
アンドリュー・ヴァンデ・モーレは、データの視覚化(データ・ビジュアライゼーション)の最も面白い形を探るため、情報通信手段を深く掘り下げている。そう、学生時代に人々を悩ませたであろう、一般的な図表である。(例えば、国民の一人当たりの年間収入をグラフで表示する、とか…)。しかし、彼のブログ「infosthetics.com」は、情報美学の最も美しいフォームを繰り出している。彼にとって、これは創造的なデザインと情報の視覚化の共存なのだ。形はデータに従い、芸術と呼べるくらいにユニークなグラフに発展する。インフォステティックスについて、アンドリューから話を聞いた。
作:ベレーナ
訳:ジュンコ

まず始めに、あなた自身について簡単に教えて頂けますか?ベルギー出身で、チューリッヒ工科大学でアシスタントをされていたという事は調査済みですが…。
僕は以前、ベルギーのK.U.ルーフェン大学で建築工学を研究していた。その頃から、どうしたらコンピュータが電子的な型の建築的な空間を作れるかって事に興味を持っていた。…非物理的なんだけど、人々が会い、働き、プレーすることが出来る空間さ。
最近の既存の共有型3Dの世界と対照的に、仮想建築は必ずしも、気候、プライバシー、それから建設的な保護の必要性といった伝統的な問題とは無関係だ。最も小さい輪郭を描くためには、レンガの代わりに、たった1つのデジタル・データだけが共通なんだよ。僕は、アーキテクチャ洞察と、そのような純粋な電子空間の作成の合併に成功した、スイスのチューリッヒ工科大学のグループを発見した。彼らは、有用で美しいデータ駆動型の世界と大規模な抽象的ビジュアライゼーションを繋げることに成功していた。
僕がそこの大学院生、研究助手、それから最終的には博士号の学生になれたのは本当に幸運だったよね。博士号を取るまでの間は、ケイブスといった、バーチャルリアリティ環境用にデザインされた、斬新な視覚化の技術をいくつか開発したよ。博士号を取得した後は、オーストラリアに移り、シドニー大学のデザイン・コンピューティング学部で助教授になった。そして今は、ITとデザインの境界、特にデータの視覚化に関する背景をより広く探求しているんだ。

「情報アーキテクチャ」と「情報デザイン」の違いについて、簡単に説明して頂けますか?
情報アーキテクチャは、概念的にも視覚的にも、分かりやすくデータを整理・分類する表現技術で、機能性、ナビゲーション、さらに相互作用にも関連しているものだよ。ウェブデザインの領域で一番多く言及されるね。
一方、情報デザインは、情報グラフィックスのデザイン、および情報の視覚表示のデザインに関すること。新聞や雑誌で見るようなダイヤグラムを考えてみてもらうといいかな。とはいっても、色々と異なった定義が存在していると思うけど。

リサーチ&ノードのレイアウト:ケビン・ボイヤック&ディック・クレバンス、データ:トッムプソンISI、グラフィックス &タイポグラフィー:W.ブラッドフォード・ペイリー、コミッション:ケイティ・バーナー
インフォステティックスのブログでは、ご自身がなぜデータの視覚化に惹かれるのかを考えていましたよね。「それは、表面のデコレーションに対する注目、視覚化への創造的なデザイン手法、美と機能性を合併する願望…それとも、有効な情報コミュニケーションの一般的な不足なのか?」と。 現在、それに関してどのように考えてますか?
正直なところ、本当に答えが分からない。だから読者にそれを尋ねたんだよ。まずはブラッドフォード・ペイリーの「情報美学」という定義に特に深く感謝してる。彼は、情報美の作品は、人間の情報処理能力がどのように美の評価を高めることが出来るか、ということを理解することに基づいていると言っているんだ。そのようなアプリケーションは、情報流動を増加させるのに美的な設定を使用して、その結果、道具としての視覚化をより有用にするんだよ。

科学の地図の拡大:「 …リンク(曲線)は、一般的なメンバーを共有したパラダイムの間で作られ、次に、お互い似通ったパラダイムをまとめる輪ゴムとして扱われ、レイアウトは直接データから引き出される。つまり大きいパラダイムには、より多くの論文があるということ。ラベルは各パラダイムにユニークな言葉をつける。」
この定義に同意するものの、まだ僕はあなたの質問の最終的な答えが分からないでいる。でも、僕の何人かの研究生が、この件について研究中なんだ。例えば、ニック・コーソンは、主観的に判断された美的なビジュアライゼーションがより役立つのか、伝統的なビジュアル化の評価研究で見落とされたかもしれない固有の資質があるのかどうか、測定しているよ。
別の研究生のアンドレア・ラウは、美学の質や、データ処理、双方向のフィーチャーといった、視覚化における情報美学の資質を調査している。それから、意図、目的、および採用しているテクニックに関して、いくつかのインフォメーション美学作品の分析もしているんだ。僕らの最初の調査結果は、その美学は表面的なデコレーションで成り立っていないということを明確に示しているよ。そして、ほとんどのインフォメーション美のビジュアル化は、データセットにおいて知識を増大させるのにはそれほど効果的ではないみたいだよ。
その代わりに、情報美の視覚化は、むしろ表される意味に基づいたメッセージをデータによって伝えるようなんだ。そして、元来意図された物とは少し違った目的を持つ道具として、視覚化の技術を利用している。

これらは、美しさを狙って視覚化されたものではないのですが、それでも、その外見は本当に美しい。あなたにとって、それは一つの芸術の形ですか?それとも科学的な成果でしょうか?
もし「情報美学」という言葉が情報グラフィクスを意味するなら、答えは、芸術と科学成果の両方を含むはずだよ。情報美の視覚化は、心と魂の両方に訴えるはずなんだ。それらが、前向きに僕らの感覚を刺激している間、それらは複雑なデータ駆動型コンセプトを伝えるという特定のタスクのために、直感的で容易に理解出来る方法で最適化される。最も成功している情報グラフィックスが創造的なデザイン洞察を使用しているということは、驚くことではないんだ。

では、これらのデザイン洞察に関して言うと、あなたにとって、素晴らしいインフォメーション・ダイヤグラムだと判断する基準って何でしょう? そして、ひどいインフォメーション・ダイヤグラムとはどんなものでしょうか?
それは凄く難しい質問だなぁ。ダイヤグラムが良いか悪いかを決めるには、その人がどんな状況のためにデザインするのかを判断することが必要だからね。そのダイヤグラムの目的は何なのか?それはタスク指向なのか、それとも僕らの感情を刺激することを目的としているのか?データの中に隠された、以前には未知だった洞察を伝えるためなのか、それとも同じ情報に基づく、有無を言わせぬ説得力があるメッセージを主張することを意図して作られるのか?
例えば、いくつかの情報グラフィックスは最近のイラクの死傷者にかかわる正確な量、場所、および事情を伝えるのにおいて素晴らしい。一方、一般的にイラク戦争に関する考えや意見を喚起することにおいて素晴らしいものもある。これらの情報グラフィクスの両方は、同じデータセットに基づいているかもしれない。しかしながら、異なった意志でデザインされ、それゆえ異なる目的で“美学”を使用したんだろう。だから、それぞれの状況を考えれば、両方とも“素晴らしい”かもしれないんだ。 例えば、イラク死傷者についての効果的な、インタラクティブ・インフォグラフィックがニューヨーク・タイムズで紹介されたし、それから、シェーン・キャロルのこの芸術的なものは、デトロイトのパニックと呼ばれている。

インフォステティクスのお気に入りはどれですか?
とても重要なプロジェクトを忘れてしまうという危険性があるけど、情報美学に興味を持っている人なら必ず、マーティン・ワタンバーク(例:ベイビー・ネーム・ボイジャー)、Stamen.com(例:ディグ・ラブ)、フェルナンダ・ビエガス(例:Themail)、マーコス・ベスカンプ(例:ニュースマップ)、ボリス・ミュラー(例:ビジュアル・ポエトリー)、ゴーラン・レビン(例:ザ・シークレット・ライブス・オブ・ナンバーズ)、ブラッドフォード・ペイリー(例:テキスターク)、ジョナサン・ハリス&セップ・カンバー(例:ウィ・フィール・ファイン)、ジョン・マエダ、エドワード・タフティとか、その他大勢を見るべきだよ。そう言いながらも、僕は、ウィーク・イン・レビューのようなアナログなものも楽しむんだけれどね。

これら全ての素晴らしいビジュアライゼーションの専門家と同様、あなたはあらゆる種類のグラフィックの描写を沢山目にしてきたと思います。抽象性の度合いは、実際どれくらいのところまで行くことができるかと思いますか?
抽象化は、いわゆる“非-ビジュアル”なビジュアル化のように、人間の感覚の代替の中に達することができるんだ。音、感触、香り、または味という感覚まで刺激するべく、抽象的なデータを使用する多くの例があるよ。例えば、ダン・メインズ・アミンザディが作った、舐めたり味わったりする事が可能なコンピュータインターフェースは驚きだよ。

データマッピングの抽象的なレベルにおいて、何らかのランダムなアルゴリズムの代わりに、データから作成される全てのものは、ビジュアライゼーションと呼ばれるだろう。これは、それが直感的で、理解可能であるという事を意味しているわけでは全くない。ジェーソン・セラボンによって作成された、かなりサイケな統計データ追跡描写である31のカテゴリにおける1960年~1998年の靴とスリッパの米国内の生産のように、いくつかの直接的な翻訳が存在するんだ。
技術的にビジュアライゼーションであると同時に、僕はむしろ、それを人々が本来我々の理解を増大することを期待している手段としてのビジュアライゼーションの評論であると考えている。そこにはしばしば、危険な期待や、存在しないはずの意味を知覚してしまうということがあるけど。他の人たち、例えばクリスティーナ・レイなどは、彼らの芸術的作品のインスピレーションとしてデータを使用しているよ。

あなたの科学的論文の1つにおいて、説得力のあるビジュアライゼーションという用語を使っていました。それについて、「認識を強めさせ、人間行動の修正のための動機づけとなるような情報ビジュアライゼーション」だと説明しています。それについて少し話してもらえますか?
僕は、ビジュアライゼーションにはデータパターンの発見、より良い情報に基づいた決断、通信知識という古典的な目標を超える可能性があると思っているんだ。要するに、デザイナーが人々と個人的に関わって、その分、彼らとの強い感情的な関係を作ることができるような、魅力ある方法で情報を提示するのに理想的だと確信しているよ。未来のビジュアライゼーション研究のための主要な例は、説得力があるコンピューティングの一部かもしれない。それは、人々の行動を変えるという究極の目標の元に、人々に複雑なコンセプトを認知させるために技術を使うんだよ。
基本的なフォームにおいて、映画「不都合な真実」は、人々の意見や態度、願わくば毎日の行動までも変えることを目的とした、特に専門家でない聴衆のためにデザインされた情報表現の一つの例だよ。今後は、ヘルスケアの領域において、より精巧なアプリケーションを開発することができるかもしれない。例えば、人々に正確でタイムリーな、それでいて常に楽しめる方法で情報を伝えることによって、彼らの食生活を変えるのを奨励するためにね。

他に私が本当に面白いと感じているものは、情報の視覚化として役立つ現実の世界におけるビルの問題、居住に適したデザインの形式です。それに関係するプロジェクトに取り組んだことはこれまでにありますか?
残念ながらないんだ。でも僕は、それは単にビルがデータ駆動型かデータベースかという前に、時間の問題であるにすぎないと思ってる。多分、ハノーバーの世界エキスポ2000でのMVRDVによるオランダ・パビリオンのような、僕が実際に建築されたデータビジュアライゼーションだと考える、概念的に興味をそそるビルについて言っているんだと思うけど。中から同様、外からも、本当にそれはオランダのステレオタイプな解釈の情報プレゼンテーションだったよ。

しかし、さらに抜本的なコンセプトを想像して欲しい。現在、アーキテクチャにおけるほとんどのデータ表現が外見だけに焦点を置いているんだ。大きいLEDスクリーンや形を変える表面のマトリクスによることによってね。しかしながら、コンクリートやレンガのような材料で完璧に統合する表示に焦点をおいた研究が既に存在していて、オランダのハイパーボディ は、ダイナミックにそれらの形を変えることができるヒューマン・スケール構造をデザインしたんだ。例えば、彼らのマッスル・タワーIIを見て欲しい。ビルがダイナミックにデータ・ストリームに基づいて、形、スペース、および機能性を変更することができたなら…それはどのようにアーキテクチャを変えるだろうか?古いサイバースペースのコンセプトが、とうとう概念的なループを閉じ、物理的な現実世界において築き上げられるんだろうか?
データ駆動の流体アーキテクチャという、新しい世界を開く面白いお話をありがとうございました!アンドリュー・ヴァンデ・モーレ氏の話は、情報の美学の分野について、確実に新たな洞察を与えてくれました!
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