浮世絵シリーズ#1:入門編

2007年5月10日 カテゴリー: イラストレーション, 国内, 民芸・工芸, 特集

浮世絵シリーズ#1:入門編

浮世絵を代表する葛飾北斎の「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」。北斎は、他の絵師には真似出来ない素晴らしい風景画を描いた。(資料提供:日本浮世絵博物館)

日本の皆さんは「浮世絵」という言葉を聞いて、何を思うだろう?古い日本の芸術?それとも、堅苦しくてとっつきにくい骨董品?名前ぐらいは知っているかもしれないけれど、実際にそれが何をテーマに、そしてどうやって描かれているかを知る人は意外に少ないかもしれない。今日のPingMagでは、今も昔も沢山の人々を魅了し続ける、日本が誇る芸術品「浮世絵」について少しだけ勉強してみたい。

作:リョウコ

1. 「浮世絵」という言葉

「浮世絵」とは一体何だろう?「浮き世」を辞書で引くと、つらいことの多い世の中、又ははかない世の中、という意味が書かれている。しかし、浮世絵を見ると分かるようにそこに描かれているのは、江戸時代の人々の楽しげな様子。つまり、浮世絵とは当時の人々のウキウキとした楽しい生活の様子が描かれた絵、ということを意味しているようだ。

歌川豊国の作品には、江戸の華やかな女性たちの姿が描かれている。(資料提供:日本浮世絵博物館)

2. 浮世絵の始まり

浮世絵がどのように登場したかは定かではないが、江戸時代以前は絵師が直に紙や絹にその絵を描く肉筆画だった。当時の浮世絵の殆どは、貴族や武士階級の者たちに所有されていた為、庶民が目にする機会はなかったのだとか。しかし、江戸時代になって人々の経済力が高まると、様々な文化が大衆の間で発展し、挿絵付きの書物が多く出版されるようになった。それが木版画の浮世絵だ。木版画になることによって、同じ挿絵が沢山の人の目に触れるようになり、その後、その挿絵が一枚の絵として世の中に出回るようになっていった。

これこそ本当の漫画の始まり?葛飾北斎による「北斎漫画」。(資料提供:大屋書房)

江戸時代のものとは思えないポップな色使いの「狂歌・百鬼夜興」。(資料提供:大屋書房)

曲亭馬琴の南總里見八犬傳。あの鳥山明の「ドラゴンボール」も、アイデアは「西遊記」の他に、この「八犬伝」から来ているとか。(資料提供:大屋書房)

3. 制作方法(木版画の場合)

浮世絵の版画の制作は、様々な職人たちの分業作業によって作られる。浮世絵が出来るまでの過程には、まず絵を描く絵師が縁取りされた下絵を描き、そこから木版画を作り、墨で刷る(図1)。その後、数枚の板を使って色別の版を作っていく。ここで使われる木は、桜の木。桜の木の樹皮は堅く、堅い樹皮の方がより細い線を彫れることから、桜が使われていたそうだ。それから、それらの版を使って一枚の紙の上に一色ずつ刷られていき(図2〜3)、完成。ちなみに、一枚の浮世絵に要される板は、通常5〜6枚程度だが、広重の作品には20枚もの板を使用したものもあるのだとか。

図1:輪郭が彫られた墨板の摺り絵。歌川広重「東海道五拾三次」より。(資料提供:日本浮世絵博物館)

朱色になる荷物の部分の試し刷り。(資料提供:日本浮世絵博物館)

こちらは青い空の部分。(資料提供:日本浮世絵博物館)

図2:縁取りされた絵に少しずつ色がのせられてゆく。(資料提供:日本浮世絵博物館)

図3:完成間近。(資料提供:日本浮世絵博物館)

何回も色を摺り重ねられて完成した浮世絵。(資料提供:日本浮世絵博物館)

4. 浮世絵のモチーフ

江戸時代の浮世絵には様々なモチーフがあるが、その中でも重要なものが一般大衆の生活と風習。今で言うグラビアのような役者絵や美人画、風景画や武者絵などが代表的で、役者絵や美人画は、その当時、広告としての役割を果たしていたそうだ。

こちらの写真は東海道五十三次のモデルにもなった現在の箱根の風景。写真の中央には茫洋とした富士山が見える。

箱根ではないけれど、広重の東海道五十三次からの一枚、「興津」。(資料提供:大屋書房)

こちらは、江戸以降の浮世絵師、河瀬巴水の風景画。巴水は、衰退する浮世絵の復興を目指し、新しい浮世絵版画を生み出した。(資料提供:大屋書房)

東洲斎写楽の役者絵。(資料提供:日本浮世絵博物館)

渓斎英泉の美人画。(資料提供:日本浮世絵博物館)

最後まで役者絵を描き続けて世を去った浮世絵師、豊原国周の役者絵。(資料提供:日本浮世絵博物館)

美人画で有名な喜多川歌麿の作品。(資料提供:日本浮世絵博物館)

5.代表的な浮世絵師

それでは、代表的な江戸時代の浮世絵師にはどのような人達がいるのだろう?まずは、誰もが一度はその絵を目にした事のある葛飾北斎。そして、その隣は江戸百景で有名な歌川広重

こちらは葛飾北斎による風景画「赤富士」。この赤富士の赤の色は、刷り師によって刷られたもの。最初に北斎が描いた赤富士はここまで赤くないらしい…。(資料提供:日本浮世絵博物館)

こちらは歌川広重の代表作とも言える名所江戸百景からの一枚。(資料提供:大屋書房)

歌川広重による名所江戸百景からの一枚。この作品は、印象派の画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホが模写したことでも知られている。(資料提供:日本浮世絵博物館)

江戸時代末期を代表する浮世絵師の1人である歌川國芳は、20世紀後半になってから注目を浴びた浮世絵師。そして、歌川國芳の弟子でもあり、怪奇な絵が特徴的な月岡芳年。他にも沢山、浮世絵師はいるけれど、皆さんは何人ぐらいの名前を挙げることできるだろう?


武者絵と言えばこの人、歌川國芳。口に加えた刀が恐ろしい!(資料提供:日本浮世絵博物館)

歌川國芳の武者絵。(資料提供:大屋書房)

明治の浮世絵師、月岡芳年による新形三十六怪撰・二十四孝狐火之圖。芳年は日本よりも海外の人に受けがよかったそうだ。(資料提供:大屋書房)

こちらも同じく芳年の一魁隨筆・一ツ家老婆。芳年は、今の若い人に人気があるらしい。(資料提供:大屋書房)

6. 浮世絵の楽しめる場所

日本の浮世絵は世界中の至る所で目にすることができる。日本国内ならば、東京都渋谷区の浮世絵・太田記念美術館、同じく東京都千代田区神保町の大屋書房、長野県・松本市の日本浮世絵博物館、千葉県船橋市の船橋市立西図書館など。海外ならば、アメリカのボストン美術館、パリのギメ東洋美術館、イタリア・ジェノバのキヨッソーネ東洋美術館、NYのブルックリン美術館、ロンドンのV&Aなどでも所蔵されている。また、現在、渋谷のたばこと塩の博物館では、「風俗画と肉筆浮世絵展」を開催中!

今日はちょっとした浮世絵のお話を、楽しんでいただけたでしょうか?皆さんの街の美術館にも浮世絵があるかもしれないので、ぜひ探してみて下さいね。このシリーズは今後も続いていきますので、お楽しみに!

5 コメント

  1. [...] PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン ? Archive ? 浮世絵シリー… (tags: art japan) [...]

    Posted by: Daily Links » Zazie@Tokyo @ 5月11日2007年

  2. 浮世絵が挿絵だったとは。
    それぞれの浮世絵にストーリーがあるなら
    それを読んでみたいなぁ。

    Posted by: satoko @ 5月14日2007年

  3. satokoさん、特に里見八犬伝はお薦めです。イラストが凄まじくかっこう良い!

    Posted by: ryoko @ 5月14日2007年

  4. 浮世絵といえば一時春画をよう集めてました。
    春画にはパロも多いです。八犬伝然り。
    春画も大人の事情や変な法則があったりしておもろいですよ!

    入館料100円の「たばこと塩の博物館」はよく浮世絵の展示をやってますね。しばしば通っています。
    未踏なのでちょっと違うかもですが、東京だと最近じゃ豊洲にも浮世絵美術館がありますよ。

    Posted by: あわわ @ 5月16日2007年

  5. So beautiful~
    I’m a Chinese from HK,Who could tell me more about thoes pictures?

    Posted by: Mitsui @ 5月20日2007年

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