクリエイティブ・センター
入場料:一般 700円、学生(中学生以上)500円、小学生以下は無料
12 コメント
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“社会”と”アート”の融合。
とても素晴らしい展示でした*
Posted by: ering @ 2月18日2008年
[...] PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive … [...]
Posted by: 伝統の創造力 | ってどうよブログ @ 7月10日2009年
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