
多彩な分野での成功を誇りつつも、常にあらゆる方面で新鮮な結果を出し続けるSurface To Airのようなグループは、世界でもほんの一握りではないだろうか。彼らは、MTVアワードを受賞するほどのミュージックビデオを作る傍らで、独自の紳士物コレクションをデザインし、雑誌やCDジャケット、香水瓶や店舗の内装まで演出する。また、パリに紳士服の店を持ち、最近ではレストランを併設した同じ系列の店がブラジルに開店。更には特殊なコンセプトで統一されたクラブイベントの企画を行う上に、パリでは独自の高級服飾展示会である「Rendez-Vous」の開催も始めた。そして07年の1月には、有名映画のポスターを現代アーティストが新たにデザインしなおした作品集、「Flip The Script」を出版予定だ。これらの活動は全てパリのSurface To Air本社から生まれるものの、今では一部が東京に移転しつつあるニューヨーク支部や、小規模の事務所をノルウェーにも持っている。PingMagは、そんなSurface To Airのジェレミー・ロザン氏に、彼の多方面に渡る事業について話を聞いた。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

ジェレミーさん、Surface To Airは6年前に貴方と現在東京在住の友人、ラジャンさんの手で誕生し、現在では18人のスタッフがいらっしゃると伺っています。何がきっかけで多岐に渡る分野を手がけるようになり、どのようなプロジェクトを実際に手がけているのでしょうか?

原宿BBSで行われている展示会のオープニングに来日したSurface To Air New Yorkのゴードン・ハル氏

同じく原宿BBSで弟のティム氏と共同で行った展示会の様子
実は、僕たちはここ何年かの間に出会った仕事仲間の集まりなんですよね。様々な分野で活動するようになったのは、3年半前にアルゼンチン出身のサンティアゴと出会って、一緒にデザインスタジオを作ったことが始まりです。一緒に、青山のセレクトショップ「Loveless」の総合コンセプトのデザインなんかを手掛けました。「Cacharel」や「Givenchy」の香水瓶もデザインしましたし、ジェーン・バーキンの最新のアルバムなど、SonyやEMIのCDジャケットもデザインしてます。うちの地下にスタジオを持っている知り合いのバンド、Scenario Rockのジャケットも同じく僕たちが手掛けたものです。


ツモリチサト06年夏物コレクションの写真

同じくツモリチサトの06年夏物写真。
それ以外にも、「コム・デ・ギャルソン」のインスタレーションの企画や、「アディダス」などの店舗デザイン変更なんかもやっています。スタジオ部分はそんなところでしょうか。それに加えて、ミュージックビデオや映画の企画もありますね。3年前には、東京のAnd Aなどのアパレル会社でコンサルタントをやっていたアルドリックと出会って、一緒にパリのルーブル美術館近くに店を開いてデザイナーを100人ほど集めました。現在では、テュエリーミュグレーに居たアメリカ人のトマス・エンゲルハートがデザインした紳士物のアクセサリーのシリーズもやっています。

本当に色々ですね。ホームページにロゴが3つも掲載されているのは、そのような活動範囲の多様性からでしょうか?
僕たちは、ロゴを統一するというコンセプトには全く賛同できないので、ロゴはコロコロ変わってますよ。
それでは、そのコンセプトを統一しない考え方があなた方のファッション関連のお仕事にも反映されているのでしょうか?
ファッションの方は、単に自分たちで着てみたくなるような服を作りたいというだけですね。


「Loveless」のコンセプト・デザイン

手さげ袋のデザイン

ただ、今いる18人は自分達がやりたいことの80%を実現しています。例えば、僕たちの展示会「Rendez-Vous」でスペースを売り込む仕事の人がいたとして、同じ人間が僕たちのTシャツコレクション用のデザインを提供することもできる。そんな感じで、社内ではできるだけ自由に動けるようにしたいと思っています。

「Isabel Marant」06年夏物コレクション用のファッション写真

こちらも「Isabel Marant」用の作品

Surface To Airによるイラストレーション

同じくイラストレーション
それは行き当たりばったりのようにも聞こえますが…。
まあ、単に興味のあったことをやっただけなんですけどね。新しい分野があればやってみる。自発性は僕たちが維持したいと思っている大事な要素の一つなので、常に新鮮であれるように、頻繁に活動分野を変え続けています。個人的には、重要なのは独自性ではなく、その考え方なのではないかと思っています。コートを作るにしろ、CacharelやGivenchy の香水瓶デザインにしろ、以前にやったことがなくても競争には勝ち抜いていますし。あと、インテリア・デザインも今までやったことのない分野ですね。

Surface To Airのパーティーでのケネス・カッペロの展示会

サンパウロのSurface To Air Brazil店で開かれたアドリアーナ・デグレアスの個展

Surface To Airが企画した刑務所画展より。アルフレド・マルティネスによるイラストレーション。

同じくアルフレド・マルティネスによるイラストレーション。この作品は、コーヒーとオレンジジュースで制作され、手紙に紛れて刑務所から持ち出された。
どのようにして、今まで経験したことのない分野での作品を制作しているのでしょうか?
香水瓶のデザインをした時には、15日間で3Dのやり方を独学で覚えました。単に仕事っていうだけですよ、実際のところ。
車なんかをデザインしようとは思われますか?
それはもっと技術的な問題ですね…。店舗やパーティーや色々なネットワークに関しては、僕たちは積極的にコラボレーションに乗り出します。そういう点ではあまりフランスっぽくないですね。仮に今日出会ったあなたが車のデザイナーだったとして、いつか僕が車をデザインする機会に恵まれたら、僕はあなたに連絡して一緒にやろうということになる。だけど詳細に拘りすぎれば、その案件自体がなくなってしまう。そういうことです。

Surface To Airの今シーズンの紳士物コレクション

元Diorデザイナー、ニコラ・アンドレア・タラリスと共同で制作した製品

紳士靴

社内の全員でデザインしたTシャツ
それが先日、突如ブラジルにレストランと店舗を開いた理由でもあるのでしょうか?
僕たちがこれまでにパリでやったパーティーは、毎回かなりの成功を収めていましたから、こちらでもやってみようかと…。
そういったイベントでは、毎回特別なコンセプトがあるのですよね?ちなみに、どのようなメンバーを集めたのですか?
どこの会場でも、バンドを一組とDJを一人、ダンス用に手配してました。それから、取材は雑誌か何かを一社、それにアーティストが一人。例えば、ケネス・カッペロの個展の時は、バンドに A.R.E Weaponsを、DJはポール・セヴィニーで、雑誌社はデイズド&コンフューズド。その他の機会では、アモン・トビンやゴンザレス、A Touch Of Classのようなミュージシャンを集めました。


ロンドンDSMでのコム・デ・ギャルソンのインスタレーション

パリの近代アートセンターにある「Parc De La Vilette」、VN04:パフォーマンス、インスタレーション、書籍の装丁監督とデザインなど。
例えば、女優のクロエ・セヴィニーさんのお兄さんのポール・セヴィニーさんが、そこで選ばれている理由は?
この場合の繋がりで言えば、ケネス・カッペロがNY出身で、よくデイズド&コンフューズドの撮影をやっている。ポール・セヴィニーもNY出身で、A.R.E. Weaponsのマネージャーであり、尚且つ優れたDJでもある。僕たちの企画では、全員が同じ方面に属しているという一貫したコンセプトがあるんです。


Justice vs Simianのミュージックビデオより

Scenario Rockのミュージックビデオより
そう言えば、同じ音楽関係の活動として、ミュージックビデオのディレクションも行っていますよね。Justin vs Simianのミュージックビデオ「We’re your friends」では、今年の MTVミュージック・ビデオ・アワードを受賞されていますが、この作品では終始家庭内暴力的な表現が巧妙に盛り込まれていますが、その意図するものは何なのでしょうか?

親しいバンドScenario RockのCDジャケット

同じくScenario Rockのもの
この曲の歌詞に「僕たちは君の友達、君はもう一人じゃない」みたいな部分があって、これに対してのちょっとした皮肉をやってみたかったんです。これまでの自分の経験から、人々がパーティーでどういう行動をするのかを思い描いて、ネットのパーティー荒らしのウェブサイトでこういうものを載せているページを見てみたりもして。クリップ内のインスタレーションは、うちのセット・デザイナーのジョン=ミシェルと一緒に作りました。彼とは、以前にも日本のツモリチサトさんのインスタレーションで一緒に作業をしたことがあるんです。あれ以来、沢山の方々があのクリップに出てくるような信じられない映像を送ってくるから、本当におかしいんですよ。

Lokiss「アメリカン・ジゴロX」(2003)
次はMTVミュージック・アワードについて聞かせてください。あのイベントでは、普段は常識的なカニエ・ウェストが笑いものになる、ちょっと厄介な出来事がありましたよね。受賞の最中に、ウェスト氏が舞台に乱入して、暴言を吐いたとか…。その時、あなたは戸惑いながらも笑いながら隣に立っていましたが、実際にはどんな感じだったのでしょうか?
あの時は何が起こったのかよく分からなかったんですよ。僕も興奮してかなり笑っていたので。彼が何を言っているのかを理解したあとは、結構バカなヤツだなと思いましたね。


こちらはサンパウロのSurface To Air

ブラジルにオープンしたレストランとお店
その後、彼とは何か話したんですか?
ええ、勿論。彼とは一緒にインタビューを受けましたが、酔ってたみたいですね。後でマネージャーに僕たちの連絡先を調べて、今後のクリップのためにこちらに何曲か送っておくように言っていましたよ。彼は本当に挑発的な人物ですね、実は。それが彼のコミュニケーションの取り方なんだと思います。

パリのSurface To Airの地下でレコーディングを行うザ・キルズ

パリ本社での激しいパーティー
Surface To Airの次の展開は?
年に一度か半年ごとに出されるような、自分たちだけでまとめた雑誌などを考えています。それから、できれば近いうちに映画ももっとやりたいですね。
最後に、あなた方の多岐に渡る制作について、一言お願いします。
こうしていることが、精神的にとても良いんですよ。
なるほど!ジェレミーさん、Surface To Airのあらゆる面を紹介してくださって、本当に有難うございました!
5 コメント
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素敵!!
とってもかっこいい。
ロックな心意気がいい!!!!!
Posted by: kai @ 12月19日2006年
グレイト!!
Posted by: nishi @ 12月19日2006年
ヴィジュアルデザインが
かっちりしていてステキ☆
Posted by: **sirop @ 12月21日2006年
[...] ジョーダンが最初に見せてくれたのは、2006年MTVアワードのベストビデオ受賞作品でもある「We Are Your Friends」。監督のローザン&シュメルツ(Surface 2 Air)は、パーティーで泥酔し寝入ってしまった人達に起こった悲劇をリアルに描くために、自分達の友達を朝9時からの撮影に呼び、実際に凄まじい早さで浴びる程お酒を飲ませたのだとか。 [...]
Posted by: PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » パルチザン:創造力を開花させる映像プロダクション @ 2月6日2007年
kirei—–!
kimochi ii!!
Posted by: cococoaki @ 4月10日2008年