
ミュージックビデオ(PV)の監督は、有名無名に関わらず、アーティストと微妙な関係にあることが少なくない。とは言え、イメージが全てなだけに、監督選びは繊細な問題である。若く意欲的な監督がアーティストと知り合い、個人的に親しくなったとしても、次回PVの制作に関しては正式に売り込みをしなければならない。幸いにも、イギリス人PV監督のニマ・ヌリザデが映画祭、RESFESTジャパンのために東京を訪れて、この問題や、彼が制作したHot Chipやリリー・アレンの素晴らしいPVの舞台裏について語ってくれた。ニマは、ディレクター集団、ザ・イマジナリー・テニス・クラブとして活動していた時期にディジー・ラスカルやジュニア・シニアのPVを制作し、現在ではミシェル・ゴンドリーでお馴染みのパルチザン・プロダクションに名を連ね、ソロ監督としてイギリス音楽界を独自のユーモア感溢れるアプローチで潤している。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

笑顔のPV監督、ニマ・ヌリザデ氏。東京にて。

Resfestプログラム責任者で、ニマと一緒にロンドンから来日した、ジェレミー・ボクサー氏。
今回の訪日では、ニマはResfestのプログラム責任者、ジェレミー・ボクサー氏と一緒だ。前日にロンドンから到着したばかりの二人は、夜通し街を徘徊して、明け方に築地を見学した後、土曜のお昼の日差しの中で時差ボケと戦いながらインタビューに答えてくれた。それでも、この記事が読者の皆さんの目に入る頃には、ニマはとうにイギリスに戻って、次の作品となるプログレッシブ・ロックバンド、マキシモ・パークのPV制作に着手しているはずだ。

ニマさん、イギリスのバンド、Hot Chipとは3本ものPVをお作りになってますよね。今ではかなり親しい間柄になられたのでは?
ニマ:良い関係を築くことによって、彼らもこちらを信頼してくれます。この仕事をすればするほど、バンドの皆がどれだけ不安がっているかに気付かされますね。良くないイメージで表現されたり、PVが駄目だと言われることを本当に恐れているのです。昨日も東京行きの飛行機に乗る前に、あるバンドと話をしなければならなかったのですが、「絶対にすごいPVを作ってくれるんでしょうね?」と聞かれましたよ。


では、相互信頼の問題なのですね。でも、それにはまずお互いを知る時間が必要になると思うのですが…?

ニマ:私がHot Chipの「Playboy」のPVを作った時、彼らとは全く面識がありませんでしたし、レコード会社の方も私を信用するしかなかった。でも、あのPVは予算なしで作ったものだったので、バンドの方も作れるだけ幸いという感じだったと思います。それからお互いに親しくなって、次の作品のことを検討するようになりましたね。


Hot Chipの「Over and Over」のPVは、緑のスクリーンを使った、PV制作の「舞台裏」的な内容になっていますよね。最後の最後になってエフェクトが見え始めますが、こういう構成になっているのは何故なのでしょう?
ニマ:当時、Hot ChipはEMIと契約していて、PV制作に予算が下りるかどうかも定かではなかったんです。お金をかけずにエフェクトを入れたい時は、緑のスクリーンがベストですからね。でも、全てのエフェクトを入れる予算はないのだから、作りかけに見えるPVでも良いじゃないかと。そこから更に突き詰めて、最初から最後まで、全部緑のスクリーンで撮ったビデオでも良いじゃないかと。


ジェレミー:僕にとってはそこが一番のツボでしたね、曲の生意気さによく合ってて、相乗効果になったと思うので。
その時のバンドの方々の感想は?
ニマ:彼らは真面目にやってますが決してくそ真面目ではないので、あのアイディアは彼らの個性を見せるためのものでした。つまり、彼らを個人的に知っているのでなければ、私もあんなPVを作ることはありえなかったし、彼らもそれを良しとしなかったはずです。


ジェレミー:そういえば、緑の全身タイツの人たちは君の高校時代の友人だって聞いたけど、本当?

ニマ:あれは本当におかしかったよね。撮影でイライラした時は、毎回友達の方を見るようにしてました。ほら、あの格好だと裸も同然というか…全然隠せてないというか…(笑)あの時、連中はあの全身タイツ姿でタバコを吸いながら喋っていて、それを見て「ヤバイ、これはおかしすぎる」と思ってましたね。


(フルPVはYoutubeで)
では、Hot Chipのその次の曲である「Colours」はどうでしょうか?全然違う雰囲気の、3Dっぽい内容でしたが…。
ニマ:「4次元」フェイシャル・キャプチャーという技術を開発した「Artem Digital」という会社があるんですが、通常は誰かの顔をキャプチャーして、後で動画編集するものを、これを使えばその場でできてしまうんですよ。

ジェレミー:確か、カメラは4台だったよね?元々は医療用のソフトウェアじゃなかったかな、僕の記憶違いでなければ。
ニマ:ええ、メンバーにその機材の前に座ってもらって、そこで取り込んだ彼らの顔面から3D画像を作成します。4Dを使うと前面…顔の部分のみを取り込んで、それを作成した頭部に貼り付けるのです。そのあとは3Dとして動かしたいので、顔面部分をワイヤー・フレームで表示して、簡単な肌の質感を出します。要は、その歌手らしくは見えるのですが、非常に表面的になってしまうんですよね。なので、撮影後の編集段階で思うようなフェイシャル・キャプチャーができるまでに一ヶ月かかりました。ただ、唯一の問題は、リアルに見えすぎたことですね。これを実写で撮るなんてあり得ないというレベルにまでなってしまったので、ちょっとだけ元に戻さなければいけなくなったんです。だから一部のシーンでは殆どディテールが入ってなかったりするんですよね。

Hot Chipのように、手掛けたバンドの知名度が大幅に上がったら、彼らに対する貴方のアプローチも変わるのでしょうか?
ニマ:違いがあるとしたら、スタッフや関係者が増えることと、マーケティングの仕方などに関して、誰もが何らかの注文を付けたがることくらいでしょうか。PVの予算が少ない時は監督に何かを言う人はいないので、予算のないPV制作が最もやりやすいです。

ニマさんは、今年大ブレークしたリリー・アレンのPVも二本制作していらっしゃいますよね。
ニマ:あれは丁度彼女が「Smile」で1位を取った後で、次のシングル「LDN」のPVに向けて売り込んでこいって言われたんですよ。でも、ミュージックビデオを専門にしているプロダクション、カーネル・ブリンプのドゥーガル・ウィルソンやブルー・ソースなんかの有名どころも同じく売り込んでいると聞いたんですよね。それから2週間は何も音沙汰がなくて、私も「Colours」のPVに懸かりきりだったんですが、突然仲介人から「リリー・アレンがドイツにいるから連絡を取れ」と言われて。その時に初めてリリーと話をしてすぐに打ち解けたのですが、あの時点ではまだ全然PVのアイディアはなかったですね。


この「LDN」のビデオの後、二本目のPV「Littlest Things」は楽に獲得できたのでしょうか?
ニマ:これまた信用の問題なんですよ。どちらにしろ、彼女が私を指名した訳でもなかったので、やはり二本目のビデオも売り込みをしなければなりませんでした。しかしこの場合、本人と面識があるということは、アーティストに直接電話して構想を話して、気に入らなければ他の案を考えることができる程度には優遇されているでしょう。書面での売り込みだと、アイディアが気に入ってもらえなければそれまでですからね。
リリー・アレン「LDN」の完成品:
では、ようやく手掛けるアーティストとの関係が落ち着いてきた感じでしょうか…?
ニマ:同じアーティストを手掛けたとしても、私は前回の経験を活かすことが出来ないので、毎回撮影するたびに初めてのような感覚なんですよ。それで緊張してしまうのですが、そういう緊張感から来るエネルギーもああいった環境ではかなりプラスの方向に作用すると思います。
それを不安に感じることはないのでしょうか?
ニマ:時々は。本当にやろうと思っている結果に仕上がるのか、常に自分に問い続けなければいけませんからね。無事成功するだろうか?って。いつも終わったあとに独特の感覚があります。そういう意味では、いつだって冒険の要素が大きいですよ。
ニマの「Littlest Things」PV:
新鮮な若手PV監督からの興味深いご意見をありがとうございました!ニマさん、これからも頑張ってください!
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Posted by: hd porno @ 2月8日2012年