学びやすい環境へ:学校用の対話型デザインパターン

2007年4月11日 カテゴリー: インターナショナル, テクノロジー

学びやすい環境へ:学校用の対話型デザインパターン

ヘニング・ブロイヤは早稲田大学での研究の一環として、手元のWi-FiやUSB接続のPDA、ペンタブレットなどを通じて、生徒が教師のPCと直接やりとりできる相互作用アーキテクチャを開発した。教師・生徒間のやりとりのデータは、その後タッチスクリーン機能を備えた対話型ホワイトボードに表示される。

皆さんはこれまでに、典型的な学校の教室や大学の学習環境があまりにもつまらなくて、授業の内容がさっぱり頭に入ってきてくれない原因について考えてみた(もしくは延々と続く授業中に瞑想してみた)ことはある?そんな疑問に答えをもたらしてくれるのが、ベルリンを拠点に活動する、学習環境に向けた対話型デザインパターンの専門家、ヘニング・ブロイヤさん!彼の研究は、現代の学習環境において最も効率的に機能する道具がどのようなものなのか、というもの。PingMagは、早稲田大学で4ヶ月間の研究期間を終えたヘニングさんをつかまえて、彼の作品についてのお話を伺ってきた。

作:ベレーナ
訳:山根夏実


ヘニング・ブロイヤさんと松本教授、早稲田大学にて。

ヘニングさんの専門は、学習環境用の対話型デザインパターンだそうですね。ご自身の会社であるボバコンでの研究のみならず、過去にはポツダム大学のインタラクション・デザイン・ラブの一員であり、ここ4ヶ月は早稲田大学で更なる研究を行っていたと伺いましたが、一言で言えばどのようなことをなさっているのか教えてください。

私の研究は、要するにはマンマシン・インタラクションについてで、人間にとって使いやすい対話型システムの設計や実装、評価と、それらを使用した際の状況を分析することです。これは情報工学、心理学とデザインが組み合わさったもので、対話型インターフェースに関連するものなら録音機器から携帯電話、コンピュータまで、あらゆるものに関係しています。

人間と科学技術の関係はこんな感じ:マンマシン・インタラクションの協会であるSIGCHIによる「マンマシン・インタラクションの基本構想(HCI)」。

それでは、あなたの研究の実践的なアプローチとはどういったものなのでしょうか…?

…ユーザーの観点から見たテクノロジーの設計について、でしょうか。インターフェースというものは、使い勝手の良い便利なもの、ユーザーがやりたいことの妨げになるものではなく、支援するものであるべきです。これはコンピュータ化された複雑なシステムでは難しいので、認知心理学や行動心理学に基づいて、物事を有意義にデザインするのが私の仕事です。例を挙げれば、私の研究の一部はタスク志向のユーザビリティ工学から感情的なデザインとユーザー体験に切り替えることです。

「相互作用デザインと情報アーキテクチャといえば、難解で非常に専門的な分野に聞こえるかもしれないが、この分野の研究は技術に関するものではなく、むしろ人間そのものや人間の作業のしかた、考え方を理解することにある。この理解を自分の作品の構造に組み込むことで、私たちはそれを使う人の成功を確実にする手伝いをするものである…。」ジェシー・ジェームス・ギャレット著:ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」より

では、これは電子学習に関するものという理解でよろしいでしょうか?

ちょっと違いますね。電子学習は、例えばオンライン学習のように、一般的には遠距離学習と関連付けられるものです。技術文献に関してはこれが一番注目を集めていますが、今日のほとんどの学習環境は教室などで面と向かって行われています。

なるほど、それでは現代の学習環境のどこに問題があるとお考えなのでしょうか?技術ならもう十分盛り込まれていると思うのですが…。

こういった環境では多くの技術的な装置が使われていますが、その中にはうまく組み込まれていないものもしばしば見受けられますし、インターフェースも同様に酷い設計だったりします。私たちを取り巻くマンマシンインターフェースの大半はパーソナル・コンピューティングの枠組みの中で考案されたものなので、そういったケースの多くは学習用途以外の目的で開発されたことが主な原因となっています。もしくは私的には、個人に対して「1つ」のインターフェース、1人の人間に対して、モニタとキーボードが常に1個ずつ用意されているからかもしれないと思っています。

それでは、これは1980年代に会社員がPCに適応したことが原因なのでしょうか?

1960年代の後半に、主にはアラン・ケイやその他の人々の業績が日常生活にコンピュータを導入する下地を作りました。80年代に流行した“パーソナル・コンピューティング”という言葉は彼らが作ったものです。


典型的な学校教室の環境。工学的相互作用がもう少し欲しいところ。

それと密接に関連しているのがタスク指向型の行動という概念です、ユーザーとタスクは言うまでもなく常に存在していますから。例としては、誰かに電子メールを送ることなどがそうですね。現在の学習事情に関していえば、私はタスク指向のデザインから学習指向のデザインにシフトしようとしているところです。

「タスク指向」というのはやや杓子定規に聞こえますね。1人の人間が繰り返し同じ作業に当たっているような…ということは、「学習指向」は更に高い柔軟性を意味しているのでしょうか?

まず前提として、学習する人間はタスクそのものに成功する前にまずタスクを覚えなければなりません。また、ある特別なインターフェースを1度使った人間は、次にそれを使う際には別の前提条件がある可能性があります。例えば、次の機会には異なる目的を持っているかもしれないし、前回それを使って以来、何か新しいことを学習したかもしれない。しかし、PowerPointなどに見られるソフトウェアのインターフェースは常に同じ状態で、ユーザーの強化された技術や知識に対応することはありません。その人の進歩をにあわせることなく、抽象的なユーザーとして捉えるのです。そこが変えなければいけない点なのですよ!


搭載されたタッチスクリーンを通じて、接続された教師のPCとやりとりができる対話型ホワイトボードのディスプレイ。

それでは、早稲田大学での研究期間中には具体的にはどのようなことをされていたのでしょうか?

私たちはNICT(情報通信研究機構)の研究助成金を受けて、教室という学習環境におけるハードウェア面での新しい方法を開発しようと試みていました。Wi-FiやUSBで教師のPCに接続された、改良版の触感伝達式ボード(これは一言で言えば、タッチスクリーンと同じように作用するホワイトボードに接続されたプロジェクター)、タブレットPCやPDAなどですね。私たちの触感伝達式ボードは、すでに色々な環境で国際的に導入されているもので、表面がタッチスクリーンになっています。


ヘニングが学校や大学で行った調査によれば、学生が希望する勉強の仕方はこういった形になるという。より自由に書き込みを行って、連想的な関連付けを可能にする。

触感伝達式ボードはすでに実用されているのですね。でもまだ間違った方法で使われていて、今はその適切な改良点を探しているところだと聞きましたが、具体的に教室ではどういうことになっているのでしょうか?どんなことを発見されたのか教えてください。

私たちがドイツのポツダムやチリでこの技術が実際に学校や大学で使用されているのを観察したところ、教師が自分のノートパソコンとボードの間を行ったり来たりしていて、まったく支離滅裂な状態でした。また、教師はこれを直線的なPowerPointのプレゼンテーションに使いすぎていますし、単なる走り書きもマーカーで指し示したりと、こういった類いのプレゼンテーションにはまったく適さないことをしているのですよね…。その他のシチュエーションでは、例えば外国語講座の教師がボード一面に書き込んで、新しいことをするたびにそれまでに書いたものを全部消さなければならないというものもありました。消されてしまった内容について質問したかった生徒にとっては、これはありがたくないことでしょう。

それはあまり効率的ではなさそうですし、今あるものよりも更に大変そうですね…。代わりに、最新の学習環境はどうあるべきだとお考えですか?

この技術の今の使われ方-間違った使用法では、教師は自分のモニタを、生徒はスクリーンを見ることで、対面相互作用そのものを切断してしまっています。これは現代の学習理論とは相反するものです。昔の理論は、教師が生徒に知識を詰め込んで与えるものでした。今日の知識に対する考え方は、生徒がもっと自主的に参加することによってより積極的に構築されるものだという見解で一致しています。これは、生徒が自分で調べたり、独自の見解を述べたりすることですね。そうなると、教師の役目はむしろ議長のようなものになってきます。

触覚伝達式ホワイトボードではPCのデスクトップのような使い方もできる。違いは画面に指で触れて操作すること。単にフィールドを作り、印をつけて、それを繋げて新しいノードとしてネットワーク上に出力するだけ。

それでは、教師はそういった意味での議長となって、PDAなどの生徒の端末から提供されたデータを集める。相互作用的な過程の一環として、集められた情報はホワイトボードに映し出され、教師はこのデータに直接手を触れることで弄ることができると。では、あなたの構築したホワイトボードは、技術面的にはどういう仕組みになっているのでしょうか?

タッチセンサー式ということは、それぞれの色のマーカーや指が表面のどこを触ったのかを判断する感覚ネットワークが内蔵されているということです。この対話型ボードには独自のドライバーソフトウェアがあって、情報を映し出せるプロジェクターに接続されたパソコンに繋がっています。


次のステップはジェスチャー基盤の相互作用:PDAやペンタブレットを使って、生徒がコンテンツの制作、取り込み、編集できるようにする。

生徒の端末は教師のPCとやり取りできるようになっており、それが対話型ホワイトボードの所以。画像はホワイトボードのインターフェースのスクリーンショット。一番上にあるのが、ボード上で作業をするそれぞれの生徒のアイコン。

そして、これはどうやって使うものなのでしょうか?増幅されたコンピュータのデスクトップとしてですか?このホワイトボードでは、実際にはどのようなことができるようになるのでしょうか?

私たちはいくつかのプロトタイプを完成させました。これを使えば、例えばジェスチャー基盤の相互作用を実行することが可能になります。これは、ボード上で行ういくつかの操作がソフトウェアによって特定の動作として認識されるというものです。例を挙げれば、フィールドを描いて、印と色を付け、それを自在に動かしたり新しいものを作ったりすることができます。拡大や縮小、ノードを追加して別のページにリンクしたり、ボード全体を相互作用的なスペースとして使用することもできます。それを保存して、生徒のPDAに返送することも可能です。

ジェフ・ハンのマルチタッチスクリーンを思い出しますね…。あと、遂にマウスが排除された新しい相互作用の分野でもあるように思えます!ヘニング・ブロイヤさん、今日はありがとうございました!彼の研究についてもっと知りたい方は、早稲田大学のホームページを訪問してみてください。

2 コメント

  1. süper site buyrun

    Posted by: goruntulu sohbet @ 7月25日2011年

  2. 学びやすい環境へ:学校用の対話型デザインパターン good post1153

    Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年

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