ムービング・ブランズによる新たなブランディング

2007年6月27日 カテゴリー: インターナショナル, テクノロジー, 映像, 音楽

ムービング・ブランズによる新たなブランディング

ミラノ国際見本市「サローネ」で行われたKEFのスピーカー「MUON」のロウンチ・イベントでは、ムービング・ブランズによるインタラクティブ・インスタレーションが、五感を刺激するようなクリエイティブな空間を創り出した。

「ブランディング」という言葉を聞いて、アナタなら何を想像するだろう?ホームページの端の小さなロゴの色?それともテレビCMに出てくるタレントの笑顔?1998年に設立された「ムービング・ブランズ」は、この9年の間に急成長を遂げたクリエイティブ・ブランディング・エージェンシー。様々なプロジェクトを通して、視覚だけでなく、あらゆる感覚にアプローチする彼らのフレッシュなブランディング方法は、見る者に力強いイメージを植え付ける。今日は、ムービング・ブランズの東京支社に勤務するアカウント・コーディネーターのトム・ストッブ氏と一緒に、彼らが提案する新しいブランディングのカタチを紹介したい。

作:チエミ


ロンドン東部にあるMBのオフィス。

トムさん、まずはムービング・ブランズ(以下MB)についてお話を聞かせて頂けますか?

MBは、クリエイティブ・ディレクターのベン・ウォルステンホルムとジム・ブル、そしてマネージング・ディレクターのトビー・ヤンガー、ベンの兄であるテクニカル・ディレクターのガイ・ウォルステンホルムの4人によってロンドンで設立され、現在は60名以上が所属しています。私達はMBをダイナミックなアプローチをするブランディング・エージェンシーと呼んでいます。

「ダイナミックなアプローチ」とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

私達は、紙の上のロゴのような単なる平面のビジュアルだけではなく、様々なエリアでのプロジェクトに取り組んでいます。それが、静的媒体(印刷物)、映像媒体、音響、知覚反応の4つのエリアです。つまり、殆どのプロジェクトに対して、その見え方、動き方、聞こえ方、感じ方という部分からアプローチして、ブランディングしてゆく。これをマルチ・センソリアム・ブランディングと呼んでいます。今の世の中はものすごいスピードで変化していますよね。その動きに合わせるためにも、ブランドはこのように流動性のあるものでなけらばならないと私達は考えているのです。


2005年のクリスマスにMBがパーソナル・プロジェクトとして行った「スノーフレイクス」のインスタレーション。

携帯やインターネットから特定の番号に送られたメッセージの文字が、雪の結晶となってウィンドウに映し出される。文字数の多いものは速く、文字数の少ないものはゆっくりと落ちてゆく。

MBの代表作をいくつか拝見させて頂きましたが、どれもアプローチの仕方が斬新で、心に深く残る作品ばかりでした。例えば、昨年のロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(LCF)の卒業制作展では、初めにどのような依頼を受けたのでしょうか?

LCFからの依頼は非常にオープンで、500人にも及ぶ生徒達の大量な情報を決まったサイズの空間で面白く展示して欲しいというだけでした。ただこの時はLCFの100周年でもあったので、LCF側も何か特別なものを望んでいたのです。そこで私達が考えたのが、手でナビゲートできるこの展示方法でした。


2006年ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの卒業制作展の様子。

テーブルに映し出されたイメージに触れると、生徒達の情報や作品が掲載された立方体が回転する。動画は下から。

テーブルに映る正方形は実は全て立方体になっていて、一つの立方体の6つの面には生徒のプロフィールや作品が掲載されています。このイメージの上に手を置きその手を動かすと、立方体が回転し他の面が見られるというしくみになっているんですよ。こうすることによって、小さな会場でも沢山の情報を展示することが可能になりました。

創造性にも技術的にも非常に優れた素晴らしい作品ですね。ミラノ国際家具見本市「サローネ」で行われたKEFのインスタレーションに関してはどうでしょうか?

このプロジェクトは、プロダクト・デザイナーのロス・ラブグローブと、高級なオーディオで知られるKEFとのコラボレーションから生まれた「Muon」という高さ2m以上もあるスピーカーのロウンチ・イベントの為のものでした。彼らからの依頼は、何か面白い方法でスピーカーを発表したいとのことで、そこで私達が思いついたのはスピーカーから流れるサウンドに対して反応するLEDフロアだったのです。しかし、ありきたりなものは作りたくなかったので、リズムだけでなくサウンドのピッチやトーンにも反応させ、まるで地形図のような音波の輪郭線を表面に映し出しました。

ミラノ国際見本市で行われたKEFのスピーカー「Muon」のロウンチ・イベントの様子。単なるプロジェクトの枠に留まらず、あらゆる感覚を刺激してブランディングしてゆくのが、MBのスタイル。プロモーション用の映像は「カッコイイ!」の一言に尽きる。映像は下からどうぞ!

ところで、MBにはプログラマーとして有名なトキシーことカールステン・シュミッツさんも在籍されていますよね。先月、都内で行われた「Built With Processing」のイベントでもプレゼンを行われていましたが、これらの作品は全てプロセシングで作られているのでしょうか?


左からMBのデザイン・ディレクター、カールステン・シュミッツとマット・ウェイド。イベントで放映された二人のインタビュー映像はコチラから。

ここで紹介したものは全てプロセシングで作られています。プロセシングはプラグインを加えることで様々な使い方が出来ますし、私達の使う表現方法にはインタラクティブなものが多いので、MB内でもプロセシングを使う人が増えてきたのは確かですね。

では最後に、MBは今年3月に東京支社を設立されたばかりですが、その目的を教えて下さい。

日本は最新のテクノロジーの情報を得られる場所なので、日本の情報や市場についての知識を英国でのプロジェクトに活かしたいと思っています。また、ロンドンと東京の二都市にスタジオを持つことで、デザイナーのエクスチェンジなどを通して文化交流にも繋がりますよね。そして、もちろん更に大きな市場を獲得することも私達のゴールのひとつです。

トムさん、今日は有り難うございました。ムービング・ブランズがこれから日本で見せてくれる新たなブランディングに期待したいと思います。

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