マニュファクチャード・ランドスケープ:いまここにある風景

2007年4月12日 カテゴリー: インターナショナル, フォトグラフィー, 特集, 環境・福祉デザイン

マニュファクチャード・ランドスケープ:いまここにある風景

エドワード・バーティンスキー:「Nickel Tailings #34」、サドバリー、オンタリオ州、カナダ-「マニュファクチャード・ランドスケープ」(人工の風景)では、ジェニファー・バイチウォル監督が人類の衝撃的な影響を映画として描き出している。

カナダ人エドワード・バーティンスキーは、産業によって極端なまでの変化を強いられた風景の美しい広域写真を撮り続けている。トロントを拠点に活躍する映画製作者、ジェニファー・バイチウォルのドキュメンタリーマニュファクチャード・ランドスケープとその撮影者は、今では中国やバングラデシュの各地を巡って、この驚くべき写真の数々がどのようにして撮影されたのかを公開しており、大量生産がもたらしたグロテスク且つ厳しい結末を、訪れた人々に奇妙で現実離れした体験として伝えている。例えば、世界中のコンピュータの50%は、他の様々な廃棄物と共に中国に行き着くこと…。このドキュメンタリーは、環境保護に熱心な人でなくとも、きっと何かを考えさせてくれるだろう。PingMagは、監督のジェニファー・バイチウォルさんにこの意識を高める映画についてのお話を伺ってきました。

作:ベレーナ
訳:山根夏実


巫山の屋上に立つジェニファー・バイチウォル監督(左)とエドワード・バーティンスキー(右)、中国。(写真:Sanjay Mehta)

ジェニファーさん、このマニュファクチャード・ランドスケープの映画企画は、どういったきっかけで始まったものなのでしょうか?

元々エドワード・バーティンスキーの作品は大分前から知っていて、彼が採石場の写真を撮り始めた時に強い興味を覚えました。その写真は本当に美しいメタファーだと思うんですよ-採石場は私たちが文明に必要な材料を採る時に作る、文字通りの地面の穴なのですから。プロジェクト自体は、エドワードと一緒に行動していた写真家が自分で撮った60時間にも及ぶ映像を映画にしてくれる人を探しているといって、私たちの制作パートナーであるダニエル・アイアンにそれを見せてアプローチしたのがきっかけで私の方に回ってきました。それでその映像を見ているうちに、これ以外にも何かが必要になるかもしれないことに気付いたのです。それからエドワードとも話し始めて、全体的なプロジェクトは非常に短期間でまとまりました。信じられないことに、必要なお金はカナダ国内だけで、たったの4ヶ月で 集めることができました。

この地域では何千人もの労働者が働いている。「マニュファクチャード・ランドスケープ」のオープニングシーケンスは、この巨大な鉄工所の中で始まる-エドワード・バーティンスキー:「マニュファクチャリング#18」、カンクン・ファクトリー、漳州、福建省、中国。

撮影にはどれくらいかかりましたか?

私たちが中国にいたのは2005年の3週間半だけで、スーパー16で濃厚なカメラワークを撮りました。その前に、まずテッド会議でエドワードがレクチャーしている絵を撮って、それから前述の写真家がビデオカメラで撮った白黒映像を盛り込みました。


ここがすべての始まり…エドワード・バーティンスキー:「シップヤード #11」、キリ・ポートの造船所、浙江省、中国。

これは平凡な人物の描写ではなく、彼の題材についてのものなのですね…。

私が作りたかったのは、どこにでもあるようなアーティストの描写ではありません。本当に重要なことは、写真を出発点として扱い、その意味を映画という媒体にまで拡張することです。彼らは非説教的なやり方で意識を変化させようとしています-説教をしたいわけでもメッセージを伝えたいわけでもなく、ただ単に私たちがこの星に与えた影響を振り返る場にいざなうだけです。また、エドの写真は間近で見ると詳細が-大勢の人間の活動があります。私たちは人々の顔を近くで捉えることによって、この威厳のない景観の中の人々に威厳を与えたかったので、映画の中でこういった物語的な脈絡を追うことを試みました。

…そしてここがすべての終わり-エドワード・バーティンスキー:「シップ・ブレイキング#49」、チッタゴンの船舶解体所、バングラデシュ。

あなたが最も重要、もしくは難しかったと感じたシーンを教えてください。

オープニングのドリー(移動式撮影機台)のシーンは大事な瞬間でしたね。(読者の皆さんに補足:これは映画の始まりにある7分近いシーケンスのこと。)このシーンは、巨大な鉄工所の中でほとんど丸一日かけて撮影されたもので、撮り終わった瞬間にはオープニングはこれに決まりだと思いました。私にはこれがエドワードの作品の完璧な映画的解釈だと感じられたのです。この工場のスケールを時間ベースの媒体で伝える唯一の方法が、組み立ての工程を延々と見続けることでしたから。これが単なるオープニングと思われるかもしれませんが、延々と続く映像に退屈し始めると、観客は人々の顔をじっと見始めます。それはこの場所が巨大であるという概念が浸透したことを意味します。そして、エドワードの声が(吹き替えとして)入ってくるのは、これがすべて終わったあとです。また、映画自体はかなり瞑想的なものなので、このオープニングには心を静める効果もあります。

広域写真の制作風景-エドワード・バーティンスキー(左)とピーター・メトラー(写真監督)、カンクン・ファクトリーにて、漳州、福建省、中国(写真:Sanjay Mehta)。

私は中国の三峡ダムのシーケンス-人々が自分の家を壊して、船のための水路の整備を余儀なくされているシーンにいたく心を打たれました。その彼らの給金ははレンガのキロ単位で支払われているとか…。

このシーンは、よく見ると戦後の光景のように見えます-人々が純粋に素手で、レンガを一つ一つ剥がして家を壊しているので。もう一つの悲劇は、中国の最も肥沃な農地のみならず、文明や文化そのものが大量に失われてしまったこと。電力のために大地を根本的に変えることは、あまりにも傲慢です。

これは戦場跡ではなく、三峡ダムの建設予定地。エドワード・バーティンスキー:「スリー・ゴージス・ダム・プロジェクト、フェグ・ジー #5」、長江、中国。

それ以外にも、環境への影響を物語る明確で深刻な映像がたくさんありますね。これまでも環境保護を意識していらっしゃったとは思いますが、中国でのこの撮影中に、更に考え方が変わったことなどはありましたか?

中国はそもそもが広大な国で、何事においてもスケールが大きいのが特徴です。今回私たちが訪れたような規模の工場には、私はこれまで一度も足を踏み入れたことがありません。あそこでは、年に2,000万台のアイロンを作っていますし、私たちが訪問したアルミの再生工場は世界で3番目に大きいものだそうです。あそこには世界中のものが送られてきます。アルミの巨大な山を分類する、果てしなく無駄な仕事を見ると、私たち全員が関係している消費と浪費のサイクルの特殊性をなおさらに意識するようになりました-それから、それがどれだけ壊滅的なことなのかも。

三峡ダム計画は近日完成する予定。エドワード・バーティンスキー:「ダム#6」、長江、中国。

それでも、中国が先進工業国に遅れをとるまいとすることを非難するわけにもいかないのでしょうね…。

中国は、単に他の国と同じことをしただけです-工業化して、とんでもなく汚染されて、お金を儲けて、処分して、まだその過程を辿っていない国にゴミを輸出しただけ。問題は、そのスケールが中国ではあまりにも大きかったことで、世界中の最も汚染された産業を誘致してしまった今では、かなり切迫した状況にあると思います。それに対応できるようになるまでに、複数の地域がまるごと破綻する可能性もあります。これはさすがに粛然とさせられる事実でしたね…。

「…私たちが踏みしめた大地には、欠片ほどの有機質も残されていなかった」エドワード・バーティンスキー:「バオ・スティール #8」、上海、中国。

これらのエリアでは、人間が実際にどうやって暮らしているのか不思議に思います…。

あるシーンでは、石炭をトラック、船、飛行機で全国に輸送する中国最大の石炭の流通センターに行ったのですが、そこでは見渡す限り巨大な石炭の山で埋め尽くされていました。そこから車で少し離れるにつれて、その地域の一角に原子力発電所があって、もう一角に膨大な量の石炭、その間では様々な建設工事が行われていることに気付いたのですが、私たちが踏みしめた大地には欠片ほどの有機質も残されていなかったのですまるで灰みたいでした。しかも、これは居住区から遠く離れた工業地帯での話ではなく、アパートが林立して何千人もの人々が暮らしている中での話です。その時に感じたことは、ここで止まらなければいつか私たちもこうなってしまう、ということでした。

密着印画の確認-政府から派遣されてきた人間(右端)が常に同行している:ノア・ウェンイィグ(中国でのラインプロデューサー、左)とエドワード・バーティンスキー、天津の石炭流通センターにて、中国北部。(写真:ピーター・メトラー)

いくつかの映画祭で既に上映されたと伺っていますが、観客の反応はどのような感じでしたか?

まずマニュファクチャード・ランドスケープは、8ヶ月ほどの期間をかけて編集されています-比較的に孤立した長いプロセスです。私の他に2人以上の観客がいる中でこの映画が上映されたのは、彼が[最優秀カナダ作品]を受賞した、トロント映画祭でのプレミアが初めてでした。この映画はかなりヘビーなものなので、最後のシーンのあとにはある種の静寂がありましたが、徐々に拍手があがって、すべてがうまくいったようでした。その時以来、この映画を何度も他の観客と一緒に見ましたが、毎回人々が口にするのは「これからどうなるんだろう?」という質問でした。

世界中のコンピュータの50%はここに辿り着く…。エドワード・バーティンスキー:「チャイナ・リサイクリング#9」、リサイクルに回された回路基板、コイユ、広東省、中国。

最後に、あなたの今後のプロジェクトについて教えてください。

現在はアメリカとヨーロッパでの公開に向けて活動する合間に、次の映画の-落雷に打たれる人についての映画の撮影を行っています。私は雷を偶然に選ばれることの逆説的な比喩だと考えています。今は、子供の時に落雷で目の前の人が死ぬという経験をした小説家のポール・オースターなどと様々なインタビューを行っています。彼の偶然や運命へのこだわりなどを見ると、その経験が彼の作品に大きな影響を与えたと思いますから。私は単に疑う余地のない情報を流して、平凡な決まり文句を辿るだけの科学的なドキュメンタリーにはずっと納得できないでいるので、これは科学的なものを題材にした芸術作品にする予定です。

落雷は人為的に操作できるものではなくて、マニュファクチャード・ランドスケープはその反対ということでしょうか…。

そうとは限りませんよ。私たちが始めたもので、一旦動き始めてしまったらコントロールできないものはあります。それでも、その責任は私たちにあるのです!

全体のスケールを把握しようと試みる:ダムサイトに佇むピーター・メトラー(写真監督、左)と監督のジェニファー・バイチウォル。(写真:サンジェイ・メタ)

ジェニファー・バイチウォルさん、素晴らしいドキュメンタリーをありがとうございました!おそらく、マニュファクチャード・ランドスケープを無感動で見ることのできる人は誰もいないでしょうね。本当に粛然とさせられる、非現実的な内容でした。

今後の上映情報:ヨーロッパとアジアで近日公開される可能性もあるので、マーキュリー・フィルムのホームページかセルロイド・ドリームスを確認してみてください。また、マニュファクチャード・ランドスケープモングレル・メディアからDVDとしても販売されているので、アマゾン・カナダで入手することもできます。

1 コメント

  1. süper site buyrun

    Posted by: goruntulu sohbet @ 7月25日2011年

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