
皆さんは、今ここで挙げる名前のいくつに聞き覚えがあるだろうか?BRAVIA、OPTIO、AQUOS、FOMA…それにバイアグラ。そう!こういう商品名が何を意味しているのか、何が由来なのか、考えたことはある?これらのほとんどを考案した言葉の魔法使いが、3年前から東京の国際企業であるインターブランド・ジャパンのバーバル・アイデンティティ部門を率いるスコット・ミラノ。バーバル・アイデンティティと言われてもピンと来ない方が多いと思うけれど、スコットと彼の率いるチームはブランド、レーベル、商品の名前だけでなく、その言葉の響きだけで人々の心の中にそのブランドのイメージまで作り出してしまう。PingMagでは、そんな彼に名前を構成する要素について話を伺った。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

スコット・ミラノ、インターブランド・ジャパンのバーバル・アイデンティティ部門のマネージャー
スコットさん、インターブランド・ジャパンのバーバル・アイデンティティ部門の課長になられた経緯を教えてください。
アメリカの大学の哲学部を卒業したあと、実を言うとその経歴で何をすればいいのか見当も付かなかったのですが、とりあえず文章を書くのは好きだったので、経済関係の記者として働き始めました。そこで商品について書いていた時に、コピー系のものが好きだということに思い至って、それをメインにすることにしたんです。ところが、ここ7年で書く文章の量は徐々に減っていって、2000語の記事だったものが1ページの短い宣伝文になり、ブランド・ステートメントとスローガンが遂には1語、つまり名前になったんです。
あなたのバーバル・アイデンティティ部門はどういったサービスを提供しているのでしょうか?
私たちの仕事の大半は、スローガンなどに見られるブランド・ステートメント(ブランドの意思や方向性)を作ることです。他のコンサルティング系の仕事や広告代理店と同様に、私たちの仕事もいくつかの過程に分かれています。まず、コンセプトや対象が商品なのか企業なのか、どこまで展開させたいのか。例えば、その商品が他の分野に進出する可能性の有無といった情報を受け取るブリーフィング。次は、私たちの本領に引っ張り込んで、様々なコンセプトを考案し背景をリサーチする発見の段階に入ります。くどいようですが、私たちは商品を「創る」のではなく、商品や企業に「まつわる」アイディアを創るのが仕事です。

あなたの部署にはどのような方々がいらっしゃるのでしょうか?彼らの経歴などについて教えてください。
基本的に、私のチームは6人です。出身もバラバラで、イギリス人が1人、日本人2人、フィンランド人とギリシャ人がそれぞれ1人ずつ。私自身はアメリカ人です。それ以外にも、言語学基盤の人と戦略基盤の人もいますが、彼らの経歴は本当にバラバラです。例えば創作系の作家で、詩集や変なSF小説を出版している男性もいたります。
新しい商品やブランドに着手する時は、いつもどうしていらっしゃるのでしょうか?
簡単な例を挙げれば、意見を出し合う時に「これが人物か有名人だったら誰だろう?」とか「これが音楽だったらどんな音楽だろう?」みたいなことを考えます。

出来上がるまでにはどれくらいの日数がかかっているのでしょうか?
1ヶ月の時もあれば、猶予がもっと短い場合もあります…。
そうやって依頼人に新商品の名前候補を10個提示するとか、そんな感じですか?
それは日程次第ですね。上手く焦点を当てて、1回のプレゼンテーションで何とかなった場合は、大抵20から30の名前が挙がっています。クライアントが折り返し、特定のアイディアを更に絞って欲しいという場合もあります。突き詰めれば、私たちが保証するのは、使えないこともない名前を一つ提供するということですね。
使えないこともない?ということは、以前あなたの企画通りに行かなかったこともあったのですか?
大抵はそうですよ。私たちには、実際に命名する権限があるわけではないですからね。少なくとも、私自身は一つのアイディアに執着しすぎるべきではないということを学びました。一つのコンセプトや特定のアイディアに執着しても、それを口にした時に複数の発音がある場合もあります。私たちは最終決定には関わっていないのです…。
なるほど。最近、楽しんで取り組めた仕事にはどんなものがあるのでしょうか?

SONYは、インターブランド・ジャパンのクライアントでもある。
私が一番好きなものについてお話ししたいところですが、仕事が終わるまでどころか、永遠に守秘義務を守って欲しいというクライアントも少なくないので…。ですが、BRAVIAなども私が作った名前で、プロジェクト開始時には2つの異なるシリーズに別々の名前を考案するというものでした。1つは気軽に使える、女性的で茶目っ気のあるモデルで、もう1つはもっと高性能のもの。最終的に、私たちは2つのプロジェクト合わせて200以上の名前を挙げたのですが、結局は1つのブランドとして落ち着きました。
「BRAVIA」という名前を聞いても、まず薄型画面が浮かんでくるとは思えないのですが…。
先ほどもお話ししましたが、アイディアの大半はブリーフィングのあとに出てきます。この場合は、抜きに出た才能を持つ、優秀なパフォーマー、つまり勇敢で(Brave)美しく、とても自然でいて非常に力強い、そういった迫力のある体験というイメージでした。
それが、ブラボー(Bravo)に似た響きの理由ですか?
ええ、この場合は語源学ですね。残念なことに、以来この手法は色々なところで模倣されています。今のテレビ業界を見ると、多くのモデルがこの形式で命名されていて、e、 i、 aで終わるか、もしくは似たような構成か響きを持っています。これは一種の追従でしょう。それでも2005年と2006年中は、このモデルはSONYが世界的にも上向きに方向転換する一因となりましたし、今では彼らの主力ブランドの一つでもあります。実は昨日有楽町を通ったのですが、ビッグカメラの巨大広告にBRAVIAの有力な競合であるAQUOSの広告があったんです。ちなみに、これも私たちが提供した名前です。
そうなんですか!?
ええ、ああいった企業は私たちが誰の仕事をしているのか知っているのだと思います。とにかく、その隣にはPANASONICの広告があって、その更に向こうにBRAVIA。衝撃だったのは、AQUOSの宣伝ではTV、名前、人物が映っているのに対して、BRAVIAは深い赤の背景に名前があるだけだったんです。実際の商品もなく、ただ名前だけ。

任務完了ですね!商品名一つでイメージが生まれるという…。
では、言葉自体は何の意味もなさないものの記憶に残る名前はというと、そちらのイメージは他の要素、つまり「響き」からきているのです。名前というものは、全てにおいて必要不可欠なもの、人も物も、あらゆる全てが持っているものです。名前というものは、本当に頭にこびりついて意識に浸透していくものですね。
あなたは世界的な規模で仕事をなさっているようですが、複数の言語にはどう対応していらっしゃるのでしょうか。
ある種の音はある種の雰囲気を生み出すものですが、やはり言語が密接に関係しています。
世界的に通用する言葉のようなものはあるのでしょうか?
もちろん。シンプルな言葉ですよ。英語の言葉の多くは世界的に通用します。例えば、サンキューは大抵の場所で通用しますが、どこでもという訳ではありません。何が世界的に通用して、何が通用しないと分けるのは難しいですが、一旦名前と商品、もしくはブランドが組み合わさると、それは一対であって、それ自体がブランドになりますから、もう切り離すことは不可能です。簡単に言えば、世界的に通用するブランドというものは、誰もが知っているもので、大多数の人が好意的なものであればなんでもいいのだと思います。人が心を寄せる何か、ですね。
ですが、人はどこでも同じものに心を寄せるわけではないですよね?そうなると、あなたはどうやって世界的な基準を判断しているのでしょうか。
私たちは、実際のマーケット・リサーチや受容性に関する様々なテスティングも行っています。世界各地にある、30のインターブランドの事務所で審査し、彼らを通じてその名前に他の言語で悪い意味がないか、発音し難くはないかなどを調べます。

2年ほど前にヨーロッパでお目見えした車の名前「パジェロ」が、スペイン語ではかなり失礼な意味に当たることに発売後まで気付かなかった、という話を思い出しました…。
ええ、だから私たちは事前に確認するんです。あと、予備的な商標審査も行います。商標というのは、その権利を主張することができる名前かデザインのことで、私たちもそのカテゴリーや市場ごとに、全く同じ商標が存在しないか確認しています。言語的に大丈夫そうでコンセプトにも合っていれば、改めて詳しい商標のリサーチを行います。
あと、インターブランドのブログで、2006年のブランド名トップ5という、どんな名前が最も注目を浴びたかの読者アンケートがありましたが、興味深いことにアメリカでのトップ5は、Google、APPLE、YouTube、やスターバックス、ウィキペディアも入っていましたね。それから、ヨーロッパではIKEA、SkypeやZARA。これはYouTubeやSkypeのようなブランドが、IT業界だけでなくグローバルな認識の仲間入りをしたということでしょうか?
これは私が日本に来て以来、常に考えさせられていることの一つですが、外国人として、そして欧米人として、YouTubeがアメリカやヨーロッパで人気なら、私たちは「それ」が世界の主流だと思い込みがちです。でも、本当にそれが世界的なのでしょうか?中国でも人気なのでしょうか?インド人もそのサイトに熱中しているのでしょうか?結局、多くの地域がそれなりに重要性を持っているのですから、グローバルに考えようと思ったら、特定の地域だけを基準にするわけにはいきません。

毎日お世話になっているGoogle。今では「ググる」という動詞もすっかり定着した。

MIXIの洋モノ版、My Space。
もちろん中国には独自のGoogleやMySpace的なサイトが、日本にはMIXIがありますものね…。
ですから、同じアイディアをピックアップしてその土地に適応させます。ですがグローバルなブランドに関しては、それは非常に難しく、潜在的に使えるかもしれないものを考案するのが難問なんです。言語学的と文化的、そして確実に法的な面を持った作業です。
実は、スコットさんが考案した他の名前についてもお話ししていただいたのだけれど、残念ながらそれを皆さんにお伝えすることは出来ないようです。でもヒントを一つだけ。最近発売された道具で、このPingMagを読んでいる人なら誰でもすぐに分かるもの…。スコット・ミラノさん、世界規模のブランド事業についてのお話を有り難うございました!
4 コメント
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ビッグカメラ ×
ビックカメラ ○
Posted by: kkagoo @ 2月23日2007年
kkagooさん
ご指摘有り難うございました。
Posted by: chiemi @ 2月23日2007年
わくわくするアイデアですね
パーツを組みかえて、オリジナルデザインがつくれたらもっとワクワクできるな~
Posted by: 山本 @ 3月22日2011年
How do I start a website? I know that I have to buy a domain or something like that?
Posted by: Johnie Rinde @ 11月8日2011年