トランスフォーマーの玩具デザイン

2007年6月29日 カテゴリー: 国内, 映像, 民芸・工芸, 特集

トランスフォーマーの玩具デザイン

ドラマチックにポーズを決める「Classic Mirage」。アレックス・クバルスキーがデザインを担当。(写真:Takaya Motoki)© トミー / ハスブロ

映画版「トランスフォーマー」の公開を7月3日に控えて(日本公開は8月4日!)連綿と続くトランスフォーマー・シリーズはマンガ、テレビ、玩具、そして今やゲームにまで進出し、その人気は衰えるところを知らない。でもトランスフォーマーといえばやっぱり玩具!この奇跡のような変身を見せてくれる玩具を作っているのはどのような人たちなのだろうか?PingMagでは東京にあるタカラトミー唯一の外国人デザイナーで、トランスフォーマー・シリーズの「Bumblebee」や「Mirage」の変形過程、そしてその他の楽しいグッズなどを担当したアレックス・クバルスキー氏にお話を伺った。

作:ベレーナ
訳:山根夏実

これが全ての始まり。アレックスが子供の時に見た夢をベースに作った玩具、「スクイッド・ウーマン」の変身過程。スケッチは2000年の作品。 © アレクサンダー・クバルスキー

日本で玩具デザイナーのお仕事をされているそうですが、どういうきっかけでそうなったのでしょうか?

メルボーンでの高校時代は、LEGOを使ったスーパー8のコマ撮りアニメに夢中でした。それというのも、コマ撮りが大好きなのに絵が上手く描けなくて、複雑なものはLEGOで作っていたんです。卒業後は映画制作の一年コースをやりながら、マンガを書いたりしていました。

アレックス・クバルスキー氏とその作品「Ambu」。写真でもお分かりのように、蝶と鳥の形態に変形する人型ロボット。すごい! © アレクサンダー・クバルスキー

でもその道には進まれなかったのですよね…?

僕は日本の漫画家のように上手く描けないことがずっと不満で、ただ自分自身にチャレンジしたかったんです。映画かセルアニメとして制作できればと思っていたSF物語の構想があるにはあったのですが、ロボットやその機械部分が上手に描けませんでした。


蝶形態に変形した「Ambu」。2002年制作。
© アレクサンダー・クバルスキー

「Ambu」のクローズアップ。
© アレクサンダー・クバルスキー

最初はデザインの仕事をされていたと伺ったのですが?

ええ、デザイン業界に入ろうとしたのですが、無理でした。ポートフォリオと面接では最高点を貰えたんですが、絵の実技テストがあって。最後には時間切れになって無惨な結果に終わりました。でも、現役デザイナーの多くにとって、途中で放り出して完成させないなんて日常茶飯事ですよね…。

アレックスが描いたトランスフォーマー「G1 Mirage」とそのパーツの原画。 © トミー / ハスブロ


斜めから見たアレックスの「Classic Mirage」。
© トミー / ハスブロ

トランスフォーマーの影響という点では、アレックスさんも子供の頃にテレビシリーズを見て育ったクチですか?

そうですね。11歳、12歳の頃の影響の方がもっと大きかったかもしれません。80年代にはいくつもの変形ロボットアニメが放送されていて、トランスフォーマー以外にも百獣王ゴライオンロボテックThe Centurionsなどがありました。マイケル・ジャクソンのムーンウォーカーにも踊るロボットと変身する車のコンピューター・アニメーションが入っていましたね。あと、僕もトランスフォーマーの玩具を6つか7つくらい持っていて、高校時代はフリーマーケットで買い集めたりもしていました。まだ日本の玩具が安物のコピー商品だと思われていた時代の話です。


アレックスが作った「Classic Mirage」プロトタイプの変形の第1段階。
© トミー / ハスブロ

「Classic Mirage」プロトタイプの変形第2段階。
© トミー / ハスブロ

「Classic Mirage」の変形、あと一歩。
© トミー / ハスブロ

そして完了!
© トミー / ハスブロ

それでは、実際に変形の仕事に携わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

22歳の時に、ガールフレンドと一緒にバックパックを背負ってヨーロッパを旅したんですが、6ヶ月も絵を描いたりコマ撮りアニメーションを作らずに過ごしたのは初めてだったので、段々何かを作りたくて落ち着かなくなって。それで、旅行中に「スクイッド・ウーマン」と名付けられたドレス姿の女性に変身する潜水艦が宙を飛ぶ夢を見るようになったんです。とはいえ、このアイディアは、実は僕が子供時代に体験した2つの出来事がベースになっているんですけどね。

ポーズを決めるプロトタイプ「Classic Mirage」。(写真:Motoki Takaya)© トミー / ハスブロ

その子供時代の体験とは?

一つは7歳の時に学校の行事で映画館に見に行った「メリー・ポピンズ」です。彼女がスクリーンの中を傘で飛ぶシーンには本当に驚かされたんですよ!

カッコイイ!(写真:Motoki Takaya)© トミー / ハスブロ

メリー・ポピンズがきっかけで変形ロボットを作るようになったのですか!?では、もう一つの体験は何だったのでしょうか?

もう一つは子供の時に見た夢で、それはすぐに書き残しておきました。シーンは白昼で、二つの駅の間で止まっている電車から人が逃げ出していて。電車のドアが全部開いていたので僕がそのまま乗り込んでみたら、紫のドレスを着た女性が僕の方に向かって通路を飛んでくるんです。それがメリー・ポピンズなんですよ!それで僕は黒い沼に飛び込んだのですが、その女も追いかけて飛び込んでくる。沼の中にはイカのようなものがいるような感じでした。そこで目が覚めたように感じたのですが、精神は起きているのに体はまだ寝ていて、実際には金縛り状態になっていたようです。それで何も見えなくて、でも僕の上に誰かが浮かんでいるかのように、左頬に息遣いのようなものを感じました。起き上がるまで、絶対に何かが部屋にいると信じていましたよ…。

歩くというよりは滑る感じの、スマートなプロトタイプ「Classic Mirage」。(写真:Motoki Takaya)© トミー / ハスブロ

そこでまた「スクイッド・ウーマン」のイメージが沸いたのですね。それを後日玩具にしたのですか?


実際の「Mirage」のプラスチック玩具。アレックスは、「70年代のベルボトムを履いた若者みたいな感じにしようと思った」と話す。

要は、バックパックを背負って旅行している間中、イカのような潜水艦が女性に変形する夢を見続けたんです。メルボーンに戻ってからそれや他のものをバキュームフォームで作って、完成品を日本に持って来ました。

それで日本で玩具デザイナーになれたと?

日本にはワーキング・ホリデイのビザで、「玩具デザイナーになるんだ!」と思って来たんです。しかし玩具会社が僕のアイディアを気に入ってくれたにも関わらず、言葉の問題で仕事を見つけることはできませんでした。最初の滞在では、パートタイムで英語を教えたりテレビCMのエキストラをやりつつ絵を描き続けて、2年9ヶ月で2万ドルの貯金を作りました。その後、メルボーンに14ヶ月戻ったのですが、そこで1年をかけて174個ものパーツから構成される「AMBU」―人型から蝶に変形するオーディオユニットを作りました。これは鳥形態と蝶形態に変形する白いジャンプスーツ姿の黒い人型ロボットで、変形する時はブレイクダンスを踊っているように見えるんです。完成するまでは梃子でも部屋から出たくなくて、完成したら今度は部屋に置いておくのが心配で、どこに行くにも一緒に持ち歩いていました。その後、キューブリックを作っている メディコム・トイにそれを見せに行きました。

アレックスが方眼紙に描いた「Bumblebee Camaro」の設計図。74個全てのパーツが描き込まれている。 © トミー / ハスブロ

そこで「Ambu」を見せて採用してもらったのですか?

いえ、そこでは鼻もひっかけられませんでした!あそこはニューヨークの有名なアーティストともコラボレーションしていますから、無名のアーティストが作った174パーツ以上もある模型に10万ドルもかける気は更々なかったのでしょう。それでその数ヵ月後にタカラトミーにアプローチすべく、ボクシングデー(12月26日)に電話をして、その1週間後には僕の作品を先方に見せに行きました。でも、そちらでは僕の作品は玩具ではなくアートだと言われたんです。

アレックスが制作したプロトタイプ「Classic Bumblebee」の変形後。 © トミー / ハスブロ

そんな!それでどうされたのですか?

まあ、その後も連絡は取り続けたのですが一年経っても特に進展はなく、僕はイギリスでコマ撮りアニメーションをやるべく日本を出ることにしました。ところが、2005年に入って唐突にタカラトミーが顔を出して欲しいと言ってきたのですが、見せられるような物は特に何もなかったし、何よりイギリスに発つまであと4日という時期だったんです!それで、ライオンに変形するトランスフォーマーのエンブレムみたいなものを寝ずに作ったのですが、実際に行ってみたらそんなことをする必要はなかったと、代わりに僕の人型に近いロボットの案をベースに新しい玩具のシリーズを開発して欲しいと言われたんです…。

引き続き「Classic Bumblebee」のプロトタイプ。 © トミー / ハスブロ

トランスフォーマー!もうご存知だとは思うけれど、この玩具のシリーズは日本の製造会社タカラトミーとそのアメリカの同業者であるハスブロが提携して販売しているもの。以前にお伺いした話では、一般的な作業の過程はまずハスブロが玩具のコンセプトを発案して、アレックスさんがそれをデザイナーとして組み上げるそうですね。それは結構複雑なように思えるのですが…。

基本的には、僕の仕事は開発とキャラクターデザインで、全てを実際に3次元にするためのインプットや特徴的な武器や面白いものを追加する作業を受け持っています。その為にパーツのリストや設計図を描いて、それからそれがどうやって変形するのかを表す10もしくは12フレームの短いアニメーションも作ります。この作業はハスブロからOKが出た自分のキャラクターとコンセプトに出来るだけ沿いながら、ハスブロのコンセプトに準じて行っています。彼らとの仕事は本当に素晴らしいんですよ。

よく見てみると…プロトタイプの顔に微笑が! © トミー / ハスブロ

Bumblebeeの変形もアレックスさんがそうやってお作りになったのですよね?

タカラトミーの入社一日目から、ずっとBumblebeeの作業はずっと僕がやってきました。

映画版のトレーラーでもメインで出ていますよね…。

2年前、それに新しい解釈を与えるべく、40ほどのパーツからなるシトロン206の作業をしました。元々が小さな車だったので、特別な何かが必要だと思ってジェットパックをデザインしてみました。僕のデザインのモチーフに気づく人は多くはないでしょうが、今度出るバージョンは、大きなスニーカー、それにフードやポケットが付いているように見えますよ。

…あと、顔が笑顔になってますね!

それもあります。モデルメーカーさんに設計図を渡した時に、これの顔は笑顔にして欲しいとお願いしました。僕の知る限りでは、笑顔のトランスフォーマーはこれが初めてだと思いますね!


最近発売された変形するMP3プレーヤーは、アレックスが開発した映画版「トランスフォーマー」の関連商品。

MP3プレーヤーに羽根が生えて…

…徐々に形を変えて…

…鳥らしきものに変形!全てアレックス・クバルスキーのアイディア。

Bumblebeeの他にはどんなものを変形させたのでしょうか?

映画版の「トランスフォーマー」では、キャラクターはドリームワークスが担当していますから、僕たちはただ変形の部分と映画に関連したものの作業をするだけです。ロボット生命体に変形して走り回るMP3プレーヤーなど、実際に使える子供用商品の玩具シリーズなんかもあります。そちらにも手を広げたんですよね。

その他にはどんなことを?

他のデザイナーと一緒に、19ヶ所もの接点を持つClassic Mirageを手掛けたこともあります。でも今は2007年末か2008年に発売予定の変形するゲームコントローラーをデザインしています。


アレックスが作った試作品MP3プレーヤーのクローズアップ。 © トミー / ハスブロ


イコライザ部分は羽根に変形する。 © トミー / ハスブロ

ごく一般的な制作過程の場合、普段はどのように着手されるのでしょうか?

まずヘッドフォンを付けて音楽をかけて目を閉じます―その時点で大抵のものはもう頭の中に描かれています。子供の頃、何時間もLEGOで遊んで、布団に入ってからも頭の中でLEGOのことを考えていたような子でしたからね。

本当に?3Dソフトとかは一切使わないのですか?

ええ、僕はパーツも含め、全てを方眼紙に描いていきます。全部頭の中で組み立てているんですよ!

それはすごいですね!トランスフォームとは、2つもしくは3つの形態に変形することだそうですが、これについて説明して下さいますか?

折り紙を除けば、コンセプト自体は青年がロボットに変身する鳥を操る70年代の日本のアニメ、「勇者ライディーン」から来ていると思います。中には6段階に変形する玩具もあって、これは部品が多ければ多いほど抽象的になっていきます。しかし、これまでの3形態に変化する玩具の中で、その全ての形態において格好良く見えるものはごく一部です。


アレックスのスケッチではないものの、映画版「トランスフォーマー」より。オプティマス・プライムの勇姿!© Paramount Pictures / ハスブロ

それでは、変形自体が一つのアートの形式だということですか?

単に敵をやっつけるだけではなく、より個性的なキャラを創り出そうとしている今、より表現力のある変形を持つ独創的なキャラを作りたかったんです!例えば、もしそれが悪役なら、邪悪そうなマントを開くかのように顔を見せた方がより印象的でしょう。ヒーロー役なら、パンチするモーションで飛び出して来るとか。

まだデザインされたことのないもので今後やってみたいと思うものはありますか?

特に理由もなく、一つの変な形から別の変な形に変形するものでしょうか。変形の過程が面白いだろうと思うからですね。これは、ABの状態でどういったものであるかよりも、変形の過程自体がCとして意味を持つのです。変形そのものが興味深い部分なんですよ!

悟りへの道程を重視する仏の教えみたいですね!全く新しいアートの様式―玩具が巧みに、そして何よりも優雅に変形する姿。タカラトミーのアレックス・クバルスキーさん、今日はありがとうございました!

7月3日に公開される映画版「トランスフォーマー」に登場する「Autobot Jazz」。 © Paramount Pictures / ハスブロ

1 コメント

  1. Eeeeeeehhhhh! Majide!

    Posted by: yuko @ 7月29日2007年

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