
現在開催されているジャパン・ファッションウィークは完全に目立ちたがり屋の集まりだ。どうやったら、こういうタイプの人達とうまくやっていくことが出来るだろう?まず答えるなら、僕達が彼らに対して反対派ではないことは確かだ。なぜなら少なくとも、彫刻・パフォーマンス・アーティストである開発好明(かいはつ・よしあき)氏が茶目っ気たっぷりにアディダスのトレーニングウェアにハサミを入れて、可愛らしいぬいぐるみを作り出す様子を見て楽しんでいるのだから。これらの作品は昨年夏にベルリンのギャラリー・トリステスで展示された「GIFT」プロジェクトの一環でもある。今日は、再構築によって生まれる新たなファッションをほんの少しお楽しみあれ!
作:アンドレ・リヒター
訳:サカイ・ユキ

開発氏のミッション。トレーニングウェアのリサイクルで既存デザインをリミックスし、子供向けのかわいいぬいぐるみを作り…

…子供たちの親のファッション・スタイルも反映させること。
開発好明氏について。まず始めに彼の苗字「開発」は言葉通りの印象から珍しいアーティスト名として世間に知られているようだが、実は本名である。1966年に山梨県に生まれた開発氏は、かなり長い間アートシーンに名を連ねており、梱包用再生発泡スチロールや、チリゴミ、コーヒー&ミルク、使用済ポスター、ポルノ雑誌などを使った、もろく、かつ斬新な建築的制作で有名である。同様な彼のファッション作品が見られるのは東京のmaru galleryだけだったが、最近になってベルリンのギャラリー・トリステスで待ち望んでいた観衆に公開された。このことが、開発氏にとってここ2年間インスピレーションの基盤となっている。さらに、あの格式高いノイエ・ナショナルギャラリーで昨年開催された「ベルリンー東京/東京ーベルリン」展でも彼の作品が公開されたのだ。

ベルリンで公開された作品。2つの顔を持つカンガルー!
次に開発氏は「GIFT」プロジェクトの一環として、アディダスの「マテリアル・オブ・ザ・ワールド」ライン商品から以前作ったいくつかの作品をミックスさせてみた。
プロジェクトのタイトル「GIFT」は、文字通り子供たち向けのプレゼントという意味である。ファッションに敏感な人達は常に流行りの洋服を買いがちである。その洋服が着られるのは少なくとも次の新しいトレンドが来るまで。それに対して、開発氏は洋服をリサイクルして既存デザインをリミックスする試みを行い、そこから子供向けの可愛いぬいぐるみを作り、子供達の親の好みを反映させている。こうすることで、そのぬいぐるみは一時的なトレンドよりも少しは長く使われるかもしれない。子供たちがこの可愛らしいぬいぐるみを使って色々な場面で遊ぶ姿を想像しながら、開発氏はそうなることを期待している。

トレーニングウェアのリサイクル。スポーツウェア生地から作られた犬のぬいぐるみ。

このジャケットに良く似合う「アフリカ風」模様のあいくるしいキリン。
しかし、一体なぜトレーニングウェアを最初に選んだのか?開発氏はこう説明する。
「小学生の時にサッカーチームのゴールキーパーをやっていて、その頃履いていたのがアディダスのトレーニングシューズだったんです。子供向けのプレゼントという発想とアディダスが結びついた理由はそこにあると思います。ドイツには2年間住んでいたことがあり、ドイツの繊維メーカーが僕の作品にぴったりだということも知っていましたしね。」
では、そもそも子供たちが身に着ける親のスタイルってなんだろう?
「トレーニングジャケット自体に重要性は全然なくて、その色や形に僕は惹かれているんです。そこに親子の繋がりを発見するからですね。例えば誰かの好きな色が黒だとしましょう。洋服からぬいぐるみを作ることでその一部は親から子供の手に渡ります。そのぬいぐるみをみれば親のテイストがわかるんじゃないかな?だって、親のジャケットから作られているんだから。」と開発氏は話す。

親子向けにカスタマイズされた、アディダスの「マテリアル・オブ・ザ・ワールド」ラインから2着のジャケット。

両親と子供用にカスタマイズされたジャケット。
しかし、アディダスの「マテリアル・オブ・ザ・ワールド」ラインも開発氏にとってインスピレーションの基盤となっていた。世界中から集められた伝統的な生地素材に対して、生地の生産国がどこであるかをすべて調べた。アフリカ原産の生地でキリン、カナダ原産の生地で熊を作り、そして「日本製」ジャケットには「鯉」を取り付けたのだ。

そういえば、ぬいぐるみのほとんどが異形で目が3つあったり頭が2つあったりするじゃないか!開発氏は変形させることで僕達が調和に依存していることを気づかせたいのだ。なるほど、ファッションウィークにぴったりだ!ご存知の通り、現代メディアが生み出した現実世界では、非の打ちどころのない男女が優位に立ち、美しくあることが常に優先される。だから開発氏は作品を少しだけゆがんだ格好にして、可愛いらしく、愛らしいだけのものにさせないのである。

明らかに「グレー」期を終えた、トレーニングジャケットを着ている開発好明氏。

開発氏の初期作品のひとつ。鯉が無くては未完成な和風柄のコート。
最後に、バラバラになった生地はとてもカラフルである。しかし、開発氏が極めて概念的に作品と取り組んでいることにお気づきだろうか。1995年から2006年の9年間は自身のテーマカラーとしてグレーを選んでいた開発氏。より優れた精神力に近づこうと修行している寺院の僧侶と同様に、私生活から色彩を排除して、美徳を手に入れようとしていたのだ。また、グレーは黒と白の間のあいまいな色、として受け止め、ある意味日本人の態度を視覚化したものだと彼は考えている。開発氏にとって国民が明確なイエス・ノーを言えない日本は、不明瞭な国のように感じられるようだ。

次はこれらの作品を着ているベッカムが見てみたい!開発さん、本当にありがとうございました!
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