
セルビア出身の写真家ブギーは、旧ユーゴスラビアの紛争地域に生まれ育ち、様々な抗議活動やスキンヘッドの物騒な姿などを記録してきた。そして1998年にベオグラードからブルックリンに拠点を移してからは、ストリートの暮らしというニューヨークの荒涼とした一面をモノクロフィルムに収め続けている。しかし特筆すべきは、彼の作品が断定的ではないことだ。善悪を裁くのではなく、細部まで見通す目と尋常ならざる胆力でそう遠くない世界の現実を伝えているのだ。PingMagでは、そんなブギーさんにご自身の映し出したブルックリンのギャングや麻薬中毒者の日常を見せていただいた。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

近隣の人々の記録を撮るようになったのはいつからだったのでしょうか?
写真を撮り始めたのは1993年です。私の祖国は崩壊へと向かっている最中でした。国は国連の経済制裁下にあり、人々は飢えていて、生きるために家のものをすべて持ち出して売るようなありさまでした…。でも私の手元にはお金があったので、フリーマーケットでビンテージ・カメラを集めていました。古いカメラの見た目が好きだったんです。そうしたらある日、父親がちゃんと写真を撮れる本物のカメラを買ってくれて、それに夢中になりました。あと、私の父も祖父もアマチュア写真家と言える人たちだったので、ある意味写真は早い段階から私の人生の一部だったとも言えます。

最初にストリートを撮ろうと思ったきっかけは?好奇心だったのでしょうか?もしくは単にご近所の不気味な様子をファインダーに収めてみただけとか…。
本当の理由は、周りがあまりにも狂気に満ちていたから、正気であり続けるためだったと思います…。
被写体にギャングや麻薬中毒者を選ばれた理由は?こういう特徴のある地域では、彼らはそれほどまでに露骨だということでしょうか?
自分でもなぜかは分かりません。この二つのプロジェクトは偶発的に着手したものです。こういうプロジェクトはやろうと思ってやれるものでもないですし。いや、もちろんそうすることもできるのですが、実際にそれで何か行動を起こす可能性は低いでしょう…。


ギャングの人々とはどれくらいの時間を一緒に過ごされたのでしょうか?2、3ヶ月くらいとか?
このプロジェクトは完成させるのに2年半から3年かかりました。
ギャングにはどうやってアプローチされたのでしょうか?外国人であることが有利に働いたということはありましたか?
最初は麻薬中毒者を撮ることから始めました。でもすぐにそれも嫌になりました。クスリを注射したりコカインを吸う人々を日常的に見るのは、かなりしんどいものがあります。そこで近くの公営住宅に行って、ギャングの写真を撮ろうと思い立ちました…ただそこに行って、カメラを持った白人として黒人やプエルトリコ系の地域を歩き回ったのです。そして当然のごとく、ギャングの連中が接触してくるのに長くはかかりませんでした。外国人であることは有利に働いたかもしれません。少なくとも、毛嫌いされているという響きではありませんでした。


確かにその通りですね。実際にはどのギャングのメンバーと接触されたのですか?
私の写真に写っているのは、大半がブラッズのメンバーですが、ラテンキングスやクリップスとも会いました。ほとんどの写真はブルックリンのベッドフォード・スタイベサント地区とブッシュウィック地区で撮影しました。
ギャングのグループダイナミックス(集団における人々の思考や行動)について教えていただけますか?
組織には厳格なヒエラルキーがあって、こちらが敬意を払えば向こうもそれを返してくれます。
ギャングとのやりとりで一番印象的だった出来事は?
さしたる事件もなくて、私は幸運だったと思います。ですが常に危険と隣り合わせではありました。

怖いと思われたことはなかったのでしょうか?
もちろん怖かったですよ!直感でヤバイと感じたらすぐに去るようにしていました…。こういう状況ではルールや決まりごとみたいなものはまったくなくて、一番頼れるのは直感なんです。いつ何時最悪の事態が起こるかわからない。
確かに。ブギーさんのシリーズを拝見した際に、屋根の上から下を見下ろす人の写真が気になったのですが、あの2枚についてもっと詳しく聞かせていただけますか?(下の写真参照)
屋上にいる警官の写真ですね(右下)、これは俗に垂直パトロールと呼ばれるものです。要するに、警官は公営住宅の屋上や廊下をパトロールして麻薬の売人を捜すのです。公営住宅では、以前は屋上から突き落とされることもあったので、一般人の屋上への立ち入りは禁じられています…。もう1枚は、警察の見張りに立つギャングのメンバーです(左下)。

上空での対立。警戒に立つギャングと…© Boogie

…高い場所からパトロールを行う警官。© Boogie
コカイン中毒者の方もかなりハードな描写ですよね!どうやってここまで近付かれたのですか?
ギャングの時と同じです。この地域をただ歩いていた時に、廃れた駐車場でホームレスの集団に遭遇して写真を撮らせてほしいとお願いしました…。ですが、おそらく警官だと思われたのでしょう、断られてしまって。でもその中の一人、麻薬所持の罪で7年間を刑務所で過ごしたクリスティンという50歳の女性が撮っても構わないと言ってくれました。それで一緒に話をして、次の日にもまた会いに行ってなんとなく友達になりました。半月ほどすると、彼女は自分の友達を紹介してくれて、その中の2人に自分たちがコカインを吸っている写真を撮って欲しいと言われました。そこから一つのことから別のことに繋がっていって、コカインを吸う人、マリファナを打つ人、クラックの密売所…結果的にすべてが超現実的で、「正常な人間」の範疇を超えたものとなりました。


でも、この人たちはなぜブギーさんにここまで見せてくれたのでしょうか?
彼らは私のことを気に入ってくれて、私も彼らを善悪で判断することはしませんでした。私自身が誰かを裁けるような人間ではないからです。私やあなたも、そこらのジャンキーやギャングになっていたかもしれない。人生とは選択の連なりで、この人たちはそのいくつかを間違ってしまっただけなんです。
その後、私が彼らの家に行ってブラブラしても、本人は私がいないかのように好きなことをするまでになりました。写真家にとっては堪らない瞬間です、空気同様の存在になるということは…。

彼らにお金を支払うこともあったのでしょうか?
いいえ。でも子供たちには何度もピザやドーナッツを買ってあげました。子供が一番の被害者ですから。
旧ユーゴスラビアの紛争で荒廃していた地方の出身ということは、あなたのニューヨークの捉え方、ギャングや犯罪などにも影響していたと思うのですが、どうでしょうか?
まあ、育った環境というのは人生のすべてに影響するものですし、それは私だけではなく誰にとっても当然のことで、いたって普通なのではないでしょうか…。

ブギー。余談だけれど、フードの銃のプリントがカッコイイ。© Boogie
そうですね。でも他の人よりもよっぽど悲惨なことも体験されたのではないかと思います…。ブギーさん、今日は本当にありがとうございました!
写真展情報:
パリのコレットで開催されていたブギーさんの写真展は終了してしまったばかりですが、3月に、こちらもパリ市内のギャラリー・オリヴィエ・ロベルトで再度展示される予定です。
書籍:
ブギーさんの最新の限定版写真集がパワーハウス・ブックから出版されています。興味のある方は、こちらでちょっとだけ立ち読みできます。
29 コメント
ウェブマガジン「PingMag」及び、姉妹サイト「PingMag MAKE」は、2008年12月31日をもって休刊いたしました。これまで応援して下さった世界中の皆様、またご協力頂いた皆様に、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。
PingMagの姉妹版、日本のモノづくり情報を世界に発信中!
PingMagから大切なお知らせ
2008年12月31日
板谷龍一郎:色鮮やかでユーモア溢れる世界
2008年12月29日
マギボン:YouTube発のネットアイドル
2008年12月26日
ベネデッタ・ボッロメティ:たくさんの元気をくれる不思議な絵
2008年12月24日
中銀カプセルタワービル:未来の建築
2008年12月22日
花村えい子:キュートでポップな60年代の少女マンガ
2008年12月19日
日本のハイテクトイレ事情
2008年12月17日
アミューズメント:アートやファッションと融合するゲーム文化
2008年12月15日
HIROCOLEDGE:現代に溶け込む新たな伝統
2008年12月12日
瀬戸正人:ビンラン売りの甘い誘惑
2008年12月10日










いい!このベレーナさんのレポートはいつも薄っぺらく、論点がずれていて、質問も甘いが(特に日本人アーティストが相手だと、それが露骨に出る)今回のはいい!作者の心情と信条がよく伝わってくる!
Posted by: Yako @ 1月28日2008年
自分が空っぽのような気がした。
Posted by: cococoaki @ 1月29日2008年
Just thought i would comment and say neat design, did you code it yourself? Looks great.
Posted by: Debi Mckinnon @ 4月19日2011年
Extremely nice website. Excellent job!
Posted by: podcast Jason Van Orden @ 5月29日2011年
Building a new set of programs that may be of value to you.
Posted by: Modivational Intervention @ 6月11日2011年
I saw something about your subject on T.V. last night, Thanks
Posted by: Affiliate Marketing Reviews @ 6月18日2011年
This is a very nice article and superbly written. I have bookmarked and will check back often.
Posted by: How to get the Abs @ 6月27日2011年
This is a great site. I think you should check it out, If you are looking to make money on the internet this is it:
Posted by: Direct Cash Freedom @ 7月31日2011年
I always prefer to undertsand a brand new means of looking at it. Thanks for the information. I always like to undertsand a new means of taking a look at it. Thanks for the information.
Posted by: Marketing Strategy Template @ 8月16日2011年
I’ve by no means seen it from that perspective. Luckily there are multiple approachs to do things. I by no means thought of it like that.
Posted by: Examples Viral Marketing @ 8月17日2011年
I have never seen it from that perspective. Luckily there are a couple of techniques to do things. I always like to undertsand a new means of looking at it. Thanks for the information.
Posted by: Skinny Guy Muscle @ 8月21日2011年
Enjoy this site very much. Chess training is ongoing; individual play, individual coaching, clubs, tournys, computers, so many opportunities for improved play. What do you think?
Posted by: pc chess games @ 9月2日2011年
This article was attention-grabbing to read. I am glad to search out this put up as a result of I’m interested within the topic.
Posted by: Health Natural Products Database @ 9月9日2011年
This is usually a great and good read. Your blog is created in a manner it’s so easily readable and understand. I’m a fan of your web site. Thank you for sharing this info.
Posted by: Baird @ 9月12日2011年
You made some decent factors there. I appeared on the web for the issue and found most people will go along with along with your website.
Posted by: nfl live on internet @ 10月1日2011年
I must express thanks to this writer just for rescuing me from this type of problem.
Posted by: wholesale abercrombie and fitch @ 10月14日2011年
what do you do to have so many people commenting on your sitio? I never get more than one or two comments per post
Posted by: welovesports1 @ 11月7日2011年
I enjoyed studying this post. I am completely satisfied to search out this put up as a result of I’m interested within the topic.
Posted by: christian louboutin @ 11月10日2011年
I like this weblog very much, Its a rattling nice berth to read and find information.
Posted by: Johnny Itson @ 11月16日2011年
Lorem sonyn wzwalkman sit amet, Cyber Monday Deals in Cell Phones & Accessories
Posted by: technology @ 11月28日2011年
สารสกัดจากธรรมชาติต่างๆ ที่นำมาเป็นอาหารเสริมเช่น กลูต้าไธโอน,แอลคาร์นิทีน, น้ำมันรำข้าว, กรดอะมิโนต่างๆ และอื่นๆ นั้นมีประโยชน์ต่อร่างกายของเราอย่างไรบ้าง
Posted by: กลูต้าไธโอน @ 12月7日2011年
Its like you read my mind! You appear to know a lot about this, like you wrote the book in it or something. I think that you can do with some pics to drive the message home a bit, but instead of that, this is magnificent blog. A great read. I will definitely be back.
Posted by: alexander wang skirts @ 12月16日2011年
Another useful article again. Thanks.
Posted by: Måleri Stockholm @ 2月15日2012年
Another useful article again. Thanks.
Posted by: Fasadmålning Stockholm @ 2月26日2012年
Thanks a lot for sharing this with all of us you actually know what you are talking about! Bookmarked. Kindly also visit my site =). We could have a link exchange agreement between us!
Posted by: Waylon Rosentrance @ 3月1日2012年
Thanks for another informative web site. Where else could I get that type of info written in such an ideal way? I have a project that I’m just now working on, and I have been on the look out for such information.
Posted by: Loren Goubeaux @ 3月2日2012年
Real fantastic information can be found on weblog .
Posted by: opakowania tekturowe @ 3月31日2012年
ブギー:荒涼たるストリートの暮らし good post1281
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年
more.
Posted by: Catch your spouse cheating @ 4月25日2012年