
生意気のとんでもなくカラフルなオブジェやインスタレーション、メチャクチャなグラフィックにサイケ調の動画をよく知っている方々は、最近の彼らの主な仕事が庭での植物のお世話だと聞いてびっくりされるのではないだろうか。嘘と思われるかもしれないけれども、これは本当!東京を中心に活動する、ニュージーランド出身のグラフィック・デザイナー、デイヴィッド・デュバル=スミスとイギリス人建築家のマイケル・フランクからなる外国人デザイナーデュオ「生意気」は、今年で結成から10年を迎える。バカバカしさ、狂気、天才性といった面では引き続き通の高い期待に応えつつ、生意気は文字通り、より自然な舞台に進出することによって、彼らの快活なインスタレーションに新たな次元を切り開いている。本日のPingMagでは、デイヴィッドの午後の庭の魅力と、なぜ生きているものを扱う仕事が一番面白いのかについての生意気の興味深い考えを紹介しよう。
作:ウレシカ
庭の写真:アリス・テイラー
訳:山根夏実

マイケルと一緒に腰を下ろしたものの、デイヴィッドは植物に水をやったり、庭の反対側に置かれた竹製の物体を弄ったりと常に動き回り続けていた。私が生意気を知ったのは、2002年に原美術館で行われた珍しいキノコのパフォーマンスが初めてで、その時は奇妙な動物作品や美術館の窓全体に広がる、テーピングによる美しいイメージが展示されていた。

「珍しいキノコ舞踊団」のポスター。

原美術館に展示された生意気のインスタレーション作品の数々。

それ以来、イベント会場スーパーデラックスでの無数のVJパフォーマンス、ファッション写真撮影のセットデザイン、独自ブランドのビールである東京エール、面白おかしいビデオ作品、JRが主宰した東京アートジャングルでの列車デザイン「ウィンター・ヘアー、ソフター・ティース」、スヌーピー展に出展された彫刻作品など、ネオンピンクのペンキに覆われた数々の生意気作品を体験してきた…。

東京国際フォーラムでのスヌーピー展に登場した変形スヌーピー。

生意気のDVDカバー。

JRの東京アートジャングルのための車両デザイン、「ウィンター・ヘアー、ソフター・ティース」。
マイケル:ピンクのは…自分でも分かりませんね。ペンキをぶちまけるのが何となく好きなのですが、どういうわけか今ではレタスを弄ることでも同じだけの満足感を得られますね。実のところ、レタスの方がもっと甘く、自堕落で官能的ですよ!

あなたの言葉を借りれば「職業的なサボり方」を見つけたということになるようですが、実際にはあなた方の茶目っ気のあるアプローチがクライアントを惹き付ける魅力になっているみたいですね。でも、個人的にはあなた方がどうやっているのか不思議なのですが、ビジネスという意味で。だって、どう見てもこれは楽しみすぎでしょう!(大笑)
マイケル:仕事を遊びとして見るのは大切なことですよ!私たちも、どう考えても働きすぎだった時期がありましたからね。実際に、物事は詰めまで行ってしまわないほうが良いと思います。私たちの個展も、完全に終わらせないままの方がずっと良いものになっていますし。そうすれば来た人が参加して完成させてくれる。他人のおうちに行った時に、少し散らかっているくらいの方が落ち着くようなものです。デザインでも確実に同じことなんですよね。


では、あなたがこうやってデイヴィッドの庭でカボチャを植えるようになったきっかけは?
マイケル:私たちがデザインの道に入ったのはかなり昔のことですが、何をする羽目になるか本当に分からないものですね。一つのことをやっているとすぐにその素材でできることは全てやったような気になってくる。じゃあ次は何をすべきなのか?何に興味を持てばいいのか?そういった意味では、生きた素材を扱うことはもっとも合理的で有意義なことだと思います。


お二人は植物が作品を作ると仰いますが、植物が同じようにデザインまでしてくれていると思われますか?
マイケル:私は実際には、植物が自分で全部やってくれるようなシステムをデザインすることに興味を持っています。
多くの人々が無駄に仕事を増やしているというのが私の考えです。自力でパーマカルチャーを発見した古野隆雄というお百姓さんが書いた無限に拡がるアイガモ水稲同時作という本があるのですが、その方は昔ながらの稲作を行いながら、なぜ稲作がこんなに大変なのかという疑問を持ったのだそうです。その内に、彼は合鴨の一家を田んぼに入れておけば、合鴨が泳ぐことによって土が攪拌されて、彼がしなければいけない作業が大幅に軽減されることに気付きました。その次は、田んぼに小さな魚を入れれば合鴨の餌にもなるし、合鴨を田んぼに留めておけることを発見しました。そうやって、彼は生産性のピラミッドを積み上げていって、最終的にはほんの少しの作業しかしないでもよくなった。この人が構築したのは、本当に効率的なシステムです。こういったデザイン思考は本当に面白いと思いますね。それでも、稲作は日本では伝統的な社会の枠組みの中にあるものなので、彼の考え方に興味を持つ人は国内にはあまりいなかったようです。合鴨が自分で勝手にやってくれるのに、好きこのんで倍の苦労をしたいなんて信じられませんね。

自然に生い茂る瓢箪。

インタビュー中にデイヴィッドの瓢箪の様子を見に来た小さな隣人。
デイヴィッド:去年はこの庭で山のように瓢箪を育てていて、その成長ぶりやどんな形の実をつけるのかをただ見ているだけで面白かったです。「ガングー」展の時に目指していたのがこんな形だったのですが、今では最初から本物の瓢を使えばいいんだということが分かりました。
デザイナーとして言えば、自然に育ってくれる実があるのに、わざわざあんな形を木で作ろうとするのはバカのすることですよ!

初期の生意気スタイル:「ガングー」プロジェクトより。

ガングーに出展されたプラスチック製の彫刻の数々。

「…私たちがHOYAの依頼でインスタレーションを作った時に、彼らはそれを見て、本当に素敵ですがもっと突拍子のないものは作れませんか?と言ったんです。」
先日から大阪で開催されている「キンキー・マフ・ランド」展(ちなみに、ネーミングがいつも最高)が、生きている素材を使った初めてのちゃんとした長期インスタレーションだと思いますが、実際にはどんなことをされて、来場者はどういった反応を見せたのでしょうか?
マイケル: あのインスタレーションの期間は4~5ヶ月で今現在も展示中ですが、苔と芝を切り取ったものを3つ作って、それを私たちのオブジェを展示する緑の薄いテーブルに仕立てたんです。ガーデニングには、地面にあるものをよく見るために屈み込まなければいけないという問題があるので、私たちはもっと見やすい高さに持ってこられないかとこのテーブルを作ってみました。



お二人は大分前から様々な素材で彫像やオブジェを作ってこられたと思いますが、実際にプラスチックから植物に切り替えたきっかけは何だったのでしょうか?
マイケル:長いこと100円ショップのものを弄っていると、手に残るプラスチックの感覚が本当に嫌になるんですよ。あと、個展をするたびにプラスチックについた埃をどうにかしないといけませんしね。
それから木や紙など、基本的にある時点では生命を持っていたもので作業をするようになりました。


マイケル:その次の段階として、単純にまだ生きているものという運びになりました。ひょっとしたら、物には魂や生きているもののエネルギーが宿るという考えの中で、植物とはもっと面白いコミュニケーションが取れそうだという発想かもしれません。植物は生きているものですから、常に次は何をしようかと考えるのではなく、もっとペースを落としてまず観察をしなければならないのですよね。
お二人はゲリラ・ガーデニングというプロジェクトもやっていると聞いたのですが、これはどんなものなのでしょうか?
デイヴィッド:都会には緑化できる空間がまだ驚くほど沢山残っています。それで私たちもいつも種を持ち歩いて、そこら中にばらまいていました。それから横浜のバンク・アート1929の外でもコンクリートに開いた穴の隙間にブロッコリーを植えておきました。滑稽な光景ですよ!あと、道路脇の街路樹の下にも小さなポットに入った蕪の苗を植えたりしました。最高!

そうですね!東京周辺でも、緑の小さな空間に対する意識が高くなってきているのを感じます。年配のご婦人なんかは、勝手に近所の空き地に好きな花を植えていますし…。ブロッコリーを植えることで、お二人がそういったことにデザイン意識を持たせようとしているのは素晴らしいことですね!まあ、高速道路脇に生えている野菜を食べたいかと言われれば、それはまた別の話なんですが…その行動自体は何かと考えさせられるものですよね!じゃあ、お二人はこのゲリラ・ガーデニングはどう定義されているのですか?これもデザインなのでしょうか…?
マイケル:私たちは、どちらかといえばグラフィティとして考えていますが、何にしろ大きな可能性を秘めていると思います。オイルショック以降のキューバを見てもお分かりでしょう。肥料となる石油がなくなったことで、食糧が急に手に入らなくなってしまった。その後、どうにかして食べていかなければならなかったからパーマカルチャーを発見し、今では都市部で消費される食糧の多くが都市内で生産されています。
庭に植物を植えるのは素晴らしいことですが、それをどうやって実際に作品に活用していらっしゃるのでしょうか?あと、必要な植物をどうやって入手されているのかも教えてください。
デイヴィッド:UAのアルバムカバーやPVに本物の植物を使ったのですが、そうしたら今度は表参道で行われるUAの次のライブのステージもデザインしてほしいと言われました。それで今は大阪の有名な植物探しの5代目の方に依頼して、いくつかのびっくりするほど大きい植物を探してもらっています…。あとでその植物の一部をあなたにあげますから、庭に植えて新しいプロジェクトにでも使うといいですよ。

スーパーデラックスでのUAのPVのセッティング。

UAの「黄金の緑」のPV。

同じくUAの「黄金の緑」のPV。

同じくUAの「黄金の緑」のPV。
植物を弄り始めてから、何かネガティブな体験をされたことはありますか?
マイケル:種を探すようになってから、世界最大手の種会社であるモンサントなどの企業の害悪にショックを受けました。生きているもののDNAを弄って一年しか生きられないようにして、消費者に毎年新しい種を買わせているのです!生物系の中に死を組み込みながら、それが広がらないだろうと勝手に思っている!!
それによって、既にメキシコのトウモロコシが汚染されています。人々が何世紀もの間、トウモロコシを護り、食べ続けてきたメキシコで。今では、この技術のせいで作物は1年しかもちません!
ですから、巨大企業が全ての種の生産を支配してしまわないように、その他の選択肢も残した上で、人々に種を理解させて、それを集め、分かち合うことは実際には少なからず政治的な行為だと思うようになりました。


マイケル:植物相手の作業は、もっともやりがいのあることなんじゃないかと思います。私たちがGrafの庭園を造った時、ビル中の店やオフィスからクリエーター系の人々が私たちのしていることを見に屋根まで上がってきたのですが、彼らが唖然とする様を見るのは本当に面白かったです。あの呆然とした顔を見て、植物の及ぼす影響や植物がどれだけ人をびっくりさせるかがはっきりと分かりました。

生意気のお二人、今日は本当にありがとうございました!
…そして、実は残念なことに、これが私のPingMagでの最後の記事になります。今後は、ぺちゃくちゃないとやワールド・チェンジングなどとのコラボレーションを楽しみにしていてください。乞うご期待…!
これからもPingMagの益々のご成功を願っています!
さようなら!
愛を込めて、ウレシカより。
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どれもすごく個性的で素敵な作品だったので見ていてとても楽しかったです。不思議な映像でしたね!素晴らしい作品を見せてくださって本当にありがとうございます。心から感謝しています。是非作品を実際に見てみたいです!
Posted by: 井上美貴子 @ 9月25日2008年
[...] 生意気について、彼らの作品については、こちらの記事をどうぞ。 [...]
Posted by: Breeze of Kalani » お知らせ:エコビレッジ国際会議にトーク出演します @ 4月22日2009年
[...] BeGood cafeが開催するワークショップVIVA! BeGood Schoolがアートとカルチャーをテーマに新たにスタートする。 パトリス・ジュリアン(ライフスタイル プロデューサー)や、いとうせいこう(マルチクリエイター)、生意気(クリエイティブユニット)といった各業界で活躍するゲストと一緒にひと味違ったワークショップを3月まで8回に渡って展開する。 [...]
Posted by: アートもカルチャーも自然が大好き!BeGood cafeの新しいワークショップのかたち ∞ greenz.jp グリーンズ @ 6月2日2009年
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