
ベルリンを拠点にButterflysoulfireのブランドを展開するマリアとトアスは、ファッションに関心を持ちながらも、服飾業界のお祭り騒ぎに乗る気は一切ない。事実、この業界の陰の部分に対する憤りを表明するためにも、彼らは他所のショーに乱入してゲリラ・パフォーマンスなどを行うことがある。このドイツ人デザイナー夫妻は、その独特なパンク的な考え方が嵩じて、服飾の専門学校に行くどころか洋裁の基礎も勉強しておらず、営業面での専門的な知識もないという。しかも、作品を作るタイミングも自然発生的なもので、ステンシルで模様入れされた、二つと同じもののない手作りの洋服たちが、彼らの個性的な主張をストリートウェア・コレクションという形で表現している。現在、Butterflysoulfireのメンバー5人(マリアとトアースの赤ちゃんも含め)は、ベルリン東部の古い工場で一つの財布を分かち合いながら、昔のヒッピー的な共同生活を送っている。PingMagでは、先々週のブリックファングファッション・フェアで会ったマリアとトアスに、この自由主義的な生活環境や、彼らのファッションに対する独特のアプローチについて話を聞いてみた。
作:ベレーナ
訳:山根夏実

Butterflysoulfireの新しいサブレーベル「A1」は、Nidのお店以外に、原宿ラフォーレでも展示されており、鮮やかな色合いのパーカーや上着が並べられていた。もう冬もすぐそこまで来たこの肌寒い日、Butterflysoulfireの二人が通りがかりの人々に「A1」のパーカーを試着して写真を撮るように声をかけると、数人の女子高生が恥ずかしそうに応じてくれた。本当に楽しそうな撮影の後、彼女たちの顔にはこぼれんばかりの笑顔が溢れていた。

ラフォーレの外でButterflysoulfireを試着してみたシャイな女子高生。(写真:ダルコ・トドロヴィッチ)

可愛いフードが似合ってて本当にキュート!(写真:ダルコ・トドロヴィッチ)

はい、チーズ!マリアとトアスと一緒に。

MinaはButterflysoulfireの日本での広報担当者。「A1」のパーカーを自分でも試着したくて堪らなかった様子。
「Butterflysoulfire」はブランド名としては長いと思いますが、この名前になった理由は何でしょう?
トアス:僕の下の名前の由来がギリシャ神話なんですが、いつだったか誰かが、タスキアゲハの学名がラテン語だと「パピリオ・トアス」(Papilio Thoas)、英語だと「トアス・スワローテイル」(Thoas Swallowtail)だって教えてくれて。それと、DUBの神様、リー・“スクラッチ”・ペリーの「Soulfire」っていう曲があって、それを聴いた時に、この繊細で儚い生物も燃えるような魂を宿しているのだと思いました。「燃え盛る魂」は、僕が全ての人の心の奥底に望むものでしたから。
なるほど。では、お二人が出会われたきっかけは何だったのでしょうか?
トアス:2000年に僕が自分の服の製作を始めて、それ以来、ベルリンのミッテ区にあるデザイナー服の有名店「Apartment」が僕の服を売りたいと申し出てくれるまで、沢山の人が僕の作品について問い合わせてくれました。それで、まずはその時自分で着ていたオリジナルのプリントを20着製作してみたんです。その1年後に、ミッテ区のクラブ、Kurvenstarで働きながら、布にステンシルを使ってプリントするのを始めて、その後、2002年の1月にマリアと出会いました。その出会いから6週間後にはもう、僕の初のファッション・ショーをこのクラブで開催することになって、急遽モデル40人分の服が必要になったのですが、どうすれば良いのかさっぱり分からなくて。僕たちは本当に、ゼロから始めたんですよ。
マリア:私たちの最初のコレクションはパッチワークがテーマで、フリーマーケットで買ってきた布を切って、それをまるでコラージュみたいに継ぎ合わせて新しいものを作り出しました。このデザインは、沢山の色の組み合わせと、色同士の均衡を通じて作られたもので、その服に「eat no food」とか「Amok und Koma」のようなスローガンを付けてみました。

Butterflysoulfireの新しい冬物コレクション。

今回はよりエレガントなイメージだが、トレードマークのステンシルプリントは健在。

脇に繊細なステンシル柄の入った、ハッカ色の冬物コート。

紳士物:装飾的なジグザグ縫い。
パンク運動の主張ですね。あなた方の作品は、どれも過激なアプローチで作られているようですが、いかがでしょうか?
マリア:私たちは自然発生的に作品を作りますから、商業的効率については一度だって考えたことはありません。私たちのショーに関して言えば、準備はショー当日のたったの3週間前に、振り付けに至っては当日3日前にようやく着手する感じです。もともと、私たちはファッションの専門家ではないですからね。私自身に関して言えば、ベルリンの美大でステージデザインを勉強していたので、演劇の世界が本領だったりします。
あなた方は、東ベルリンのかなり古い工業施設跡で全員一緒に生活していらっしゃるそうですが、それはどのような暮らしなのでしょうか?
マリア:あそこに引っ越したのは1年ほど前で、改装に5ヶ月ほど費やしました。今では私の生まれたばかりの娘も含めて、5人が同じ屋根の下で生活していますが、問題なく上手くやっていると思います。


振り付けのリハーサルはたったの3日前…

…そして、突発的に終わることもしばしば。
以前にもお聞きしたと思いますが、その生活環境にはかなり特徴的な点がおありとか?
マリア:ええ、私たちは、全ての収入を分け合っているのです。稼ぎがあれば出費用のお金もあるし、稼がなければ何もない。全員が同じだけの現金を持つことになります。
そのような概念を選ばれた理由は?
トアス:単純に業務上の理由です。私たちには、ちゃんと人を雇って給料を出すだけの余裕がなかったので。家賃と食費は店の収入で何とかなっていますが、まともな給料というのは未だに受け取ったことがないです。

新しく設立したサブレーベル「A1」のパーカー・シリーズ。

そこかしこを自由に走るジグザグ縫い。トアスは「ミシンでロックンロール」するのが好きなのだとか。

この撮影では、大勢の友達を呼んで、気に入ったA1のパーカーを着てもらったそうだ。

撮影中、即興でポーズをとるマリア。
それは、何とかやっていけるよう祈ってます!作品は、今でも全てご自分で作られているのでしょうか?
トアス:もちろん、今僕が着ている、新しく作ったサブレーベル「A1」のフード付きセーターもそうですし。これも僕自身の手で作って、もう30枚ほどを店頭用に縫いました。この服は手作業でしか作れないんですよ。
マリア:私たちの洋服の生地は、一枚一枚の裁断からステンシルの模様入れまで、全て手作業で行われます。他の会社に縫製を外注すると、コストが高くなりすぎるので。
トアス:更に言えば、布切れに好きなようにジグザグの縫い目を付けていきます。これはミシンでロック&ロールするようなものですよ。


それは、ダダイズムの「無意識下における自動記述」を連想させるのですが?
トアス:そう言えないこともないかもですね。基本的に、僕たちは全員我流でやってる独学集団で、僕たちのデザインは、自分たちで着ることによって自分たちの主張を表す手段としてのものです。Butterflysoulfireの次の夏のコレクションでは、今までの多彩な局面を経て、最終的にもっと高度なものにチャレンジしようと思っています。例えば、素材にシルクを使ってみるとかね。
マリア:そのプロセスには物凄く時間がかかるので、私の中では結構引っ掛かっているんですけどね。でも、ファッション専門校の学生などのインターンと作業をしてみても、彼らのアプローチは常に限定されていて、それまでの考え方を投げ捨ててもっと自由に作業できるようになるまでに、結構時間がかかるのですよ。


あなた方が、ベルリンのファッション界で一躍有名になるきっかけとなったゲリラ・パフォーマンスについてお伺いしたいのですが、最初は2003年のベルリンでのBread&Butterファッション・フェアでしたね。あのパフォーマンスは、若手デザイナーを応援するという触れ込みでいながら、新人にもPumaやAdidasなどの確立されたデザイナーたちと同額のブース料金を要求したそのフェアに憤慨したから、という理由だったそうですね。抗議として、作業着姿の仲間と会場を歩き回って唖然とした来場客の服に直接シールを貼っていったと聞いていますが…?
トアス:そう、「Strand unterm Asphalt(コンクリートの下に砂浜)」とか、「Karma police」みたいなスローガンの入ったシールをね。ここで使ったスローガンは、いつも仕事場で聴いているイギー・ポップやコールドプレイ、モードセレクターとかT.Raumschmiereなんかの歌詞から取りました。

日向のフード:「A1」の立ち上げには、デザインマイ・フェアの会場の前に水着で集合。
ですが、私が知る限りでは、2004年の「Bread&Butter」でもゲリラ・パフォーマンスを行っていらっしゃるような?
マリア:ええ、あの時もキャットウォークに乱入しました。フェアが開催される2日ほど前に、このフェアの期間中に招待客しか入場できない、とても閉鎖的なファッション・ショーがあると聞いて、拒食症のモデルや業界の不変性、ブランドへの偏執など、この世界の様々な副作用について、抗議の意思表示をしようと思い立ちました。それから2日間は、あの作業着を縫うのに徹夜で作業して。3つのパーツをコラージュ風に仕立てて、その他にも腕に旗の部分を縫い付けた黒いパーツが更に3枚。旗の部分には、1枚ずつに「Kill」「The」「Catwalk」みたいに、単語が1語ずつ書かれている構造です。
トアス:僕たちは招待状なんか持ってなかったので、仲間の1人は会場のテントの裏からこっそり、もう2人はキッチン経由で、僕自身はメディア用のチケットで潜り込みました。そしてファッション・ショーが始まった後は、上に着ていた普通の服を取り払って、予め着ておいた作業着姿でキャットウォークを行ったのです。とは言え、ウォーキング中のモデルの邪魔は極力せず、メッセージを見せるために腕を広げて立っているだけでしたけどね。モデルもお客もかなり困惑していましたが、僕にとっては痛快でした。翌日の新聞でも大きく取り上げられていましたし。あの後、Bread&Butterの運営側から、僕たちのパフォーマンスも悪くはなかった、そして来年のフェアでまたやったらどうか、というようなニュアンスのメールを受け取りましたが、もちろん却下してやりましたよ!

Butterflysoulfireの最新のパフォーマンスは、ベルリンのデザインマイでのもの。このフェアに対する抗議があったというわけではなく、単にフェア自体からは切り離された状態で「A1」の立ち上げを演出したかったのだという。
トアス:あの時はフェアの初日に、集ってくれた25人の友達全員で、水着とサングラスにA1のパーカーを羽織っただけの格好で会場に入りました。会場の入り口にはデッキチェアまで持ち込んで、それに座ってカクテルを飲みながら、周りを一切無視するように努めてたんですよ。

本当に面白い演出ですね!素晴らしい服を見せてくださって、本当にありがとうございました!
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Kill the CatWalk! おもしろいアイデアとコンセプト!見習いたい!!
Posted by: noche @ 11月28日2006年
Butterflysoulfire:キャットウォークを殺せ! good post1086
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年