
クリス・ダンカンの作品は、僕の中で非常に空想的な波長で共鳴し、ある種の仲間意識を感じさせるものだ。彼の作品は緻密で、僕がその純粋な奇異さに興味尽きることのないバウハウスの初期の講師陣の作品から多大な影響を受けている。(例えば、有力なバウハウスの色彩論者、ヨハネス・イッテンは、19世紀後半に米国で設立された神秘主義と瞑想主義を掲げるマスダスナンという宗教の信者で、彼の色彩論はバウハウスの生徒用の色を基調に考案された食事療法‐1週間は青いものしか食べないなど)
ダンカンの作品コンセプトにはそれと同じような奇異さが存在し、視覚芸術の本質的な土台(形と光と色)を探究するものだ。慎重に張られた何千本もの蛍光色の糸による平面群、最高の技術でもって作られた手縫いのキャンバス、彫刻や物体、キャンバスに見られる数百万にも及ぶアクリル絵具のドットの海…彼の作品には、工芸に対する偏執的なまでの情熱がある。最近の彼の作品における分かりやすい表現はともかく、被写体の本質を明らかにすることがダンカンの使命であり、僕にこれほど彼の作品を楽しませてくれる理由なのだろう。それと、僕が結構な夢想家なのもあって、こんなにも彼の作品が好きなのかもしれない。
作:イアン・ライナム
訳:山根夏実
新宿の独立した展示スペースである中落合ギャラリーでは、「Playing Fields」と題されたダンカンの最新の作品集が、2006年の10月15日から11月19日まで展示される。それに先駆けて、彼の背景や幅広い作品、色鮮やかなインスタレーションに隠されたコンセプトなどについてのインタビューに答えてもらった。

無題(2006)

無題(2006)

無題(2006)

無題(2006)
まず、クリスさんのご出身はどちらですか?
僕は、アメリカのニュー・ジャージーの郊外を転々として育ちました。最初がウッドブリッジ、次がブリックタウンで、14歳の時にデラウェアに引っ越しました。
芸術作品を作り始めたのはいつ頃ですか?
僕が21歳の時に、ひと冬をカリフォルニアのタホ湖で過ごしたんです。そこで、毎晩繰り広げられる同じ顔触れの同じパーティーに嫌気が差して、家に残って絵を描くようになりました。1996年のことですね。

「ドット」(2006)詳細

「ドット」(2006)詳細
アート作品を作ることとDIY的なパンク生活をどう関連付けているのでしょうか?
僕が物を作る時は、僕の目で監督して僕のルールで実行します。コンセプト的には、僕の作品は階級や種族、人間の葛藤とか、パンク・ロック系のハードコア音楽で頻繁に取り上げられてきたテーマを扱っています。最近は、よくミニットマンを聞いてトリップしてますね。
「Hot&Cold」という限定販売のアート同人誌を共同編集/出版していらっしゃるそうですね。限定150冊ずつしか販売されず、付録袋にはポスター、シール、CD、完全菜食主義レシピ本、プリントやら何やらが閉じ口ギリギリまで詰め込まれていて、この同人誌の貢献者には、サウザー・スレイザー、ジェレミー・フィッシュ、ロリ・D、 マヤ・ハユク、ダビッド・ダンドレア、クリッシー・パイパー、ビック・ブルー、アンディー・ジェンキンスやジョン・ダーニルその他が名を連ねていらっしゃる。そして、最近ではこの雑誌がニューヨーク近代美術館に買収されたそうですね…。この「Hot&Cold」について聞かせてください。
僕と親友のグリフィン・マクパートランドとで、結構長いこと何か一緒にプロジェクトをやろうという話をしていて、ついに僕と彼のお互いに相容れない美学が混じり合う同人誌を作る所に漕ぎ着けました。一旦始めてみると、友人の作品も使いたいという話になって、そこから後は雪だるま式に。どの号でも僕達は自分自身のベストを出し切る努力をしてきました。2002年に出た10号から始めて、0号でお終いにするまで、カウントダウン式に刊行しています。最近では「Hot&Cold」のアンソロジーを出せないかどうか、出版社の物色でもしてみようかとも話していますが、今は3号が刊行間際の段階ですね。



これまでに参加された展示会の中で、気に入ったものなどはありますか?
去年参加した、イエルバ・ブエナ・センターでの「THE ZINE UNBOUND: Kults, Werewolves and Sarcastic Hippies」というアート・ショーかな。あれは本当に最高でした。僕の作品が素晴らしい施設を飾っているというだけでなく、「Hot&Cold」が「Trinie Dalton」や「K-48」と肩を並べて採り上げられていたわけですから。このショーは、Hot & Coldを手に取って、その内容に感銘を受けてくれたベリン・ゴロヌが主催していて、彼女の招待で参加する運びとなりました。

「Moment Monument」(2004)
グリフィンにとって、ベイエリアに住むことが彼の人格の中核を構成するらしいのは知っていますが、貴方の作品にとって、オークランドに住むということはどれだけの意味を持つのでしょうか?
オークランドは故郷ですよ。静かでうるさくて、美しいのに恐ろしく醜悪です。オークランドでは、現実の人間が現実の生活を送っていて、まさにインスピレーションの源ですね。
ポートランドのモーテル・ギャラリーでアートワークを展示されたばかりだそうですが、いかがでしたか?
ポートランドは惚れ込んでしまいそうなくらいに素晴らしかったです。かなり魅惑的な場所でしたね。物価は安定しているし、食べ物もコーヒーも美味しくて、人も良くて。ショーに関して言えば、ジェン・アームブラストとの作業は最高で、僕の要望をよくバックアップしてくれました。
さて、貴方の作品への理解をより深めるために、ご自身の言葉で語って頂きたいと思います。ありがちなパンク系以外の方面で、貴方の作品が純粋な形式主義を除けば何を意味するのか。幾何学、それに頂点や空間の描写が貴方の作品の重要な要素だと思いますが、作品を通して何を伝えようとされているのかについてお話して頂けますか?作品は非常に緻密ですが、作品に費やされる膨大な手作業が、貴方の本質的なものを作品に織り込むのでしょうか?
まあ、線やドットや幾何学は、何でも根幹まで掘り下げなければ気がすまない僕の性質に関連したものです。僕はイメージやアイディアを、それ自体が持つ/作るエネルギーの段階にまで絞り込みたい。時には一瞬の明確さを描写しようとするし、その他の時にはただひたすらに圧倒される。人間は、僕を圧倒し、嫌悪させ、驚嘆させます。また、僕の作品には繋がりの意味もあります。全てのものは何らかの形で繋がっている。それから、色彩の関連性にも興味がありますね。今はアルバース、ロスコとモンドリアンに夢中です。ある二つの色を一緒にすることで、穏やかで落ち着いた気持ちになったり、逆に全く居心地が悪く感じたりすると考えるとだけで興奮します。僕はその両方をやってみたい。その他にも、デュシャンやダダも好きです。現代社会で、一般的に普及した影響力の強い歴史的なアート活動は何かと言われれば、僕はダダだろうと思います。


貴方は熱心な完全菜食主義者で、「リトル・オツ」という環境に優しい完全菜食主義ブランドにT‐シャツや日記、スケジュール帳などをデザインしていらっしゃるそうですね。リトル・オツと一緒に仕事をするようになったのはいつからですか?
オツとの仕事を始めたのは、かなり最初の方ですね。完全菜食主義の店の話を聞いて覗きに行ったんです。確か、その時に僕が「ボーン・アゲインスト」のボタンが着いたジャケットを着ていて、ジェレミー(オーナーの一人)がそれについて何か言って、それで意気投合しました。

これまでに、彼らとはどんなお仕事をされましたか?
Tシャツを何枚かと、お店でショーもやって、ブランドの印もデザインして、あそこの初めての店舗のいくつかは僕が建てたし、スケジュール帳と日記帳もやりましたね。
「Poketo」(素晴らしいアーティスト財布のメーカー)とはいつから仕事をされているのですか?
2年か3年前に僕の財布シリーズをやったと思います。僕の友達のクリス・フューが「Poketo」の最初のシリーズに参加していて、その時にカッコイイと思って彼に僕もやってみたいと言う話をしたら、彼が「Poketo」のテッドに連絡してくれて、そこから始まりました。Hot&Coldも「Poketo」の財布とコラボして、刊行時に付録としてつけたことがあります。あれは凄かった。グリフィンと僕でドル紙幣を半分に切って、その切れ端に聖書のページを縫い付けて、それを財布に付けました。



今現在は、本の制作ために人々の最初のパンク・ショーのエピソードを集めてらっしゃるそうですね。このプロジェクトの目標というのは何でしょうか?
僕は何かを集めるのが好きなんですよ。それから、若い人が自分の居場所を探そうとしている時期に人生がどれだけバカバカしく、それでいて不思議な魅力に満ちているのかにも惹かれます。僕の場合、形成期に通ったハードコア的なショーやスケートボードが僕の人生を変えたと思います。他の人の人生にも、かなり影響を与えたんじゃないかな。僕は、人がまだぎこちない子供として特別な経験をする時期に焦点を当てる、というアイディアが気に入りました。僕自身に関して言えば、そういう類いのショーに1、2回行って以来、もう二度とデフ・レパードなんか聴く気にはなれませんでした…もう二度とね。

どんな方々の作品がお好きですか?
クリス・フュー、ジェン・スミス、ニードル&ペンズ、グレゴリー・リンド・ギャラリー、ジェフ・ベイリー・ギャラリー、アリシア・マッカーシー、ポール・シーク、マット・オブライエン、カイル・ランソン、ジェレミー&クレア・ヴァイス、ポール・ウーリッヒ、ベロニカ・デジサス、マイク・ペア、クラスト&ダート、レベッカ・ミラー、フランク・ハインズ、ライアン・ウォレス、ジョゼフ・ハート、ウィル・ヤクリックやクリス・コラルスです。
クリス、お忙しい中ありがとうございました!
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Chris, we can`t wait to see you rock it here in TOKYO!
See you next week! Thanks PINGMAG and Ian!
Posted by: Julia @ 10月4日2006年
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Posted by: Walter @ 10月5日2006年