デジタラビリティ:デジタルの可能性

2007年5月11日 カテゴリー: イベント/展示会, インターナショナル, テクノロジー, 特集

デジタラビリティ:デジタルの可能性

ジェフリー・マンによるランプシェード「灯りに誘われて」は、光源の周りの「ガ」の飛行を3Dスキャナでデジタル化したもので、3次元CAD内部のモデルを短期間で実物のモデルにする「ラピッド・プロトタイピング」によって物理的に作られている。ベルリンのデザイン・イベントDesignmaiのデジタラビリティ展より。(写真:シルバン・デル)

今月12日から20日までベルリンで開催される、デザイン・イベント「Designmai」と、そのカンファレンスの主なテーマは、デジタラビリティである。…が、この、舌を噛みそうな「デジタル」と「アビリティ」の造語は、実際何を意味するのだろう?今回、デジタラビリティ展のキュレーターであるアティラノ・ゴンザレス・ペレス氏が、デザイナーと技術の立体的な収束について説明してくれた。

作:べレーナ
訳:ジュンコ

Designmaiのカタログの「デジタラビリティ」の文字は、アレッシオ・レオナルディによる作品。

デジタラビリティ

CADソフトウェアによって3Dにビジュアル化された物や家具、そして家などは、ただの始まりに過ぎない。元々の航空機組み立て技術から、そのハイエンド・テクノロジーは、ゆっくり、しかし着実にデザインの分野に潜入してきている。その中でも、近年特にラピッド・プロトタイピングと、レーザー焼結(SLS)の2つの技術が目立ってきているが、それは、与えられた座標により動くレーザーが、その熱で可塑性粉末材料を一層一層焼結しながら造形してゆく、というものである。

まず始めに、デジタラビリティとは何でしょう?…デザイナーによるデジタルの可能性、それとも、デザイナーのデジタル化する技術なのでしょうか?

そこが実際問題です。デザイナーの持つ、テクノロジーに関する知識なのか、それとも、テクノロジーが可能にしてくれることなのか?…どちらにせよ、我々は、その問題の異なった局面を示そうとしているんです。例えば、今日のデザイナーの大部分にとっては、CADソフトウェアを使って仕事をするのは一般的です。結局は、それは世代の問題でもあるんですよ。今レーザー焼結を使っているデザイナーの大部分は、30歳くらいか、30代の方たちですし。

シンプルな丸イス: ルイーズ・キャンベルによる「Veryround(とっても丸い)」。材料は、3Dレーザーによってカットされた160枚の丸い薄鋼板フレーム。構造と同様、影絵をイメージしている。手でちぎって作られた紙の模型を元にして、同じくらい“もろく”見えるように意図して作られた。(写真:マリーノ・ラマトッティ)

では、デジタラビリティ展では、どのような物が展示される予定なのでしょう?

元々、Designmaiは、近年のデザインにおけるデジタル技術の相互作用と影響に関するイベントです。最近では、コンピュータでデザインされていない物を見つけることの方が難しいですが、我々はここで、3つのカテゴリで構成された、およそ60個の特別な作品を展示します。1つ目のカテゴリは、デザインするためのデジタルツールを紹介する「創造」、それから、デジタル製造テクニックのための「生産」、そして、デザインされた製品における、デジタル技術の統合に関する「コミュニケーション」。


ベルリンで5月12日から5月20日まで開催されたデジタラビリティ展のカタログの表紙。

ではまず、デジタルツールを紹介する「創造」のカテゴリに関して伺います。そのツールとは、CADソフトウェアよりも、ちょっと先を行くものですか?

例えば、我々は二つの面白いフォントプログラムを持っています。一つは、マイケル・シュミッツによるもので、ゲーノトゥープと呼ばれる活字面の異種交配のためのものです。ゲノム同様、そのソフトウェアは、まず1つ目のフォントをスキャンしその特性を捉えます。そして次にそれを2番目のフォントと異種交配させ、全く新しい3つ目のフォントを生み出すのです。他にも、自然主義的な要素を再生させることができるソフトウェアがありますし、それから、デザインするために特定のパラメーターと詳細を入れることができるプログラムもあります。…言うならばドアのような。それは次に、デザイナーの反応を得るため幾つかの提案を生み出すのです。

バチッバ・グロスマンによる「Quin.mgx」。この作品ではプラトンの哲学に基づいて、いかに多くの面を作れるのか、ということに焦点を当てられた。(写真:マテリアライズ.mgx)

しかしながら、我々は、全ての開発をポジティブな方向で見ているわけではないのです。それこそが、我々が関連の会議で議論し、誰が今デザインしているのか?著者という言葉の意味するところは?…というような疑問に対処しているわけなのです。

まさしく今ちょうどそれについてお尋ねしようと思っていました!…でも、創造の過程と最終的な意思決定は未だデザイナーの手中にありますよね。

その通りです。でも、それこそが我々を2番目のカテゴリである生成された形の即席の生産に導いていくのです。そう、確かにデザイナーが意思決定者なんですが、彼の仕事は変わってきています。例えば、顧客がパーツを選択するナイキID。そこでは、デザイナーはもう靴をデザインしているのではなく、その可能性をデザインしているのです。

というと、カスタマイズ・モデルの生産増加を意味しますね…。でも、まだユーザが選べるのは、ただ異なった色か特定のモジュールくらいで、残りは変更されないままです…

それが私たちを即座の生産に導くのです。毎日プラスチック製品を生み出せるテレオリトグラフィのマシンをこの展示会で見ることが出来ますよ。

それって、以前私達が取材した、スウェーデンの3人組フロントのスケッチファニチャーを思い起こさせるのですが…。

彼女達のビデオも展示会で紹介しますよ。

アッサー・アッスアによる「AIスツール」。AIスツールは、3Dツールと人工知能の組み合わせを使用してデザインされたものの第一号になるはずのもの。レーザ焼結によって作られ、化粧用の皮膚と知的なソフトとハードの構造から成る。「骨の生物学的構造とメカニズムのように、人工知能ソフトウェアは、十分なサポートをどこに作成するべきかを知っています。」と、企業。(提供:アッサー・アッスア・スタジオ)

ラピッド・プロトタイピングによりカスタマイズされた製品の開発は、かなり驚くべきものですね。そのうち、誰もがそんな個性的な彫刻やテーブル、椅子をリビングに置く日が来るかもしれませんね。

ところが、技術が非常に高価なので、まだまだゴールは遠いんですよ。現在は、これら特別なマシンのメーカーが新販路に焦点を合わせて製品を手頃にしようとしているところですが、材料はまだかなり高価なのです。例えば、4年前にベルリンをベースに活動しているフォークトゥ+バイツネガーによってレーザー焼結技術で作られたシンターチェアは、今でも数千ユーロもします。でも、この技術が長く使われるほど、より早く最終消費者に届くようになるかもしれません。 例えば、ベルギーのメーカー、マテリアライズ。 彼らは、ラピッドプロトタイピングの最も大きなサービスプロバイダーの1つであり、既に全ての製品ラインを生産しています。 先に紹介したマテリアライズのランプをご覧下さい。


アッサー・アッスアの「AIスツール」の細部。

しかしながら、マテリアライズの固いプラスチック製品の使用法はまだまだ制限されています。この技術は、元々航空機の組み立てに由来しているんですよね?

…そして、自動車の製造からもね。これらの焼結機は、金属を生む事もできるんです。ある特定な粉の使用によってね。焼結機は、プラスチックや金属の粉を物に鋳造するんです。

とても技術的なお話ですね。では、どの程度までデザイナーが技術者に変わるんでしょう?

重要なのは、その人はCADソフトウェアを使用可能でなければならないという事です。これはデザインを新しい品質まで高めます。なぜなら、物が1つの断片から作られることによって、その人はそれ以上、構造上の要素について心配する必要がないからです。簡単な例としては、筋のあるドライバーでしょうか。例えばそれを3Dレーザープリンタで印刷すると、それは全く問題無く使えるはずです。なぜなら、それは印刷する時に、物が全く印刷されないある種のサポートパルプを残すからです。その過程の後、これは溶出されるのです。それから別の例としては、ボールの中のボールの中のボールはどうでしょう?これまでの技術では、ボールを半分に切って後から一つずつ溶接するという作業無しには、多分製造することは出来なかったでしょう。


「AIスツール」のアップ。すばらしい織地…

アッサー・アッスア・スタジオの椅子の背後に存在する技術とはどんなものなんでしょう?

AIとは人工知能を表していて、AIスツールはレーザー焼結された作品です。アッサは、パラメタを与えるだけで自動的に残りをやってくれるソフトウェアを書いたプログラマーとコラボレートしているんですが、例えば、アッサがまず形をデザインし、120キロの積載量を持ったスツールの上の特定のスポットの前提条件を決定します。そうすると、ソフトウェアがそれに最適な構造を生み出すのです。かなりデリケートな構造さえも。アッサがするべき次のステップは、構造のパターンに手を加えればよいというわけです。

これはつまらない質問かもしれませんが、そのソフトウェアはどのように芸術面と関わっていけるでしょうか?

例えば、アッサのAIストゥールにおいては、構造次第で様々な可能性が隠れていると思います。また、今回展示会で紹介するマルセル・ワンダースの「エアボーン・スノッティ・ベース・ライン」は、くしゃみをした時の鼻水の細かな動きの3Dスキャンを物理的に表現したもので、スキャンされた水滴のデータはラピッド・プロトタイピングによって3Dプリンタに送られました。つまり、テクノロジーは、デザイナーが別の方法では表現しきれないものをもビジュアル化できるということなのです。同様のものでは、ジェフリー・マンの「灯りに誘われて」があります。(タイトル画像参照)このランプシェードは、プログラムによって調べられた、光源の周りを飛ぶガの飛行をたどった形になっています。

マーセル・ワンダースによる花瓶。タイトルは「Coryza(鼻かぜ)」。デザインは空中に舞い上がる鼻水の3Dスキャンに基づいており、デジタル・プロトタイピング技術を使って最終的に作成された。(写真:マーティン・ヴァン・フーテン)

快適?それとも…?パトリック・ジュワンによるステレオリトグラフィ家具、「C1チェア、ソリッドコレクション」。そのプロセスは、CAD図面から固体でプラスティックの、三次元の物体の創造を許す3Dレイヤか3D印刷として知られています。(写真:トーマス・デュバル)

最後に、デジタルの可能性の将来的な見解は?

我々の紹介しているこれらの美しい例や実験は、いつか適切ではなくなるでしょう。技術が進歩するので、かなり平凡な物がそれから出て来る可能性があるかもしれません。もしかしたら、それによって、MITの人たちが、「誰もが家に自分の3Dプリンタを持つ」というようなことを夢見るようになるかもしれません。そうしたら、人々はもうマグカップをネット上で買う事はなくなり、その代わりに、マグカップのソフトウェアを買うのです。色とサイズを選んだ後で、それを3Dプリンタで印刷する…。

これについての更に詳しい話と、MITのニール・ガーシャンフェルドゥ氏の面白い話が、Edge.orgにありますよ。

なんだか、古いサイバー・パンクの夢や、ウィリアム・ギブソンの小説オール・トゥモローズ・パーティーズの中で出てくる3Dプリンタのような話…。デザインと技術の見通しをどうもありがとうございました!もし偶然にもベルリンにいるという方は、明日5月12日から5月20日までベルリン・ミッテで開かれるDesignmaiに是非お立ち寄りください!

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