
スペインの出版社、アクターに勤務する編集者の坂本知子さんは、日本のグラフィックとイラストレーション・シーンを少しでも多く世界に紹介すべく、この4年間、芸術的な紙の山に埋もれて過ごしてきた。そして完成した「Japan Graphics 2(JPG2)」では、PingMagの創刊当初からお付き合いのある馴染み深い面々との再会が待っていた。PingMagは坂本さんから、2002年に出版された第1弾、「Japan Graphics 1」以降の日本のグラフィック・シーンの変化や傾向についてのお話を伺った。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

「Japan Graphics 2」。見た目も最高!表紙に貼り付けられた木製のJPGアイコンが格好良い。© Actar
坂本さんについては、日本人で、伊東豊雄氏の本を含む多くの書籍を編集されたということくらいしか存じ上げないのですが…。
私の本職は建築家で、バルセロナにある「アクター」という建築とデザイン関係の出版会社に勤務しています。出身は東京です。建築の「書籍雑誌」、「ヴァーブ」の編集も手がけてきました。「Japan Graphics 1」と「Japan Graphics 2」以外にも、オランダのデザインについての書籍、「HD」(Holland Design=オランダ・デザインの略)の編集をしています。
それでは早速、昨年末に発売されたデザイン集「Japan Graphics 2」について聞かせてください。
2002年に出した「Japan Graphics 1」の売り上げ、評価ともに成功を収めたので、必然的に第2弾を作ろうという話になりました。この続編を作る際には、それぞれのデザイナーに自分の好きな場所、自分のスタジオ、そして自画像を送ってほしいとお願いしました。私たちは世界中の情報を共有してはいますが、その中でも日本のデザインはその他のものと厳密に区別したいと思っています。それというのも、身近な環境、何処を歩き、何を食べるかといったものが意識していようがいまいが、作品に自然とにじみ出るものだと考えているからです。例えば、生意気は外国人デザイナーですが、日本人よりも日本人らしい方々で、それは自分たちの視点で感じる日本の様々な物事に大きな喜びを見出しているからだろうと思います。その他にも、ニューヨーク在住のケイタロウや台北在住のトモアキ・リュウは外国に居る時の方がより一層日本人らしく感じるのではないでしょうか。おそらく、私やあなたも同様だと思います。

確かに人のアイデンティティとその文化的な背景による変化は、それ自体が一つの論点ですよね。ですが今日のところは、ここ数年の日本のグラフィック・デザイン全体の変遷を中心にお願いします…。
それで色々と調べてみると、デザインがどれだけ変化したかということに驚かされました。なぜなら、私たちが1冊目を編集した時は日本の若手のフリー・デザイナーはみんな自分のホームページを持っていて、その当時はコンピュータ技術がグラフィックスと融合する可能性を秘めているように思われていたんです。その頃のテーマの一つに、「コンピュータを使っていかにデザインを普及できるか?」というものがあったのですが、これは例えば、自分のホームページを作ったり、自分で印刷をしたり、インタラクティブなデザインを作ったりということですね。コンピュータ・ネットワークと共に、これがデザインにおける様々なことを変えていくと考えられていました。

私たちはこの傾向が継続的なもので、数年後にはより一層のデジタル化とインタラクションが見られるだろうと思っていたのですが、意外にもそうはなりませんでした。その代わりに、2006年には作品により一層の価値を与える、手作り風のアナログなデザインが広まっていることが分かりました。4年前には、ハイテクのものはある種の価値がありましたが、今では一点物であったり、既にあるものに合わせて作ったアナログ技術やハンドメイドのデザインの方が高く評価されています。もちろんこれは70年代や80年代に回帰するのとは違い、アナログ技術が他のものと組み合わさって融合しているものです。それが今回の「Japan Graphics 2」のテーマですね。

本当に綺麗!草野剛の作品、「ノー・ニューク」、2004年。「地球に優しく」というテーマでデザインされた、エドウィンのコマーシャル・グラフィックで、核廃棄物のマークが使用されている。© Actar

草野剛。2005年にビクター・エンターテーメントの依頼で制作された作品、「ソリッド」。フュージョン・バンド、ガリのジャケット・モチーフで、レンダリングされた画像の断片を再構築して作られている。© Actar
はい、それで…?
デザイナーの姉川たくは、文字通り自身のデザインを縫うことで表現しています。まず、フォトショップとイラストレーターで下絵を作って、そのベクトル・データをミシンと互換性のあるものに落とし、それをジーンズやシャツに縫い取って、オリジナルのアート作品を作り出しています。
また2年ほど前は、グラフィック・デザインとは完璧にデザインして商品として楽しむべきものでしたが、最近のデザイナーはグラフィック・コンサートとでも言うべき個展も開くようになっています。先日ミュージシャンがデザイナーとコラボして、30人、50人もしくは100人しか参加できないというテンポラリー・グラフィック・デザインのパフォーマンスを行ったのですが、これはそこで作った唯一の作品も消えてしまうというものでした。パフォーマンスは全て録画されてそのビデオが作られていますが、こういったアプローチはごく最近のもののような気がします。

他にはどんな方がいらっしゃるのでしょうか?
例えば、太公良(たこらふとりきみよし)は、壁に自分の絵を投影して、そこに更に絵を描き続けるというパフォーマンスを東京と札幌で行っています。マストワン/イセネエヒヒネエも同じことをやっていますね。彼の場合は黒のスプレーで壁にグラフィティを描いて、そこに投影機を通じてデジタルで絵を描いていくというパフォーマンスです。「Japan Graphics 2」に収録した彼らの写真を見ると、まるでコンピュータがクラッシュしたかのように見えます…。

最近PingMagが取材したゲストも2組ほど取り上げられているようですね!大日本タイポ組合と生意気の方々ですが…。
生意気のお二人が私たちのプロジェクトに参加するのは、実はこれが2回目なんです。4年前には、彼らはイラストレーターを使って完璧っぽい作品を作っていましたが、それ以来多くのパフォーマンス、コンサート、イラストレーションやパーティーなどを行っています。大日本タイポ組合も今は観客の前で文字を作るというライブ・パフォーマンスを行っていますね。

2004年に行われた稲葉英樹の個展、「New Line」より。© Actar
大日本タイポ組合のトイポグラフィですね!去年のデザイン・タイドでは素晴らしい作品が出展されていましたね。
私たちは大日本タイポ組合のカード集的な本も出しているんです。これは読者が文章や名前を作って、文字で遊ぶことができるようになっています。実は、私たちも大日本さんが大好きなので、彼らの仕事がもっと世界中に認められるように努力しています!4年前には彼らはまだそれほど有名ではなくて、私も中国漢字と日本漢字のどちらもを使った彼らの作品を完全には理解できませんでした。それでも、彼らの読まれるため、使われるためのものではないグラフィックという新しいコンセプトに今ではすっかり魅了されています。お二人は文字というテーマを使って、全く別のものを表現していますからね。

この本の紹介は、「日本の若手プロフェッショナルの作品が、日本の経済的、社会的、文化的な変化にどう影響したのか」について触れていますが、どういった点でグラフィック・デザインが日本社会に反映しているとお考えですか?
2002年の頃は商業的な依頼がメインだったので、私たちも大口の顧客を持つグラフィック・デザイナーを選びました。しかし、今ではデザイナー自身の個性を活かした芸術的な作品が増えてきているので、今回は意図的に個人客をメインとするフリーのデザイナーを選びました。もしかすると、4年前の方が景気が良くて、それ以降大口の顧客が激減したことが最近のデザイナーの仕事に関係しているということなのかもしれません…。

バルセロナでの暮らしで、日本とヨーロッパのグラフィックの明らかな違いに気付くことはありますか…?こういった一般論が可能であればの話ですが…。
ちょうど今、オランダのグラフィック・デザイン本を作っているところなのですが、ヨーロッパのデザインの方が概念的、もしくは画像の裏にあるメッセージ性に重点を置いていると思います。もちろん、日本のデザインにもメッセージ性やコンセプトはあるのですが、それ以上に表面的な処理と仕上げの細かい点に気を遣っているように思えます。例えば、「Japan Graphics 2」には極細のラインという章があって、稲葉英樹が非常に、むしろ十分過ぎるほどに、解像度の高い作品を寄稿しています。ヨーロッパのデザインがそれほど解像度とディテールに注意を払わないというわけではないのですが、どちらかといえばインパクト重視ですね。

日本の若手デザイナーは今でもそういったアプローチをしているのでしょうか?
若手のデザイナーは浮世絵や和服などの伝統文化をDJのようにミックスして、新しいものだけでなく古い文化も取り入れています。更に言えば、日本のデザイナーは最近では日本人グラフィック・デザイナーとして見られることをとても強く意識していますから…。こういった文化的な背景を持つ国で伝統的なスタイルに回帰し、そういった影響を逆輸入するのはとても自然なことだと思います。

面白いことに、そういった伝統は日本を出て世界中に広まり、その時になってようやく日本人はその偉大さに気付いたのですよね…。
一旦輸出されたもので私たちが再発見するものは、ある意味両刃の剣でもあります。国外からはとても日本的に見えるものも、身近にあると中々気付かないものです。例えば10~15年前は、伝統文化以外の漫画などのサブカルチャーは芸術作品として紹介するには及ばないものだと考えられていましたが、世界中で知られるようになって初めて、そういった影響の使い方が分かるようになっています。

とても残念ですが、今日はこの辺で切り上げないといけないようです。今後のご予定は何かありますか?
オランダのデザイン集の書籍ですね。2001年に出したものの第二弾ということで、とりあえずは「Super HD」というタイトルになっています。ちなみに、ハーメン・リエンバーグもこの書籍に参加しています。PingMagのリンクを添えて、こちらのことを教えてくれたのは、実は彼なんです。本当に楽しく読ませてもらいました!
そう言っていただけると嬉しいです!アクターの坂本知子さん、そしてハーメンさんも、今日は「Japan Graphics 2」に関する興味深いお話をありがとうございました!巻末の参加デザイナーの一覧には、各人がホームページ、メールアドレス、住所や電話番号まで載せた自己紹介が載っています。お役立ち情報かも!
まもなく開催される東京デザイン・ウィークでは、アクターも「スペイン・プレイタイム(フレッシュ・エア・イン・スパニッシュ・デザイン)」という展示会を東京のスペイン大使館で主催する予定です。お楽しみに!
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guzel sıte budur
Posted by: goruntulu sohbet @ 7月22日2011年
JPG2:日本のグラフィックデザイン2002 - 2006 good post1223
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年