
私たちPingMagが南アフリカのデザインの大ファンであるというのはご承知のとおり!ビーズで編まれたフラミンゴや電話ケーブルを使ったブレスレット、雨ばかりのイギリスの空模様に合わせてなのか、刺繍入りの傘といった作品が、南アフリカのクワズール・ナタール州からロンドンのOXOタワーへやってきて、「B.A.D.:ベスト・オブ・アフリカン・デザイン 100%ズールー」という展示会で披露された。PingMagは今回の展示会のキュレーターでアフリカン・ミレニアム・ファウンデーションのエイミー・サンダ―ソン・メイヤーさんと一緒に作品を見て回り、南アフリカのアーティストの現状やその独特な編みの技術について伺った。
作:ポリー・バートン
訳:手老祐香

ロンドンでの展示会「B.A.D.」で作品に囲まれるアフリカン・ミレニアム・ファウンデーションのエイミー・サンダ―ソン・メイヤーさん。
まずはじめに、あなたがたがどのような活動をなさっているのか簡単に教えていただけますか?
アフリカン・ミレニアム・ファウンデーションは5年前に始動し、当初はジンバブエ出身の女性彫刻家にのみ焦点を当ててプロモーションしていました。「イン・プレイズ・オブ・ウーマン」という展示シリーズを世界各地で3年間続け、それと並行して45歳以下の女性彫刻家たちを応援する目的で、国内における展示会も毎年おこなっていました。活動を始めた頃のジンバブエのアーティストの状況といえば、自立できている女性彫刻家はたったの5人、あとはそれこそ数知れないほどの男性アーティストといった具合でした。それが、3年間のプロモーション活動の後、女性アーティストの数が55人以上にも跳ね上がったんですよ!

モノクロの伝統模様のケーブルのバスケット。ナイス!

電話ケーブルのブレスレットは本当にカラフル!
それはスゴイ!かなりの貢献ですね。ところであなたがたは、近年悪化しているジンバブエの経済・政治問題とはどのように関わっているのでしょうか?
残念ながら今年は国の状況がさらに悪くなり、アーティストのコンペを行うことが出来ませんでした。アーティストたちが作品を創り続けているという風の便りは耳に入ってくるものの、我々もアート・コレクターたちも、誰も彼らの作品を手にとって間近で見る手段がないという状況です。アーティストたちは今、何よりも援助金を必要としているので、私たちは「リメンバー・ジンバブエ」という募金キャンペーンを展開中で、今年の年末までにまた復活できればと願っています。それまでの間、紹介する作品の幅を広げてみようということで、南アフリカのアーティストたちのプロモーションを始めたのです。
ということは、ここに展示されている作品は全て南アフリカの作品ということになるのでしょうか?
厳密に言えば、南アフリカのクワズール・ナタール州からの作品です。ということで、タイトルにもなっている「100%ズールー」なわけです。実は私自身がクワズール・ナタール州のダーバン出身ということもあり、ここに並んでいる作品を選び集める作業はとても有意義で素晴しい体験でした。

なるほど興味深いですね。というのも、インダバ・エクスポや国際カンファレンス、ケープタウンが先ごろ高い評価を得ていることからもわかるように、南アフリカのデザイン自体は近年かなりの注目を浴びてきていますよね。一方で、ズールー族のアートが紹介される場というのは極端に少ないように思うのです。この認識は合っているのでしょうか?
おっしゃる通りです。ズールー族のアーティストたちの作品に触れたいと思ったときに最も頼りになる情報を提供できるのはアフリカン・アート・センターであり、アーティストたちはそこから紹介されるのですが、ズールー族のアーティストの作品はほとんど国際的には紹介されていません。

ハンドメイドのカゴ。目を惹く構造、そしてこの色!
月曜日だというのに多くの人々で賑わっているギャラリーの様子を見ると、今回の展示が大きな注目を集めていると言えると思います。特に作品の鮮やかな色使いが、人々を惹き込んで思わず足をギャラリーの中へ向かわせてしまう要因でもあると思うのですが、この色鮮やかなエネルギーというのが、言うまでもなくズールー族のアートの特徴の1つということでしょうか?
間違いないですね。一般的に、この地域ではビーズの作品でも電話ケーブルを編んだ作品でも色を使うということはごくごく当たり前のことです。広い意味でいえば、心がワクワクする、目にも楽しいアートやデザインへのアプローチとも言えますよね!
電話ケーブルの作品にしろ、チューインガムの包装紙で作られたランチョン・マットにしろ、作品の持つ鮮やかさや活気というものが、リサイクル利用された原材料から生まれているようにも思います。この展示をまとめ上げていく際に、長持ちするデザインとリサイクルということに焦点を当てたのでしょうか?
というより、それは自然な流れだったということでしょうね。ダーバンでは現状、リサイクル活動をオーガナイズする資力もインフラもありません。でもそれが、アートの形態として組み込まれて発達してきているのです。人々は新しいモノを手に入れる財源がないわけで、ですから目の前にあるものを何でも材料として使おうとしています。結果として、本当にゴミとして捨てられるのはほんのわずかな分量で済むということになるのです。実際、最近では、他の誰かが廃棄物を美しいアート作品に作りかえることができるようにと、人々が自分の要らなくなったものをアート・センターへと持ち込んでくる、という動きも起こり始めています。私自身、こういったリサイクルの活動が政府の関与無しに自然と起こるという事は、とてもポジティブだと思っています。

私がとても気に入った枝編みのバスケットもそうですが、全てが伝統的なアート・フォームで創られていますね。使われている模様にそれぞれ異なった意味合いがあるというのは知っていました。菱形は女性らしさ、三角形は男性らしさを象徴し、そしてジグザグの「Z」形は盾のシルエットに似ていることから、戦争の連隊を意味しているのですよね。それより何より!このバスケットがビールを入れるために使われているとは驚きです!

アイディア勝ち!チューインガムの包装紙でできたランチョン・マット。
そうなんです!ヤシの一種であるドウムヤシで編まれたバスケットは「カンバ」と呼ばれます。サイズの大きなものはビール用で、ヤシで編まれた部分がビールに浸かると、なんとバスケットが液体を通さなくなるのです。中くらいのサイズはお米やトウモロコシ用、小さなサイズは薬効のあるハーブ用です。ところで、電話ケーブルで編まれたボウルは最初、カンバの蓋として使われるために作られていたのですよ。元々、実用的な用途で作られてきたものが、デザイン要素を帯びてきたというのが現状です。
そうですね。電話のケーブル編みは最近かなり人気になっていますものね。
可笑しいなと思います。元々は、ズールーの夜間警備員が、床に落ちていた電話ケーブルのくずを拾って編み、ノブケリーというズールー族伝統の王杖に巻き付けてデコレーションしていた、ということろから全てのアート・フォームが生まれたのですからね。

ウィダス・ムッシャリによる焦がし木彫刻。

うーむ…。なんてプロポーション! アートヴェル・チピリによる「ビッグ・ボトム・ベル」(「大きなお尻の鐘」の意)。フルーツ・サーペンタインという石から彫られた彫刻。
そしてそれがここにある様々なボウルやお皿、ブレスレットそしてネックレスまでも生み出していったということですね。
そういえば、私たちの協力団体BATセンターに所属し、「ワイアード:コンテンポラリー・ズールー・テレフォン・ワイアー・バスケット」の著者でもあるマリサ・フィック‐ヨルダンさんがゼンズールーという商品ラインの提供を始めました。300人以上の織工を、正当で高額な給料を支払って雇っています。ズールー族のデザインがようやく飛躍しはじめた、ということでしょうか。しかも、オプラ・ウィンフリーまでもがズールー族のバスケットをサポートしてくれているんですよ!
ということで、だんだんと秋の気配が近づいているこの時期、心をウキウキさせてくれる、こんなカラフルな電話ケーブルの小物があったら嬉しいかも! アフリカン・ミレニアム・ファウンデーションのエイミー・サンダ―ソン・メイヤーさん、ステキなお話をありがとうございました。今後の活躍も楽しみにしています!
コメントを入れちゃう!
ウェブマガジン「PingMag」及び、姉妹サイト「PingMag MAKE」は、2008年12月31日をもって休刊いたしました。これまで応援して下さった世界中の皆様、またご協力頂いた皆様に、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。
PingMagの姉妹版、日本のモノづくり情報を世界に発信中!
PingMagから大切なお知らせ
2008年12月31日
板谷龍一郎:色鮮やかでユーモア溢れる世界
2008年12月29日
マギボン:YouTube発のネットアイドル
2008年12月26日
ベネデッタ・ボッロメティ:たくさんの元気をくれる不思議な絵
2008年12月24日
中銀カプセルタワービル:未来の建築
2008年12月22日
花村えい子:キュートでポップな60年代の少女マンガ
2008年12月19日
日本のハイテクトイレ事情
2008年12月17日
アミューズメント:アートやファッションと融合するゲーム文化
2008年12月15日
HIROCOLEDGE:現代に溶け込む新たな伝統
2008年12月12日
瀬戸正人:ビンラン売りの甘い誘惑
2008年12月10日









