
東京在住のクリエイターの皆さんなら、一度は彼らの名前を耳にしたことがあるのではないだろうか?日本語や英語の文字を解体し、そのパーツを再構成して新たな文字を作り出す「大日本タイポ組合」は、1993年に塚田哲也氏と秀親(ひでちか)氏の二人によって結成されたエクスペリメンタル・タイポグラフィー・ユニット。彼らの作品の数々を見ていると、私達が日々目にしている文字の中に隠れた“面白さ”を気づかされずにはいられない。今日は、そんな大日本タイポ組合の二人のスタジオに、彼らが作り出す楽しい作品の数々を拝見しに出かけてみた。
作:チエミ
では、塚田さんと秀親さん、自己紹介からお願いします
塚田&秀親:いつもモジモジしながら文字と歩んで三千里。大日本タイポ組合です。
ご自分達のことをいつも何と呼んでいるのですか?
塚田:組合員です。
お二人は見た目が少し似ていらっしゃいますよね。初めてお会いした時、実は区別が付かなかったんですよ。
秀親:僕達も時々分からなくなります。昔はもっと似てたけど、俺の方がちょっと太っちゃって…。
塚田:僕は富士額。というかね、区別したい時は顔に名前が書いてあるの。
…というと?

塚田哲也さん

秀親さん

なるほど!こちらは、塚田さんの名刺にも描かれているイラスト。

秀親さんの方には、ヒゲもちゃんと入っている。
塚田:これを「似顔字」と呼びます。
ほほぅ。ところで、お二人はどのように知り合われたのですか?長く一緒にいるような雰囲気ですが。
塚田:人生の3分の1は一緒だね。知り合ったのは多摩美のグラフィック科で、出会ったのは91年。結成は大学を卒業したすぐ後の93年。
ん?ということは、大学の始まりから一緒だった訳ではないんですね?
塚田:人生ってね、色々なことがあるの…。
秀親:俺が飛び入りしたんだよ。それで、こいつが友達のいない俺を相手にしてくれた。
日本で飛び入りってあまり耳にしないですが…。二人が一緒に活動するきっかけになったのは卒展と伺いましたが、本当でしょうか?
秀親:多摩美の卒業制作展の時に、俺が実行委員長をやらされたの。
優秀だったんですね。
塚田:皆より少し先輩だったからじゃないかな…。

卒業制作展のポスターはこんな感じだったそう。ちなみに背景は朱色で、文字は紫色だったらしい。
秀親:その時にポスターを作らなきゃいけなくて、チラシの上でぐちゃぐちゃ書いていたらカタカナの「タマビ」を組み方を変えたことで、偶然、漢字の「祭」みたいになった。それで、そこから「タマビ・グラフ・ソツテン・ラフォーレ」っていう言葉で4つの文字が出来たの。これが大日本タイポ組合の原点。前の学年は英字を使ってやってたけど「そういうのはもういいよ、日本人らしく日本語でいこうよ」って。しかも、俺達は何か楽しいことを発見しちゃったんだよね。
その大発見の後は?
秀親:ポスターを作って原宿の駅前に貼ったり、駅前でポケットティッシュを配ったり、ラフォーレの懸垂幕を作ったり…。その時に、漢字をカタカナに直して、組み替えることで別の漢字に見えるのが「漢字の孫」みたいで結構面白いねって二人で話したの。もっとやろうよ!って。
それで卒業後すぐに「大日本タイポ組合」が出来る訳ですね。ところで、その名前はどこから来たのですか?
塚田:東京タイプディレクターズクラブ(TDC)っていう団体があって、そこよりもっとデカイことをしようと思って付けた。「東京」よりも「クラブ」よりも大きい感じで。
秀親:でも、実はタイポ組合の「タイポ」って言葉は誤植なんだって。日本語では「タイポ」はタイポグラフィーを意味しているようにとられているけど、英語にした時には「タイプ」で「タイポ」じゃない。でも、間違えているぐらいの方が俺達には丁度いいねってことになったの。
二人で活動し始めて、仕事はすぐに来ました?
秀親:来るはずがないよね…。
塚田:だから自主制作とかコンペによく作品を出してた。ADCはクライアントがいるちゃんとしたプロジェクトじゃないと応募できないけど、TDCは割りと自主制作の作品も受け付けてくれるから、ずっと出してる。最初は入選して年鑑に作品が載ったんだよね。



こちらは「ナイキ」。

こちらは?
日本人としては非常に面白いんですが、これを英語版で何と説明しようか…。
塚田:ところが、海外で注目されることもあるの!このTDCの年鑑に俺達の作品が載って、それからしばらくして知人に「すごいカッコイイ本に載ってたね。いいよ、あれ!」って言われた。ある時、たまたまこのスニーカーのカッコイイ本をチラチラ見てたらね、載ってるわけ、俺達の作品が!

これが問題のイギリスから発売されたカッコイイ書籍「Sneakers, isn’t everything」。

あ!本当に載っている!
無断で!?いいんですか!?怒らなくていいんですか!?
塚田:どうしたもんかなぁと思って…。でもね、こっちもナイキとコークには内緒でやっちゃったので、まぁ僕らも怒れないと…。でも、今は「ありがとう」ぐらいの気持ちですよ。後でナイキの人に会った時に「あれ面白いね」って言ってもらって、結局一緒に仕事をすることになったし。
秀親:これがきっかけでClub KingとかGASにも声をかけてもらって、徐々に仕事も増えたしね。
じゃあうまくいきましたね。下積み生活もあまり長くなさそうですね。
秀親&塚田:いやぁぁ〜。
塚田:あちこちから仕事を依頼されるようになったのは、ここ2、3年。この若手芸人みたいな頃が、すごく長かったんだから。本を出すって言われれば、チョコチョコ参加してみたり。こんなものもやりつつ…。




そこから、またしばらくして転機となる出来事があったとか?
塚田:2001年にロンドンの小さなギャラリーで個展をやっていた時に、バルセロナで開かれていた日本のデザインの展覧会に遊びに行ったんだよね。そしたらそこで、グルビ、生意気、パワグラ、デラウエアなんかも参加してたトークショーがあって、関係者に「ついでだから君達も喋ってよ」って言われて…
秀親:シークレットライブみたいな感じだね。
そう言うとカッコよく聞こえますね。
塚田:でも、前の人の話が押しちゃって、次はトリだし「10分か20分でさっさと終わらせて下さい」って言われたの。ところが、ちゃっちゃとやったら意外とウケて、むこうのキュレーターの目に止まったんだよね。且つ、自分達も「来年、バルセロナで何かやりたいんですけど」って言ったら、次の年、バルセロナの小さなギャラリーで展示をすることになり、そのギャラリーの図録としてこれが出されたの。大日本タイポ組合の結成10周年も兼ねて。

まさに棚からボタ餅!そこから、波に乗るようにコクヨの「Anノート」や、ハンコのプロジェクトへと続く訳ですね。



こちらは作文用。マス目は当然「作」の字になっている。

秀親:このハンコシリーズではちょっとしたエピソードがあって、高橋くんっていう人にこのハンコを作ってあげたんだよね。高橋って言ったら俺たちの世代だとやっぱりファミコンの高橋名人だから、やっぱりハンコはこうだろうと。そしたら寡黙な高橋くんがすごく喜んでくれて、次の日に自分のお兄さんを連れてきて、お兄さんの分も作ってくれと。で、同じのじゃつまらないから、変えてみたの。ところが、それに味をしめた高橋くんは翌日彼女を連れて来た。その人が杉本さんって名前だったので、こうなったわけ。

こういうアイディアって面白いのですぐに真似されちゃいそうですね。何か似た作品を見たことってあります?
秀親:これは俺達が作ったものじゃない、街で見つけたダメなやつ。この「ク」も「クール」も入れて欲しかったよね。しかも、このパスはなんだ!

それはちょっと残念でしたね…。では、そろそろ代表作の「トイポグラフィー」をご紹介してもらいましょうか…(この段階でインタビュー2時間経過)。デザイン・タイドでも大人気でしたが、そもそもどうしてこれを?

積み木で文字が作れる「トイポグラフィ」。「BIRD」「FISH」「BEAR」など色々な種類がある。
塚田:これは元々雑誌デザインクオータリーの「楽しくなければデザインじゃない」っていう特集企画で作った積み木で、この同じ積み木で漢字の「楽」や、ひらがなの「たのしい」、英語の「JOY」っていう字が作れるの。
秀親:それをベースに新たに作ったのがこのトイポグラフィーね。
塚田:魚のバージョンでやってみようか…。まずは FISHから…


サ…

さしみ…??
ひらがなで「さかな」になるはずじゃなかったですか??
塚田:今日はならない。漢字にはなるけど。

これがさらに、魚の絵にもなるんですよね。
秀親:なるよ。イカとかどう?
イカよりもっと魚っぽい魚がいいです。ヒラメとか。
秀親:わかった。

塚田:これエンゼルフィッシュじゃない?

完全に二人の世界…。

魚からカメレオンになった!
それにしても、ご自分達がそこまで楽しめるなんて、本当に良い物を作りましたよね。子供達の創造力もこの積み木で掻き立てられると思いますよ。ところで、将来の夢ってありますか?
秀親:俺の夢はディナーショーが出来る作家。
塚田:俺はランチ・ミーティング。
ランチ・ミーティング?お二人とも積み木に夢中なようなので、今日はそろそろ失礼しますね。有難うございました!
2 コメント
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Posted by: Daily Links » Zazie@Tokyo @ 4月23日2007年
「ハンコのプロジェクト」良かったです。
芸術ですね。美しい。。。
Posted by: Sunamisuto @ 4月27日2007年