
オランダ人写真家ルネ・ナイエンス氏とクリエイティブ集団ケッセルスクライマー社のアートディレクター、エヴァウト・ブーンストラ氏が、色褪せた料理写真を集めて「バッド・フード・ゴーン・ワース」というタイトルの作品にしようと思いついたのは、食事をしようと待っている店先でディスプレイされている料理の写真を見ていた時だった。この作品は、奇妙な食物思考を表現しているのではなく、全てのありふれた物事が持っている避けられない運命、つまり、徐々に色褪せ、目の前で消えていくはかなさを表現しているのである。「バッド・フード・ゴーン・ワース」中の写真はヴァニタス画の現代ファーストフード・バージョンと言えるだろう。PingMagが今回紹介するのは食欲をそそる料理写真とは決して言えない、フードアートのシュルレアリスム作品だ。
作:ベレーナ
訳:坂井由紀

最初に、この作品集を作った経緯を教えてください。
エヴァウト:注文したフライドポテトが出てくるのを待っている時、店内に飾ってあったメニューの写真が色褪せて、黄色や緑に変色していることに気づき、その時このアイデアが浮かんだのです。こういったイメージの二重性が私の心に響いたからですね。メニューのような料理写真は最初のクオリティが保てなくなったとしても、その機能を失わないのです。写真家でありディレクターでもあるルネは、同様に二重性に対する情熱を持っているため、この作品を一緒に作るなら彼だとまず思い浮かびました。
ルネ:そのアイデアがとても気に入ったから、それはもう猛烈に写真の被写体を探し始めたよ。

お二人にお聞きしますが、作品に使われている写真はどこで収集されましたか?レストランなどのメニュー写真以外は、もしかしてフリーマーケットで集められたものだったりしますか?
ルネ:フリーマーケットやインターネットから集めた写真は1枚もないよ。どの写真もレストランやファーストフード店、メニュー写真があるあらゆる場所へ行って撮ったものだからね。僕達は仕事で移動することがかなり多いんだけど、2年近くの間ヨーロッパのどこへ行っても、まるで感知センサーみたいに撮りたい写真を見つけることができたんだ。ロシア、セルビア、モンテネグロ、ベルギー、スペイン、ドイツ、オランダ、フランス、イタリアなんかに行ったよ。
エヴァウト:それからトルコもね。

作品を撮るために何か変わったアプローチをしましたか?エピソードがあれば教えてください。
ルネ:いくつかのお店で追い出しをくらったことかな。でもその反対に、メニューをわざわざ持ってきて写真を見せてくれたお店もあったね。そういえば、この本が発売されたお店の向かい側にあるグリルバーは、掲載されていた写真を見て自分達のメニュー写真を変えたみたいだよ。
エヴァウト:すごく面白かったのは、この本の印刷屋が印刷できないと言ってきた時のことですかね。私達が「何か技術的な問題でもあるのですか?」と聞くと「いいえ技術的には問題ありません。ただ、写真を見るたびに気持ち悪くなるものですから…」と答えたのです(笑)。

この作品をある種の不健全な美学と呼んでも差し支えないでしょうか?もしくは、この特別なフードアートを表現するもっとふさわしい言葉があれば教えてください。
ルネ:両方かな。ペイントされたようにとても美しいものもあれば、かなり気持ち悪いものもあるのも確かだからね。
エヴァウト:視覚の世界は非常に速く時間が進んでいると言えます。雑誌は週1回または月1回発行され、ポスターは毎週張り替えられ、広告は月2回入れ替えられ、新聞は毎日発行されるように。全てが最新かつ新鮮でなければならないため、衰退していく時間がないのです。スナックなどを撮る料理写真は視覚世界の中では、時間が普通に進んでいく数少ない分野のひとつだと思います。こういったことから私達はこのアートを受け入れてその中の美しさを見出していくべきだと考えるのです。

大抵家庭用プリンターの印刷物は、色褪せが早い。「バッド・フード・ゴーン・ワース」より。© KesselsKramer

一風変わった美しさをご覧あれ!「バッド・フード・ゴーン・ワース」より。© KesselsKramer
お二人の作品は私達が持っている美の定義にほんの少し皮肉な方法で疑問を投げかけているように感じられます。通常は、美味しそうな料理を想像すると、それがどんな味かを思い出しますよね?
ルネ:まずどんな料理がその店で食べられるか知ることが大事で、それでお店を選ぶことができるからね。でも、結局メニュー写真がどんな風に写ってようと関係ないんだよ。お腹が空いていれば何でも食べちゃうんだから。
エヴァウト:その通り!皮肉なのは「メニュー写真がどんな風に写ってようと関係ない」というところ。これは私達の写真の扱い方に対する皮肉であり、写真が色褪せ始めると時代遅れになってしまい見向きもされないことを指しているのです。もうひとつ皮肉な側面を挙げると、現代のテクノロジーはこの点においてあまり役には立っておらず、むしろ状況を悪化させています。メニュー写真を自分達で撮り、家庭用プリンターで印刷するレストランが中華料理店をはじめ、沢山ありますが、そうやって印刷された写真は数日で色褪せてしまいますから。

色落ちしたことで、全く違うものに見える作品が非常に気に入っています。これらは、プロの写真家として、これらに惹かれたのですか?
ルネ:美術学校時代に実験的にやったことを思い出させる写真は何枚かあったな。ネガを燃やしたり、砂を上にのせたり、砂に埋めたり、2重写しをしたりしていた頃をね。色褪せること自体は間違いなく写真の美しさなんだ。だけど誰も写真がどう写っていようが気にしていないことにすごくびっくりしたよ。レストランのオーナーも、それを見るお客さんもね。
エヴァウト:だいたい私自身も完全なものより不完全なものに関心がありますよ。

写真撮影したレストランで食事もされました?
ルネ:もちろん!写真の撮影許可をもらう前に何か注文したほうが、印象がいいんじゃないかと思ったからね。
エヴァウト:私はいただきませんでした。写真というのはそもそも過剰なんです。あまり見過ぎてしまって、気分が悪くなってしまいました。

「バッド・フード・ゴーン・ワース」の表紙。© KesselsKramer
作品の紹介文に「結局、人の好みはそれぞれだけど、いつかは必ずお腹がすく」とありましたが、素敵なことわざのバリエーションですね。個人的にどんな料理がお好きですか?
ルネ:僕は地中海料理と家庭の煮込み料理が好きだね。出来るだけシンプルで良心的なものがいいな。
エヴァウト:ベジタリアンかオーガニックフードであればハンバーガーであれフライドポテトであれ、何でも大好きです。
きっと日本のレストランに飾られているプラスチック製の食品サンプルも気に入るんじゃないでしょうか。ただし、このサンプルはそう簡単に色褪せないですけど…。ルネ・ナイエンスさん、エヴァウト・ブーンストラさん、今日は視覚の珍味とも言えるお二人の作品をご紹介くださって本当にありがとうございました!
3 コメント
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友人らのアンパンに食品を並べ腐食する経過を見てもらったのですが、総じて母親たちの不評を買いました。「子供が食べようとする!」
Posted by: katute @ 10月2日2007年
super site budur dudak
Posted by: goruntulu sohbet @ 7月22日2011年
色褪せた料理写真が映し出すもの good post1230
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年