
意識を拡大させよう!今日は知覚の扉云々についての話は一切なしで、ブラジル出身のブルーノ・ナインリィ(Bruno 9Li)の素晴らしく鮮烈なイラストレーションを見てみたいと思う。しかも、作品は全てマジックペンのみで描かれているというから驚きだ。サンパウロを拠点に活動する彼は、先日、雑誌「Rojo」のバルセロナとサンパウロの画廊での展示と、サンノゼのアンノ・ドミニ・ギャラリーでの個展「ミステリウム・ トレメンダム(畏るべき神秘)」を終えたばかり。PingMagではそんなブルーノさんに、なんとヘルメス主義についての話をお伺いしてきました!
作:ベレーナ
訳:山根夏実

まず、あなたのアーティスト名の「9Li」(ナインリィ)の意味について教えてください。
9という数字は、ポルトガル語では「ノヴェ」と言います。それで「ノヴェ」に「リィ」をくっつけて、私の苗字である「ノヴェリ」にして、絵にサインを入れる時に使っています。この省略の仕方は、もう何年も前にストリート・ペインティングにサインを入れていた頃から使っているんですよ。私の苗字をそれと分からないように壁に残すには最高の方法だったので…。

中性紙にインクとマジックペンだけを使って描くのはなぜですか?
私の考えを視覚化するために最適の手法だからです。絵を描くということは、「不可視」のものが「可視」になることです。紙というものは基本的に軽く、ペンはとても便利に感じるもので、石や金属といった重い素材と違って、まるで宙に絵を描いているかのような感覚を与えてくれます。紙とペンというのはあまりにも脆弱ですが、私の思い描く詳細な意図や出会い、シチュエーションといったものは、複雑な世界を通して、最もシンプルな素材で生み出すことができるのです。線が光の肉を切り裂くという事実に私は魅了され、だからこそ線の持つすべての可能性を模索したいと思っています。
私にとって、絵とは「イエスとノー」「光と闇」「上と下」などの二元的ともいえる概念で成り立っているもので、それ故にこういった両極に焦点を当てるようにしています。絵を描いている最中は、時間など存在しないかのように感じるんです。

私は自分が絵を描いている状態のことを、ポルトガル語で「アウトインディカンド」といいます。これは私と私の友達が、型にはまらない、主観的な独学の類を説明するのに使う言葉です。私は子供の頃からずっと独学で絵を学んできたのですが、幼い時から友達全員を学校のノートに描いていました。授業は退屈で、その状況から逃れるためには自分の世界を紙に記すのが一番だったんです。

なるほど。ギャラリーの情報によると、ブルーノさんは錬金術にも強い関心を抱いていらっしゃるそうですが…。その理由は?
初めて古い錬金術のエッチングの写しを見た時に、私の意識が一種のポータルから別の次元へと誘われるのを感じました。それは私にとって様々な意味を持つ体験で、今でもその体験がもたらした影響は多いです。ヘルメス主義の心像と哲学は、意識を拡大し、明晰にするためのポータルのようなもので、私が絵のシリーズを描く時もそれが本当に役に立ってくれます。あと何年も前に、友人がロバート・フラッドのエッチングの写しを見せてくれた時にも衝撃を受けました!そこから、この星における私たちの生き方を理解するための新しい方法を学びました。

…「意識の次元」という言葉にもかなりスピリチュアルな響きがありますね!他にも、例えば瞑想をするとか、その別の次元に到達する手段があるのでしょうか?
私としては、夢を日中に私たちに付きまとう現実として生きるというだけで、もう別の意識の次元に生きていると信じています。それ以外は、特に有名な瞑想などはやっていません。絵は描きますが。

ますます興味深いですね!ブルーノさんは色々な国籍が入り混じったポルト・アレグレにも在住していらっしゃったと聞きましたが、あなたの受けた影響について教えてください。
今はサンパウロの都心に住んでいますが、思春期と成人期の始めはポルト・アレグレで過ごしました。ナベガンテス地域は工業的な場所でしたが、クリシュナムルティも「人が自己改革を得るには、心の中に何もない空間が必要だ」と言っているように、私が住んでいた場所もその「空虚さ」によって大きな影響を与えたと思います。ですがブラジルにはアフリカから日本まで、様々な文化が混在していて、これもまた大きな影響でした。私は単に色々な文化の象徴や神話に意識を開いただけで、そうすることによって自分の神話から自分の世界を創ることができるのです。


夢のイメージがたくさん点在する世界に見えますね!ブルーノさんの夢やビジョンについても聞かせてください。
面白いもので、睡眠中の人の意識の焦点はかなり無秩序に思考や象徴、元型(アーキタイプ)などを通過していきます。ですから、私たちの意識の領域は自由な流れとして使用されています。私が絵の構造を練っている時もそうは変わりません。私は目が覚めている状態ですべてのシンボル、イメージや元型を私独自のスタイルで絵にするのです。

そしてこちらも高次の存在…。同じくアンノ・ドミニより、「A & Z」。© Bruno 9Li

部族的なエイリアン。アンノ・ドミニに展示されているブルーノ・ナインリィの「パラ・アス・エストレラス」。© Bruno 9Li
なるほど。それに関して、ブルーノさんの作品を見てみましょう。あなたの「パラ・アス・エストレラス」からは部族的なエイリアンという印象を受けたのですが…それで合っていますか?
ええ、ヘルメス思想にもあるように、私たちは別の星から来て、今この星にあって、そしていずれはまた更に高次の星を目指すのです。要するに、私たちは移動の過程にあるのであって、それを自覚する、変容と物事の不安定さの価値を理解することによって私たちの人生はより明るくなり、そして同時に深みを得るのです。人が死について話す時、人々の意識には常に悪いイメージが付いて回りますが、それは本当の死ではなく、新聞やテレビで描写されるところの死のイメージなのです。私は、人は死ぬと自分自身の中の理解を超えた深みに潜るのだと信じています。ですから、それは終わりではなく再生なのです。「パラ・アス・エストレラス」は精神の生における次の段階を指し示す存在を表した絵なんです。

本当に神秘的ですね!それではあなたの「ゲレイロ」の絵はどうですか?(タイトル・イメージ参照)侍の兜をかぶっているように見えますし、この矢やパイプは何を意味しているのでしょうか?あと、耳飾りや長く伸びた耳たぶは南米の先住民族の文化の一環と考えて良いのでしょうか?

アンノ・ドミニに展示されているブルーノ・ナインリィの「ザ・プレシャス」。© Bruno 9Li
先ほど申し上げたように、私の作品に登場する存在は様々な資料からの影響を受けて作られています。ですから「ミステリウム・トレーメンドム」シリーズの戦士も、象徴的なローブのようなものを纏っていて、あまり誰かを殺すような人間という風にはイメージしていません。しかし、彼は「銃の象徴」たるいくつもの護符も身に着けていて、それが人的な宇宙船としての彼を助けています。要するに、私たちは何を見て、何を聞いて、何を食べるのかを常に選び続けなければいけないように、このキャラクターも自身の霊的な進化にとって何が悪いのかを認識していて、無数の象徴によって護られているのです。目の部分の赤い染料は、ヨーロッパがブラジルを植民地化、侵略する以前にここで生活していた原住民の影響です。衣装はサムライをイメージしたもので、ヒゲは虎の力の象徴、矢は集中を意味しています。
これらの象徴については何分でも語ることができるのですが、私自身としては、人々が持っている象徴の知識を活用して独自の解釈をしてもらえたらと思います。最後に付け加えるなら、「死」を見たいのであれば、彼の内面に咲く花々は無視して金属の拳銃をイメージすればいいですし、彼を私たちの霊的な進化の努力を象徴する類稀な生き物と見ることだってできると思います。

わあ!類稀なイラストレーションには、何れも深く神秘的な概念があるのですね!ブルーノさん、今日はどうもありがとうございました。次は是非日本で個展を拝見したいと思います!
1 コメント
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独特。
拡張された寓話のような。
いいですね。
Posted by: cococoaki @ 1月29日2008年