三代目彫よし:伝説の入墨彫師

2007年10月11日 カテゴリー: イラストレーション, ファッション, 国内

三代目彫よし:伝説の入墨彫師

1980年代前半の日本入れ墨倶楽部。後列、左から5番目が三代目彫よし。

横浜市、中区の花咲町。商店街の中華料理屋の上のスタジオに、次々と名作を生み出すアーティストがいる。彼のキャンバスは人間の肌。予約は半年先までいっぱいにも関わらず、三代目彫よしの道具である「墨」を肌に入れるため、お客は世界中からやってくる。PingMagは看板のない彼のスタジオを探し当て、三代目彫よし氏の世界を少しだけ覗かせて頂いた。

作:ケビン・マクギュー

日本の入れ墨の歴史は弥生時代にまで遡ると言われている。しかし、古墳時代には、罪人に対して強制的に皮膚に墨を入れる行為が行われ、入れ墨にまつわる悪い評判もこの頃始まったとされている。そして明治時代になると、入れ墨は文明開化に相応しくない「野蛮なもの」として批判され、法律で禁止された。当然、彫師達自身も非合法的な存在となり、捕まらないように転々と仕事場を移動せざるを得なくなった。しかし、多くの彫師が港町・横浜へ移動すると、外国人の船乗りを通して日本の入れ墨の噂が世界中に広がり、戦後、入れ墨はついに合法化された。

三代目彫よし氏は、今日も横浜に拠点を置いている。ちなみに、三代目彫よしは二代目彫よしの息子ではない。1971年、二代目の弟子となった彼は、師匠の仕事を目で見て学び続け、手彫りのテクニックをマスターするために自分の足などに練習を続けていたそうだ。そして、1979年に三代目彫よしを襲名した。


三代目、彫よし氏のスタジオで。神聖な場所に置かれた、とても大切な道具。

グラデーション用の道具の先端。ブラシのように見えるが、46本の針で出来ている。

手彫りとは、もちろん手で彫るという意味だ。筆のように見える道具は、毛の代わりに針で出来ている。先端を墨に入れて肌を刺しながら色をつけるので、ミスしても消すことの出来ない真剣勝負だ。


1980年、彫よし氏に入れ墨を入れてもらうロックハートさん。

「痛いですよ」とカナダのバンクーバーでタトゥー・アーティストとして活躍しているトーマス・ロックハートさんが言う。1970年代、ロックハートさんはカナダやアメリカの有名アーティストを捜し出しては、タトゥーマシンによるタトゥーを入れた。そのうち、日本の伝統的な手彫り方法に興味を抱くようになり、1980年に来日、三代目彫よしに初めての手彫り入れ墨を入れてもらった。現在、カナダでは日本風タトゥーのアーティストとして知られるロックハートさんは彫よし氏のことを「世界中で尊敬されている伝説的な存在」と言う。言葉はそれほど通じなくとも、気の合った二人は友達になり、ロックハートさんは彫よし氏へタトゥーマシンをプレゼントしたそうだ。

仕事中の彫よし氏。こちらの男性は10年も通う常連さんだそう。右肩には「三代目彫よし」のサイン。そのサインには、一番最後に色がつけられる。

全身入れ墨の細部。金魚のひれのラインは凄く細かい!

「手彫りとマシンは全然違うんですよ。」と彫よし氏が説明する。「野球なら、バッティング・マシンと本物のピッチャーぐらいの違い。ボールを投げるのは一緒だけど、ほかは全然違いますよね。」61歳になる彫よし氏はマシンを使う機会が増えてきた。「やっぱり速いんですよね。でも手彫りも結構ありますよ。」先述のロックハート氏はこう説明する。「彫よし先生に鯉の入れ墨の周りに薄い灰色の水を描いてもらったんですが、僕が驚いたのは、先生が黒と白の墨を混ぜずに、黒墨だけを使ったことなんです。つまり、軽く刺し続け、少しだけ墨を入れて灰色を作った。マシンならそれは絶対に不可能ですよ。」

「デザインは入れ墨を進めながら決める」と彫よし氏が説明する。「最初から全身に入れ墨をすることを決める人は少ないんです。どのぐらい痛いのか、最初は分からないですからね。例えば、バックピースが終わったら、今度は全身でいこうと言うお客さんが多いんですよ。お客さんからのリクエストから始まり、それから私のアイデアを入れて進めてゆくのです。」


入れ墨以外に、彫よし氏は絵も描いている。こちらは彫よし氏がイラストを手がけた本のカバー。

同じく彫よし氏による耳なし芳一のイラスト。

彫よし氏は、スタジオがある横浜に、入れ墨に関する歴史的資料を展示する「文身資料館」も経営している。入り口の近くには、ロックバンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズのボーカリスト、アンソニー・キーディスと彫よし氏が並んで写っている写真が飾られている。とても仲が良さそうだ。外国人のお客さんも多いのだろうか?「たくさん来るんですよ。」と彫よし氏が答える。「外国に住んでいる人は、半年ぐらい前に予約を入れて、世界中からやって来るんです。」


若かりし頃の三代目彫よし。ふんどし姿!

最後に二つ、彫よし氏に質問を投げかけてみた。まず、一般的に言う「入れ墨」と「タトゥー」は違うのだろうか。「入れ墨は普段隠すものです」と彫よし氏が言う。「最近の若者は見せるためにタトゥーをしている。そこが違うんですよね。」「ちなみに、彫られる時はどのぐらい痛いのですか?」「それを言葉で説明するのは難しいですよ。」と彫よし氏が笑いながら言う。「自分で体験しないと分からない。」

三代目彫よし氏。スタジオにて。

三代目彫よしさん、トーマス・ロックハートさん、今日はどうもありがとうございました!

文身資料館
休館日:毎月1日、10日、20日
開館時間:12:00〜19:00(最終入館時間は18:30)
入館料:1000円
横浜市西区平沼1-11-7今井ビル
TEL&FAX:045-323-1073

5 コメント

  1. 今先生に龍を入れてもらってます。彫り初める時先生が悪魔に見えますが彫り終わりにせんせいがシュパシュパと消毒してくれる時は天使に思えるのが不思議です。これからも宜しくお願い、いたします。

    Posted by: 匿名 @ 6月4日2008年

  2. ☆オギャーと生まれ目を開けるとそこに肌絵がありました。最初に刺青を彫ったのは小学校6年生の頃!学芸発表会にアフリカ原住民族の長老の役をやったのが切っ掛けでクラスの皆に手伝ってもらい総身彫りで入れました!あくまで絵の具で?ペイントタトゥーですが非常に面白かったのを覚えています。その後も身内やら会社の仲間とかに刺青入れた人が多くて御縁の深さを感じました。最近又々オギャーと生まれてとある事情で転機を迎え福岡の高名で人気の彫師やスタジオでワンポイントを沢山彫ってます!三代目彫よし先生は幼少の頃からの憧れの存在です!今最もこれまでの人生で彫って頂きたいナ~って想ってます。彫って貰えるなら3ヶ月だろうと半年だろうと待ちます!飛行機でヨコハマ迄行きます!アポイント取れませんか?日々想いは募るばかりです。どうか宜しくお願い致します!

    Posted by: 刺青匿名ユウと申します @ 11月30日2008年

  3. [...] Japanese Text [...]

    Posted by: Kevin Mcgue - Tokyo Based Journalist & Filmmaker » Horiyoshi III, Legendary Irezumi Master @ 1月27日2009年

  4. [...] Read the Japanese version at PingMag» « “Yakuza Moon: Memoirs of a Gangster’s Daughter” Book Review “Naohiro Ukawa: Capturing A Typhoon” Translation » [...]

    Posted by: Kevin Mcgue | “Horiyoshi III, Legendary Irezumi Master” Article @ 4月19日2010年

  5. 刺青は体全体に針の先で彫るととても痛く感じる。肌に描くもので針でやるより機械彫りでやったほうが安心だ。腋や陰部は刺青を彫らないからだ。

    Posted by: 匿名 @ 5月16日2010年

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