
日本最大のオールナイト野外ミュージックフェス、メタモルフォーゼを今週末に控えて、大物DJゲストの一人であるリッチー・ホーティンが来日する。ミニマル好きな方には、プラスチックマン名義でも活躍する、カナダ・オンタリオ州出身のテクノの申し子の紹介は無用だろう。彼はプラス8レーベル以降、マグダ、トロイ・ピアス、マシュー・ジョンソン、ハースロブ、マシュー・ディアなど、数多くのアーティスト達を輩出してきたベルリンに拠点を置き、自身が立ち上げた新たなレーベル「マイナス」で活動を続けている。PingMagは来日直前のリッチー・ホーティン氏に、ミニマル・アートと彼のオーディオビジュアル的なアートワークの構想について話を聞いた。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

コンピレーションアルバム「Min2Max」より、マイナス40のCDカバー。

「Min2Max」より、 LPの裏ジャケット。

「Min2Max」でウィンクのトラックが収録されたA面、レコードの中央部分のデザイン。

ガイザーとトロイ・ピアスのトラックを収録した「Min2Max」のレコードの中央部分のデザイン。
リッチーさんがマイナスから出している作品のジャケットアートはかなり一貫しているようですが、ビジュアル面の制作は全てご自分でされていらっしゃるのでしょうか?
マイナスだけでなく、私の最初のレーベルであるプラス8でも、レーベルの見た目と雰囲気の構想的なアイディアは、弟のマシュー・ホーティンが手掛けたロゴ・デザインを含め、大半が私が考えています。一貫したテーマというものは非常に大切で、それがレーベルの全体的な構想やその裏にあるアイディアとの接点になります。

リッチーさんが発表される視覚化されたエレクトロ・ミュージックにとても近いような気がしますね。
ミニマルと呼んでもいいし、他の名前で呼んでくれても構いません。私たちにとっては、音楽とは解体されるもので、そこにはある種のバランスや重みがあります。もちろん、アートワークは見る人に音楽の印象を伝えようとするものですし、一部のアーティストの見た目や雰囲気を与えるものでもあります。
それでは、リッチーさんが影響を受けたものについてお伺いしますが、好きなアーティストは誰ですか?
私のインスピレーションは、ロスコ、ソル・ルウィットやドナルド・ジャッドといった40年代、50年代、60年代のニューヨーク派のアーティスト、そしてジョン・マックラーケンなどのカリフォルニア派が特に大きな影響になっていますね。最近ではリチャード・セラとインド生まれのイギリス人アーティスト、アニッシュ・カプーアも大好きです。特にカプーアの作品はとても有機的で、非常にバランスがとれていて…彼は彫刻作品を手掛けている存命中の芸術家の中では最も重要な存在の一人だと思っています。あとは、ビル・ヴィオラのインスタレーションや、パフォーマンス・アートなど様々なジャンルとの出会いをくれた弟のマシューの影響も絶大でしょう。私たちは皆、それが音楽であれ、彫刻であれ、絵画であれ、芸術的なアイディアやコンセプト、感覚などを人々に伝える手段を探す、コミュニケーションという類似した領域に携わっているのです。

ニーダフラーのトラック、「DIN」(Minus:ND5) のB面。

フォールス、別名マシュー・ディアの新曲「フェッド・オン・ユース」のA面。

同じくB面。
ソフトウェアによって生成された楽曲のモジュールが、様々な形状や有機的な構造体として視覚化されているかのようですね。
確かに。私たちがマイナスでやっていることの多くは、私がプラスチックマンのアルバムでやっていたような、実験的な音に根差しています。私の曲にはそう多くの情報が含まれていないので、音を作る時はそれを視覚化して、三次元の空間に配置していくのですが、こういった音がどう物理的に、もしくはこのような仮想空間でどのように相互作用するかを完璧に理解したい時は、他のアーティストの作品を見に行きます。たとえば、ロスコの作品の前に立ってみたり、セラの彫刻の周りを歩き回ってみたり、その巨大な金属の作品に向き合ってその重みを実感したり…それが音の表現と結び付くことができる方法の一つです。

マイナスの記念パーティーのフライヤー、表面。2007年、ベルリン。
アリ・デミレル監督が制作したプラスチックマンのPVからも分かるように、リッチーさんは常にビジュアル面にも力を入れていらっしゃいますよね。それから、マイナスのアートワークに加えて弟さんの作品は、ミニマルなフォルムを描いたカジミール・マレーヴィチの絵画を思い起こさせます。たとえば、立方体を描いたブラック・スクエアとか…。
アートワークでは、初期の円に始まって、流動的なフォルムや現在の立法体の傾向など、多くのシンプルな形状のフェーズを経てきました。立方体というものは、明確なエッジや明確な白と黒の領域を持つ接線という要素が興味深い。あと、その接線がどこで交わるのかを探るのも面白いものです。うちのアーティストの中には、そこから自分たちの機材や作業の在り方を考え始め、そのままはまっていく人もいます。今ではもう、本物のバランス、双方の間の境界線を探る作業に近くなっていますね。
立方体のエッジがある種の原動力を生み出すと…。
ええ、これはカウンターバランスなんです。二つの相反する力による押し引きですね。
リッチーさんのジャケットのいくつかにもありますね。たとえば、白と黒の領域がくっきりと分かれたビートストリートのフライヤーのアイディアはどのようにして生まれたのでしょうか?
当たり前のことですが、レーベルというものは一種の連続体、進行中の作品です。私は毎年特定のテーマを決めて、その一年をまるごとそのテーマを考察するのに使い、最終的にはその次のものに繋がる何かを掴むことを目標としています。その中には、立方体や、音楽的な方形波の解釈である垂直ステップシステムもありました。あとは今年の研究のテーマである水平の直線もありますね。出発点は、最初のレーベル、プラス8が始まった時には既にあり、マイナスになってから実際に立方体を始めました。私はそれに乗って、それが私たちをどこに連れていってくれるのかを様々なアングルや視点から模索してきました。
リッチーさんは実験的な映画にも興味がおありのようですね。2年前の「DE9:トランジション」のDVDバージョンでは、「ザ・トンネル」という映像作品でロシア人監督のアンドレイ・タルコフスキーに敬意を表していらっしゃいますよね。あれはどういった趣旨のものだったのでしょうか?
正直なところ、あれはビジュアルを担当したアリ・デミレルに負うところが大きいです。アリは今も昔も、私の音楽を完全に理解してくれている人間です。私が彼に何かを依頼すれば、私が思いつくような方法で応じてくれる。私がDE9を作るために音楽を解体したように、タルコフスキーの映画「ストーカー」を使ってそれを視覚的に解体するというアイディアは彼のものでした。彼は誰でも知っている作品のリミックスを希望したのです。「ザ・トンネル」のビジュアルはそこから来ているんですよ。
あなたがステージでパフォーマンスする際には、誰がビジュアルを担当するのでしょうか?
私のライブ・パフォーマンスに使われる動くビジュアルは、アルバム同様に全てアリがやってくれています。彼は今週末のメタモルフォーゼでも同行してくれます。

ミニマルなマイナス33。リッチー・ホーティンの「ザ・トンネル」(DE9:トランジション)

…とそのバリエーション、マイナス39:トロイ・ピアスのヒット曲、「25 ビッチズ」のリミックス。
マイナスとその芸術的な力で今後挑戦してみたいことはありますか?
私たちは今でもカバー形式のCDとレコードを手掛けていますが、将来的にはこの静止した物理フォーマットよりも、私たちの作る音楽により合致する、もっと動きのあるインターネットもしくはパーソナルビデオベースのビジュアルに興味がありますね。私はレコードとカバーが大好きなんですが、より大きな体験をもたらし、人々が私たちのコンセプトをもっと理解してくれる方法を模索したいと思っています。

…メタ・コントロール(アリ・M・デミレル&ブーラク・アリカン)によるビジュアル。
それでは、ポッドキャストは出発点にすぎないと?
あれはこういった類いの新曲のブリップバート(CM圧縮技術)には良い方法でした。次の段階としては、単なるプロモーションビデオではなく、その一部でありながら新曲の解説をして、全体的なテーマによるプレゼンテーションの一部にもなり得るものを考えています。
…視覚と聴覚を組み合わせた体験ということですね。リッチー・ホーティンさん、ありがとうございました!今週土曜日には、アリさんのビジュアルでDJ機材に囲まれている姿を拝見するのを楽しみにしています!
メタモルフォーゼ07
参加アーティスト:リッチー・ホーティン、オーディオン、モデル500、リンドストーム、マッド・プロフェッサー&ジョー・アリワ、セバスチャン・レジェほか(詳しいラインナップはコチラ)
日時:2007年8月25日(土)
開場:4:30pm
開演:6:00pm(〜翌9:00am)
会場:自転車の国サイクルスポーツセンター(静岡県伊豆市)
地図はコチラから
入場料:¥10,500(前売り)、¥12,000(当日)
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22 コメント
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