
今頃、読者の皆さんは家族とクリスマス気分を満喫している最中でしょうか?今年の聖夜は例年とは少し違った、素晴らしいストリート・アートと伝統的な和のデザインの融合をお届けします。グラフィティ界の第一人者、メイクワンが企画した展覧会は、60人以上ものストリート・アーティストが独自のスタイルやモチーフを使って下駄をカスタマイズすることによって、スプレイヤーの観点から日本的な物への愛情を分かち合うというもの。残念ながら、ロサンゼルスのメルト・ギャラリーで開催されたこの「カランコロン:下駄によるアート展」の会期は終了してしまっているものの、PingMagとしてはぜひともこのカラフルでステキなデザインを皆さんにご紹介したいと思い、主催者であるメイクワンさんに展覧会のコンセプトのお話を伺ってきました。
作:ベレーナ
訳:山根夏実
まず、メイクワンさんは日本文化が本当にお好きだと伺ったのですが、何がきっかけでそうなったのでしょうか?
自分でもはっきりとはわかりませんが、多分ゴジラやガメラ、モスラなどの怪獣映画への興味がきっかけだったような気がします。他にもウルトラマン、スーパー戦隊、ジャイアントロボなどの映画やシリーズを見ていました。あと、ガッチャマンシリーズも好きでしたね。余談ですが、この作品はアメリカでは「バトル・オブ・ザ・プラネット」というタイトルの方で知られているんですよ。子供の頃の自分は、怪獣のようなものが本当に実在していて、日本ではこういうことが全部現実に起こっていると信じていて、それでずっと日本に行きたかったんですよ!
私をこの文化に惹きつけたかもしれないもう一つの理由が私の隣人で、わずか7歳の時にお隣のクリスティンという日本人の女の子に一目惚れしたんです。彼女のご両親が時々食事に招待しくれたのですが、彼らのマナーや振る舞い、そして勿論料理には大変感銘を受けました。これが和食との初遭遇でした。もしかしたら、彼女を見ながら食べることで、余計に美味しく感じていたのかも…。

SM的に生まれ変わった刺々しい下駄のディテール。(画像提供:Pinguino)

時代を感じさせる作品。LAを拠点とするプライムの「ジャップ・トラップ(アメリカのプロパガンダに触発されて)」。(画像提供:Pinguino)
そんなに小さな頃だったのですか!では現在に戻って、下駄の鳴る「カランコロン」という音を展覧会のタイトルに選んだ理由は?
他にもいくつか題名を考えてみたのですが、どれも皆不自然であからさまな気がしました。「カランコロン」ならインパクトもあるし、日本文化という面でも意味があると思って。あと、日本語には音を擬態語で表現する傾向があるので、尚更に下駄の音を使ってみようと思いました。

一番疑問に感じるのは、なぜ絵を描く対象が「下駄」なのかということなのですが…。
それが一番自分のイメージを実現できると感じたからです。コンセプトは日本らしさを前面に押し出して、その匠の技と美しさに焦点を当てること。そしてよくある日本に対する固定観念を打ち破ることでした。当初は「うちわ」を使おうかとも思ったのですが、こちらはある意味世界共通のものです。その反面下駄は日本独特のもので、和のものであると一目でわかりますから。

なるほど。とは言え、木製の下駄とスプレー・ペイントの接点はどこにあると思いますか?
そういった意味では、いかなる芸術や工芸形式とも直接の関係はありませんが、それこそがこの展覧会の隠された魅力でしょう。その他の関連性は、すべてそれぞれのアーティストの主観と解釈によるものです。この展覧会では下駄とスプレー・ペイントが融合しているのであって、よくいう「東西の出会い的な展覧会」ではないんですよ!

確かに。次はストリート・アーティストたちについてお伺いしますが、木の下駄の表面が彼らにとって理想的なキャンバスなりえるのはなぜでしょうか?
平らですからね。まあ要するに、丸くて理想的な表面でも、下駄の平らな面の方がずっと作品の実現性が高いということです。


参加されたアーティストの中には、日本の下駄の伝統的な要素を題材にされた方もいらっしゃったのでしょうか?見る限りでは、自分たちのストリート・アート的なモチーフを題材にした方が多いようですが…。
ええ、何人かはいましたよ。ですがそれぞれのアーティストには、特に「日本らしさ」を求めないようにと、事前に強く勧めておきました。この展覧会の狙いは、いくつかの例外を除いてすべてが完全に日本的であることで、その例外の大部分が下駄に描かれたアートなんです。

ああ、なんとなく分かった気がします。展覧会とは少し離れた質問になりますが、80年代の初期からロスのグラフィティ界で活躍されている(!)メイクワンさんとしては、最近の若手のスタイルをどう思われますか?
それはもうスゴイものですよ!私にはどうやっても昨今の新しいスタイルを真似することはできません。グラフィティは進歩し続けていて、私自身もアーティストとしてその進歩に対して柔軟であらねばなりません。しかしながら、今の若い人の多くがただ描くことだけを目的としていて、文字を作り出したり、独自のスタイルを生み出すことの喜びを本当には理解していないと思います。そういった人には文字制作の基本が欠けているから、必然的に構造と中身のない文字を描くことが多い。ちゃんと文字を自由に操って、そこから更に発展させるには、文字の基本をきちんと理解する必要があります。私としては、最近の「若いの」がやっていることの大半は、既にあるものの二番煎じだと思いますね。

では、それが意味するところの最近のスタイルとは?
より高い技術、色のバリエーションとコンビネーションの向上、それに文字の大幅な変形。要するに、文字の構造やフォルムを保った状態で変形を施し、既成概念の枠を超えるには、基礎を知っておく必要があります。例えば、フランク・ゲーリーだって建築の基礎を熟知していなければ、あんな作品は作れないのです。
ロサンゼルスのグラフィティ界の懐かしいエピソードみたいなものはありますか?

メイクワンさんと、オープニング・パーティーにも来場した俳優のロビン・ウィリアムズさん。かなりのストリート・アート好きだとか!(画像提供:MakeOne)
親しい友人や仲間と集まって、何時間も延々と絵を描きながら冗談を言っては笑って、遊んでいた古き良き昔をいつも思い出します。人生に悩み事なんて何もなくて、邪魔なプライドも、人種の壁も、分け隔てできるほどの経済知識も、すべてをぶち壊したくなるような嫉妬もなかったあの日々を…。
まあ、今だからこそその当時がバラ色に感じられるのでしょうね…。最後に、メイクワンさんのフォトログで俳優のロビン・ウィリアムズさんと一緒に写っている写真を拝見したのですが、あれについて教えてください。彼もグラフィティがお好きなのでしょうか…?
彼がある日、メルトダウンの書店にフラリと入ってきて本を買って行ったので、その時に展覧会のチラシを渡して招待したんです。そうしたら本当に来てくれて、作品まで買ってくれた!聞いた話によると、彼もグラフィティの熱狂的なファンだそうです。自分のファンであってくれればいいんですけどね!
それは本当に面白いお話ですね!メイクワンさん、ストリート・アートと日本の美しい伝統を結び付けた素敵な展覧会のお話をありがとうございました!
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