
急速な経済成長を背景に、昨今の東アジアの光景は20年前とは全く異なるものとなりつつある。そして数十年後には、また今とも全く違う風景が広がっているのだろう…。しかし近代化はしばしば伝統を犠牲に成り立つもので、その傾向が特に顕著な中国以外の国々でも古い建物は急激に減少しつつある。「ビルディング・アジア・ブリック・バイ・ブリック」は、楽しみながら伝統的な建築様式に対する意識を高めようというプロジェクトで、中国、日本、タイを始めとする様々な国の建築家たちに白いLEGOのセットを配って、それぞれの好きなように作品を作ってもらうというもの。その結果、東洋的な寺院や未来的な高層ビル、持続的な新旧の市街図などが今もアジアを巡回している。そこでPingMagでもアート・アジア・パシフィックのアンドリュー・マーケルさんとピープルズ・アーキテクチャーのウェイ・ウェイ・シャノンさんにブリック・バイ・ブリックのコラボレーションについてお話を伺ってきた。
作:マイケル・マホニー
訳:山根夏実

「ブリック・バイ・ブリック」の展示会はどういった経緯で始まったのでしょうか?
アンドリュー:私たちは雑誌「アート・アジア・パシフィック」で現在の建築のあり方について特集を組む中で、建築家の方々にユニークな方法で参加していただきながら、彼らがどのように自由で楽しいチャレンジに取り組むのかを見る必要があると感じました。それで、LEGO社が白の特別仕様のキットを製造し、それぞれの参加者におよそ8,000個もの2×2、2×4、2×8のブロックを提供してくださいました。


参加した建築家達は好きな物を自由に制作することができたのでしょうか?それとも何かしら特定のテーマがあったのですか?
アンドリュー:「ビルディング・アジア・ブリック・バイ・ブリック」の意図は、建築家が素材に自然体で取り組むことでしたから、「ただ楽しむように」という以外は何も伝えていません。
それにしても、なぜLEGOだったのでしょうか…?
アンドリュー:単なる思いつきだったのですが、建築家の多くがLEGOで遊んで育ったことを考えると、本当にぴったりなんじゃないかと感じました。LEGO社の代表の方も協力することに即座にOKを下さったし、アプローチした建築家の方々からもすぐに反響がありました。そういった経緯もあって、このプロジェクトはある意味思いつきと遊びが原動力になっている感じですね。


それでは「ブリック・バイ・ブリック」の最終的な目標は?
アンドリュー:残念なことに、アジアでは多くの歴史的に重要な建築物やかけがえのない建物が都市開発の犠牲になっていますから、出来上がってきた模型を使って建物の保存に対する意識を高めたいというのが私たちの考えです。そして意識を高めることによって、私たちはただ人々に自分の環境を客観的に見て欲しいと思っています。今は半年足らずで地域が完全に変わってしまったりして、全てが信じられないスピードで変化しますから。

ショーン・ゴッドセル・アーキテクツのもう一つの応募作品は目の覚めるような美形!(写真:Sean Godsell)
次に人々が自分の地域を見回した時、なぜ以前ほど美しくないのか、なぜ北京の胡同のような昔ながらの公共建造物が近寄りがたい高層マンションに代わってしまったのか、と考えてくれればと思います。それどころか、そういった高層マンションに胡同の構造を取り入れるように要求することだって考えられるんです!私たちは特定のアジェンダを押し付けるのではなく、伝統の中で受け継いできたものを単なる歴史の保存という枠を超えて、未来への準備として見てもらいたいと思っています。「啓蒙」によって、人々が自分の環境を特徴付けるものを大切にし、それを保存するために対策を講じることができればと思っているんです。
アジアの都市では、必ずしもアメリカやヨーロッパほどに文化遺産の保護法が整備・施行されているわけではないのが現状です。また文化遺産に対する概念は常に変化し続けています。50年前の建物は保護されるべきなのか?200年前のものは?それは人々が自分自身で決めることなんです!

確かに!北京のオリンピックを前にした変化や大柵欄地区の再編を見ると…。
ウェイ・ウェイ:最近では、誰もが中国で起こっている変化を強く意識しているようですが、この破壊と再生のサイクルは、中国の歴史上で常に繰り返されてきた現象です。王朝が変わるたびに異なる暦、制度、哲学を採用し、時には言語や測定の単位まで変えてきましたから、中国という国そのものが数千年に亘る社会、政治、行動、そして空間的な改革だとも考えられています。建築と都市化計画も例外ではないのです。

ベイルートのバーナード・クーリー/DW5がエントリーした塔の昼間と…

…夜景。(写真:Roger Mourkarzel)
大柵欄地区は、長安街の南にある北京の昔ながらの商店街です。この地区全体が住民によって非公式に作られたもので、規制がないので住居も自然に並以下ということになります。ところが他の国々と同様に、中国も2008年の北京オリンピックを機に自国のアイデンティティを一新することを狙っていますから、家々が危険で不便だと考えられている大柵欄地区のような場所は完全に取り壊されてしまうでしょう。

それは本当に残念なお話ですね…。来場者の感想はどういった感じですか?建築家が提供した模型は、中国国内を巡回中の「ゲット・イット・ラウダー!」展で取り上げられていると聞きましたが…。
ウェイ・ウェイ:お客様からはとても良い反応をいただいています。子供も楽しんでくれていますね。「ゲット・イット・ラウダー!」展はショッピング街で開催されているので、子供や家族連れのお客さんはみんな偶然に居合わせた方々なのですが、色の組み合わせのない純粋なイメージの白い特製LEGOが、子供にも構造やフォルムについて考えることを促すようで好評でした。

「ゲット・イット・ラウダー!」では子供に簡単な都市計画について教えて、白いLEGOで自分の構造をデザインさせるワークショップ要素もあるそうですね。子供たちにどんなことを学んでもらいたいと考えていらっしゃるのでしょうか?
ウェイ・ウェイ:一番重要なことは、建築や都市計画といった難しい言葉の枠に囚われないで、子供たちに小さい頃から自分たちの置かれた環境について考えさせることだと思います。そのうちの何人かが建築や設計、都市計画について学びたいと思ってくれればそれだけで十分に満足です!


ある意味、子供たちは建築家よりもずっと創造力があって、私たちも大人と子供がお互いに教えあい、学びあうのだということに気付きました。実験を通して新しい創造原理を学ぶのは子供たちだけではありません。ワークショップの主催者も同じようにその場に応じて行動しながら経験を積んでいっています!

香港のリサーチ・アーキテクチャー・デザイン (RAD)の応募作品。(写真:Marcello Kwan)

我らが東京のアトリエ・ワンも「奥のない家」で参加。(写真:Hiroko Matsubara)
このイベントが終わる時には、作品はニューヨークでオークションにかけられるそうですね。その後はどうなさるのですか?
アンドリュー:収益は教育関係に寄付する予定です。突き詰めると、私たちは「ビルディング・アジア・ブリック・バイ・ブリック」を子供たち一人一人との繋がり、そしてその一人一人が最終的には他の人間に影響を与えて、物事を変えていく可能性の比喩として見ているので、教育資源を援助することは、それを達成するために最も有効な手段だと思いました…。

2007年8月に開かれた北京のワークショップで…(写真提供:BABB)

…造る楽しみを満喫する人々。(写真提供:BABB)

確かに!本当に楽しくてステキな子供へのアプローチですね。ウェイ・ウェイさん、アンドリューさん、今日は本当にありがとうございました!近日東京で「ブリック・バイ・ブリック」の展示を見られることを楽しみにしています!
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