
夏と言えば、エレクトロニック・ミュージックの祭典、バルセロナの「ソナー」!そしてフェスティバルの一環として行われるインタラクティブ・アート展、ソナー・マティカの季節。今年のソナー・マティカでは、プロセシングを駆使する日本や世界各国のアーティストに焦点を当てたイベントが目白押し。という訳で、PingMagもパーティー以外のレポートを余すところなくお伝えします!
作:ナナ・A.T.レイパン
訳:山根夏実
ソナーは、エレクトロニック・ミュージックのライブ・パフォーマンスだけでなく、様々なメディア・アートを紹介するフェスティバル。ハイテク・パフォーマンスの革新的なプログラム「ソナラマ」や、ビデオ・アートやミュージック・ビデオが紹介される「ソナー・シネマ」が人気だが、最も刺激的なプログラムは何と言っても「ソナー・マティカ展」だろう。企画者のホセ・ルイ・デイ・ヴィセントとオスカー・アブリル・アスカーゾ、そしてアドバンス・ミュージックは、この展示で「高度に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」という「2001年宇宙の旅」の著者でもあるSF作家、アーサー・C・クラークの第三法則に焦点を当てている。
ソナー・マティカのオーガナイザーが興味を持ったのは、技術システムの複雑さを覆い隠そうとする現代のユーザー・インターフェースの操作的な性質、そして民主主義の話題と現代テクノロジーのコントロール。魔法はその源ではなく結果のみを見せるものであるが故に、魔法となったテクノロジーは常に操作される危険性を含んでいる…。
しかし、展覧会の焦点はユーザー・インタラクションにあった

妖精やピクシー、ゴブリンなどのおとぎ話は誰もが一度は耳にしたことがあるはず。そういった謎の生き物を近くで観察できるようにしてくれたのが、この「コビト:バーチャル・ブラウニーズ」。それも卓上で!紅茶やクッキーが並べられたテーブルは、一見したところ至って普通であるものの、見えないブラウニー(妖精)達が紅茶の缶を一生懸命動かしている。東京工業大学の日本人アーティストたちが開発した窓から見ると、3人の妖精達が秘密のお仕事をしている姿を垣間見ることができる。そして紅茶缶を反対の方向に押してみると(意地悪!)妖精は押されまいと力を込めるが、強く押せばやむなく後退するか、転んだりテーブルから転げ落ちたりする姿が見られる…。
そしてプロセシングによる光と影の形状へ
日本人アーティスト、藤幡正樹の「ポートレー・ザ・シルエット」では、テーブル越しに影絵の人物と向き合って座ることができる。強い光が鑑賞者の影を壁に映し出す中、向かいの席は実際には空席で、架空の人物の影だけが投影されている。


もう一つの日本からのプロセシング作品は、最近文化庁メディア芸術祭の10周年を記念して東京のICCで展示されたプラプラックスとそのプロダクツ・デザインのサブユニット、ミニムプラプラによるもの。ソナー・マティカでもこの「ツールズ・ライフ」の影たちは健在で、薄暗い部屋のテーブルに置かれた様々な金属の物体に触ると、触られた本体はそのままに影だけがテーブルの上を動き回るという仕掛けになっている。

お次はPingMagの長年のお気に入り、イギリス出身のフィリップ・ワーシントンのシャドウ・モンスターは、去年東京で行われたDesign Tideや今年3月に行われたレスポンシブ展で大好評だったもので、このインスタレーションを前にした人は、誰もが手を出さずにはいられない!作品自体は、子供達が大好きな影絵をベースにしていて、デジタルな世界では実際に形成されたモンスターの影に牙や耳などの詳細なディテールを加えることが可能となる。

インタラクティブではなくとも十分に興味深かったのが、コンロンビア出身のアーティスト、ルイ・ニエトによるショート・フィルム「カリトポリス」。この作品は、ある日、ニエトが自分のペット(ハムスターのカリト)を卒業制作に登場させたいと考えた為に、様々な苦難にさらされることとなる哀れなハムスターのお話。ガラスのプレートの鋭い刃でまっ二つに切断されたかと思えば、倍の大きさになるまでストローで膨らまされ、最後にはなんと爆弾でバラバラにされてしまうというもの!小さなハムスターが爆発を止めようとして失敗する姿は痛ましいと同時にコミカルで、このでっちあげ実験用の装置が作品をさらに本物のマジックのように見せている。

フランスのジュリアン・マリーのパフォーマンス、「デジット」もソナー・マティカに出展された興味深い魔法の一つ。不思議なことに、この魔法の紙をなぞると「書き手」の思考が紙の上に現れるようになっている。
また、アメリカのジェフ・リーバーマンは、点灯した電球を、電気を供給するワイヤーも支えもない状態で宙に浮かせてみせた。
そして最後を飾るのは、PingMagにも登場したことのある石黒猛の「バルーン・エクスプロレーション」。他の物体との接触を避けてゆっくりと部屋の中央を漂う銀色の風船は、まるで石黒が日々の空想を実現させたかのよう。

普段は音楽だけにのめり込んでいる人々も、作品で遊んだり驚かされたりして過ごし、素晴らしい魔法の余韻を胸に更なる音楽との出会いに向けて歩き出す。それこそが、ソナー・マティカ!
16 コメント
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