
音の世界の限界は、実験的な技術者・音楽家によって常に押し広げられ、世の中に存在する奇妙奇天烈な音は間違いなく彼らの探究心の結果と言えるだろう。世界初の電子楽器であるテルミンとそのゆらめくような音色はご存知の方も多いと思うが、「レーザー琴」の音色はどうだろうか。この楽器は、アメリカ人ミヤ・マサオカが和楽器である「琴」を現代電子音楽に適応するように改造してレーザー光線を導入、最終的には全てのアナログ部分をレーザーに差し替えて、アップルのG4に接続したものだ。「レーザー琴」は、もつれ合う音楽とテクノロジーの関係性の中でも確実に異色の存在だろう。それとも、これが一人娘とニューヨークで暮らす、日系三世であるミヤの伝統との付き合い方なのかもしれない。PingMagでは、そんなミヤ・マサオカさんに話を伺った。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

ミヤ・マサオカ
ミヤさん、まずは「レーザー琴」がどうやって生まれたのか聞かせてください。
アムステルダムの電子音楽研究施設であるSTEIMスタジオでの研修期間中に、リアルタイムで琴の音を拾ってデジタル音として処理する、琴と電子機器を繋ぐインターフェースとして「琴モンスター」を開発したのが始まりです。これは両手のジェスチャーで音を出す仕組みで、楽器の上に超音波の線を走らせています。
90年代初期には、もうこれを行われていたのですね?
STEIMスタジオに行く前に、データグローブの共同開発者であるトム・ジマーマンと一緒に琴の弦がどうオシレータに反応するのかを研究していました。勿論、今では当時に比べてテクノロジーは飛躍的に進歩していますが、音の世界を広げたいという考えや願いは未だに変わってないですね。
PCとレーザーはどうやって繋がっているのですか?使用されているインターフェースはどんなものなのでしょうか?

レーザー琴
これまでにいくつものMIDIインターフェースを使ってきました。最初はSTEIM研究所のセンサーラブを使っていましたが、今ではイタリアのArduinoというインターフェースを使っています。少しプログラミングしないといけないのですが、基本的にはUSBポートを使ってセンサーからのデータをコンピュータに取り込む仕組みです。今ではこれまでに録音した色々な琴のサンプルが1000種類以上、ライブラリとして保存されています。
レーザー琴を演奏される際、「音性動作」という言葉を使われるそうですが、これはどういう意味なのでしょうか?

「音性動作」

特別な動作により、音色が強くなる
サンフランシスコでは、宮中楽師を務め、奈良時代まで遡る雅楽の家系の東儀季信先生に師事していたのですが、そこで教わったある種の手や腕の動作、体の姿勢について強く認識するようになりました。特に、実際の演奏技術に関係したものよりも、舞台上での自分の在りようを左右する手や指の動作に。こういった動作は、残響が途絶えた後もその音が持続している錯覚を与えるので、音質にある種の深みを与えます。音自体が消えた後も、手は音を持続させるかのように宙に留まるのです。まるで別の生物のように。後に蜂などの昆虫に楽器の上を歩き回らせることを始めてからは、それが私の中で特に具体的になって、テクノロジーと身振りによる動作が日本の雅楽と融合することになったのです。

では「音性動作」というものは、象徴的な行為というか、儀式的な演出ということになるのでしょうか?
意図としては、音に威厳や優雅さを込めるため、それからそれぞれの音を聴くと同時に味わうためですね。雅楽の音楽はとてもゆったりしていて、リズムも長い時間をかけて刻まれますから、体とジェスチャーを使って特定の音の深みを増すために、それぞれの動作が何かしらの強調やミニマリズム的な意味での音になっています。こういった優雅な音楽の中では、ある意味象徴的と言えるかもしれません。ですから、楽器の上に複数の光線を渡すことを試した時、最終的にはレーザー琴をレーザーだけで、楽器自体は使わない状態で演奏するところに行き着きました。そこでは、レーザーが弦の象徴であるとも言えます。

ホームページに掲載されている初期の写真を見ると、身体能力を様々な機器で増幅するのが流行していたサイバーパンク時代を彷彿させますが…
超音波で私の動作を感知する各種のセンサーが指に装着されているせいで、まさに体の一部になったような感じですね。最近だと、こういったものも徐々にワイヤレスになってきていますが。独特の性質のようなものもあって、最終的には人工装具というか、四肢の擬似的な延長線のような感覚になります。

そもそも、琴や日本の音楽との出会いはどんなものだったのでしょうか?
私の従姉妹が子供の頃から琴を習っていたのですが、私自身はピアノのレッスンを受けていました。それ以外では、仏教のお祭や親戚のお葬式などで琴や一般的な日本の音楽に触れる機会もありました。実際に始めたのは大人になってからでしたが、それまでも強い思い入れはありましたね。

では、親戚の方々を通して日本文化と強い繋がりがあるのですね。
私は日系三世で、祖父母の代にアメリカに移住した日本人の家系です。私の生活自体は日本とアメリカが入り混じっていて、特定の食べ物なんかを指す独自の言葉もあったりします。実は、そうやって使われている言葉のいくつかは、祖父母が移住してきた明治時代のままなんですよ。親から子へと受け継がれるものの中には、どちらとも言い切れない、単純に「日本」「アメリカ」と区別できないものもありますから、私は複数の文化の中で育ったと思っています。
他の音楽的な実験、例えば全裸で全身にゴキブリを這わせた時のお話を聞かせてください。
あの実験には赤外線を使いました。ゴキブリの動作が音を出す仕掛けになっていて、それがあの楽曲の原動力になっていました。

全身に虫を這わせるというのは、どんな気持ちでしたか…?
面白かったですよ。自分自身が一枚の黒い毛布で、ゴキブリたちが独自の丘陵を描いているような、そういうイメージを思い浮かべていました。ゴキブリは私の動かない裸体の上を自由に探検して歩き回っていて。そうやって出されたのは、大音量のとても奇妙な音でした。

蜂でも同じような実験をされていらっしゃるのですよね?
昆虫はそれぞれが独特の生態とヒエラルキー社会を持っています。日本の伝統文化は、虫や虫の音と密接な関係にありますし、虫は多くの日本の古い唄にも登場します。それに、雅楽で学んだ楽器の音も時として虫の音のように聞こえるという人もいますしね。あと、多くの俳句が小さな生き物を題材としているのもありますし、やっぱり馴染み深いのでしょうね。

ミヤさん、電子的な実験による音の世界のお話をありがとうございました!
4 コメント
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Posted by: Massage @ 11月8日2011年
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Posted by: lancaster pa personal injury lawyer @ 11月11日2011年
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Posted by: soft skills training @ 11月11日2011年
ミヤ・マサオカ:レーザー琴のミュージック・エクスペリメント good post1109
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年