StudioKanna:コンセプトのあるグラフィック

2007年5月16日 カテゴリー: グラフィック, 国内, 特集

StudioKanna:コンセプトのあるグラフィック

ヘアサロン「4th Floor」のパッケージ・デザイン。立体的なボックスにデザインされた「4th Floor」の「4」は、見る角度によって様々な印象を与えてくれる。

昨年9月に設立されたばかりのStudioKannaは、ロンドンでグラフィック・デザインを学んだカンナによるデザイン・スタジオ。単に可愛いだけでなく、理屈の通った彼女のデザインは、見る者に安堵感を与える。今日は、StudioKannaの作品を見ながら、日本の代理店の皆さんをはじめ(!)多くの人達が忘れてしまいがちな「コンセプトのあるグラフィック」について一緒に考えてみたい。

作:チエミ

CM音楽をプロデュースするSyn EntertainmentのCDのスリーブ・デザインは、NORTH時代の作品。この曲はマーク・ニューソンがデザインした日本の携帯電話Talbyにプリインストールされたものなのだそう。曲のタイトルである「Free」という文字は、Talbyのパーツで構成されている。

カンナさんはロンドンのセント・マーティンでグラフィックを学んだ後、デザイン会社のNORTHに4年間勤務し、昨年秋に拠点をロンドンから東京へと移されたと伺いました。まず、その理由から聞かせて頂けますか?

NORTHはクリエイティブに非常に力を入れている会社で、勤務していた4年という間に、私は自然と自分のスタイルを確立することが出来ました。そこで、ある段階に来た時に自分の力を試したいと思い、日本に帰国してStudioKannaをスタートさせました。


マーク・ニューソンと彼の作品をフィーチャーしたDVDのジャケットは、カンナさんによるデザイン。

「Marc Newson」の文字は、よく見ると彼が過去にデザインした家具や車の形で構成されている。

Syn Entertainment設立15周年を記念して作ったカード。15周年を英語で「クリスタル」と呼ぶことから、クリスタルをイメージして作られたもの。中に映っている七色の円形部分も、Synのアイデンティティをイメージしている。

同じくSyn Entertainmentのために作られた2006年の年賀状。上下の線は創始者の一人とそのガールフレンドが、「Happy New Year」と「あけましておめでとう」と言った言葉の周波数をデザインにしたものだとか。

作品をいくつか拝見すると、日本人らしさとイギリス的なセンスがうまく混ざり合ったカンナさん独自のスタイルが見えてきますね。こちらも可愛らしいですけれど、この作品は?

トヨタがヨーロッパで「Aygo」という車を発表した時に、プロモーションとして作ったものです。この企画では、ヨーロッパの若いアーティストが10名集められたのですが、私はデザイナーではなくイギリス代表のアーティストとして参加しました。ですので、ここでは自分の好きなものだけでカモフラージュを作ってみたんです。カモフラージュって人の目をごまかすという意味ですが、これは自分を前面に押し出したアンチ・カモフラージュという感じですね(笑)。

トヨタの「Aygo」。こちらの車は、パリのシャンゼリゼ通りにあるToyotaのショールームに展示されていた。自分の好きなものだけで作ったというイラストは、カンナさんそのもの。

次はロンドンにある4th Floorというヘアサロン用に作ったショップカードとビジュアルブックです。依頼時に決まっていたのは、少し工業的なフォントとストライプのアイデンティティだけだけだったので、オーナーはもっと遊んだデザインを希望していました。

ロンドンのヘアサロン「4th Floor」のショップカード。4th Floorではオリジナルのシャンプーなどを扱っているため、その素材のイメージを使ってデザインされている。

同じく「4th Floor」のビジュアルブック。ちなみに、この作品は印刷会社がスポンサーになってくれたのだとか。確かに、印刷会社にとっても良い作品例になること間違いなし!

同じく「4th Floor」のビジュアルブック。開くと4ページ。

ここも4つ。

ここも4つずつ。

このビジュアルブックでは、「4th Floor」の「4」をコンセプトにしています。ここでは基本色が4色、4ページの表紙、4色の特色…と全てが4という数字に関係しているんですよ。

こうやってビジュアルブックひとつにしても、ひとつのコンセプトでしっかりと作られているのが、素晴らしいですね。これは日本だけではないかもしれませんが、最近は見た目が非常に美しいのに何のコンセプトもないデザインが多いんですよね…。

デザインってそういうことじゃないですよね。コンセプトをしっかりさせないと、収拾がつかなくなる。日本のクライアントと仕事をすると、詳細にこだわり過ぎて、初めのコンセプトに戻れなくなることが多いように感じます。デザインする時も、ちゃんとしたコンセプトがあった方がやりやすいし、完成品にちゃんとした意味があるという方が素敵だと思うんですけどね。

では、カンナさんはいつもどのようにしてプロジェクトに取りかかられていますか?

まずはクライアントの要望を理解して、そこからいくつかテーマを作り、その中で一番筋の通ったものを選びます。その後、それに合ったイメージを集めたスタイルボードを作ってクライアントに見せ、ビジュアルを詰めていきます。この4th Floorの時は、シャンプーに使われている材料のグレープフルーツにストライプを入れたイメージなど様々なものを提出しました。

初めに作られるテーマとは、具体的にはどのようなものですか?

一番最近の作品を例にして説明すると、これは銀座にオープンするヘアサロンの招待状なんですが、ここは古いものと新しいものがミックスされたようなスペースなんです。ですので、ここでは「昔の良いものをモダンに表す」というテーマが選ばれました。そこで、昔の手紙がリボンでくくられていたところから、リボンをモチーフに選びました。

NYスタイルのヘアサロン「Genuine」が新しく銀座にオープンした店舗のための招待状。(Project with Eat, Collaboration with HF)

可愛らしいのに、しっかりとした意見を持つカンナさん。カッコイイ!

日本とイギリスの両方で仕事をしてみて、何か違いを感じますか?

イギリスの時は、クライアントとデザイナーと印刷会社の三者の関係と、制作までの過程が非常に重要で、皆で一緒に良い物を作っていくという感じだったんですが、日本の場合はそのような意識はないような気がしますし、何かを見せないと理解して貰えない。理由もなく「こんな感じで」とか「こんな紙で」という要望が突然出るのは、そういうことなんじゃないでしょうか。ですから、制作に関わる方にはもう少しデザイナーを信頼して欲しいですね。

カンナさん、今日は有難うございました。これからも、素晴らしいデザインを楽しみにしていますね!

【お知らせ】StudioKannaでは、コンセプトのあるデザインができ、一緒に展覧会を出来るようなデザイナー仲間を募集中!我こそは、という方は、こちらより、ご本人に直接ご連絡下さい。

3 コメント

  1. 改めてアキチンの作品を見させてもらいました。イギリスで見させて貰った作品以外に、まだまだ見ていなかった作品があんなにあったなんて!!

    Posted by: yoko @ 5月16日2007年

  2. アキチンのイギリス時代と作品が重なって、とても考え深いものばかりでした。日本でも、アキチンの作品が見れることを楽しみにしています!!

    Posted by: yoko @ 5月17日2007年

  3. 素晴らしい記事ですね!カンナさんの色大好き、見てると元気になります。日本でのお仕事が気持ちよく出来るように応援してます!

    Posted by: yuki @ 5月17日2007年

  • Share and Enjoy:
  • del.icio.us
  • digg
  • Fark
  • NewsVine
  • RawSugar
  • Reddit
  • YahooMyWeb
以前の記事