
シルクハットにロイド眼鏡、それに燕尾服で現れたのは、昔懐かしい活動弁士・映写技師。真っ暗な空間に映し出されたのは、音のない白黒の映像。映写機をカタカタ回す音と台詞を語る大きな声、そして蓄音機から流れる音楽だけが会場に響く。日本に映画が入って来たばかりの頃に活躍していた活動弁士や映写技師達を、今では殆ど目にする事はない。今回はそんな時空を超えてやって来た現代の活動弁士・映写技師、小崎泰嗣(こざき・たいじ)さんに色々お話を聞いてきました!
作:リョウコ
活動弁士・映写技師とはどういったことをする人なのですか?
映画草創期の手動式映写機を用いて、昔のアニメーションや実写映画を上映しながら、その無声のフィルムに合わせて語りを入れます。主に活動弁士や手動式の映写機を用いる映写技師は明治末期から大正・昭和初期に存在したのですが、現在では殆どいなくなってしまいました。私は上映団体「カイロプティック商會」に所属し、その代表である松本夏樹(武蔵野美術大学・大阪芸術大学非常勤講師)と共に、幻灯機・手回し映写機・玩具フィルムなどを用いて、各地で上映・展示・レクチャーなどを行う活動をしています。

なぜ活動弁士・映写技師を始められたのでしょうか?
父が鉄工業を営んでいたのですが、オートメーション化やデジタル化が進むにつれ、慣れ親しんだアナログの機械がどんどん消えていってしまうことに子供心に寂しさを感じていました。それは大人になってからも同じで、舞台俳優を経験するなど人間味ある表現の追求に没頭していました。そんな思いを抱き続け、そうして2004年に、1900年代初頭の手動式映写機の紹介や玩具フィルムを上映していた松本夏樹、つまり私の師匠に出会ったのです。その時、映写機を通して機械や世の中に対する自分の気持ちを表現できるのではないか、と思ったのが活動弁士・映写技師を始めたきっかけです。

大正時代に作られたてとても貴重な手動式玩具映写機と玩具フィルム。

小崎さんお手製の映写機を収める木箱。
今の世の中に対して感じた寂しい気持ちとは、具体的にどんなことですか?
もっと物を大切にしなければならないという気持ちですね。例えば、昔は職人たちの手作業によって何でも丈夫で永く使えるものが作られていました。けれども、現在ではプラスチックなどのコストの低い素材が多く使われるようになり、何もかも大量生産されている。確かにそれらは安く手に入るけれど、すぐに壊れてしまう。そうすると、安いからまた新しいものを買えばよいと軽薄な考えになっていきますよね。そのような考えが、物への愛着心を希薄にさせているように感じます。永く大切に使いたいという気持ちが、物や人を思いやるという事にも大いに通じていると思うのです。


なるほど…。小崎さんのそういった思いが、活動弁士・映写技師としての活動に繋っているのですね。
昔の映像は、光量も乏しく白黒でガタツキも激しく非常に見づらい。しかし、だからこそより目を見開いて見ようという意識が生まれ、また見づらさを補うように想像力が掻き立てられる。そして、その想像力が“楽しみ”や“思いやる気持ち”の源になると思うのです。便利な世の中になるのはもちろん良いことだけれど、情報ばかりに囲まれると自然と想像する力が欠如して、心に歪みが生じてしまう。そうなると、例えば地球の資源を使い果たしたり、犯罪が増えてきたりといったような、新たな問題が次々に浮上してくる。そういった悪循環を少しでも止めるためにも、私は想像力を介して物と人、また人と人とが丁度よい関係を保てるところを探してくという事はとても大切なことだと思っています。

活動弁士・映写技師の他にも色々な活動をされているとお聞きしましたが?
他には、湯気配達人ということをやっています。お客様に呼ばれた場所へ美味しい紅茶を入れに行く、いわゆる紅茶の配達です。美味しい紅茶を飲む事で、いつもとは違った空気や風景を味わってもらいたくて始めました。あとは、小さい頃からものを作るのが好きなので、流木や壊れたものなどを材料に使って、鞄やライト、オブジェや小物などを作っています。

紅茶を入れる湯気配達人の小崎さん。

新聞配達用の自転車も頑丈でお気に入りだとか。

活動弁士・映写技師や湯気配達人、それに物を作る上で、何か共通の思いがあるのでしょうか?
日常をより楽しんで生きようという気持ちが根底にあります。今の時代にシルクハットに燕尾服を纏っている映写技師、一体何処の国・時代から来たのか分からないような湯気配達人という不思議な存在を生みだすことで、それを見る人々にも色々な想像をしてもらいたい。例えば、映写機を入れる箱や紅茶の鞄一つからでも想像は広がっていく。映写機の箱が段ボールであるよりも、不思議な箱のほうが見ていても面白いと思うんです。



こちらは映画公演の時に使われている小崎さんの作品デコライト。

こちらは古い三味線箱!で作られた裁縫箱。
それでは最後に、今後の計画やメッセージなどありますか?
今までは、何となくや好きという気持ちだけで行動したり物を作っていたのですが、感性だけで行動してその場だけで終わってしまうことが多かったんです。だから今後は感性だけではなくて、もっと色々な事を勉強して意識を鍛えていき、より幅広い面からバランスよく物事を把握できるように活動していきたいと思っています。

小崎さん、ありがとうございました!3月29日に学研から発売された大人の科学マガジンvol.15「紙フィルム映写機」にカイロプテック商會が紹介されています。松本夏樹氏と、映画監督・大林宣彦氏との対談なども掲載されているので、興味のある方は是非ご覧になって下さい!また映写機やフィルムについて詳しく知りたい方は、松本夏樹のインタビュー「log osaka web magazine」をご覧下さい。
3 コメント
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実際どのように活動弁士をされているのか
とても興味深いです!!!!!!
Posted by: pingfan @ 4月3日2007年
古い映写機の画像を探していて偶然このサイトに辿り着きました。
尾崎さんの活動も作品もステキですね!!
映写機の映像と活動弁士の語り、是非とも生で見聴きしてみたいです(^O^)
どうすれば見れるんでしょうかね??
公演地は主に東京でしょうか(?_?)
Posted by: soy @ 2月8日2008年
時間を飛び越えやって来た、活動弁士・映写技師 good post1148
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年