
あらかじめ断っておくと、私たちは別にセレブ至上主義に転向したわけではない。けれど本日のPingMagは、ファッション界の大御所も惚れ込むウォーリー社豪華クルーザーのお話を、他でもないモンテカルロからお届けします!過去15年間にわたって最高に優美でハイテクなモーターボートを作り続けてきたウォーリー社の船は、炭素繊維の船体とステルス攻撃機を連想させるシルエットが特徴。PingMagはウォーリー社の創立者、ルカ・バッサーニさんに、究極のセレブの乗り物についてお話を伺ってきた。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

セーリングを始められたのはいつだったのでしょうか?
私の船への情熱はとても小さい時…それこそ6歳か7歳の頃からのものです。でもその情熱も12か13歳の頃に更に一歩進んで、執念とも呼べるものになったと思います。
その執念とは?もう少し詳しく聞かせていただけますか?
今もまだ続いていますよ。要するに、単なる情熱よりももっと強く深いものになったということです。今ではこれが私の商売であり、本業でもある。そして頭の中も常にこのことで埋まっていますから。


以前、あなたが10歳だった時にあなたのお父様が最初の船を買い与えたという話を耳にしたのですが、それがきっかけだったということですか?
私の父もセーリングに夢中で、船を操ることは肉体と精神のどちらにとってもとても健康な活動であると考えていましたから、息子たち、その中でも特に一生懸命だった私を船に乗せることは、私の教育や教養、心の健康のためには非常に良いことだと信じていました。父は私がセーリングほど健全とは言えない趣味に夢中にならないように、むしろ船に関しては私を甘やかして駄目にしたと思います。

それは例えば高速車とか?
(笑)まさにその通りです。私の兄弟が車やラリーに夢中で、父は私もそちらにいってしまうことを恐れたのでしょう。いつも「駄目だ。行くならセーリングにしろ!必要なものがあればいくらでも言いなさい。でもくれぐれも船の上にいるんだよ!」と言われていました。
ヨットを除けば、あなたの船、それも特にモーターボートは、未来的な宇宙船か海軍の船を連想させる、とても平面的なデザインが特徴的ですよね。どうしてこういうデザインになったのでしょうか?
それは私たちのモーターボートを気に入ってくださった、少なからぬ人数のクライアントの方々に懇願されたからです。常のごとく、制作は「最終的に出来上がるモーターボートの性能を当時市場に出ていたものよりも向上させる」というウォーリー式の過程から入っています。
機能性とは船がいかに波を切って進むか、そして乗客がデッキ上でいかに快適に過ごせるかを意味します。これはすなわちエンジンをかけた状態である程度の静けさを可能にすること。最終的には、船の快適さを本当の意味で向上させるのは機能なのです。それも単なるデザインというよりは、船の基本的な性能という観点から見たデザインですね。

そこで私がまず船体のデザインを考案して、それを貯水槽でテストしました。その結果、あなたもおっしゃったような、この軍艦に似たフォルムに落ち着いたのです。ですが軍艦というものは、どれも居住性ではなく機能性だけを追及して発案・設計されているのですから、それも無理からぬことでしょう。私たちの研究でも同じ結論に達しましたから、その点は疑いようのない事実だと思います。
デザインに関して言えば、例えば骨組みの形状はシンプルなコンセプトから生まれました。上部構造は、当初からできるだけ中から透けて見える作りにしたいと思っていましたから、必然的に答えはガラスに可能な限りガラスを使うことになりました。そしてそれだけの量のガラスを使うとなると、技術的な問題から丸みのあるガラスではなく平らなものを使わざるを得ません。その結果、最初にできあがったのは宝石、ダイアモンドのようなものだったのです。

波を切るダイアモンドですか!
はい(笑)。でも半月ほど経つと、それもちょっと複雑すぎるような気がしてきたので、もう少しすっきりさせたらこの形、シャープでシンプルな正方形の「ステルス攻撃機」に酷似した形になったのです。実際のところ、ステルス攻撃機もレーダー波の反射という別の目的から同じ結果になっただけなのですが。そのために平面パネルを使用せざるを得なかった。
でもあなた方は高級志向の結果に落ち着いたと。
ええ。ですが私たちのデザイン過程は、ヨットにしても、美しいもの、他とは違うものを作ろうというのではなく、機能的に優れたものを作るというアプローチから始まっています。高級志向は単にそれに付随した結果にすぎません。

形は機能についてくると、考えられているということですね?
その通りです。とは言え、おそらく美しさはどの所有者にとっても船のもっとも重要な機能だと言えるでしょう。最終的には、たとえ機能を優先したフォルムでも、均整のとれたものを作りたい、デザインしたいということになります…。

そうそうお目にはかかれない118ウォーリー・パワー。(写真提供:ウォーリー社)
…その結果ミニマル的になると。
それは好みの問題です。私は複雑なものよりはシンプルな方が好きです。
だから炭素繊維やファイバーグラスを多用されたのですか?
そうです。炭素繊維を使ったのは、それが飛行機などにも使用される、もっとも軽くて頑丈な素材だからです。構造的な観点から言えば、これが使えるものの中でもっとも適していたということです。

そしてそれをスキーにまで拡大されたのですね。
まったくその通りです。スキーではそれがもっと重要になってきます。
それに加えて、あなたの船と他の船の決定的な違いは、デッキからの展望の妨げになるものが何もないということだと思うのですが、おそらくこれも先ほど仰っていた機能性からのアプローチの一環なのですよね?
それは最終的な美学の問題ですね。これだけ素晴らしい形状をデザインしたのだから、雑多なアンテナや衛星用のドームなんかでそれを壊すのはもったいないでしょう。

特筆すべきは、あなたがインテリア・デザインにラッツァリーニ・ピカリングやノーマン・フォスター卿といった、世界的な建築家を選んだことだと思うのですが。
ええ、これまでに2隻を一緒にデザインしています。
どんな感じでしたか?
大変興味深い体験でした。彼のスタイルや経験からは多くを学べたので。最終的には、共同作業はとても良い結果になったと思っています。

ホームページを拝見したところ、建築的なアプローチ以外にも、もっと大きな構想をお持ちのようですね。3Dイメージで見る計画中のウォーリー・アイランドは、長さ99メートルとのことですから、まさに巨大ですね!このメガヨットとも呼べる船のコンセプト(そしてテニスコートやヘリポート3機分、トロピカル・ガーデンまで作れる理由)について教えてください。
今既にある、もしくは建設中のこのサイズのメガヨットは、屋内の空間はふんだんに取っているものの、基本的にはインドア生活だけを想定して作られたものばかりで、波や海風、景色を楽しむべき屋外空間がまったく活用されていないのです。第一に考えたのはこのことです。
第二に、これもまた機能面からのアプローチで、長くて高さのない船の方が短くて背の高い船よりも海に適していることを考慮すると、船の重心をできるだけ低くすることができれば、海が荒れてもより安全で快適に過ごせるでしょう。このウォーリー・アイランドは、船体がより長くて低いのに対して上部構造はほんのわずかですから、揺れも大幅に減少するはずです。

なるほど、中々に多機能的なのですね。この船が実際に完成するのはいつ頃の予定ですか?
これほどの大きさの船を作るには3年かかりますから、最初の1隻が見られるのは、運がよければ3年後でしょうか…。
では、超スマートな118ウォーリー・パワーの建造にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?1年、それとも2年?
2年です。とは言え、これは実際に船を作るのにかかる時間というよりは、造船所の未消化注文の問題なのですが。幸いに、うちでは他の船も建造されているので。

退屈を感じたら、菜園の拡大などいかが?ウォーリー・アイランドのイメージ画像。(資料提供:ウォーリー社)
注文にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
それはサイズ次第です。現在の未消化注文は小型のモーターボートが20隻に大型ヨットが6隻で、近日中に大型ヨット2隻に着手する予定です。
未来の所有者も、現物を手にするまでに結構待たなければならないのですね。ウォーリーの船の所有者には、ファッション界や経済界の大物もいらっしゃるそうですね。セレブのゴシップを聞かせてはもらえませんか?
スタンダードなヨットを所有する有名人は既によく知られていると思いますが、注文したばかりの方や現在建造中のお客様についてはお話しできませんね…。

なるほど。最後に一つ、大ヒットしたハリウッド映画、アイランドにウォーリー・パワーが登場することになった経緯を教えてください。
監督から私のアシスタントのモニカに連絡があって、制作予定の映画にウォーリー・パワーを登場させたいと言われました。
確かにウォーリー・パワーはハイテクで空気力学的な形状が満載の未来にぴったりですね。皆さんも今から貯金を始めてみては…?
ウォーリー社のルカ・バッサーニさん、どうもありがとうございました!サントロペのレガッタを楽しんでください。そしてウォーリー社のモニカ・パオラッツィさんもご協力ありがとうございました。
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