サアム:クラクソンズを支える奇才

2007年7月4日 カテゴリー: インターナショナル, 映像, 音楽

サアム:クラクソンズを支える奇才

ミュージックビデオ・アワード「CADS 2007」で見事、最優秀監督賞を受賞したサアムによるクラクソンズの「Magick」より。一度見ると脳裏に焼き付く作品…。© Partizan

新進気鋭の映像監督集団「チーム・スタッシュ」のメンバーでもあるロンドン出身の27歳、サアムは現在最も注目すべき存在だ。ブッシュとブレアが妖しく歌う「ゲイ・バー」のビデオをきっかけに、2004年に大手映像プロダクション、パルチザンに所属してからというもの、ジャミロクワイがトイレで踊る「バイラル・インサニティ」のビデオでネット上を騒がせ、昨年から今年にかけてはクラクソンズをはじめとするニューレイブ系バンドのビデオを次々と監督してきた。そして、最新情報によれば、先週イギリスで行われたミュージックビデオ・アワード「CAD2007」では、なんと2007年度の最優秀監督賞を受賞!(感動の受賞シーンはこちらから)今日は奇想天外な作品を生み出すサアムに、彼の代表作であるクラクソンズのミュージックビデオについて話を聞いてみた。

作:チエミ


今回の取材は、本人の強い希望によりなんと現地時間の朝5時にiChatで行われた。

まず、サアムさんはこれまでにクラクソンズのミュージックビデオを何本も監督されていますよね。

最初の「Gravity’s Rainbow」は1年ぐらい前に制作し、同じチーム・スタッシュのオリー・エバンズが次の「Atlantis to Interzone」を監督しました。それから、6月に僕が「Magick」を、9月に「Golden Skans」を、今年1月に「Gravity’s Rainbow」の別バージョンを監督し、つい20分前に最終エフェクトを終えた「It’s Not Over Yet」を数えれば全部で5本になります。

まるでタランティーノの新作かと思わせるこちらの画像は…© Partizan

完成したばかりのクラクソンズのPV「It’s Not Over Yet」!動画はコチラから!© Partizan

お疲れのところ恐縮です…。今ではクラクソンズの専属監督と言ってもいい程ですが、どうのようにして最初に彼らからのオファーがあったのでしょうか?

クラクソンズのメンバーであるジェイミーが僕の親友で、昔バンドを一緒にやっていたんです。もう一人のメンバーのサイモンも昔、僕の妹とフラットをシェアしていたので家族のような関係なんですよ。

あなたが監督した作品はどれも印象的なのですが、目から蛍光緑の液体が吹き出す「Magick」のビデオは視覚的にもかなり強烈で、ストーリー性も強いですよね。あの作品の内容を最初に説明した時、皆さんはどのようなリアクションでしたか?

メンバーだけでなく、彼らのマネージャー、僕のマネージャー、全員に同時に説明したんですが、皆目を見開いて絶句していました。ただ、彼らはいつも僕を信用してくれて、僕にスタイリング、デザイン、ストーリーなど全てをコントロールさせてくれるんです。なので、あの蛍光色が飛び散るシーンに関しても特に何も聞かれませんでした。時々質問されることもありますが、知らない方がいいと思っているんじゃないでしょうか。みんな驚かされることが好きなんですよ。

アイディアに関してはどうでしょう?ホラーフィルムが大好きだとか?

アイディアの出先は自分でも分かりません。理由が分からないのがまた怖いんですが…。幼少期にホラーフィルムを見ていたので、確かにホラーフィルムが僕の人生の大半を占めているようには感じます。


「Magick」のミュージックビデオより。イントロで、壁に何かを書くクラクソンズのメンバー。© Partizan

するとある一瞬をきっかけに…© Partizan

文字を書いていたメンバーが他のメンバーに縛られ目隠しされる!© Partizan

…そして突然目から蛍光緑が…!© Partizan

液体は他の二人にも飛び散り…© Partizan

そうこうしている間に、初めの一人は動かなくなる。© Partizan

そして残りの二人も自ら目隠しを…。© Partizan

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!この展開に関して、特に理由はないらしい…。© Partizan

「Gravity’s Rainbow」はオリジナルと新バージョンの2本を監督していますが、2本目を作るというのもあなたのアイディアですか?

そうですね。クラクソンズが「Gravity’s Rainbow」を新しいプロデューサーで再録音すると言ったので、ビデオも同じように出来たらスゴイなって思ったんです。自分の作った作品のリメイク版を自分が作るって面白いでしょう?そんなこと、今まで誰もやったことがないと思いますよ。

あの2作品に何か繋がりはあるのでしょうか?

オリジナル版のすぐ後に、1秒の隙間もなく新バージョンを見ると意味が分かります。あれは永遠を意味しているんですよ。

今年新たに制作されたクラクソンズの「Gravity’s Rainbow」のミュージックビデオ。この作品では、ただでさえ理解困難なクラクソンズの歌詞をそのままビジュアル化しているため、かなり不思議な映像になっている。© Partizan

ご自分ではどちらの作品が好きですか?

僕自身は分からないですが、周囲の人達は最初の方が良いって言いますね。ちょうどあの時、僕達がニューレイブの見え方を生み出した頃だったので。

2006年制作「Gravity’s Rainbow」のミュージック・ビデオ、オリジナル・バージョン。サアムと同じチーム・スタッシュのメンバーは他誌のインタビューで「プリンスのパープルレインと同じくらいバカバカしいビデオ」と賞賛(?)した。© Partizan

というと、あのビデオがニューレイブを最初にビジュアル化したものなんでしょうか?

僕はそうは思いませんが、多くの人はそう思っています。あのビデオが放映され始めた時、他に似たようなものは一切なかった。ニューレイブ自体はあの時すでに始まっていましたし、それはクラクソンズが創り上げたものです。ただ、あの作品が公の場においてのニューレイブの序幕だったと思っている人は多いでしょうね。

クラクソンズとあなたがニューレイブのビジュアルを“確立した”、ということですね。

そうです。でもあのスタイルが確立されて、すぐに彼らはそれを台無しにしてしまった。あれはほんの冗談で作ったものだったのに、彼らはニューレイブとの関係をあっさりと断ち切ってしまったんです。


サアムにとって3本目のクラクソンズのビデオになる「Golden Skans」。ビックリするほどドラマチックなオープニング。© Partizan

裸体にリボンを巻き付けたメンバーが宙に浮かぶ物体を叩き割ると、液体が弾け飛ぶシーン。© Partizan

最近のサアムのミュージックビデオは、まるでクレイジーなハリウッド映画のよう!© Partizan

では、普段はどのようなことに影響されているのでしょうか?

人々に影響を与える人々ですね。例えば、人々の代弁者であるオプラ・ウィンフリーや、トム・クルーズ。皆トムのことが嫌いでしょう?でもトムなしではこの世の中は退屈になると思います。

あははは(笑)。

彼に魅了されますね。僕の野望はトム・クルーズの伝記映画を作ることなんです。主役はトム・クルーズ本人。メイクを駆使して過去・現在・未来の姿を全て本人に演じてもらう。でも未来の話はでっち上げないといけないですね…。

日本にその手の奥様向けのテレビ番組がありますよ。10代の思い出話や姑とのトラブルを30代ぐらいの俳優達が子供から年寄りまで全部演じるんです。

スゴイ!!そういうのが大好きなんですよ!!

今やっとあなたがどんな人なのか分かってきました…。では最後に、ミュージックビデオを作ることはあなたにとって何を意味しますか?

その意味はいつも異なりますが、ジョルジオ・モロダーのような作曲家が映画の為にサウンドトラックを作ることの真逆のことなんじゃないでしょうか。ちょっと安っぽく聞こえてしまうかもしれないけれど、ミュージックビデオを作るのはひとつの音楽に対して視覚の楽譜を作ることみたいなものだと思いますよ。

先週行われた「CAD 2007」では、多くの賞を受賞したパルチザンのテーブルは大盛り上がり!左手の女性から時計回りに、最優秀プロデューサー賞を受賞したグレース・ボディ、ビデオ・オブ・ザ・イヤーを受賞したローザン&シュメルツのジェレミー・ローザンとマーシャル・シュメルツ、キンガ・バーザダン・ロウオリー・エヴァンズ、サアム、PingMagにも登場済みのニマ・ヌリザデ。© Partizan

サアムさん、今日はありがとうございました。そして、CAD2007での最優秀監督賞受賞、本当におめでとうございました!これからも奇想天外な作品を楽しみにしています!

1 コメント

  1. 楽しそうですね。やっぱり、何かをクリエイトする事って素敵ですね。
    ここに載ってるニマ(私はニーマって呼ぶ。。。?)と一緒のアートカレッジでした。ちなみに、凄く面白くて、良い人。ジョーク好きな人です。。

    Posted by: nobuko @ 7月5日2007年

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