
マレーシアのマラッカを訪れた際に、PingMagは幸運にも、昔ながらの街並みが広がるヒーレン・ストリート(現地語の通称はトゥン・タン・チェン・ロック通り)のど真ん中にひっそりと佇む小さなギャラリーを発見した。キン篆刻店は、最高峰の技で印章という素晴らしいアートを生み出す篆刻の工房。本日のPingMagでは、そのズィ・キン・タムさんの作業過程をくまなくお届けします!
作:イアン・ライナム&セリーナ・ホイ
訳:山根夏実
まず初めに、マレーシアは多様な民族と文化のるつぼで、一つの面を知ったつもりでも次々と別の面や表情を覗かせる、いわば多面ダイスのような独特の社会が形成されている。このマレーシア文化の特異な一面は、ただ町を歩くだけでも実感できる。たとえば、私たちが南インド系の行商人の優しい眼差しに見守られながら、露店の屋台で信じられないほど安くて美味しいロティとダールにかぶりついていた時、同じプラスチックのピクニック・テーブルに相席してきたのは中国系、マレーシア系、それにイスラム教徒のヘッドスカーフを被った女性三人組だった。この集団が同じテーブルで同じ料理を食べ、一緒に話しながらパンカゴを回していた。

まずは石を平らにするためのやすりをかける作業から。タムさんの印章の原材料となるのは中国産の葉ろう石。この葉ろう石には様々な硬度や色、品質があるのだそうだ。

篆刻作業のために、まず石を平らにして固定する。その後、タムさんが視覚的なバランスを考えて印章面を3つから4つに分けて下絵を描いていく。
クアラルンプール芸術大学の卒業生であるタムさんは、印章作りを始めて10年以上になるという。芸術家であるお父さんのギャラリーもあるというこのタム家の敷地に店を開いたのは5年前で、時に弟さんに原石の準備などを手伝ってもらいながら、この工房一番の篆刻師として日々印章を作り続けている。その間にタムさんは中国語、英語、タイ語、日本語、アラビア語、サンスクリット語やジャウィ語などで2,000個以上もの印章を作り出してきた。タムさんの引き立てには、このチャイナタウンの細い路地をぶらついていた観光客もいるものの、地域の寺院を始めとした地元の人々のための印章も作っているという。

特に忙しい日には最高15個の印章を作るというタムさんだが、自分用にユニークで楽しい作品を作りながら、工夫を凝らしたり実験するのも好きだという。そんな彼が見せてくれたお気に入りの作品を集めたスクラップブックには、定番の意匠からは逸脱した様々なポートレートや記号、絵などが並んでいた。日本の映画や英語の小説、アニメなどのポップカルチャーの影響が如実に現れている作品もあれば、歴史に目を向けたものもある。北京の書法家協会の一角を成す中国の篆刻の大家の研究者でもあるタムさんは、世界史からインスピレーションを得ることもあるのだそうだ。









タムさんの名刺。
タムさんとご家族の方々、根掘り葉掘り聞いてばかりの私たちを気さくに、暖かく迎えてくださって本当にありがとうございました!そして最高の印章を作ってくださったことにも感謝!
左の名刺に注目。もし皆さんがマレーシアの宝石、マラッカに行くことがあれば、ぜひ立ち寄ってみてください!
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