
皆さんは「地雷」について考えたことはあるだろうか?おそらく多くの人が、世界中には未だに数えきれないほどの地雷が埋まっているという悲惨な事実だけをメディアを通して知っているのかもしれない。自分に出来ることを考えても、実際は日々の生活に追われて何もできないのが現実。でも、たった300円のステッカーを買うことで地雷除去に参加できるとしたら?今回は「ステッカー地雷除去キャンペーン」を運営する団体「POM2」の初代代表、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科田中清隆さんにお話を伺いながら、日本ではなかなか身近に感じられない「地雷」について考えてみたい。
作:アヤナ
今現在世界各地に埋まっている対人地雷は1億個以上、さらにその被害を受けている死傷者の数は年間2万5千人以上、約20分に一人地雷による被害を受けていると言われている。そんな中、”Problem of mines is Problem of mine”=「地雷問題は私たちの問題だ」という理念を掲げてPOM2は誕生した。

「ステッカー地雷除去キャンペーン」の仕組みはいたってシンプル。1枚のステッカーに対し、300円の寄付をする。するとそれはタイの地雷原3平方メートルの除去費用となり、さらに、ステッカーにナンバリングされている番号と、ホームページ上の地雷原マップにナンバリングされている番号を照らし合わせると、自分がどの土地の地雷を除去できたか分かるようになっている。そうすることによって、日本に住む私達にはかなり非現実的な「地雷」という問題が、一気に現実味を帯びてくる。ステッカーはPOM2の参加するイベントや配布店舗、オンラインでも簡単に購入可能。現在までに、約5000人もの人々がこのステッカーを買って、タイの地雷原約1万平方メートルを除去してきた。

POM2誕生当時のステッカーデザイン

学生によるデザインのステッカー第5弾


マップはさらに拡大される。ウェブページの地雷マップより。

そして地雷除去。赤い看板が恐ろしさを伝える。
田中さん、まずは「POM2」を始めたきっかけをお聞かせください。
5年前、大学2年の時にインターンで「人道目的の地雷除去支援の会」というNGOに参加しました。はじめは東京のオフィスに勤務していたのですが、代表の方に現地を訪れることを強く勧められ、急遽タイの地雷原に行くことになったのです。それまでの東京のオフィスでは全く実感はなかったのですが、その時初めて地雷原を自分の目で見て、強い衝撃を受けました。東京からたった8時間ぐらいの、自分でも行ける距離に本物の地雷原があることに…。そして、一番ショックを受けたのは、見つけた地雷の爆破処理を見た時です。ドーンと、すごい音がするんですよ。今まで地雷の話を聞いてはいましたが、その時は体で実感した気がしましたね。こんな問題を身近に感じるのは現地にとってもすごくストレスだろうし、絶対に除去していくべきだ、なんとかしたい、と感じました。

その後、帰国して「POM2」を設立されたのですか?
なんとかしたいという思いで帰ってきたのですが、夏休みが終わって学校が始まると、日常生活に追われて地雷問題のことを忘れかけてしまっている自分に気がつきました。東京に住んでいると、サークルとか大学とか、楽しいことが沢山ある生活の中で、忘れてしまうことってすごく簡単なことなんですよね。ですが、同時にあれほど衝撃を受けたものに対して忘れてしまうってどうなんだろう、という強い後ろめたさもありました。例えば、友達と飲んでいる時に、300円とか400円のビールを一杯我慢すれば、地雷が除去できるんだな、とふと考えたりして、そういう自分のもっていた後ろめたさへの折り合いを付ける意味でもPOM2を始めました。

なるほど。それは、日本が地雷に対して無関心だという問題意識もありましたか?
そうですね。何ができるかなと本屋へ行って調べてみても、マニアックな軍事関係の図鑑ぐらいしかないんです。この情報の溢れる東京でも、地雷問題にアクセスすることができないんだな、と思いましたね。地雷除去の団体とかもあまりないですし…。例えばボランティアをやるとしても大変でなかなか続かないし、一人ではお金がなくて寄付できない。そう考えた時に、自分でもできるものだったら、同じような思いを持って日常生活を過ごしている日本の人達に参加してもらえるのでは、と思いました。
そして、「ステッカーで地雷除去キャンペーン」を始められるわけですが、現在も学生生活と両立させていらっしゃるそうですね。このしくみは、田中さん自身が考えたものなのでしょうか?
これは授業で集まった人達と一緒に考えて生まれました。特に元々NPOに興味がある人々というわけではなかったので、素人感覚でやったから逆に面白いものができたのだと思います。やはり普段の学生生活もありますし、無理をしないでこれなら続けられるという範囲でやっていったのがうまくいったと思いますね。

その300円を得るために、「ステッカー」を選んだ理由はありますか?
まず、300円で買うものって何だろうと考えました。ステッカーだったら、色々なところに貼って会話のきっかけになるんじゃないかなと思って。例えば「これ何?」って聞かれて「実はこれで地雷除去ができてね」っていうきっかけが生まれると良いなと思っています。
これまでPower Graphixxやretired weaponsといったデザイナーの方々もステッカーの制作に参加されていますが、これからも新しいデザインのステッカーが生まれるのでしょうか?
そうですね。これからも色々なバリエーションがあったらいいな、と考えています。最初の5000枚は学生がデザインしたのですが、それ以降はデザイナーの方にお願いすることができました。ステッカーはやはり見た目が一番大切なので、地雷除去だとすぐに分かるようなデザインをお願いしています。

Power Graphixxデザインの第6弾ステッカー。「ステッカーデザインを通じて一人でも多くの人にPOM2の活動を伝え、地雷問題について考えるきっかけになればと思っています。」(Power Graphixx、半澤雅仁さん)

retired weaponsデザイン第7弾ステッカー。「デザインで平和を広げていくプロジェクトを世界展開中なので、これを生み出せたことは、大きな喜びです。目立つところに貼って下さい!」(retired weapons 石川淳哉さん)
今までに愛知万博やアースデイに参加しているようですが、実際にステッカーを売ってみていかがですか?
はじめは学生や同年代の人達に向けていましたが、今は幅広い世代の方に買っていただいています。イベントでは、会って話して、とフェイストゥーフェイスなので効率がよく一番売れます。オンラインでもイベントができない地方の方々に継続的に買っていただいています。


ステッカーの収益金はどのようにタイに届いて、ホームページ上のマップで除去を確認することができるようになるのでしょう?
だいたい3ヶ月に1回程度、50万から100万円貯まってから、現在はPROというタイの地雷除去団体へ送っています。そして、現地から除去状況のデータを送ってもらって、マップと照合しています。この作業が大変で、いかに現地の人とリアルタイムで情報交換するかというのが今後の課題でもあります。
現地の方々とPOM2はどのようなコンタクト方法をとっているのですか?
いつもはメールでやりとりしています。今年スタッフがタイに行った時、現地の学生と交流する機会があったのですが、都市部の学生は日本と同じように地雷問題に関して知らないことも多いので、実際にこのキャンペーンをタイでもできたらいいな、とも考えています。また、日本では簡単な気持ちで支援しようと考えていますが、現地の人にとっては死活問題ですから、その温度差をなくして中間の感覚をいかに保つかということは常に考えています。ワンクリックで手軽に支援できることにはすごく可能性があると思いますが、現地の情報をちゃんと得られていない場合もありますから、いかに正確な情報を伝えるか、ということは常に考えています。

現地での地雷除去への対策はどのような感じなのですか?
政府が主導になって色々な活動が行われているのですが、やはり日本と同じで、興味のある人だけに限られていて、一般の人はあまり関心を持っていないと思います。

写真左が田中清隆さん
タイでもこの活動を行えるといいですね。最後に、POM2の今後についてお聞かせください。田中さんは来年、IT系の企業に就職される予定だそうですが…。
世界中にある地雷を除去するのには100年以上かかると言われていますから、タイだけじゃなくて対象地域を広げていきたいですね。あとは、このステッカーの仕組みを地雷原だけでなく、例えば植林などの新しい使い道も考えています。だからこそ、いかに継続的にシステムを動かせるかということを考えないといけませんね。将来的には、ITと融合した募金システムとかが出来たらいいなと思っています。現在のPOM2のスタッフは全員学生で、今年初めてOB・OGが出たのですが、社会に出てから知る社会人にしか分からない感覚もあると思いますし、一人一人のライフスタイルが今後のPOM2に生かせるといいですね。
日常生活でどのように地雷問題に接することができるか、少し重く考えられがちな「支援」に対してPOM2は私たちに新しい方法を与えてくれた。1枚のステッカーで出来る、3平方メートルの地雷原の除去。このように身近な方法を通して、一人一人が地雷問題に関わっていけるのは、本当に素晴らしいことだと思う。
現在POM2では、次のステージに向けて新しいアイディアや、Webデザインをしてくれる方を募集中です。興味のある方はぜひPOM2まで。
田中清隆さん、POM2の皆さん、ありがとうございました!田中さん、修士論文がんばってくださいね!
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I wonna go that place~
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