
ある人は頭の中を飛び交うアイディアからデザインし、ある人はコンセプトから入ることを好むが、ten-senの名で活動している福間祥乃(フクマ・ヨシノ)は生態心理学による観察を元に作品を作る。これは、彼女が自身の環境やその中で生活する人々、そして彼らがどのように物を使用しているのかを緻密に観察しているという意味だ。本日のPingMagでは、福間祥乃さんがどのようにしてお気に入りの心理学者、ジェームズ・ギブソンの理論である生態心理学を作品に適用しているのかや、彼女の親しみやすい作品の数々を紹介しようと思う。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

Ten-Senの福間祥乃さん。ここで彼女が身に着けているのは、自身の暖かい作品の一つである「マッフラーズ」。名前が複数形なのは、沢山のパーツを連ねて作られているから。

「Ten-Sen」のロゴ:矢印は、普通のリサイクルマークの逆を向いている。福間さん曰く、「環境への配慮は大切ですし、当然私もゴミを作りたいとは思いません!」彼女の作品は殆どが手作り。一部はオーダーメイドだが、その他の作品は森美術館などで販売中。
ジェームズ・ギブソンの作品と出会われたのはいつで、彼の生態心理学と環境心理学のどのような部分に魅力を感じていらっしゃるのでしょうか?
私は、もう10年近くも環境心理学者の視点から生態環境を観察していて、ギブソンの学説に出会ったのは、1997年にロボット研究者である岡田美智男氏が心理学者の佐々木正人氏の環境心理学に関する本を紹介してくれたのがきっかけでした。
ギブソンは、「地上環境は媒質(medium)と物質(substances)と、両者を隔てる面(surfaces)によって適切に記述される」と言っており、万物は空間における物体によって構成されるという古典的な物理の思想には賛同していませんでした。なぜなら、もしそれを事実とする場合、人々は「自分たちが、空間における物体によって構成される物理的な世界で生活しており、自分たちが知覚するものは空間における物体によって構成されている」と推測するかもしれないからです(生態学的視覚論より)。
ギブソンの説の重要な点はその視覚情報の理論自体ではなく、その視覚情報を観測する方法なんです。だから、私はデザインの目的とは、総合的な環境の一部を作ることにあるのだと考えています。

1986年に翻訳出版されたジェームズ・ギブソンの著書:「生態学的視覚論」 (原著出版1979年)

福間さんによってびっしりと書き込みがされている…。
福間さんは、以前「デザインは机上で始まるものではない」と仰いましたが、環境心理学の理論では、デザインは人間とその環境の関係性から始まるものだという理解で宜しいのでしょうか?
はい、そういうことになりますね。

あなたが現在、その理論をどのように制作過程に適用しているのかについて教えてください。例えば、あなたのマフラーのデザインですが、布のモジュールで構成された、あの非常に手の込んだ形状は、どうやって考案されたのでしょうか?

…そしてこれが着用例。
私のマフラーは「マッフラーズ」という名称で、複数形なのはいくつものパーツで構成されているからです。これは、元々は私が4年前にボーイフレンドのためにデザインしたものでした。彼の日常生活を観察していて、私が気付いた5つの主だった点は:
1.真冬の寒さの中、真夜中に自転車に乗っている。
2.従って、すぐに汗をかくので、マフラーで温めすぎてもいけない。
3.彼の服装スタイルは、それなりにシンプルである。
4.彼は時々、私がプレゼントしたものを使うのを忘れたり置き忘れたりすることがある
5.彼は単なる不注意によってなのだが使っているうちにプレゼントを壊してしまうことがある。
私は上記の5つの点を改善したいと思いました。なので、このある意味パズルを解くようなプロセスを経て、作品に以下の特質を持たせることにしました:
1.彼の首から外れて落ちてはいけない。
2.温かさを調節しやすくなければならない。
3.彼のシンプルなスタイルに見合ったものでなければならない。私は、彼のベーシックなスタイルにマフラーを彫刻作品のようにくっつけて、新しい視覚的なバランスを作ろうと思いました。
4.使い忘れや置き忘れのないものでなければならない。このマッフラーズには、動物か何かのような強い存在感を持たせようと思いました。
5.とても頑丈で、壊れ難くなければならない!

福間さんのその他の興味深い作品の中に、連結式のクッションである枕連というものがありますが、こういった器質的な形状によって、連結された枕が独自の原動力や柔軟性を表現していると思われますか?

…用途に応じて、常に組み替え可能となっている。
「枕連」とは、連結式の枕による連なりの意味で、スナップボタンで繋げることによって、単体でも連結しても使うことができます。連結する時は、様々なフォーメーションを作ることが可能です。
これのアプローチは:人は誰しもリラックスの時間が必要。だけど日本の家は小さいので、ソファを置くのは難しい。また、日本には椅子を必要としない独自の床の文化がある。そういったことから、日本の環境に見合ったソファ的なクッションを作りました。

これが何か分かる?日常に散らかる雑多なものを隠す「デスクトップ・テント」。
先ほど仰っていた原動力に関してですが、枕を連結すると、何かの生き物のような視覚的な方向性が感じられます。実のところ、人が休んでいる時の姿は、必ずしも他の人にとって見目の良いものではないと思うので、休んでいる人よりも更に強力なインパクトを持った大きな生き物は、見た目のバランス的にも楽しいものだと思います。
これ以外にも、散らかった机を隠すためのデスクトップ・テントなどのユニークな商品がありますよね。
ええ、デスクトップ・テントの形状は存在感が強く、その美しさで中に収納された雑多なものを「消す」ためのものです。


環境に対するより一層の意識を高める:トイレットペーパー型のノート、「ロールノート」と、ノート型のトイレットペーパー「ノートロール」。
興味深いコンセプトですね!福間さんのトイレットペーパー型のブックエンドはどうでしょうか?日常の資源の無駄遣いに対する意識を高めるために作ったと伺いましたが…。
まさにその通りです。このノートロールは、より関心を高めるためのフレンドリーな呼びかけを意図したものです。これは普通のトイレットペーパーに見えますが、紙に印刷された模様はよくあるノートのページを模したものです。普段、人は特に意識せずに紙を消費していると思うので、これは実際にはちょっと皮肉なアプローチなんですが、メモ用紙がトイレットペーパー状になっていたら、急いでいる時なんかは思わず、トイレットペーパーをカラカラと引き出すような気分で長く引っ張り過ぎてしまうかもしれません。
ですが、そうやって余った紙を見て、沢山取れば取るほど紙がその場で無駄にされていくことに気付くのではないかと思います。うまくいけば、メモを取る時にもトイレットペーパーを使う時にも本当に必要な量だけを使うようになってくれるでしょう。これは昨年末ソトコトで発表し、今、nepiaさんが開発をしてくれています。

商品デザインの他に、生態心理学に関する本などで、理論的な随筆も書いていらっしゃるそうですが、これはどういった内容のものなのでしょうか?
それは「生態心理学の新しいかたち」という本で、私は第6章の「都市環境のアフォーダンス」を書きました。残念なことに、この本は今のところ日本語でしか出版されていません。

福間祥乃さんの随筆、「都市環境のアフォーダンス」より…

…渋谷の街並みや交差点での、人の日常的な知覚パターンについて。
7月に横浜で開催される環境心理学の学会、第14回ICPA(The International conference of perception and action、知覚と行為の国際会議)を前に、日本のデザイナーの間では自身を取り巻く環境を詳細に分析する行為が流行しているようですが、これはなぜだとお考えでしょうか?
それは多分、日本人が物事を相互関係に依存して見たがるからというのと、そういった関係性を観察する方法を探すのが好きだからではないでしょうか。これに関して大きな影響を与えたのは、佐々木正人やプロダクトデザイナーの深澤直人といった方々の作品だと思います。
福間祥乃さん、意識的なデザインに関するお話をありがとうございました!7月の学会で行われる福間さんの講義でまたお会いしたいと思います!
5 コメント
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センス悪いですね♪
Posted by: 匿名 @ 3月13日2007年
かなり面白い活動をされていますね。
センス良いですね!!
Posted by: BN @ 3月14日2007年
デスクトップテントのコロンブスの卵的発想がすごい。
ほしいです。
Posted by: TNK @ 3月14日2007年
わくわくするアイデアですね
パーツを組みかえて、オリジナルデザインがつくれたらもっとワクワクできるな~
Posted by: 山本 @ 3月22日2011年
perfect
Posted by: goruntulu sohbet @ 7月22日2011年